【医療アプリの現状】「お薬ノート」「血圧ノート」を展開する株式会社カラダノートの事例

【医療アプリの現状】「お薬ノート」「血圧ノート」を展開する株式会社カラダノートの事例

オンライン診療など医療業界のデジタル変革が急速に加速する中、医薬品でも医療機器でもない第3の治療手段として注目されているのが「医療アプリ」です。今回は「血圧ノート」「お薬ノート」を展開する「株式会社カラダノート」の事例を取り上げ、医療アプリの現状を見てみます。

第3の治療手段となっている医療アプリ

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に伴い、厚生労働省の一時的な措置によって、2020年4月13日からオンライン診療が初診でも可能となりました。この措置によって、オンライン診療を取り入れる医療機関が増えました。今後、オンライン診療だけにとどまらず、医療業界の多方面でデジタル変革が急速に加速するかもしれません。

その一つとして現在注目されているのが医療アプリ(治療アプリ)です。医療アプリとは、医薬品でも医療機器でもない第3の治療手段ともいえるアプリケーションで、国内外を問わず、現在開発が急速に進められています。

今回の新型コロナウイルス(COVID-19)問題もあり、病院に行きたくても行けない患者さんも増えていることから、自分自身で行う健康管理の重要度が増しており、その手助けにデジタルの活用が有効になってきています。

健康管理を手軽にする「血圧ノート」と「お薬ノート」の例

そのような背景の中、スマートフォンで気軽に健康管理が行えるアプリが浸透してきています。今回は「株式会社カラダノート」(以下、同社)のアプリを取り上げます。主に患者・一般消費者向けに医療アプリを展開している同社では、生活の中で取り入れやすいサービスの開発を進めています。その中でも、手軽に血圧の記録ができる「血圧ノート」や、お薬の飲み忘れ防止に有効な「お薬ノート」を詳しくご紹介していきます。

① 血圧ノート

(画像提供: 株式会社カラダノート)

血圧ノートは主に患者・一般消費者を対象とした、日々の血圧を記録できるシンプルな血圧記録アプリです。「紙のノートにいちいち書くのは面倒」「数値をグラフ化したい」「服薬やちょっとしたメモも残したい」などの要望に応えた血圧測定アプリの決定版で、日々の継続が健康改善の大切な一歩と考え、使いやすさを重視した内容になっています。

同社に血圧ノートの開発に至った背景や要因を伺いました。

日本人は高血圧症が非常に多く、推定患者数は約4,300万人と言われています。そのうち約2,500万人が未治療、さらに通院中断・降圧不良の患者さんを含めると、高血圧症患者の約3,700万人が未治療である状況です。最近の研究では、30~40代の高血圧が認知症のリスクになっていることが明らかになるなど、日々の血圧を管理することで、認知症リスクを低減できる可能性があります。そういった背景から、高血圧分野の医師の監修のもと、ITの活用により家庭での血圧値を医師に簡便・詳細に伝えることで高血圧治療をサポートできると判断し、血圧分析サービスの開発を始めました。

■血圧ノートの主な特徴

血圧ノートは自分自身での活用はもちろん、家族や他の人の血圧の記録も可能です。初期設定はとてもシンプル。使う人の情報と降圧目標の2つを設定するだけですぐに始めることができます。血圧・体重・体脂肪率の数値をカレンダーに登録すると、その数値が自動的にグラフやレポートへ反映されます。また、時間帯別・曜日別など9種類のグラフで変化や経過を確認することが可能で、病院の受診時や数値変化を管理する際に役立ちます。日々の血圧を手間なく便利に知ることができるので、血圧と上手に付き合っていけるアプリになっています。

■ 使い方

まず初めにアプリを起動してからいくつかの初期設定を行います。初期設定では、最初に降圧目標値と、朝・夜の測定時間を決定します。目標値は「若年、中年、前期高齢者患者」などいくつかの項目の中から選択し、朝と夜の測定時間は、1日2度計る血圧の表示分けに使用します。このような設定が完了したら、あとは血圧を測って記録していくだけです。血圧の記録はカレンダー画面で確認することができます。その日の測定結果を記入する際には、お薬が服用済みかどうかも確認できます。お薬をうっかり飲み忘れてしまう方も多いため、血圧管理と一緒にお薬の服用も習慣づけることができるアプリです。

実際に使用したユーザーからは、「数値を入力するだけでグラフも見れて印刷もできるので、使いやすくて便利」、「朝の分なのか夜の分なのか仕分けしてくれるのもいい」などの声が挙がっています。

血圧ノート

② お薬ノート

(画像提供: 株式会社カラダノート)

お薬ノートは主に患者・一般消費者を対象とした、お薬の管理や飲み忘れ防止などに役立つ服薬管理アプリです。頓服薬の登録が可能、カレンダーで服薬履歴が一目でわかる、お薬一覧で全員分が一度に見ることができるなど、さまざまな機能があります。お薬の登録や時間帯別の服薬チェックなど、健康管理の一助となるアプリです。

同社にこのお薬ノートの開発に至った背景や要因を伺いました。

東日本大震災の際に、服用しているお薬の種類や処方日時を記録する「お薬手帳」が、避難先での診察やお薬の処方に非常に役立ちました。しかし、避難時に「お薬手帳」を忘れずに持ち出せたケースは多くなく、薬歴情報の常時携行手段が災害対策の課題になっていました。そういった背景から、スマートフォンに常備できるアプリとしての「お薬手帳」の開発が始まりました。「お薬ノート」は、写真でのお薬記録機能やお薬服用アラート機能など、iPhoneの操作性を活用したお薬を管理しやすいアプリになっています。

■お薬ノートの主な特徴

お薬ノートは、情報を入力するのが面倒なお薬の登録を簡単にするアプリです。撮った写真をアップすることで登録するのもOK。どのお薬を飲むのか、画像で確認することもできます。時間別での服用のチェック機能、飲んだかどうかを記録する服用チェック機能、病院名などカテゴリ別のお薬管理機能が便利です。また、自分だけではなく「かぞく管理」では複数人の管理をまとめて行うことも可能です。期限切れアラート機能で、お薬をきらせない人も安心。毎日記録したデータも、バックアップ機能があるので、このアプリ一つでさまざまな使い方ができるようになります。

■ 使い方

お薬の登録をカレンダー、またはお薬の登録画面から行います。まず登録画面を表示させたら、薬名・もらった日付・服用期間(いつまで飲むのか)・服用する間隔(何日毎に飲むのか)・服用量を登録し、わかりやすいようにパッケージの写真を撮影すれば登録完了です。

あとは、服用チェックの設定をしておけば、設定した時間にアラームが鳴るので、お薬を服用する時間を教えてくれます。これでお薬を飲み忘れる心配がなくなるという便利なアプリです。また、自分が服用するお薬だけでなく、他の人のお薬も登録が可能です。例えば家族のお薬の登録も各人で行えるので、まとめて管理することが可能になります。

実際に使用したユーザーからは、「飲み忘れのチェックにとても便利」、「シンプルで必要な機能があるので重宝している」などの声が挙がっています。

お薬ノート

専門知識が必要な「医療アプリ」の普及はまだこれから

同社では、健康アプリシリーズ「カラダノート」間での連携を進めることで、より快適かつ簡単に健康管理ができるアプリシリーズの開発を目指しています。こういった患者・一般消費者向けアプリでは、病院の予約ができるアプリや、体重・体温を管理できるアプリが割合的に多く使用されています。一方で、今回ご紹介したような血圧や心拍の管理を行うようなアプリは、まだまだ普及率が低い傾向にあります。(※)

※2018年12月のスマートヘルスケアの調査では、体重や体温を管理するために所有している機器やアプリは約50%でしたが、血圧計は約30%に留まっています。実際に計測しているデータに関しては、体重が約40%に対し、血圧は20%以下という数値になっています。

つまり、利用機会が多く手軽に使える体重管理や病院予約などは徐々にアプリの普及が進んでいますが、専門知識が必要な医療分野において、患者・一般消費者向けアプリの普及はまだまだ不足していると言えます。

患者・一般消費者向けアプリの例としては、まだ実用化はされていませんが、ニコチン依存症治療アプリがあります。2014年から開発が着手され、患者さんの禁煙治療の状況や体調に応じたガイダンスがニコチンの心理的依存に作用し、治療をサポートするという内容のアプリです。慶應義塾大学呼吸器内科教室とベンチャー企業が共同開発し、2017年には特許を取得。現在は薬事承認と保険償還に向けて取り組んでいる最中です。

その他にも、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療アプリや、高血圧治療アプリなど、今後の実用化に向けて開発を進めているアプリが数多く存在します。

このようなアプリはお薬に比べて開発コストが抑えられるため、医療経済性・費用対効果は極めて高く、「医療費高騰の社会課題」に対するソリューションになる可能性を大いに秘めています。医療アプリは、今後の医療を支えるインフラになっていくのではないでしょうか。もちろん、安全性・有効性のエビデンスなどを踏まえる必要はありますが、患者さんの利便性や医療の質の向上にむけ、幅広く活用できるよう検討していくことが望まれます。

(協力)株式会社カラダノート
https://corp.karadanote.jp/