DTC広告とは?製薬マーケティングでの戦略設計・施策・事例を解説

DTC広告とは?製薬マーケティングでの戦略設計・施策・事例を解説

製薬企業のマーケティング担当者にとって、患者・生活者を対象とした「DTC広告」は重要な施策の一つです。日本では薬機法により製品の直接訴求はできませんが、疾患啓発を通じて潜在患者を顕在化させ、自社製品の処方拡大につなげる役割を担います。本記事では、DTC広告の定義から手法・戦略設計・最新事例まで、製薬企業のマーケティング担当者が押さえておくべきポイントを網羅的に解説します。

DTCとは?業界によって意味が異なる用語

DTCは複数の業界で使われる略語で、それぞれ意味が異なります。本記事のテーマである製薬業界のDTCに入る前に、用語の意味の違いを整理しておきます。

製薬業界のDTC(Direct to Consumer)

製薬業界におけるDTCは「Direct to Consumer(顧客直結)」の略で、製薬企業が医療関係者だけでなく一般生活者・患者に対して直接情報提供を行うマーケティング活動を指します。

米国で製薬企業が医療用医薬品の製品関連情報を、医療関係者だけでなく一般の方に直接提供していったことが起源となり、顧客直結のマーケティング・コミュニケーションの活動のことを指して呼ばれるようになりました1)

本記事のメインテーマであり、次章以降で詳しく解説します。

自動車業界のDTC(Diagnostic Trouble Code)

自動車業界のDTCは「Diagnostic Trouble Code(故障診断コード)」の略で、車両の電子制御装置が記録するエラーコードを指します。本記事の対象外のため、詳細は省略します。

金融業界のDTC(Depository Trust Company)

金融業界のDTCは「Depository Trust Company」の略で、アメリカの証券預託機関を指します。こちらも本記事の対象外です。

EC・小売業界のDTC・D2C(Direct to Consumer)

EC・小売業界では「D2C」と表記されることが多く、メーカーが卸売業者や小売店を介さず、自社ECサイトなどを通じて消費者へ直接商品を販売するビジネスモデルを指します。

このように、さまざまな意味を持つ「DTC」ですが、本記事では製薬業界のDTC、特にDTC広告について解説していきます。

DTC広告とは?製薬企業における定義と役割

DTC広告は、製薬企業が患者・生活者と直接コミュニケーションを取る重要な手段です。まずはその定義と、上位概念である「DTCマーケティング」との関係を整理します。

DTC広告は製薬企業が一般向けに行うプロモーション活動

製薬業界におけるDTC広告とは、製薬企業が医療関係者を介さず、患者・生活者に対して直接情報を発信する広告活動を指します。

日本における製薬企業のDTC広告は、薬機法の制約から製品名を直接訴求することはできず、後述する「疾患啓発」を中心とした広告活動として展開されます。患者・生活者に疾患の正しい知識を届け、症状に気づいた人を医療機関への受診へとつなげることが、DTC広告の主な目的です。

日本における製薬企業のDTC広告には制限が多い

日本では、法令により、一般向けに製品名を直接訴求するDTC広告は原則として認められていません。

薬機法の規制を受けるのは、下記3項目2)を満たしている場合です。

  • 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
  • 特定医薬品などの製品名が明らかにされていること
  • 一般人が認知できる状態であること


また、医療広告は常に不適切な文言や表現が入っていないか、厚労省や各都道府県などから監視されています。

こうした規制環境のもとで、日本の製薬企業がDTC広告で発信できる内容は主に「疾患啓発」となります。疾患の正しい知識を広く提供することで、情報を受け取った潜在患者が症状から疾患を認知し、医療機関を受診するよう促すことが目的です。結果として、医療機関での処方を通じて自社医薬品の売上向上にもつながる、という構造になっています。

DTC広告とDTCマーケティングの違い

DTCマーケティングは、製薬企業が患者・生活者を対象に行うマーケティング・コミュニケーション活動全般を指します。一方、DTC広告はその活動の一手段として実施される広告施策であり、DTCマーケティングの一部に位置付けられます。

項目

DTCマーケティング

DTC広告

範囲

患者向けの戦略・施策全般

広告という1つの手段

性格

中長期的・計画的な活動全体

個別のキャンペーン施策

含まれるもの

戦略設計・オウンドメディア・PSP・症状検索エンジン連携・広告など

テレビCM、Web広告、新聞広告、SNS広告など

DTC広告で成果を出すためには、広告単発で打ち上げるのではなく、DTCマーケティング全体の戦略の中に位置付け、オウンドメディアや受診導線とセットで設計することが重要です。本記事では、DTC広告の具体的な手法だけでなく、DTCマーケティング全体の中での設計方法も合わせて解説します。

OTCのDTCと、医療用医薬品のDTCの違い

DTCは、OTC医薬品と医療用医薬品で意味合いが大きく異なります。OTC医薬品のDTC広告では製品名・効能を直接訴求し、ブランド認知・購入意向を高めることがプロモーションの中核となり、一般的な消費財マーケティングと同様の「認知→関心→比較→購入」というファネル設計で成り立ちます。

一方、医療用医薬品のDTC広告は、薬機法により「製品を売り込む」ことができません。最終的な処方判断は医師に委ねられるため、企業が患者・生活者に対してできるのは、症状への気づきから医療機関への受診を促すまでです。そのため、医療用医薬品のDTC広告では「疾患啓発・受診勧奨・企業認知」が中心となり、ペイシェントジャーニー起点での設計が求められます。

DTC広告を含む、主なDTC施策の手法

医療用医薬品のDTC施策には、オウンドメディア・外部メディア連携・コーポレートサイト・デジタル広告・マスメディアといった複数の手法があります。各手法の特徴を理解した上で、自社の疾患領域や患者層に合わせて適切に組み合わせることが、成果を出すためのポイントです。

手法

概要

オウンドメディアやSNSで疾患や治療について啓発を行う

・すべての広告からの流入の受け皿としての役割

・流入してきたユーザーに向けて、形式に捉われない多くの情報提供が可能

・制作・維持に費用がかかる

外部のWebメディアに疾患や治療についてコンテンツ提供を行う

・疾患の認知が目的であれば効果的

・自社で運営しないので費用も抑えられる

自社のコーポレートサイトにて疾患や治療について情報提供を行う

・新規でオウンドメディアを立ち上げるコストや手間が省略できる

・一般の方と医療関係者でWebサイトの入り口を分ける必要がある

・一般の方向けはわかりやすい言葉で表現する

デジタル広告を活用して疾患や治療について情報提供を行う

・ターゲットの世代に合わせて、届きやすい媒体を選定する

・SNS活用の場合は他の投稿に埋もれない工夫が必要である

テレビや新聞に広告掲載して疾患や治療について情報提供を行う

・インターネットを使用しない世代に効果的

・主流はデジタル広告に移りつつある

各手法には特徴があるため、自社の疾患領域や患者層に合わせて使い分けることが重要です。

オウンドメディアで疾患や治療について啓発を行う

オウンドメディアを運用するメリットとしては、以下の内容が挙げられます。

  • あらゆる広告からの流入の受け皿にできる
  • 注力している疾患領域で詳細情報を発信し続けることにより、自社のブランディング構築を進めやすい

オウンドメディアに掲載するコンテンツの内容は自社でコントロールできるため、企業が目指すブランディング構築の実現に近づけやすくなります。強みを持ちたい疾患領域があれば、注力してみましょう。

また、オウンドメディアはユーザーの行動を分析しやすい点もメリットで、効果判定も容易に行えます。

専門知識を生かしたコンテンツの企画・制作、そしてサイト分析をもとにブラッシュアップされたコンテンツは、資産として蓄積されていきます。1つの疾患領域で手法が確立できれば、他の疾患領域への応用も検討できます。

留意すべき点としては、オウンドメディアは制作・維持にコストがかかることも理解しておきましょう。それを踏まえた上で、長期的な目線で自社医薬品の普及を目指してメディアを運営できる体制づくりをする必要があります。

外部のメディアに症状・疾患のコンテンツ提供を行う

病院検索サイトや症状検索サイトといった健康系メディアに疾患や治療についてのコンテンツを提供し、広告作成やコンテンツの維持・更新にかかるコストを軽減する方法もあります。広く疾患を認知してもらい受診を促すことが目的であれば、有効な方法です。

上記の方法は自社で運営をしないため、維持コストや運営にかける時間を抑えることができます。

自社のコーポレートサイトにて疾患や治療についての情報提供を行う

自社のコーポレートサイトを使用することでWebサイトの立ち上げコストを抑えながら、疾患や治療についての情報を発信できます。

その場合、製薬企業のコーポレートサイトは患者だけでなく、医療関係者が医薬品の情報を閲覧するため、入口や内容を明確に棲み分ける必要があります。加えて、一般の方向けページは専門用語を減らすなど、できる限りわかりやすい内容を心掛けてください。

デジタル広告を活用して疾患や治療について情報提供を行う

デジタル広告の方法については、以下5つの手法があります。

  • リスティング広告
  • ディスプレイ広告
  • 動画広告
  • 記事広告
  • SNS広告

リスティング広告は、Googleなどの検索エンジンで検索されたキーワードに紐づき、掲載されるテキスト形式の広告を指します。デジタル広告の中では低額からでも始められるため、比較的始めやすい広告です。

ディスプレイ広告は、Webサイトの広告枠に画像・動画・テキストで表示されるバナー広告のことです。視認性が高く、潜在層への認知拡大に効果的です。

動画広告は文字通り、動画を使った広告です。テキストや画像よりメッセージ性を持たせられるため、訴求しやすい点が特徴と言えます。

記事広告は、第三者目線で執筆される記事形式の広告。情報の信頼性が高く、疾患や治療の正確な情報を伝えたい場合に適しています。

SNS広告は、TwitterやFacebookなどのSNSに表示される広告を指します。2024年にICT総研が行った調査によると、日本でのSNS利用者数は8,452万人と年々増加しており3)、多くの人の目に留まりやすい点がメリットです。

若い世代が多い媒体(TwitterやTikTokなど)のSNSで広告を打ち出す際は、他のコンテンツに埋もれないようにして情報を届ける必要があります。薬機法の範囲内でキャッチーな文言や芸能人を起用するなどして、目に留まるような広告を制作しましょう。

デジタル広告については「製薬企業が活用できるデジタル広告とは? 広告の種類と活用例を解説」で詳細に解説しているため、ぜひ参考にしてください。

マスメディアに広告掲載して疾患や治療について情報提供を行う

テレビや新聞などのマスメディアに広告掲載を行い、疾患啓発を実施する方法です。デジタル広告が一般化する前は、主流なDTC広告の方法でした。インターネットを活用する機会が少ない、比較的高めの年齢層がターゲットの場合は効果的です。

しかし、ターゲットを絞って訴求しやすい、閲覧数などのデータで効果を分析しやすいといったメリットから、広告掲載の主軸はデジタル広告へ移りつつあります。

ペイシェントジャーニーに沿ったDTCマーケティングの戦略設計

各手法は、単独で実施するのではなく、患者の行動段階に沿って組み合わせることで初めて成果につながります。DTCマーケティングで成果を出すための最も重要な考え方が、ペイシェントジャーニーに沿った戦略設計です。患者は症状に気づいた瞬間からすぐに受診するわけではなく、不安を感じながら検索し、複数の情報を読み、家族に相談し、受診先を探すという段階を踏みます。

ペイシェントジャーニーは、消費者の購買行動を理解する「カスタマージャーニー」を医療・製薬業界に応用したフレームワークで、一般的に「認知 → 情報収集 → 受診・検査 → 診断・治療 → 評価・フォロー」の5段階で整理されます。各段階で患者が抱える心理と必要な情報を把握し、最適なDTC広告・施策を配置することが、成果を出すための基本設計となります。

フェーズ1:認知|症状や検査で自分の状態を自覚する

ペイシェントジャーニーの起点は、患者が自身の症状や健康診断の結果から、何らかの不調を自覚するフェーズです。この時点では疾患名を知らないことが多く、「症状名」「部位」「生活上の困りごと」をベースに検索行動を取ります。たとえば「夜中に何度もトイレに起きる」「胸が締め付けられるような痛み」など、症状そのものや生活への影響を表す言葉で情報を探し始めます。

有効な広告・施策:

  • リスティング広告
  • ディスプレイ広告
  • SNS広告
  • マスメディア広告


このフェーズでは、専門用語を前面に出すと検索意図とズレるため、生活者目線の言葉でクリエイティブを設計することが重要です。

フェーズ2:情報収集|疾患や治療について深く知ろうとする

疾患の存在を認知した患者は、次に「自分の症状が本当にその疾患なのか」「放置するとどうなるのか」「どんな治療法があるのか」を深く知ろうとします。インターネット検索や関連書籍、家族・知人からの情報収集を行うフェーズです。

有効な広告・施策:

  • オウンドメディアでの体系的な情報発信
  • コーポレートサイトの患者向けページ
  • 監修医師による動画コンテンツ
  • 疾患啓発を目的とした記事広告


ここでは「すぐ治る」「放置すると危険」といった煽り表現を避け、参照元を明示した中立的な情報提供を心がけます。患者の不安を整理し、医療機関への相談を後押しすることが目的です。

フェーズ3:受診|疾患や治療について深く知ろうとする

情報収集を経て、患者は「どの診療科に行けばいいのか」「近くの医療機関はどこか」「初診で何を伝えればいいのか」を考え、受診先を選んで予約・受診します。理解が深まっても、次のアクションが分からなければ受診にはつながらないため、具体的な行動支援が重要なフェーズです。

有効な広告・施策:

  • 症状検索エンジンとの連携
  • 病院検索サービスとの連携
  • 受診準備ツール(チェックリストなど)の提供


このフェーズで重要なのは、患者の自己判断を促すのではなく、医師に相談するための準備を支援するスタンスです。診断は医師の役割であり、企業ができるのは患者をスムーズに医療現場へ導くまでです。

フェーズ4:診断|医師の診断を経て治療を開始する

医療機関での問診・診察・検査を経て、医師の診断のもとに治療が始まるフェーズです。患者は治療内容に対する理解と納得を求めており、治療法の選択肢、治療経過の見通し、副作用への向き合い方などの情報ニーズが高まります。

有効な広告・施策:

  • 治療法の選択肢を解説するオウンドメディアコンテンツ
  • 医師監修の疾患・治療解説動画
  • 治療経過の事例紹介コンテンツ


医療用医薬品の製品名や効能を直接訴求することはできないため、疾患領域全体の治療選択肢を中立的に解説し、医師との対話の質を高める支援が中心となります。

フェーズ5:治療継続|アドヒアランス向上を支援する

治療開始後、治療継続を支援するフェーズです。服薬の意義、生活上の注意点、副作用への対処法、定期受診の重要性などを継続的に伝えることで、治療成果と患者満足度の両方が高まります。

有効な広告・施策:

  • PSP(Patient Support Program)の運営
  • 患者向けアプリの提供
  • 患者会・NPOとの連携
  • メルマガ・LINEでの定期情報配信


このフェーズでは、患者が「治療を続ける意義」を理解できる情報設計が鍵となります。


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DTC広告を含む、DTCマーケティングの事例

製薬企業が実際に展開しているDTC広告およびDTCマーケティングの最近の事例を紹介します。各事例の戦略のポイントを整理しながら見ていきましょう。

アルツハイマー病啓発活動「もの忘れ・アルツハイマー病ナビ」(日本イーライリリー)

日本イーライリリーは2026年4月、アルツハイマー病に関する全国規模の啓発活動を開始しました4)。風吹ジュンさんをアンバサダーに起用したテレビCM「花と髪」篇・「花」篇・「髪」篇を全国にて放映するとともに、全国50箇所で啓発イベント「年のせいじゃない"もの忘れ"展」を開催。あわせて啓発サイト「もの忘れ・アルツハイマー病ナビ」もリニューアルしました。

本事例の特徴は、テレビCMによる広域認知獲得と、Webサイトでの詳細情報提供、さらに全国50箇所の体験型イベントを連動させた点にあります。マスメディア・デジタル・リアルを横断する設計により、患者の多様なメディア接触行動に対応しました。また、ターゲット世代に親近感のあるタレント起用で「自分ごと化」を促進している点もポイントです。認知から行動までを一貫して支援するマルチチャネル戦略の例といえるでしょう。

慢性腎臓病啓発キャンペーン「ぺこぱ」起用(日本ベーリンガーインゲルハイム)

日本ベーリンガーインゲルハイムは2026年3月、「世界腎臓デー」に合わせて慢性腎臓病(CKD)の疾患啓発キャンペーンを開始しました5)。お笑いコンビ「ぺこぱ」を起用し、東京メトロおよび東急線で電車内ジャック(中づり貸し切り)形式のトレインジャックを実施。さらに、腎臓に扮したぺこぱによる5本の漫才音声をSpotify・Podcastで配信し、「自己紹介」「CKDとは」「eGFRのチェック」など複数のエピソードを通じて、楽しみながら腎臓についての知識を深められるコンテンツを展開しました。

本事例は、お笑いコンビ起用と漫才形式というエンタメ要素を活用して、難しい疾患情報を親しみやすく届けている点が特徴的です。また、通勤時間や家事の合間に「ながら聞き」で接触できるPodcastを啓発チャネルとして活用しており、トレインジャックで認知を獲得し、デジタル音声で深い理解へ誘導する設計になっています。一方向の情報発信から、生活者が楽しみながら関わる体験型・参加型コンテンツへとDTC広告が進化していることを示す好例であり、語りづらい・難しい病気をユーモアで伝える流れが広がっています。

デュピクセント®使用患者向けアプリ「MyWay」(サノフィ)

サノフィは2025年11月、デュピクセント®を使用する患者を対象としたスマートフォンアプリ「MyWay」の提供を開始しました6)。自己注射のリマインダー、自己注射ガイド動画、治療日誌、学習コンテンツ、身の回りの環境情報、お問い合わせ窓口の6つの機能を搭載し、症状の記録・可視化や治療スケジュール管理を通じて患者の生活の質向上を目指します。米国・ドイツ・日本をはじめとする複数の国で導入・活用されています。

本事例は、受診後の患者を対象に治療継続を実践的にサポートしている点が特徴です。服薬管理から教育コンテンツまでを1つのアプリに集約することで、患者の治療生活全体を支える設計になっています。また、従来紙で提供していた患者用資材をデジタル化することで、利便性向上とサステナビリティを両立している点も注目すべきポイントです。ペイシェントジャーニーの「治療継続フェーズ」に特化したPSPの好例であり、製薬企業の役割が「医薬品の提供」から「治療生活全体の支援」へと広がる業界の動きを象徴する事例といえます。

薬機法・ガイドラインを踏まえた実施上の注意点

DTC広告では、薬機法・適正広告基準・医療広告ガイドライン・製薬協コードを踏まえたコンプライアンス体制が不可欠です。

製薬企業のDTC広告では、製品名を出さずに疾患啓発・受診促進を中心とすることで薬機法の広告規制をクリアします。ただし、製品名を出さなければ何でも自由に表現できるわけではありません。広告内容が誇大表現や不安訴求にならないよう、表現面でのチェック体制を整える必要があります。

例えば、代表的な避けるべき表現と修正方針は以下の通りです。

確認項目

NGになりやすい表現

修正方針

効果の断定

「必ず完治する治療法があります」

医師への相談を促す表現に変更

診断の代替

「この症状があれば◯◯病です」

受診時に伝える症状の整理として表現

不安訴求

「放置すると必ず重症化します」

受診目安と相談先を中立的に提示

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認知から治療継続までーDTC広告を成功させるために

DTC広告で成果を出すためには、単発の広告施策で終わらせず、DTCマーケティング戦略全体の中で設計することが重要です。患者の行動段階に応じた施策をペイシェントジャーニー全体で設計し、症状検索エンジンや外部プラットフォームなどとも連携することで、自社単独では届かない層への接点を広げられます。同時に、薬機法や適正広告基準への配慮は企画段階から組み込み、後工程の手戻りを防ぐ体制づくりが欠かせません。

DTC広告は、製薬業界特有の規制や疾患理解に加え、デジタルマーケティングやコンテンツ設計、顧客理解といった幅広いマーケティングの視点が求められる領域です。Medinewでは、製薬企業のマーケティング業務に役立つ記事や資料、セミナー・イベント情報などを通じて、マーケティング活動を後押しする情報を発信しています。ぜひMedinewをご活用ください。


<出典>※URL最終閲覧日2026.5.15

1)古川 隆, 文眞堂, 2022, 『DTCマーケティング【第3版】医薬品マーケターが考える患者中心のコミュニケーション』

2)厚生労働省ホームページ, 薬事法における広告規制|厚労省(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000059731.pdf)

3)ICT総研, 2024年度SNS利用動向に関する調査 (https://ictr.co.jp/report/20220517-2.html/)

4)日本イーライリリー株式会社, プレスリリース「その"もの忘れ"、アルツハイマー病かも 日本イーライリリー、アルツハイマー病に関する啓発活動を全国展開」, 2026年4月(https://mediaroom.lilly.com/jp/previewPDF/2026/26-09_com.jp.pdf)

5)日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社, プレスリリース「世界腎臓デーに合わせ、新たな国民病『慢性腎臓病(CKD)』啓発キャンペーンを開始」, 2026年3月

(https://www.boehringer-ingelheim.com/jp/press-26-0323)

6)サノフィ株式会社, プレスリリース「デュピクセント®使用患者さん専用アプリ『MyWay』の提供開始」, 2025年11月

(https://www.sanofi.co.jp/ja/media-room/press-releases/2025/1120)