4/17は世界血友病デー - 製薬企業の血液系希少疾患の疾患啓発サイトを調査【2024年3月版】

4/17は世界血友病デー - 製薬企業の血液系希少疾患の疾患啓発サイトを調査【2024年3月版】

WFH(世界血友病連盟)の創立者フランク・シュナーベルの誕生日である4/17は、1989年に世界血友病デーに制定されました1)。今回は世界血友病デーにちなみ、製薬企業が運営する疾患啓発サイトの中から血液関連の希少疾患(血液がんを除く)について調査しました。治療方法が確立していない希少疾患ならではのコンテンツの重み付けや、コンテンツ内容の工夫についてご紹介します。

希少疾患(血液)の疾患啓発サイトを運営している製薬企業一覧

世界全体では6,000を超える2)疾患が当てはまるとされている希少疾患。日本国内では患者数が5万人未満2)の疾患と定められていますが、国により定義はさまざまです。国内では難病のうち338の疾患が指定難病に制定されています。2024年4月には新たに3つの疾患の追加が予定されています3)

2021年には製薬協が難病・希少疾患タスクフォースを立ち上げ、製薬企業全体で難病・希少疾患の患者さんやご家族の課題解決をサポートする取り組みを開始しました。2023年2月に公表した「希少疾患患者さんの困りごとに関する調査」では、重要な課題のひとつに「情報が少なく、必要な情報の取得に苦労する」が挙げられています。一方患者さんやご家族の約半数は製薬企業が提供する情報を信頼できると回答しており、製薬企業が希少疾患情報を提供する重要性が伺えます。

またこの調査によると、患者さんは患者会や体験談、新薬や治験薬の情報に満足度が低いことが示されています4)。新薬や治験薬の情報はさまざまな規制の関係で、製薬企業が個々で判断して提供範囲を広げることは難しいかもしれません。しかし患者の体験談や患者同士のコミュニケーションの場を提供することは可能なのではないでしょうか。

今回は2023年5月にIQVIAより公開された22年度販売会社ベース企業売上ランキング(期間:2022年4月~2023年3月)より抜粋した19社の中から、希少疾患の中でも血液関連に絞り疾患啓発サイトを調査しました。今回の調査では、血液がんは除外した血液疾患を対象としています。また後天性血友病だけでなく、先天性血友病も対象に含めました。

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所HPに掲載の希少疾病用医薬品指定品目一覧表(2023年10月更新分)より、特徴ある19社の血液疾患関連疾患啓発サイトをピックアップ

対象製薬企業のうち血液の希少疾患啓発サイトを運営していたのは、4社7サイトでした。指定難病の疾患啓発サイトである特徴として、医療費助成制度のコンテンツが充実しています。年齢区分に分けたりフローチャートを用いたりと、理解しやすいように各社工夫がなされていました。また患者体験談や座談会、患者会インタビューなど経験をもとにした情報コンテンツも多く提供されています。

血液系希少疾患の疾患啓発サイトを運営している製薬企業一覧

血友病の疾患啓発サイトでは、小さな子供に向けた動画や絵本などのコンテンツや、保護者の方へ向けたサポートコンテンツがありました。自己注射の仕方や成長段階に応じた日常生活や学校生活、社会生活に関するコンテンツも各社工夫を凝らし提供しています。生活を豊かにするためのサイト作りを行う製薬企業が多い印象を受けました。

また、武田薬品工業の「腫れ・腹痛ナビ - HAE(遺伝性血管性浮腫)の情報サイト」やノバルティスファーマの「ITP info」では、症状記録や服薬通知ができるアプリを提供。医師との診断時に役立つサポートアプリになっています。

ここでは7サイトの中から3サイトを取り上げ詳しくご紹介します。その他のサイトも含めた調査結果については、ダウンロード資料を用意していますので、ページ下部よりダウンロードください。

ファイザー ヘモフィリアライフ

先天性血友病について、図を適宜用いて分かりやすく解説しているサイトです。コンテンツを絞ったり関連ページへの遷移リンクを適宜挿入したりするなど、疾患を理解しやすい工夫が見られます。ライフステージ別の日常生活の注意点を紹介するコンテンツでは、はじめにロードマップを掲載。成長段階別の気を付けたいポイントや周囲へ伝える際のアドバイスをまとめています。

関節ケアやエクササイズの動画コンテンツが充実しているところも、こちらのサイトの特徴です。関節の状態に合わせたエクササイズに取り組めるよう、フローチャートを用意。例えばひじを伸ばす項目では「まっすぐ伸びる→伸ばすとひじの関節の中が痛い→伸ばすと上腕〜前側がつっぱる」などの質問に「はいorいいえ」で回答。フローチャートを進めるだけで、どのエクササイズを行えばいいか悩む方も、自分の状態に合った動画を選べる仕組みが構築されています。

YouTube公式アカウントでは、難治性疾患を抱える子供YouTuberへのインタビュー動画を配信。その様子はInstagram公式アカウントでも配信されています。X公式アカウントでは2月最終日の「世界希少・難治性疾患の日」に合わせて、希少疾患領域に関わる社員への取材について情報発信していました。

ヘモフィリアライフ
https://www.hemophilia-life.jp/

サイトディスクリプション

ヘモフィリアライフは、血友病患者さんの生活をサポートすることを目的とする血友病関連情報の配信サイトです。このサイトを通して配信する情報が、血友病患者さんの日々の生活において、役に立つことが出来れば幸いです。-ファイザー株式会社

キーワード

血友病,ヘモフィリア,補充療法,関節内出血,血液凝固因子

コンテンツ一覧

・血友病とは
疾患の基礎知識・症状・治療についてイラストを用いて解説。
・血友病と上手につきあうために
ライフステージ別の日常生活・学校生活・社会生活などの注意点や対処法を掲載。ダウンロード可能なロードマップもあり。ぱんとまん体操や関節ケア・エクササイズ動画を配信。エクササイズのフローチャートもあり。
・血友病の医療費助成制度
医療費助成制度のしくみや利用可能な医療費助成の窓口を紹介。

武田薬品工業 ヘモフィリアステーション

疾患の病態から治療、日常生活のポイント、患者体験談などコンテンツを豊富に用意し、内容が充実しているサイトです。また気になる内容に簡単にアクセスできる仕組みを構築しているため、知りたい内容をスムーズに探せます。たとえば、トップページには主要コンテンツをバナーに表示したり、コンテンツ内には目次を用意したり、関連リンクボタンを設置したりがその仕組みです。

動画が豊富に用意されていることも、患者さんやご家族が閲覧しやすいポイントでしょう。関節障害のチェック方法や自己注射の仕方、子供向け疾患説明などの動画があります。子供向けにはアニメ動画の他、絵本や自己注射の漫画、クイズなどエンタメ性があるコンテンツを用意。子供が興味を持ちやすい工夫がなされています。

体験談や患者会インタビューの記事が豊富なことも、このサイトの特徴です。周りに相談できる人がおらず、一人やご家族だけで希少疾患の悩みを抱える方の助けとなるコンテンツといえるでしょう。その他にも子供が血友病と診断された保護者の方に向けたアドバイスコンテンツもあります。疾患理解や治療だけでなく、心に寄り添うコンテンツが充実しています。

輸注記録システム「モバ録」も、オリジナル性の高いコンテンツです。Webサイトでの利用だけでなく、App Storeでのアプリ配信もありスマホでも簡単に記録が可能です。医師へメッセージが送れる機能や定期補充の通知機能があったり、パソコン版では輸注記録をグラフ化し印刷して診察時に持参したりできる便利なツールです。

ヘモフィリアステーション
https://www.hemophilia-st.jp/

サイトディスクリプション

血友病の情報サイト「ヘモフィリアステーション」は血友病の基礎知識や症状等をわかりやすく紹介したページや治療等の最新情報、患者さんやご家族へのインタビュー・体験談を掲載しています

キーワード

血友病,出血,治療薬,血が固まりにくい,血液の病気,体験談,武田薬品工業株式会社

コンテンツ一覧

・血友病について
疾患の基礎知識や症状・治療についてイラストを用いて解説。学校の先生向けダウンロード資料もあり。後天性血友病コンテンツも用意。
・血友病の患者さんへ
診断後の患者や家族へのサポート情報を配信。自己注射動画やライフステージ別の注意点、インタビュー記事、サポートツールなどを紹介。
・血友病のお子さんへ
アニメ動画や絵本など小さな子向けコンテンツを配信。自己注射を始める子向けの漫画、お口ケアクイズなどもあり。
・血友病用語集
用語解説。関連する記事の検索機能あり。

武田薬品工業 フォン・ヴィレブランド病.jp

疾患について簡潔かつ分かりやすくまとめているサイトです。「止血異常に関するチェックシート」では3つの質問に回答することで、月経異常・止血異常の可能性を判断。回答結果はPDFでダウンロード可能であり、結果下部に「病院検索」タブを配置することで、気になった人がすぐに受診できる工夫がなされています。

月経過多に特化した特設コンテンツも用意。こちらのコンテンツのトップページでは「7日・2時間・100円玉」と数字で症状の程度を表示することで、症状をイメージしやすくなっています。月経量をチェックできるコンテンツでは、自動で合計点数を計算。結果はPDFでダウンロード可能です。その他にも受診での心配事へのアドバイスや医師による疾患解説とコメント動画などがあり、受診への第一歩を後押しするサイトです。

またスマホ閲覧向けに適したコンテンツも魅力的です。コンテンツ「フォン・ヴィレブランド病早わかりガイド」はスクロールすると、疾患や治療に関して簡単な説明をアニメーションで表示します。簡潔に内容をまとめているためスムーズに内容を理解でき、スクロールで次の内容に進めるコンテンツです。

フォン・ヴィレブランド病.jp
https://vonwillebrand.jp/

サイトディスクリプション

「フォン・ヴィレブランド病.jp」は武田薬品工業のフォン・ヴィレブランド病に関する患者さん・ご家族の方のための情報サイトです。

キーワード

フォン・ヴィレブランド病,武田薬品工業,患者さん・ご家族の方のための情報サイト,ボンベンディ,vonvendi

コンテンツ一覧

・フォン・ヴィレブランド病と治療
病態・症状・診断・治療についてイラストを用いて解説。日常生活の注意点や出血時の対処法を紹介。
・止血異常に関するチェックシート
最大12項目の質問で出血の止まりにくさを評価。結果は印刷可能。
・フォン・ヴィレブランド病早わかりガイド
スクロール形式で疾患について一問一答形式で簡潔に紹介。
・Q&A
医療費助成・周囲への伝え方・月経時の対処法・遺伝についてQ&A方式で解説。
・フォン・ヴィレブランド病患者さんの声
あざ・歯科・出産・過多月経・NMOサポートに関して日本語字幕動画を配信。
・病院検索
地域別に病院HPリンク・医師名を掲載。
・特設コンテンツのご案内
過多月経に特化したコンテンツサイト。月経量記録とスコア化可能なシートあり。体験談動画、病院検索、医師からのメッセージを配信。
・関連サイトのご案内
“ヘモフィリアステーション”と“「女性のための健康ラボ」Mint⁺”のリンク。

患者コミュニティの構築をサポートしていく必要性

血液関連の希少疾患啓発サイトでは、疾患の基礎知識や治療だけでなく生活面での注意点も詳しく紹介されていました。疾患の原因が明らかでなかったり治療が確立していなかったりする希少疾患では、生活を豊かにするための情報提供も求められているのでしょう。

周囲に同じ悩みを持つ人がほとんどいない希少疾患では、患者体験談の共有はより重要です。リアルだけでなくオンラインでのコミュニケーションが当たり前となってきています。メタバースなどオンラインでのコミュニケーションの方法を模索し、患者さんやご家族が交流できる場の提供は製薬企業にも協力できるかもしれません。また希少疾患では情報収集に多くの労力を要するため、疾患や周辺情報を個々の患者さんやご家族へ届ける努力や工夫も必要です。

<出典>※URL最終閲覧日2024.3.28
1)日本血液製剤機構, 4月17日は世界血友病デー
( https://www.jbpo.or.jp/topics/?id=1445 )
2)製薬協, 難病・希少疾患に関する提言
( https://www.jpma.or.jp/information/industrial_policy/rare_diseases/jtrngf0000001r2a-att/teigen.pdf )
3)厚生労働省, 指定難病
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000084783.html
4)製薬協, 難病・希少疾患に関する提言(図2より)
https://www.jpma.or.jp/information/industrial_policy/rare_diseases/jtrngf0000001r2a-att/teigen.pdf

本記事では調査対象の一部について紹介しましたが、さらに詳しいコンテンツ一覧など、今回調査した詳細な情報はダウンロード資料よりご確認いただけます。下記フォームに必要事項をご記入の上、お申し込みください。資料ダウンロード用URLをお送りいたします。

ダウンロード資料「製薬企業の血液系希少疾患啓発サイトを調査(※血液がんを除く) 【2024年3月版】」
• 血友病 3サイト
• その他出血 1サイト
• 貧血 1サイト
• ITP(特発性血小板減少性紫斑病) 1サイト
• HAE(遺伝性血管性浮腫) 1サイト
(各サイトのサイトディスクリプション/キーワード/コンテンツ一覧/特徴)