プロモーション資材制作で失敗しない! 製薬企業向けDTP・印刷発注ガイド

プロモーション資材制作で失敗しない! 製薬企業向けDTP・印刷発注ガイド

製薬マーケティング担当者にとって、リーフレット・パンフレットなどの紙資材は、デジタル化が進む今もなお重要なプロモーション手段の1つです。一方、「DTPや印刷の仕組みが分からないまま依頼している」「仕上がりやスケジュールの管理に苦労している」という方も少なくありません。本記事では、医薬品マーケティングに欠かせない紙資材の制作・印刷に関する基礎知識を体系的に整理します。

製薬マーケで使われる紙資材の種類と印刷

製薬企業が情報提供活動で使う資材には多くの種類がありますが、使用の目的やシーンによって、最適な印刷形式や加工方法は異なります。

 

基本資材は、PDFなどのデジタルデータでの提供が原則になってきていますが、使用シーンによっては紙資材も広く使われています。また、プロモーション・患者説明・疾患啓発などの目的にあわせてさまざまな印刷物が作られ、MR説明や医療機関での配布に使われています。

紙資材の印刷形式と目的別の使い分け

製薬マーケティングで使う紙資材では、目的や配布シーンに応じてさまざまな印刷形式が用いられています。

  • パンフレット(冊子):複数枚の紙を綴じた印刷物です。ページ数を自在に設定できるため、多くの情報を整理しながら体系的に伝えるのに適しています。製品ごとに情報を網羅的に伝えるために作る「総合製品情報概要(総パン)」などが含まれます。
  • リーフレット(ペラ/1枚物):紙1枚のチラシ(ペラ)または折り加工を施した薄型の印刷物で、情報を絞って簡潔に伝えるのに適しています。製薬マーケティングでは、特定の試験データやキーメッセージなどを訴求する「特定項目製品情報概要」、医師面談用資材、患者支援ツールなどに活用されます。
  • カード型資材:名刺サイズ〜はがきサイズ程度の小型印刷物です。携帯性が高く、診療時や日常生活の中で参照されることを想定して設計されます。
  • ポスター:壁面掲示を前提とした大判の印刷物です。遠くからでも認識しやすく、短い接触時間の中でメッセージを印象づけやすいことが特徴です。

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パンフレットの綴じ方の種類と使い分け

パンフレット(冊子)では製本加工が必要になります。主に以下2種類を押さえておきましょう。

  • 中綴じ:本の中央をホチキス(針)で留める方法です。8~48ページ程度の資材に向いており、コストを抑えられます。フラットに広げられるため閲覧性が高いことも特徴です。
  • 無線綴じ:折り丁(印刷した紙を折り重ねたもの)の背を糊で固める製本方式です。ページ数が多い資材(概ね48ページ超)や、背表紙にタイトルを入れたい場合に適しています。

リーフレットの折り加工の種類と使い分け

リーフレットでは、折り加工の選択により、配布しやすさや情報の量・見せ方が大きく変わります。主な折り加工の種類は以下のとおりです。

  • 二つ折り:最もシンプルな折りで、見開き4ページ構成になります。シンプルなメッセージを伝えたい資材に適しています。
  • 巻き三つ折り(片観音折り):紙面を3分割し、1つの面を内側へ折り、反対側の面を被せるように折る折り方です。用紙サイズの割に情報をコンパクトにまとめられる定番の折り方で、DMや携帯しやすさを重視する資材に多用されます。
  • 両観音折り:紙面を4分割し、両端を内側に折り込んだ上で、さらに中央で二つ折りする加工です。展開時に大判の紙面が現れるため、図表やグラフを大きく見せたい資材に向いています。
  • Z折り(外三つ折り):紙面を3分割し、山折り・谷折りを交互に繰り返してZ字型に折る加工です。4分割以上してジグザグに折る折り方は蛇腹折りと呼ばれます。パノラマ的なビジュアル表現や、地図・フローチャートの掲載に適しています。

紙資材の制作から納品までの流れ

紙資材の制作の全体像を理解するには、DTPの基本と印刷納品までの各ステップを把握する必要があります。

DTPとは?

DTP(Desktop Publishing、デスクトップ・パブリッシング)とは、コンピューター上で文字・写真・イラストなどを配置し、版下(印刷用データ)を制作する作業の総称です。かつてのアナログ製版の時代には、版下は手作業で作られていました。現在はAdobe InDesignやIllustratorなどの専用ソフトウェアを用いたデジタル製版が一般的です。

もちろん、製薬企業のマーケティング担当者がDTPの全工程を理解する必要はなく、細かな専門的判断は制作会社や印刷会社に任せてOKです。ただ、どの段階で何をするのか、何に注意すべきかを理解しておくと、スムーズなやり取りやトラブル予防につながります。

印刷までの全体フロー

制作した紙資材が、印刷されて手元に届くまでには、以下の工程が必要です。

  1. 制作(コンテンツ・デザイン作成):企画に基づいてコンテンツをつくり、レイアウトに流し込みます。社内で必要な審査などもこの段階で完了します。
  2. 入稿:印刷会社に完全入稿データを渡します。
  3. 色校正:実際の印刷前に、試し印刷をして仕上がりを確認する工程です。色校正で重大なミスが見つかった場合は修正も可能ですが、費用増加や納期延長につながることもあります。
  4. 校了:色校正で問題なければ、校了(印刷用データの確認完了)を印刷会社に伝えます。校了すると印刷内容の変更はできなくなります。
  5. 本刷り(本機印刷):校了後、本番の印刷を行う工程です。
  6. 断裁・加工:印刷した用紙をトンボ(断裁マーク)に沿って指定サイズに裁断し、折り・製本などの後加工を行います。
  7. 納品:梱包・配送し、指定倉庫などの納品先に印刷物が届きます。

 

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イメージ通りに印刷するために

印刷物の仕上がりを左右する要素は、データ・紙・色・印刷方式の4つです。それぞれの基本を理解しておくことで、思わぬ品質トラブルを防ぐことができます。

データを知る:入稿前に確認すべきポイント

写真や図版、入稿データの品質は、印刷物の仕上がりを大きく左右します。以下は基本的にはデザイナーが確認すべき作業ですが、写真や画像、レイアウトデータを自分で用意する場合や、入稿データの最終チェックをする場合などは注意しましょう。

  • 解像度:画像の解像度は350dpi以上が目安です。72〜96dpi程度のWeb用画像を使うと、印刷時にぼやけた仕上がりになります。
  • 塗り足し(ブリード)・トンボ:断裁のズレを吸収するため、デザイン要素は仕上がりサイズの3mm以上外側まで延長します。このエリアを「塗り足し」と言い、トンボはその断裁位置を示すマークです。この設定が不十分だと縁が綺麗に仕上がりません。
  • フォントのアウトライン化・リンク画像の確認:フォントは制作環境に依存するため、入稿前にフォントをアウトライン化(図形化)して文字化けを防ぎます。リンク画像は埋め込み状態を確認し、画像が消失しないようにします。

 

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紙を知る:サイズ・種類・厚みの基本

用紙の選択は資材の印象や使い勝手に直結します。仕様決定時は以下を考慮します。

  • サイズ:日本の印刷物はA判(A4・A5など)とB判(B4・B5など)で用紙サイズを指定します。A4はMR資材や説明会配布物の標準サイズで、B5は冊子資材に多く使われます。
  • 紙の種類:コート紙は表面が光沢のある塗工紙で発色が良く、カタログやパンフレットに多用されます。マット紙は光沢を抑えた落ち着いた仕上がりで、文字の読みやすさが求められる冊子に向いています。上質紙は塗工なしの普通紙で、書き込みができるアンケート用紙や封筒などに使われます。
  • 厚み(連量):用紙の厚みはkg単位で示され、数字が大きいほど厚い用紙です。例えば「コート紙90kg」はリーフレット・チラシ向け、「110kg」はパンフレット・ポスター向けの標準厚であり、「135kg」はカタログや高品質なパンフレット向けの高級感が増した仕上がりになります。

色を知る:カラーモード・特色・色校正の種類

制作中にパソコン画面で確認していた色と、実際の印刷物の仕上がりの色は異なって感じられることもあります。資材の印象に直結する色合いをコントロールできるよう、色の仕組みを知っておくことが重要です。

  • CMYKとRGB:パソコン画面上の色は、光の三原色であるRed(赤)・Green(緑)・Blue(青)である「RGB」モードで表現されています。一方、紙に印刷される色は、Cyan(シアン)・Magenta(マゼンタ)・Yellow(イエロー)・Key(黒)の4色インクを組み合わせる「CMYK」モードで表現され、入稿データは必ずCMYKモードで作成します。この差から、モニターで鮮やかに見えた色が、印刷では沈んだり、くすんだりすることがあります。
  • 特色:特色とは、CMYKの4色とは別に、特定の調合済みインクを使う印刷オプションです。DIC・PANTONEなどの「色見本(カラーチップ)」を見て、インク色を番号で指定します。特にコーポレートカラーやブランドカラーを正確に再現したい場合に有効です。
  • 色校正の種類:入稿データが正しく、狙った通りに印刷できるかを確認する「色校正」には、本機校正・簡易校正・デジタル校正の3種類があります。本機校正は、実際の印刷機・用紙で刷る方法で、最も高精度ですが費用と時間がかかります。簡易校正は、インクジェットプリンターなどで別途印刷する方法で、比較的安価かつ短納期です。デジタル校正はPDFなどの出力データでの確認になり、自分のパソコン画面上または手元のカラープリンターで出力して確認します。スピード・コスト重視の場合に使います。

 

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印刷方法を知る:オフセットとオンデマンドの比較

印刷方式は大きく「オフセット印刷」と「オンデマンド印刷」の2種類に分かれます。それぞれの特徴を以下に整理します。

  • オフセット印刷:金属の版(プレート)を作り、インクを紙に転写する印刷方式です。版の作成費用(製版代)がかかりますが、大量印刷になるほど1部あたりの単価が下がるため、1,000部以上の印刷に向いています。仕上がり品質が高く、用紙の選択肢も広いことも特徴です。
  • オンデマンド印刷:版を使わずデジタルデータから直接印刷するトナー・インクジェット方式です。製版代がかからないため、少部数の印刷に適しています。大部数になると割高になる場合があるほか、用紙の選択肢も限られます。

紙資材のスケジュール管理で押さえたいポイント

製薬企業の紙資材制作では、薬事承認や社内審査などさまざまな要因が複雑に絡むため、スケジュール管理が特に重要です。レイアウト確定から入稿まで数週間〜数カ月かかることも珍しくないため、まずスケジュールを組み、社内外の各所と進捗確認しつつ進める必要があります。

当局への申請・確認を見込む

上市資材など、規制当局に対する申請・承認が絡む場合は、その対応がスケジュールの軸に置かれます。承認時期が不確定な場合は、複数のケースシナリオで計画を立て、進捗にあわせて調整していくのが現実的です。

 

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社内外の監修・審査プロセスを事前確認する

監修医師や社内審査部門などからの指摘への対応は、修正確認の往復となって思いがけず時間がかかることもあります。余裕をもった日数設定が無難です。スケジュールに不安がある場合は、審査部門に以下を確認しておくと安心でしょう。

  • どの段階で審査するか。文字原稿でもよいか、レイアウトができてからか。
  • 審査には通常どの程度の日数がかかるか。
  • 修正・再審査が発生した場合にどの程度の日数がかかるか。

逆算でスケジュールを組む

遅延要因を事前確認してリスクを織り込みつつ、「いつまでに必要か」を起点に逆算してスケジュールを組みましょう。印刷会社に入稿データを渡した後、色校正が出るまでには数日間、その後の本機印刷・倉庫納品には1〜2週間以上かかることが通常です。つまり、必要な日(倉庫納品日)の約2週間前には校正を完了(校了)する必要があり、さらにその数日前には完全入稿データを印刷会社に渡す必要があります。

印刷会社の操業停止時期に注意

印刷会社の工場は、年度末(3月)は繁忙期になるほか、ゴールデンウィーク、お盆、正月の前後は長めに止まることが多いため、事前確認や早めの発注・入稿を検討しましょう。

部数決めと在庫管理に注意

医薬品に関連する資材は、添付文書の改訂・適応追加・安全性情報の更新などにより急ぎ改版を要することもあります。特に紙資材の場合、部数決めと在庫管理が、廃棄や在庫不足のリスクを抑えるために重要です。基本的には、一度に刷る部数が多いほど1部あたりの単価が下がるため、多めに刷っておく方がコスト削減になりますが、一方で、改版時に在庫が大量に残っていれば廃棄コストが膨らみます。両者のバランスから考える必要があります。

デザインや印刷の基礎知識を押さえて安定した資材制作を

紙資材の制作・印刷をスムーズに進めるためには、データ品質・用紙選択・印刷方式・スケジュール・在庫管理など、多岐にわたる知識が必要です。

 

製薬企業のマーケティング・営業担当者が、制作や印刷の実務について習熟する必要はもちろんありませんが、各工程の意味と判断基準を理解しておくことで、制作会社や印刷会社との連携がスムーズになり、品質トラブルや予期せぬコスト増を防ぎやすくなります。

 

注意事項をまとめて確認したい場合は、関連DL資料「資材制作 きほんのき」(PDF・全33ページ・無料)もあわせてご活用ください。