製薬企業が活用できるデジタル広告とは? 広告の種類と活用例を解説

製薬企業が活用できるデジタル広告とは? 広告の種類と活用例を解説

製薬企業のマーケティング施策において、広告は疾患啓発や認知拡大のために有効な手段です。特に、DXが急速に進む今、製薬を含むさまざまな業界でマーケティングにおける「デジタル広告」の役割が大きくなっています。本記事では、費用対効果の高いマーケティング施策の実現に必要なデジタル広告の特性と活用方法について解説します。

デジタル広告の定義

デジタル広告とは、インターネット上に表示されるあらゆる形式の広告を指します。例えば「Google」などの検索エンジンにおける検索結果画面に表示される広告や、「Yahoo!」などのポータルサイトに表示されるバナー、各種Webメディアに掲載される記事コンテンツなど、その形式は実に多様です。スマートフォンの普及に伴い、近年では「YouTube」などの動画配信サービス、「Twitter」「Instagram」をはじめとしたSNSでもデジタル広告が数多く見られます。

デジタル広告は一般的なマスメディア広告(マス広告)と比べ、低コストで出稿できるだけでなく、広告を届けたいユーザーにピンポイントでアプローチできる点が大きな特徴です。

株式会社電通が発表した「2021年 日本の広告費」1)によると、2021年にはインターネット広告費が、マスメディア4媒体広告費(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ)を2,500 億円ほど上回っており、広告市場におけるデジタル広告の割合と影響度は年々高まっています。

製薬企業におけるデジタル広告活用のメリット  

ここからは、製薬企業が実施する患者向け、医師向けそれぞれのプロモーションにおいて、デジタル広告を活用するメリットを解説します。

患者向けプロモーションの場合

患者には、ペイシェントジャーニーをもとに疾患啓発を行うことで、自発的な医療機関への受診を促す間接的なプロモーションを実施します。疾患啓発活動としては、CM、新聞、ポスターなどのマス広告を活用した訴求が行われてきましたが、マス広告は不特定多数の人に向けて広くプロモーションできる一方で、訴求したい患者に対してちゃんとアプローチできているのか確認しづらく費用対効果に疑問がありました。

一方、ユーザーの情報や行動に合わせて広告を打ち出せるデジタル広告は、本来訴求したいユーザーに向けて、ダイレクトに広告を届けることができます。

患者が病名や症状といった情報を検索する時は、自分の不調の原因や改善方法に関する情報を強く求めており、疾患への関心が高くなっています。そのような検索ユーザーに向けてタイムリーに広告を表示させることで、効果的に自社疾患啓発サイトなどの目的の場所へ誘導することが可能となります。

医師向けプロモーションの場合

コロナ禍で医師の情報収集の方法が変化し、SNSやWebサイト、メールから情報収集を行う医師が増えていることからも、デジタル広告を駆使することで費用対効果の高いプロモーションが可能となることが考えられます。例えば、医師の関心が高い学会サイトや3rdパーティメディアに、自社のサービスやWeb講演会、患者向け資材などに関するデジタル広告を掲載することで、視聴回数やアクセス数のアップが期待できます。

医師と患者の両方に対しそれぞれ異なるアプローチが求められる製薬企業にとって、ユーザーのニーズに合わせた的確なコンテンツを配信できるデジタル広告は、非常にメリットが大きいマーケティング手法といえるでしょう。

各デジタル広告の特徴と期待できる効果

デジタル広告にはさまざまな種類があり、ニーズに合わせて柔軟に広告の形式を選べます。デジタルマーケティング施策の効果を最大化させるためにも、各広告の特徴や活用事例について正しく理解しておきましょう。

①リスティング広告

リスティング広告は、GoogleやYahoo!などの検索エンジンで検索されたキーワードに紐づいて掲載されるテキスト形式の広告です。ユーザーの関心に近い内容の広告が検索結果画面上に表示されるため、「貧血 倦怠感」「動悸 息切れ」などの気になる自覚症状を検索する患者に向けて、自社で運営する疾患啓発サイトの存在をアピールできます。

また、リスティング広告には他にも以下のようなメリットがあります。

  • 効果をリアルタイムに確認して検証できるため、PDCAサイクルを回しやすい
  • 効果が出ない場合はすぐに広告を停止できる
  • マス広告と比較して、低予算から出稿が可能

デジタル広告の中でも低額から始めることができるリスティング広告は、リアルタイムに配信と停止が可能で比較的始めやすい手法です。これまで予算の確保が難しく出稿していなかったプロジェクトでも検討しやすい方法といえます。

②ディスプレイ広告

ディスプレイ広告は、Webサイトの広告枠に動画や画像、テキストの形式で表示される広告です。Webサイトのページ上にバナー画像として表示されることが多く、バナー広告と呼ばれることもあります。

一般向けの医療ニュースサイトに疾患啓発サイトの広告を表示させたり、医師向けの3rdパーティメディアに製品やWeb講演会のバナー広告を掲載したりと、視認性の高さを活かした広告展開が可能です。

リスティング広告は検索されたキーワードに連動したテキストが表示されますが、ディスプレイ広告は閲覧したWebサイトのコンテンツに連動して、テキストや画像を用いて表示されます。そのため、リスティング広告よりも視覚的に訴求でき、リスティング広告ではカバーできない潜在層への認知拡大に効果的です。
 

③動画広告

映像、音楽、テロップなどで構成される動画広告は、画像やテキストだけの広告と比べて内容にストーリー性を持たせやすく、メッセージ性の高さで訴求できる点が強みです。広義ではCMも動画広告に入りますが、デジタル広告における動画広告はYouTubeやFacebookなど、WebやSNSで表示されるものを指します。

製薬マーケティングでは、対象となる疾患の患者へのインタビューや、症状に悩む患者が受診に至るまでのストーリーなど、患者のインサイトに沿った動画を配信することで共感を生み、SNSなどを経て情報が拡散されればさらなる認知の拡大が期待できます。

④記事広告

記事広告とは、「PR」「広告」などと明記された記事形式でWebサイトに掲載される広告です。広告主が直接PRするのではなく、メディアのライターなどが第三者目線で執筆します。したがって情報の信頼性が高く、もともとユーザーが興味を持って見ていたメディアの一部として自然な形で情報を発信できるため、潜在的な悩みやニーズを持つユーザー層を取り入れやすい特徴があります。

例えば、Yahoo! JAPANやマイナビニュースなどのWeb媒体に掲載する、もしくは、複数のWebサイトへの広告配信を一括して行なうアドネットワークに入札することで、学会サイトや3rdパーティメディアなど複数のWebサイトに同じ記事広告を掲載することが可能です。

表示画面が限られているリスティング広告やディスプレイ広告とは異なり、多くの情報を文章や画像でユーザーに伝えられる記事広告は、疾患や製品の正確な情報を伝えたい製薬企業にとって適した広告手法の1つといえます。

⑤SNS広告

TwitterやFacebookなどのSNSに表示される広告をSNS広告と呼びます。若い世代を中心に社会的なインフラとして定着しつつあるSNSは、ユーザーの使用頻度が高く、広告を目にする機会の多さが特徴的です。

SNS広告の最大の特徴は、ターゲティングの精度が高い点です。アカウントの作成時に登録された情報とSNSでの行動データを組み合わせることで、広告を届けたいユーザーに向けて的確に訴求できます。

一方で、SNS上ではすでに数多くの趣向が凝らされた画像や動画が溢れているため、クリエイティブに富んだ魅力的なコンテンツでなければ、他の投稿に埋もれてしまいユーザーに見てもらえないといった難しさがあります。また、SNSは幅広い年齢層に利用され始めているものの、若い世代に比べると利用率が低い高齢者層には比較的アプローチしづらいという特徴もあります。

したがって、SNS広告を利用する場合は、SNS利用者の年齢層がアプローチしたい層に適しているか、利用者のニーズに合った広告内容になっているかなど慎重な見極めが必要です。

製薬企業におけるデジタル広告の媒体選びのポイントは

デジタル広告は「誰に、どのように、どんなことを訴えかけて、どういった効果を期待するのか」といったニーズに合わせて、出稿する手段が変わります。ここでは、媒体選びのポイントとなるペルソナの特定と掲載先の選定についてみていきます。

ペルソナの特定

製薬企業の場合は、医療従事者向けのサービス紹介なのか、患者向けの疾患啓発なのか、ユーザーによって広告の内容が異なるため、「誰に」の部分であるペルソナの設定が特に重要になります。

ペルソナは、どの疾患や製品、サービスの認知を拡大したいかによって変動するため、ターゲットとなる医師や患者の背景を明確にしておくことが大切です。

掲載先の選定

デジタル広告の掲載先は、設定したペルソナによって選び方が変わります。医師を主軸とした医療従事者向けの広告であれば、学会サイトや医師向けの3rdパーティメディアなどへの出稿が考えられます。さまざまな種類があるメディアやサービスから、ペルソナとして設定したユーザー層が多く利用するものを見極めることがポイントです。

また、患者向けの広告であれば、アプローチしたい患者層に合わせたメディアやSNSを選ぶ必要があります。同時に、製薬企業は医薬品を扱うという特性上、社会から高度な倫理観が求められる企業であるため、自社のイメージを損なう掲載先は避けることも意識しましょう。デジタル広告には少なからず炎上リスクもついて回ることを考慮した上で、ペルソナの特性に適した媒体を選びましょう。

デジタル広告は定期的な効果検証も大切

デジタル広告にはマス広告と異なり、リアルタイムに効果を検証できるメリットがあります。デジタル広告を出したら定期的に効果をチェックして分析し、最適な広告内容、媒体、出稿先の検証および改善を進めましょう。

基本的には以下の流れでPDCAサイクルを回します。

  1. 広告掲載前に設定した目標値(クリック数やインプレッション数など)と効果測定値の差異を確認する
  2. 目標に達成した原因、達成しなかった原因をそれぞれ検討する
  3. 検討結果をもとに、ターゲティングや掲載先、コンテンツ内容を変更、修正する
  4. 修正後の広告の効果検証を行う
  5. 上記を繰り返す

デジタル広告の効果を最大化させるためにも、定期的な効果検証を重ねましょう。

デジタル広告を活用して製薬マーケティングをアップデート

命と健康に関わる医薬品は、他の商品やサービスよりもプロモーション手法に関する規制が厳しく、広告のハードルが高くなります。そのため、デジタル広告自体が製薬業界に浸透しきっておらず、業界としてもデジタルシフトが遅れていました。

しかし、コロナ禍以降は急速にDXが進んでいます。デジタル広告は形式や掲載方法によってさまざまな種類があります。いずれもマス広告に比べれば比較的低予算で出稿できるだけでなく、ペルソナの特性に合わせて広告を表示できるなど、有用性の高いマーケティング手法です。

医療現場はもちろんのこと、社会全体としてDXが進む今、目的に合ったデジタル広告を活用して認知拡大を図ることは、製薬マーケティングにおける重要なステップになります。

<出典>※URL最終閲覧日2023.1.31
1) dentsu Knowledge & Data, 株式会社 電通, 2021年 日本の広告費|媒体別広告費(https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/2021/media.html