製薬企業の免疫系希少疾患の疾患啓発サイトを調査【2024年4月版】

製薬企業の免疫系希少疾患の疾患啓発サイトを調査【2024年4月版】

近年製薬企業各社は、希少疾患やがん領域といったスペシャリティ領域に力を入れています。日本製薬工業協会でも難病・希少疾患に関する情報発信について提言がなされるなど、製薬業界を挙げて希少疾患領域へ注視していく必要に迫られていると言えるでしょう。前回の血液系希少疾患の疾患啓発サイト調査に続き、今回は製薬企業が運営する免疫関連の希少疾患の啓発サイトを調査しました。希少疾患の情報提供における問題点とともに、各サイトの工夫をご紹介します。

希少疾患(免疫)の疾患啓発サイトを運営している製薬企業一覧

日本製薬工業協会が2021年10月に立ち上げた難病・希少疾患タスクフォースが実施した調査では、希少疾患患者の困りごとについてアンケートを行っています。その中で情報収集の満足度に関するアンケートがありますが、満足している割合が高かった「病気のこと」や「病院のこと」でさえ満足している患者の割合は50%程度1)に留まっています。

希少疾患の情報収集においては、満足度が低いだけでなく、その大変さも浮き彫りになっています。満足している人の割合が高かった「病気のこと」でも、情報収集が大変だったと回答した人は約75%1)であり、必要な情報が必要な人へ届いていない現状が示されました。そのため、いかに情報収集を簡単にするか、信頼できる情報源のサイトにするかといった工夫が求められているのではないでしょうか。

ただし同アンケート内では、学会や医師が提供する情報を信頼する人が70%を超えているのに対し、製薬企業が提供する情報を信頼する人は約50%1)に留まっています。この原因として製薬企業との接点が薄いことが挙げられており、積極的な情報発信の必要性が指摘されています。能動的な情報発信と合わせてさらに信頼度を高めるためには、データや診断・治療などについて公的機関の出典を記すことなどが有効かもしれません。

前回は希少疾患の中でも血液関連に絞って疾患啓発サイトを調査しましたが、今回は免疫関連の希少疾患に絞り疾患啓発サイトを調査しました。2023年5月にIQVIAより公開された22年度販売会社ベース企業売上ランキング(期間:2022年4月~2023年3月)より抜粋した19社の中で、今回調査対象となったサイトは、4社5サイトでした。
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所HPに掲載の希少疾病用医薬品指定品目一覧表(2024年3月更新分)より、特徴ある19社の血液疾患関連疾患啓発サイトをピックアップ

免疫系希少疾患の疾患啓発サイトを運営している製薬企業一覧

表に示しているように、疾患は5サイトすべて異なります。ほとんどのサイトが症状を画像やイラストを用いてわかりやすく解説しており、耳にする機会が少ないような疾患を知るためのツールとして、サイトを閲覧する方にとって理解しやすい工夫がなされていました。希少疾患や難病は原因が不明であったり治療法が確立していなかったりするため、疾患に関する情報量に大小あり、コンテンツボリュームや構成は各サイトさまざまでした。

たとえば田辺三菱製薬が運営するベーチェット病のサイトでは、各症状と治療法を1ページにまとめて紹介しています。これは疾患自体の治療法が確立しておらず、各症状の緩和が治療のメインとなるベーチェット病のサイトとして最適な方法ではないでしょうか。このように、疾患ごとに適切なコンテンツ作りは異なってくるでしょう。

製薬協のアンケートで課題として挙げられている「患者やその家族が情報収集しやすい工夫」ですが、サイト内リンク集の作成もそのひとつではないでしょうか。今回調査したサイトでは患者からの信頼度が高いとされる難病情報センターや学会、患者会のサイトが掲載されていました。

製薬企業からの情報を信頼する人は約50%1)に留まっていると先ほど述べましたが、製薬企業のサイトが情報源として期待されていることは間違いありません。そのため有益かつ分かりやすいサイトは内容を精査した上で、積極的にサイト内で紹介していくと良いかもしれません。ただし自社サイトとの整合性は重要ですし、掲載するサイトの選別は慎重に行う必要があります。

ここでは5サイトのうち2サイトを取り上げて詳しくご紹介します。その他のサイトも含めた調査結果はダウンロード資料を用意していますので、ページ下部よりダウンロードください。

グラクソ・スミスクライン EGPA.jp

情報量が少ないながらも、各コンテンツを1ページに掲載し簡潔かつ分かりやすい内容にまとめられています。コンテンツはQ&A形式の結論先行型で作成しているため、伝えたいこと・重要なことが印象に残りやすい仕組みです。質問(見出し)は赤字、回答は矢印と太字で表記してあることもあり、ポイントを一目で理解できます。サイトの信頼度を高めているひとつに、各情報の参考サイトを明記していることが挙げられるでしょう。難病情報センターや学会のサイトを出典元としています。

各コンテンツでテーマカラーを変更していたり、ポイントを枠で囲ったりすることで、視覚的に見やすさ読みやすさに配慮がなされています。コンテンツ「医療費について」では、市町村民税課税以上7.1万円未満の患者を例に具体的な自己負担を紹介。希少疾患では複数の医療費助成制度が関わるため、具体例を示すことで患者やその家族が自分自身で利用できる制度を考える際の参考になるでしょう。

またFacebook公式アカウントでは、EGPAに関する情報を積極的に発信していました。2月最終日の「世界希少・難治性疾患の日」に合わせてマーケティング担当やMRからのメッセージを掲載したり、サイト開設やセミナーの情報を発信したりしています。ひとつひとつの投稿内容にボリュームがあり、読みものとして内容にも優れた投稿です。

EGPA.jp
https://www.egpa.jp/

サイトディスクリプション

本サイトでは、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の治療を始める患者さんや、前向きに治療へ取り組む患者さんとそのご家族に、よりよく病気について知っていただくための情報を提供しています。

キーワード


コンテンツ一覧

・EGPAについて
疾患の原因・好発傾向・原因・症状について文章で解説(一部図あり)
・診断・検査について
検査と診断基準を簡単に文章で紹介
・治療について
治療薬について簡単に文書で紹介。治療や生活上の注意点も掲載
・医療費について
特定医療費制度について図を用いて解説。自己負担のイメージや申請方法も紹介
・病医院検索
地方・都道府県別に診察可能病院を掲載(外部サイト)

日本ベーリンガーインゲルハイム わかる、つながる、強皮症

コンテンツを豊富に用意し、基礎知識・症状・治療・診察時のポイントを詳しく解説しています。「全身性強皮症ってどんな病気?」内では患者数や男女比、発症年齢を数字と図で表しており、印象に残りやすい工夫が見られました。間質性肺炎では動画解説があったり、自身も強皮症であるさかもと未明さん作の漫画を掲載したりと、疾患を分かりやすく伝えています。患者からの体験談やメッセージ動画、イラスト付き症状解説、セルフチェック、リンク集などで早期発見と正しい情報の重要性を訴求しているサイトです。

「あなたの受診準備シート」は患者さんが受診時に活用できるツールです。具体的な症状や発症時期、症状の変化、既往歴、服用薬などをWeb上で記録できます。症状の変化はグラフ表示になっており、症状の程度を示すポイントを画面上で移動するだけで、簡単に症状経過グラフが完成します。日常生活で困っていることやこれからの希望を記述する項目もあり、PDF保存して診察時にそのまま持参することも可能です。医師の診察時には慌てたり緊張したりして、伝えたいことが言えなかったり忘れたりしてしまうこともあります。「あなたの受診準備シート」は、そのようなリスクを避けられる有用なツールでしょう。

医療費助成制度の解説内容も充実しています。利用可能な各制度では対象者や自己負担限度額の計算の仕方、世帯年収の考え方など具体例を交えて説明。具体的な内容により、患者自身や家族が自分のケースで考えやすいコンテンツとなっています。

わかる、つながる、強皮症
https://kyohisho.jp/

サイトディスクリプション

キーワード

コンテンツ一覧

・全身性強皮症
疾患の基礎知識・症状・検査・経過・治療について図を用いて詳しく解説。肺の状態について解説動画あり
・全身性強皮症かな?と思ったら
疑われる症状・受診科・診察や相談内容についてイラストを用いて解説
・患者ひろば
患者会の紹介。さかもと未明さん作の漫画や患者体験談動画を掲載
・支援制度・サービス
年病医療費助成制度・高額療養費制度について図や具体例を用いて解説。その他利用可能な支援制度も紹介。Q&Aも掲載
・お役立ちツール
全身性強皮症・呼吸器症状のセルフチェック、受診準備シートを提供。疾患関連の他サイトも紹介
・近くの専門病院を探す
相談可能な医療機関をエリア・都道府県・市区町村を指定し検索可能(外部サイト)

情報の信頼性を高めるためには積極的な発信が求められる

希少疾患では原因や治療法が十分には解明していないこともあり、豊富なコンテンツを作成することは難しい疾患もあるでしょう。しかしそのような疾患であるほど、患者やその家族は情報を求めています。少ない情報の中でも、コンテンツに工夫を凝らし読みやすく理解しやすいサイト作りを行っていかなくてはなりません。

製薬企業における希少疾患での情報発信での課題のひとつである、信頼度のアップにはコンテンツの工夫や積極的な情報発信が必要です。公的機関や学会の出典を明記したり患者会に積極的に関わったりして、製薬企業が運営するサイトの認知度や信頼度を高めていきましょう。また積極的な情報発信の手段として、SNSは有効です。セミナーやサイト更新情報だけでなく、テーマを工夫して積極的に発信してみてはいかがでしょうか。

<出典>※URL最終閲覧日2024.4.15
1) 製薬協, 難病・希少疾患に対する取り組み, 希少疾患患者さんの困りごとに関する調査
https://www.jpma.or.jp/information/industrial_policy/rare_diseases/bbh7c90000000dl6-att/04.pdf

本記事では調査対象の一部について紹介しましたが、さらに詳しいコンテンツ一覧など、今回調査した詳細な情報はダウンロード資料よりご確認いただけます。下記フォームに必要事項をご記入の上、お申し込みください。資料ダウンロード用URLをお送りいたします。

ダウンロード資料「製薬企業の免疫系希少疾患啓発サイトを調査【2024年4月版】」
• 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA) 1サイト
• ベーチェット病 1サイト
• 強直性脊椎炎 1サイト
• 強皮症 1サイト
• 全身型若年性特発性関節炎(SJIA) 1サイト
(各サイトのサイトディスクリプション/キーワード/コンテンツ一覧/特徴)