「ChatGPT」製薬マーケティングにどう使う?| #2 日常業務におけるChatGPTの活用アイデア 

「ChatGPT」製薬マーケティングにどう使う?| #2 日常業務におけるChatGPTの活用アイデア 

ChatGPTを活用して、日常業務の効率化や革新的なアイデア創出を目指す企業が増えています。本記事では、会議のアジェンダ策定、セミナーやイベントの企画作成など、製薬マーケティングの日常業務におけるChatGPTの具体的な活用法を紹介します。

製薬マーケティング担当者の日常業務におけるChatGPT活用例

会議やメール文作成、セミナーの企画立案など、マーケターの日常業務でよくありそうな想定ケースにおいて、ChatGPTを活用した事例を6つ紹介します。実際にプロンプト(指示)を入力し、出力された結果も提示しますので、参考にしてみてください。

なお、今回の記事では、無料で使えるChatGPT(GPT3.5)を使用しています。

会議のアジェンダと主な内容をつくる 

製薬企業のマーケティング担当者は、業務で社内会議の開催を担当するケースも多いと思います。その際には、会議のアジェンダや主な内容、時間配分を考えて、事前に参加者に連絡するタスクが発生します。ChatGPTを活用して会議のアジェンダを作成してみましょう。

ChatGPTに入力したプロンプトと、出力した結果は以下の通りです。

「あなたはプロのファシリテーターです。
東北エリアによる営業戦術の検討というテーマで会議を行います。
1時間の会議のAgendaを作成してください。会議の目的は戦術案を決めることです。
Agendaには時間配分も記載してください。」

 

ChatGPT回答(会議のアジェンダと主な内容)

現実では、実際の参加者の理解状況や、主催者の立場によってアジェンダの内容や時間配分の修正は必要と考えられますが、自身で一から考えるよりも、効率的に素早く検討できる可能性があります。

業務関連の社内メールを作成する

続いて、先ほどの会議をメールで参加者に連絡すると想定します。その際にメールなどで文面を作成する必要がありますが、ChatGPTを活用してメールを作成してみましょう。

ChatGPTに入力したプロンプトと、出力した結果は以下の通りです。

「社内に会議を案内するメールを作成して下さい。
会議のテーマは東北エリアによる営業戦術の検討で、案内者は部長、課長、チームメンバーの5人です。日時は2023年6月1日とします。参加の意義を伝える文面も入れてください。アジェンダは以下の通りです。
1.開会と挨拶(5分)
2.営業戦術の現状の把握(10分)
3.戦術の評価(20分)
4.代替戦術の検討(20分)
5.戦術案の決定(10分)
6.次のステップ(5分)」

 

ChatGPT回答(会議の案内メール)

現実では、実際の参加者との関係性などによって、より丁寧な文面にしたり、よりラフな感じでメールを作成する事例が多いと想定されます。そのような場合にはプロンプトに「フォーマルな文面としてください」「ライトな感じの文面にしてください」などを加えることによってテイストの微調整も可能です。メール送信の前に微修正は必要と考えられますが、現実の業務でも活用可能なレベルで、メール文の素案作成が可能と考えられます。

長くてややこしい文章を表にまとめる

製薬企業では、医学文献などを含めた難解な長文を扱う機会が多くあります。そのような場合に、まず全体像をサッと簡単に理解できるようになれば、業務の効率化につながるでしょう。
実際の論文 <J Immunother Cancer. 2022 Feb;10(2):e003427> のAbstractを例にして、ChatGPTを活用して表にまとめてみます。

ChatGPTに入力したプロンプトと、出力した結果は以下の通りです。

「以下の文章から、有効性の結果を比較表にして日本語でまとめて下さい
###以下文章:
Purpose: Triple negative breast cancer (TNBC) is characterized by the presence of immune cells in the tumor microenvironment, however, the response to single-agent immune checkpoint inhibitor (ICI) therapy is modest. Preclinical models have demonstrated that intratumoral regulatory T cells (Tregs) dampen the antitumor response to ICI. We performed a single-arm phase II trial to evaluate the efficacy of a single low dose of cyclophosphamide (Cy) to deplete Tregs administered before initiating pembrolizumab.

Patients and methods: 40 patients with pretreated metastatic TNBC were enrolled. The primary endpoints were progression-free survival (PFS) and change in peripheral blood Tregs after Cy. Secondary endpoints included overall response rate (ORR), duration of response, overall survival, treatment-related adverse events (AEs), and correlative evaluations.

Results: Median PFS was 1.8 months, and the ORR was 21%. Tregs were not significantly decreased after Cy prior to ICI (-3.3%, p=0.19), and increased significantly after the first cycle of therapy (+21% between cycles 1 and 2, p=0.005). Immune-related AEs were similar to historical pembrolizumab monotherapy, and were associated with response to therapy (p=0.02). Patients with pretreatment tumors harboring increased expression of B cell metagene signatures and increased circulating B cell receptor repertoire diversity were associated with clinical response and immune-related toxicity (IRT).

Conclusions: Among patients with heavily pretreated TNBC, Cy prior to pembrolizumab did not significantly deplete Tregs, and in those with decreased numbers there was rapid recovery following therapy. Increased B cell gene expression in baseline samples was associated with clinical response and IRT.

 

ChatGPT回答(論文のサマリー)

長くて難解な英語のAbstractから、有効性部分を項目分けして数値の結果を表にまとめて出力されました。自身ですべてを読み込むよりも、素早く、理解しやすくなると考えられます。

有害事象についても知りたければ、上記プロンプトの「有効性」という言葉を「有害事象」に変えれば、同じように表にまとめてくれます。このように、自身の知りたいことをプロンプトに入力することで、難解な文章への理解の効率化が可能です。

医療専門的な文章に詳しく書き換える

製薬企業では、医療従事者に説明する場合や、社内での議論など、医療専門的な文章を作成する場合があります。専門知識が十分でないメンバーもいるケースもあることから、わかりやすくも医療専門的な表現が必要になります。そのような場合に、ChatGPTを活用して医療専門的な文章をわかりやすく作成してみましょう。

ChatGPTに入力したプロンプトと、出力した結果は以下の通りです。

「以下の文章を、さらに詳しく医学専門的な文章にしてください。専門的な話は初心者にもわかりやすく、専門用語には補足してください。
###以下文章:
進行再発大腸がんにおける最新の治療戦略について

 

ChatGPT回答(医療専門的な文章の書き換え)

おおまかなテーマの指定であっても、実際に利用されている薬剤名や、疾患特有の遺伝子など専門的な用語に対応しながら、概要がわかりやすく表現されています。

こちらも目的によって、より薬剤部分を詳しく専門的に解説したり、よりわかりやすい解説をつけるなどの調整もプロンプトで指定すれば可能です。

ただし、注意点として、ChatGPTが学習しているデータは2021年までとなっているので、最新の医療情報がすべて反映されているとは限りません。また専門的になればなるほど、情報が正しいという保証もないので、その点を理解した使用が重要です。

セミナーやイベントの企画のアイデア出しをする

製薬企業で営業やマーケティングに関わる方なら、セミナーやイベントを企画する機会も多くあります。その際にざっくりしたテーマだけは決まっていて、より具体的に企画を詰めていく際にもChatGPTは活用できます。

ChatGPTに入力したプロンプトと、出力した結果は以下の通りです。

「あなたはプロのマーケターです。
『日本の進行再発の非小細胞肺癌における薬物治療の最新戦略』をテーマに医師向けのセミナーを開催します。内容の概要案を含めたセミナーの企画案を3つ出してください。」

 

ChatGPT回答(セミナー企画案3つ)

ざっくりしたテーマから、複数のアイデアをChatGPTで出力、具体的なイメージをしながら「これは違う」「これが良い」「この方向でもっと詳しく」などの企画を詰めていくことが可能です。自分一人で考えるよりも、アイデアの素案をChatGPTで出力し、そこに自身のアイデアを肉付けしていく方法が効率的と考えられます。

セミナーやイベントの企画書の素案を作成する

先ほど出力した「企画案3」のアイデアをベースに、ChatGPTを活用してさらに具体的な企画書の作成をすることも可能です。

ChatGPTに入力したプロンプトと、出力した結果は以下の通りです。

「企画案3:セミナータイトル:『進行再発の非小細胞肺癌における免疫療法の最新戦略:新しい免疫療法薬とその有効性」のさらに詳しい企画書を作成して」

 

ChatGPT回答(セミナー企画案詳細)

対象や目的、セミナーの項目や時間配分、概要説明文が出力されました。

企画書の素案として、微修正を行いながらパワーポイントの資料作成に入ることもできますし、さらに具体的な要望をプロンプトに反映させて企画書をブラッシュアップすることも可能です。

日業業務の変革とデジタルマーケティングへの応用へ

ChatGPTを活用することで、製薬マーケティングの日常業務を効率化することが可能です。会議のアジェンダ作成にChatGPTを利用することで、会議の進行をスムーズにし、より効果的な意思決定を行うことができます。また、セミナーやイベントの企画作成にもChatGPTは役立つでしょう。

さらに、ChatGPTをペイシェントジャーニーやメールマーケティングなどのデジタルマーケティングへ応用することで、より効率・効果を高めることができます。次回「製薬デジタルマーケティングにChatGPTを応用する方法」では、ChatGPTを活用した製薬デジタルマーケティングの具体的な方法について詳しく解説します。