#2 製薬マーケターは医師向けサイトをより一層重視。医師視点も踏まえた活用促進を

製薬企業におけるデジタル・データ活用状況やプロモーションのトレンドを探るべく、昨年に引き続き実施した業界アンケート調査(2025年7月実施)。
その中で、個々のデジタルチャネルの活用の現状や今後の活用意向について、各社の状況を調査したところ、オウンドメディアの重要度がさらに高まりつつあることが分かりました。今後のデジタルチャネルに関するトレンドと、オウンドメディアにまつわる課題、その解決のためのヒントを探ります。
調査概要
- 調査期間:2025年7月3日~11日
- 調査対象:Medinew読者(製薬企業のデジタルマーケティング部門、営業企画部門、プロダクト部門、メディカル部門など)
- 回答者数:106名(途中離脱者含む)
- 調査方法:Webアンケート形式
■アンケート結果は以下よりDLいただけます

今後、活用強化されるデジタルチャネルは?
現在重視しているデジタルチャネルに関する設問では、「Web講演会(本社主催)」「自社医療関係者向けWebサイト(オウンドメディア)」「3rd Partyメディア」が重視度の上位に挙がりました(各重視度:61%、58%、43%)。
そして、今後についても、「Web講演会(本社主催)」「自社医療関係者向けWebサイト(オウンドメディア)」がほぼ同程度で最も活用強化の意向が高く、次に「3rd Partyメディア」が続きました(各強化意向度:46%、45%、32%) 。
「顧客へのメール送信(MR主導)」の強化意向がそれに続いて高い結果(26%) でしたが、これはオンライン×オフラインによりプロモーションを加速するハイブリッド戦略が念頭に置かれていると考えられます。

3rd Partyから医師向けオウンドメディアへ照準変更の動き
3rd Partyメディアについては活用減速の動きもみられます。
今後、活用を減速させるデジタルチャネルについての設問では、22%が「3rd Partyメディア」を減速させる意向があると回答しました。一方で、「Web講演会(本社主催)」「自社医療関係者向けWebサイト(オウンドメディア)」の減速意向はそれぞれ4%のみであるため、違いは明確です。
そして、3rd Partyメディア減速意向のある回答者は、活用強化デジタルチャネルについては「医療関係者向けWebサイト(オウンドメディア)」と回答した割合が最も高く(56%)、医師向けオウンドメディアを中心としたデジタル戦略に焦点が向けられつつあるという変化が伺えました。
※3rd Partyメディア減速意向の回答者データは、n数が限られているため参考値

変化の背景にある、リソース制限の中で成果が求められる環境
各社による、医師向けオウンドメディアを中心としたデジタル戦略への注力は引き続き継続しそうです。今回の調査結果からは、顧客エンゲージメント強化に対する意向と、リソース制約のために効果・効率を重視しなければならない現状が影響している可能性が考えられます。
今後の活用強化チャネルの選択理由の第1位は「顧客とのエンゲージメント強化に繋がる」(54%)でした。
この結果は、チャネル別に強化理由を聴取したものではありません。しかし1位の理由は、製薬企業から医師へのダイレクトな情報提供の場であり、個別化や相互コミュニケーションも可能な、Web講演会や医師向けオウンドメディアを想定した回答であると考えられます。

一方、活用減速チャネルの選択理由については、「費用対効果」や「効果が低い/不明なため」「リソースの制約/再分配のため」が上位に挙がりました。製薬企業のプロモーション業務を取り巻く環境は、予算や人員のリソースが従来よりも制限され、限られたリソースの中で成果を求めていかなければならない状況にあることが伺えます。
そのような厳しい環境の中で医師向けオウンドメディアは、ターゲット医師に効率的に情報提供を行うことができ、顧客エンゲージメントの向上を可能とする重要なツールと捉えられていると考えられます。

医師向けオウンドメディアの活用を加速させるには?
製薬マーケタ―は医師向けオウンドメディアに期待を寄せる一方で、その活用度は重視している3つのデジタルチャネルの中で最も低いのが現状です(活用度:54%)。
この状況は、昨年の調査における同じ設問の結果から変化がなく、昨年から今年にかけての活用度の伸びも重視3チャネルの中で最も低いという結果でした。デジタルチャネルの中心に位置づけられているにもかかわらず、Web講演会や3rd Partyメディアに比べて、活用が停滞している状況にあることが伺えます。

改良のためのデータ分析が不十分な可能性
活用が進まない原因の1つとして、データを用いたサイトの課題分析が十分に実施されていない可能性があります。
「自社会員制Webサイト内のユーザー行動ログ情報」について、導入している割合は88%でしたが、重視しているデータに関する設問では、「本社主導の講演会の参加・視聴ログ情報・アンケート情報」および「3rd Partyのユーザー行動ログ情報・アンケート情報」は重視度が44%、32%であるのに対し、「自社会員制Webサイト内のユーザー行動ログ情報」の重視度は18%のみでした。
データ自体は活用されているものの、その活用の優先度は低い状態です。より積極的にデータを収集・活用し、サイトの改良に役立てていく必要があるでしょう。

深掘りすべきは、医師にどのような利用価値を提供できるか
医師向けオウンドメディア活用を加速するためには、利用者である医師視点も重要です。
Medinewで2025年2月に実施した医師対象のデジタルチャネル利用に関する調査では、医師向けオウンドメディアは、他の製薬企業デジタルチャネルや3rd Partyメディアに比べて重視されていないとの結果が出ています。
また同調査から、医師は、3rd Partyメディアを日常的に利用して、3rd PartyメディアとWeb講演会から診療に関するトレンド情報を入手し、薬剤情報は主にMRから入手していました。そして、医師向けオウンドメディアについては活用目的が確立していないことが明らかになっています。
製薬企業のプロモーション業務を取り巻く厳しい環境において、医師向けオウンドメディアの活用度向上は避けられない課題です。そのために、現状のサイト分析に加えて、医師にどのような利用価値を提供できるのかを深掘りし、活用されるサイト作りを徹底していく必要があります。









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