製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2025年9・10月版

昨今、医療・製薬業界でも、業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルマーケティングに注力する動きが多くなってきました。本記事では、2カ月に1回、各製薬企業のプレスリリースより、最新製薬マーケティングやDXの取り組みをピックアップ。マーケティング、プロモーション、DXについて、業界全体の最新トレンドや、他社がどのような動きをしているのかを把握できます。今回は、2025年9・10月を対象に最新動向をまとめました。
※調査対象の企業は2025年5月にIQVIAより公開された23年度販売会社ベース企業売上ランキング(期間:2024年4月~2025年3月)の上位20社。50音順にリストアップ
【2025年9・10月サマリー】
- デジタルとリアルを組み合わせた疾患啓発の多様化
製薬企業が疾患啓発において、Webサイト、イベント、テレビCMなど複数のチャネルを組み合わせた戦略的なアプローチを展開している。アストラゼネカは膀胱がん患者向けサイト「膀胱がん、それでも。」をオープンし、サイト公開に合わせて専門医と芸能人によるオンラインイベントを開催。MSDはHPV関連疾患の啓発キャンペーンで俳優の風間俊介さんを起用し、10代の若年層とその保護者に向けてテレビ・オンライン・Webサイト「もっと守ろう.jp」などで連動展開。ツムラも10月19日・国際生理の日に合わせて「生理の悩み相談プロジェクト」を開始し、サンリオの「クロミ」をイメージキャラクターとして起用し、ステッカー掲出とWeb CM動画で若年層への認知向上を図っている。
ターゲット層に応じた最適なメディアミックスと、専門性の高い情報をわかりやすく届ける工夫が求められている。
- リアルワールドデータの本格活用が進む
医療現場から得られるリアルワールドデータを活用した実態調査が進展している。日本イーライリリーは診療録直結型肥満症データベース(J-ORBIT)を用いて、2019年1月から2024年1月までに治療を受けた日本人肥満症患者の減量目標達成状況を調査。J-ORBITは電子カルテから体重、腹囲、健康障害の有無、治療状況など多岐にわたるデータを匿名化して収集する研究事業で、このようなデータ蓄積と分析により、領域横断的な肥満症対策の推進と診療の質向上が期待される。今後もこのようなデータ活用は進んでいくと見られる。
【各社プレスリリース抜粋】
■アストラゼネカ株式会社
アストラゼネカ、膀胱がんの疾患情報サイト「膀胱がん、それでも。」をオープン
2025年9月25日
膀胱がんの患者さんやご家族に向けた膀胱がんの疾患情報サイト「膀胱がん、それでも。」をオープンした。同社では、革新的な医薬品の提供に加え、わかりやすく確かな情報発信を通じて、膀胱がん患者さんとご家族の支援に貢献していくとしている。
本サイトでは、膀胱がんの患者とその家族に役立つ情報を4つのカテゴリで提供。
- 「膀胱がんとは?」:膀胱がんという病気や診断についてなど、イラストや図を使いわかりやすく解説
- 「膀胱がんの治療」:膀胱がんのさまざまな治療方法や薬のはたらきと副作用について、知識が深まる情報を掲載
- 「納得して治療を受けるために」:最適な治療を決めていくための進め方をステップにして説明
- 「膀胱がんと生きる」:患者さんから多く寄せられる質問への専門医の回答に加え、医療費の助成制度や治療と仕事の両立に関する相談先についても紹介
また、本サイトオープンに伴い、膀胱がん市民公開講座「あなたにも知ってほしい膀胱がんのこと」もオンラインで開催した。本イベントは、富山大学 学術研究部医学系 腎泌尿器科学 教授の北村 寛先生と、元プロレスラーの長州 力さんが登壇し、膀胱がんの基礎情報、診断・治療の流れ、患者体験談に基づく早期受診の重要性について紹介している。
https://www.astrazeneca.co.jp/content/az-jp/media/press-releases1/2025/202509251.html
https://www.astrazeneca.co.jp/content/az-jp/media/press-releases1/2025/202510281.html
<LunaLuna×アストラゼネカ presents トークショー>「私のからだ、私の未来 ~女性が知っておきたいセルフケア~」を10月6日に開催
2025年10月8日
株式会社エムティーアイが運営するすべての女性の一生に寄り添うウィメンズヘルスケアサービス「ルナルナ」と協力し、2025年10月6日(月)に、「私のからだ、私の未来 ~女性が知っておきたいセルフケア~」と題した、オンラインイベントを開催した。
本イベントは、婦人科腫瘍学・女性医学の専門医である大島 乃里子先生(東京科学大学病院 周産・女性診療科 講師)とプロフィギュアスケーターの村上 佳菜子さんによるトークを通じ、婦人科がんの早期発見・早期治療開始のためにも、普段は後回しにしがちな“自分の体と心”について向き合うことの大切さを多くの女性に気づいていただくきっかけとして開催。月経に関連する不調が起こる仕組みや、卵巣がん・子宮体がん・子宮頸がんの早期発見のために注意すべきポイントなどが解説された。
同社では、乳がん・婦人科がんに関するLINE公式アカウント「わかるアプリ」シリーズを運営しており、今後もこうした啓発活動をさらに広く展開できればと述べている。
https://www.astrazeneca.co.jp/content/az-jp/media/press-releases1/2025/202510081.html
■MSD株式会社
俳優 風間 俊介さんを起用 HPV関連がん・疾患啓発の新キャンペーン『HPV、それは僕らの未来に関係すること。』10月27日(月)よりテレビ・オンラインで開始
2025年10月27日
MSD株式会社は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に関連するがんや疾患を啓発する新キャンペーン『HPV、それは僕らの未来に関係すること。』を開始した。本キャンペーンは、俳優・風間俊介さんを起用し、HPV関連がんおよび疾患について広く啓発するために、テレビCMやデジタルなどの各種媒体を通じて、全国的に展開。主に10代の若い男女やその保護者の方々に向けて、HPVは性別を問わずがんや疾患を引き起こす可能性があることを広く啓発していく。
同社ではこれまでも、HPV関連がんおよび疾患の啓発として、子宮頸がん疾患啓発キャンペーンをテレビやオンライン、ウェブサイト「もっと守ろう.jp」などで展開しており、今後も日本の人々をHPV関連がんおよび疾患から守り、公衆衛生の向上に貢献できるよう全力を尽くすとしている。
https://www.msd.co.jp/news/product-news-20251027/
■株式会社ツムラ
「~あなたの答えがきっと見つかる~ 生理の悩み相談しようプロジェクト」スタート
2025年10月15日
ツムラは、「~あなたの答えがきっと見つかる~ 生理の悩み相談しようプロジェクト」を、10月19日・国際生理の日を前に、2025年10月15日(水)より始動したことを発表。月経に伴う不調において、十分な対処がなされず症状を抱えたままの方に対し、一人ひとりが自分に合った対処法を見つけられるようサポートするとともに、早期に医師へ相談する大切さを啓発する。
具体的な活動として、株式会社サンリオの「クロミ」をイメージキャラクターとして起用し、啓発に向けた様々なコンテンツを通して発信。また、特設サイトの公開、WEB CM動画の配信、本プロジェクトに賛同いただいた医療機関と連携したクロミステッカーの掲出など、生理に伴う悩みを抱えている方が、医師への相談につながるきっかけとなる施策を実施する。
https://www.tsumura.co.jp/news/newsrelease/2025/202510151400.html
■日本イーライリリー株式会社
日本人肥満症患者のデータベース(J-ORBIT)を活用した治療実態調査
2025年10月6日
日本イーライリリーは、「診療録直結型肥満症データベース(J-ORBIT)」を用い、2019年1月から2024年1月までに何らかの治療で受診中の日本人肥満症患者について、現行の治療法ごとの減量目標達成状況に関する実態調査を実施。
本調査結果から、生活習慣への介入や現行の薬物療法*1で、肥満症診療ガイドライン1)の定める減量目標(現体重の3%以上)*2を達成した人が半数未満にとどまることが明らかになった。
J-ORBIT(Japan Obesity Research Based on electronIc healTh record)は、電子カルテから肥満症診療の データベースを構築する研究事業。電子カルテ内に「肥満症標準診療テンプレート」を作ることで、本事業に参加する全ての病院から、日常診療を通じて得られる各種データが匿名化・暗号化されて送信され、データセンターのサーバ内に蓄積される。本研究で収集する情報は、体重や腹囲など基本的な情報のほかにも、肥満症の診断基準に必要な健康障害の有無、および治療の有無など多岐にわたり、領域横断的な肥満症対策に資するデータを収集するとともに、肥満症診療の質の向上への寄与を目指している。
注釈
*1:現行の薬物療法: 肥満症治療薬(マジンドール)、2 型糖尿病治療薬(GLP-1 受容体作動薬、SGLT2 阻害薬、ビグアナイド 薬、α-グルコシダーゼ阻害薬)、漢方薬(防風通聖散、大柴胡湯、加味逍遙散、防已黄耆湯)による治療をいう。なお、分析対象 は各治療を受けている人のデータであり、各治療開始時点からの達成率ではない。
*2:減量目標: 3%以上の減量によって複数の健康障害が改善するという日本におけるエビデンスなどに基づき、肥満症診療ガイ ドラインでは、肥満症の減量目標は「3%以上」、高度肥満症の減量目標は「現体重の 5〜10%」と定義されている。
出典
1) 日本肥満学会編:肥満症診療ガイドライン2022、学会誌:日本肥満学会/JASSO ライフサイエンス出版
https://mediaroom.lilly.com/jp/previewPDF/2025/25-50_com.jp.pdf










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