「ChatGPT」製薬マーケティングにどう使う?| #3 製薬デジタルマーケティングにChatGPTを応用する方法
近年、デジタルマーケティングの世界ではAI技術が進化し、企業のマーケティング戦略に革新的な変化をもたらしています。本記事では、最新のAI技術であるChatGPTの製薬デジタルマーケティングにおける活用方法を具体的に紹介。製薬業界におけるデジタルマーケティングの革命をリードする重要なポイントを探ります。
デジタルマーケティングにChatGPTを活用する
ChatGPTは、OpenAIが開発した最先端の言語モデルであり、コンテンツ作成やカスタマーサポートなど幅広い分野で活躍しています。製薬デジタルマーケティングにおいても、ChatGPTは顧客とのコミュニケーションを強化し、製品情報の提供やターゲット顧客へのアプローチを効果的に行うことができます。
一方で、製薬企業でChatGPTを活用する際には、下記の注意点があります。各ポイントと、所属する会社のルールを理解した上で、適切な利用をしてください。
- 機密情報、個人情報、特許や著作権に関連する情報を入力しない
- ChatGPTの出力が不正確または誤解を招く情報を含むことがある
- ChatGPTは2021年9月までの情報を学習しており、それ以降の情報は含まれていない
ここからは、デジタルマーケティングにおいてよくある4つの場面を想定し、ChatGPTを活用した事例を解説します。なお、今回の記事では、無料で使えるChatGPT(GPT3.5)を使用しています。
- ペイシェントジャーニーを作成する
- メールマーケティングの企画案を作成する
- アンケート、調査項目を作成する
- アンケートデータを分析する
ペイシェントジャーニーを作成する
製薬企業においてペイシェントジャーニーは、患者の治療体験を理解し、そのニーズに対応した製品や情報を提供するために広く用いられています。疾患の診断から治療、管理、そして回復までの一連のプロセスを明確に理解することで、より効果的な製品開発とマーケティング戦略を設計することが可能となります。
ChatGPTを用いてペイシェントジャーニーを作成する際には、多くの利点があります。ChatGPTは、初めて担当するような領域の疾患であってもペイシェントジャーニーの素案を効率的に生成することが可能です。
ChatGPTに入力したプロンプトと、出力した結果は以下の通りです。
「あなたはプロのデジタルマーケターです。
卵巣がんの分子標的薬の浸透させるための施策を検討しています。
実際の卵巣がん患者さんと、診療している医師を想定し、実際の行動と背景にある感情やペインを記載し、卵巣がん特有の検査や、具体的な治療薬、治療方法も含めてペイシェントジャーニーを表形式にまとめてください。
・表の縦軸:医師、患者、メディカルスタッフ
・表の横軸:疾患認知、受診、診断、治療、経過」
この事例では、卵巣がん患者さんの病気や年齢、経緯などの情報が少ないため、表面的な記載にとどまっていますが、具体的な薬剤名で、より具体的な患者像を情報として入力することで、さらに精度の高いペイシェントジャーニーの素案が作成できます。
もちろん、あくまで素案として使用し、さらに詳しい専門家や、顧客へのインタビューを通じてブラッシュアップは必須です。
メールマーケティングの企画案を作成する
デジタルマーケティングに関わる方なら、メールマーケティングを企画する機会が多くあります。テーマが決まっていれば、より具体的にコンテンツフローや企画を詰めていく際にChatGPTを活用できます。
ChatGPTに入力したプロンプトと、出力した結果は以下の通りです。
「あなたはプロのデジタルマーケターです。
日本の医師向けに、肝細胞がんの分子標的薬に関するメールマーケティングを実施します。カスタマージャーニーに沿ってコンテンツ案を5つ作成して下さい」
この出力結果を受けて、さらに追加で以下のプロンプトを入力しました。
「2.検討段階:分子標的薬の開発についての情報提供
この段階では、医師が治療方法について検討を始めている段階です。メールによる情報提供を通じて、分子標的薬の開発に関する情報を提供し、治療方法の選択肢についての知識を深めます。」について、自社の治療薬を使用していない医師を対象として、より具体的なキーメッセージを入れたメールマーケティングコンテンツを作成して下さい。有効性と安全性の情報提供は必須とします。」
このように、対象や、入れ込みたいコンテンツを指定し、具体的なコンテンツの作成を指示すれば、実際のメール文の素案まで作成が可能です。出力形式に、「件名」や「導入、本文、クロージング」などを指定すれば、ほぼ完成に近しい文章が生成されるでしょう。
アンケート、調査項目を作成する
メールマーケティングを実施する際に、コンテンツ作成だけでなく結果を評価するためのアンケートや調査も重要となります。ChatGPTを活用すれば調査内容の案を簡単に生成することが可能です。
ChatGPTに入力したプロンプトと、出力した結果は以下の通りです。
「あなたはプロのマーケターです。
胃がんの分子標的薬について日本のユーザー医師に市場調査を行います。
AMTULのフレームワークに沿って、調査票を作成してください。」
今回の例でも、薬剤名や対象の医師の具体的な情報を入力がなくても、アンケートの活用目的や、具体論点(有効性を感じていない医師の理由を深堀りしたい など)を記載すればそれに合わせて調整したアンケート案を生成することが可能です。回答形式も7段階評価や、フリーコメントなど出力を指定すればさらに実用的なアンケートの生成ができます。
アンケートデータを分析する
ある動画コンテンツを視聴した医師からアンケートでフリーコメントが30件ほど集まったと仮定します。そのテキストデータをChatGPTで分析してみます。
ChatGPTに入力したプロンプトは以下の通りです。
「以下のテキストデータについて、センチメント分析をして集計結果を表に出力して下さい。
#テキストデータ:
医療の進歩が早い分、常に最新情報にアクセスしていく必要があることを再認識しました。 患者さんに適切な治療を提供するためには、免疫チェックポイント阻害剤についての正確な知識が欠かせません。
免疫チェックポイント阻害剤に関する知識を深めることで、患者さんと共に治療を進めていく自信がつきました。
患者さんに対して、治療に対する不安や疑問に丁寧に答えることが大切だと感じました。
免疫チェックポイント阻害剤による治療が有効な疾患について、もっと広く知られるようになれば良いと思います。
免疫チェックポイント阻害剤についての知識が増えたことで、治療方針を説明する際にもっと自信がつきました。
この講義で学んだことを、医師だけでなく看護師や薬剤師など医療チーム全体で共有することが重要だと思いました。
免疫チェックポイント阻害剤による治療においても、患者さんと共に最適な治療法を選ぶことが大切だと感じました。
免疫チェックポイント阻害剤に関する知識がないと、患者さんに適切なアドバイスをすることができないと感じました。
免疫チェックポイント阻害剤による治療が、患者さんの生活の質を向上させることができる場合があることを知って、感動しました。
病気によっては、免疫チェックポイント阻害剤による治療が最適な選択肢であることを知りました。
免疫チェックポイント阻害剤についての知識を増やすことで、治療方針を決定する上での自信がつきました。
免疫チェックポイント阻害剤に関する知識が増えたことで、臨床現場での判断力が向上したと感じます。
この講義で学んだことを、医療チームと共有して臨床現場に取り入れたいと思います。
免疫チェックポイント阻害剤による治療が有効な疾患についてもっと知りたいと思いました。
病気の進行や患者さんの状態に合わせた、最適な治療法の選択が重要だと感じました。
症状改善の効果がある一方で、副作用についても注意が必要だと感じました。
この講義を受けて、今まで以上に患者さんに対する責任感が増しました。
免疫チェックポイント阻害剤に関する知識が増えたことで、治療方針を選択する上での自信がつきました。
患者さんとのコミュニケーションにおいて、免疫チェックポイント阻害剤について説明する機会が増えそうです。
患者さんにも理解しやすく説明するために、この講義で学んだことを整理してまとめたいと思います。
免疫チェックポイント阻害剤に関する知識がないと、治療法を選択する上で不利になることがあると感じました。
治療方針を決める上で、患者さんの希望や意見も重要だと思いました。
今後、免疫チェックポイント阻害剤による治療についてもっと勉強したいと思います。
免疫チェックポイント阻害剤による治療が、他の治療法よりも効果的な場合があることを知って驚きました。
患者さんとの信頼関係を築くためにも、正確な情報を伝えることが大切だと感じました。
免疫チェックポイント阻害剤についての知識が、治療方針を決定する上で必須だと思いました。」
ちなみに、このテキストデータはChatGPTに生成させた仮のデータです。
ChatGPTが出力した結果は以下の通りです。
アンケートのフリーコメントから好意的なコメント、否定的なコメントを定量化するのは意外と工数がかかる分析作業ですが、ChatGPTなら一瞬で集計できます。
また、テキストデータからキーワードを抽出することもできます。ChatGPTに入力したプロンプトは以下の通りです。
「以下のテキストデータについて、キーワード抽出、分析をして集計結果を表に出力して下さい。
#テキストデータ:
●●●(※前述のアンケートのフリーコメントと同じテキストを使用)」
さらに、トピックモデリングという、テキストデータからトピックを抽出し類似のテキストをグループ化する分析手法も実行できます。ChatGPTに入力したプロンプトは以下の通りです。
「以下のテキストデータについて、トピックモデリング分析をして集計結果を表に出力して下さい。
#テキストデータ:
●●●(※前述のアンケートのフリーコメントと同じテキストを使用)」
このようにこれまではデータサイエンティストや、専用の分析ツールで実行していたような高度な分析も、簡単に実行することができます。
ChatGPTで製薬業界のデジタルマーケティングに革命を
本記事で紹介したように、マーケターのさまざまな業務をChatGPTで補うことが可能です。ただし、個人情報や機密情報の問題から、企業によっては利用が制限されていることもあります。業務として、個人で自由に使用できるまでまだ時間が必要かもしれません。
しかしながら、このChatGPTをベースにした新しいサービスは、毎日のようにローンチされています。例えば、日本のヘルステックンベンチャーが最新のおすすめ論文を抽出する機能を試験的に導入したり、患者説明を支援する機能を導入したり、ガイドラインについてChatGPTが回答するサービスなどが検討されています。
多くの方が普段から使用しているPowert PointやWord、Excelにも、このChatGPTベースの技術が導入され、アップデートされることも発表されています。
このChatGPTに代表される大規模言語モデルを活用する大きな流れはさらに加速するでしょう。数年後にはマーケターの業務は様変わりしていることもあるかもしれません。この大きな流れにうまく乗っていくためにも、今からChatGPTを実際に触りながら、いろいろと試してみてください。