「ChatGPT」製薬マーケティングにどう使う?|#1 ChatGPTの注意点と、使いこなすための5つのTips

「ChatGPT」製薬マーケティングにどう使う?|#1 ChatGPTの注意点と、使いこなすための5つのTips

デジタルセラピューティクス(DTx)や治療支援、研究開発などの分野で外部との協業やイノベーションが加速するなど、製薬業界にもデジタル変革の波が押し寄せています。その中でも全世界的に注目されるのが、ChatGPTという技術です。ChatGPTは、製薬業界においても多くの可能性を秘めています。この記事では、ChatGPTが製薬業界にもたらすデジタル革命について、まずは利用する際の注意点やコツを紹介します。

ChatGPTとは

ChatGPTは、OpenAI社が開発した対話に特化した言語モデルで、自然言語処理(NLP)と人工知能(AI)を組み合わせたものです。ユーザーが入力した質問に対して、まるで人間のように自然な対話形式でAIが答えるチャットサービスです。2022年11月に公開されてから、回答精度の高さが話題となり、利用者が急増しています。

ChatGPTは、さまざまなトピックやシナリオに対応できる柔軟性を持っています。例えば、天気やニュース、趣味や仕事などの日常的な話題から、詩や物語、コードや歌詞などの創造的な内容まで、ユーザーの要望に応じて応答します。また、日本語だけでなく、英語や中国語、スペイン語などの多言語にも対応可能です。

また、現在利用できるサービスとしてChatGPT(GPT3.5)とGPT4の2種類があります。
GPT4は有料(20ドル/月:2023年5月時点)で、パラメータ数や学習データの量がChatGPTよりもはるかに多く、より高い性能を発揮するのが特徴です。今回の記事では、無料で使えるChatGPT(GPT3.5)を使用しています。

製薬企業の業務でChatGPTを活用する場合の注意点

製薬企業でChatGPTを活用する際には、以下のような注意点があります。各ポイントと、所属する会社のルールを理解した上で、適切な利用をしてください。

①機密情報、個人情報、特許や著作権に関連する情報を入力しない

ChatGPTはオンライン上で提供されるAIモデルであり、データの保護やセキュリティには限界があります。機密情報や個人情報、特許や著作権に関連する情報の入力は避けてください。これらの情報は機密性が高く、不正な利用や漏洩のリスクがあるため、安全のためにも共有しないようにしましょう。

②出力が不正確または誤解を招く情報を含むことがある

ChatGPTは大規模なデータセットから学習しており、一般的な知識やパターンに基づいて回答を生成します。しかし、情報の正確性や文脈理解には限界があるため、時には不正確な情報や誤解を招く情報を含む可能性があります。出力された回答を慎重に検証し、必要に応じて信頼性の高い情報源を確認することが重要です。

③2021年9月までの情報を学習しており、それ以降の情報は含まれていない

ChatGPTは、2021年9月までのデータを学習しています。そのため、最新の出来事やアップデート、科学的な発見など、2021年9月以降の情報は反映されていません。最新の情報を入手するためには、信頼性の高い情報源や最新の研究を参照することが必要です。

ChatGPTを使いこなす5つのTips

ChatGPTを使いこなすためには、プロンプトと呼ばれる「指示の出し方」を工夫することが重要です。プロンプトによっては、AIが論文の英文校正をしたり、複雑なチャット内容を整理して伝えたりすることもできます。

プロンプトの作り方のポイントは、以下の5つです。

  1. 役割を与える
  2. 情報を与える
  3. 目的に沿ったルールや文脈を指定する
  4. 出力の形式を指定する
  5. 同じ質問のまま、何度か繰り返してみる


役割を与える

役割を設定すると、こちらの意図した方向性の回答が得られたり、回答の精度が向上する可能性があります。使用する目的によって役割を設定する必要がありますが、例えば以下の通りです。

  • マーケティング関連の指示をする時⇒「あなたはプロのマーケターです」
  • 営業関連の指示をする時⇒「あなたはトップ営業マンです」
  • 文章を作成する時⇒「あなたはプロ編集者です」
  • 専門的な回答が欲しい時⇒「あなたは〇〇の専門家です」

ユニークな役割として、「アリストテレス」などの偉人や、「ドラえもん」などのキャラクターの役割設定も可能です。興味がある方は試してみてください。

情報を与える

出力させたい内容に関する追加情報をChatGPTに与えることで、その情報をくみ取った上で、指示を実行します。追加情報を与えると、こちらの意図した指示を実行されやすくなります。例えば、ChatGPTにメールの文章を出力させたいなら、過去自分が作成したメール文の情報を与える、文献を簡単に要約してほしいなら、文献の情報を与える、などです。

また、指示や、出力形式の指定と混在しないように:や<>などの記号を使って入力する情報の範囲を明確にすることも大切です。

追加情報を入力する方法して、単純に入れる方法以外にも、例を複数提示する方法があります。ただし、入力できる情報量に制限があり、数千字を超える文章をコピー&ペーストしても指示は実行されませんので注意してください。

・単純に文章を入力する場合
「以下の入力分を元にさらに詳しく文章を作成してください。
#入力分:
<●●●●●●>」

・例として情報を与える場合
「以下の例を参照して、○○○○を考えてください。
#例:
・●●
・■■
・◆◆」

目的に沿った文脈やルールを指定する

ChatGPTは、あなたの目的や背景知識を理解していません。そのため、プロンプトには、必要なルールや制約条件を明示的に書くことが重要です。

例えば、「論文の英文校正をしてください」というように、目的をはっきりさせたうえで、「論文の分野は医学です。専門用語はそのままにしてください」というように、文脈やルールを指定しましょう。

また、ニュアンスや、わかりやすさなどを具体的にすればするほど、意図した回答が返ってくる可能性が高くなります。自身があまり知らない分野についてわかりやすく解説してほしい場合は、わかりやすくのような曖昧なルールではなく、「小学生でもわかるように」や、「具体例を交えて」、「根拠を加えて」、「段階的に」などの具体的なルールを指定すると良いでしょう。

出力の形式を指定する

出力するフォーマットや型、テイストを具体的にすればするほど意図に沿った回答が生成されます。テイストについては「ビジネス文章で」「フォーマルに」「絵文字も入れて一般人のようなスタイルで」「関西弁で」など、さまざまなパターンを指定することが可能です。さらに、表現形式については「段落で改行をいれて」「表形式にして」「箇条書きで」「マークダウン形式で」「ブログ形式で」「対話形式で」などがあります。

また、文章の長さも「1000字で」「2000字で」のように指定することができ、日本語以外にも英語で出力してほしいなら「Lang:en」や「英語で出力して」などを指定すれば対応可能です。

具体的にフォーマットが決まっていれば、その指定する方法が最も意図に近い結果を得られると思います。
特にフォーマットが決まっておらず、構造的に整理されつつ、ある程度詳細に回答が欲しい時は、「●●字程度で、マークダウン形式で出力してください」と記載するのがおすすめです。
例えば、マーケティング戦略を立案するプロンプトとして下記を入力し、ChatGPTが出力した結果は以下の通りです。

「あなたはプロのマーケターです。戦略を立案するうえで重要なポイントを3000字程度でマークダウン形式で出力してください」


<結果>

マーケティング戦略の立案に必要なポイントマーケティング戦略の立案に必要なポイント

同じ質問のまま、何度か繰り返してみる

ChatGPTは、全く同じ質問でも、繰り返し同じ質問をすると高い確率で全く異なる回答が返ってきます。そのため、一つ質問をしたら、念のため何度か同じ質問で回答を生成し比較しながら見てみると、求めていた回答に近いものが含まれていることがあるでしょう。

最初に質問を入力し、回答が終わると下図のように「Regenerate response」というボタンが表示され、クリックすると同じ質問に対して再度回答が生成されます。
同じ質問に対して、3回Regenerate responseを実施すると、4種類のやや異なった回答を比較しながら見ることが可能です。

Regenerate response

実際の業務に活用する際には、自身の頭も整理されていなかったり、要件が具体的に決まっているようで決まっていない場合もあります。まずはChatGPTに質問してみて、回答を見ながら上記で説明したようにプロンプトを工夫してさらに入力していくと、目的に沿った利用が可能になるでしょう。

ChatGPT活用で効果的な製薬マーケティングを目指して

この記事では、ChatGPTの活用方法の基本、注意点、そして効果的に使いこなすための5つのTipsを解説しました。ChatGPTはすでにさまざまな業界で取り入れられており、製薬業界においても業務効率化や新しいアイデアの創出に寄与する可能性があります。ただし、機密情報や個人情報への配慮や、所属する企業のルールには従うことが必要です。この記事で得た知識を活用して、ChatGPTを効果的に取り入れていただければと思います。

次回の「日常業務におけるChatGPTの活用アイデア」では、製薬マーケティングの日常業務をテーマに、会議のアジェンダ作成やセミナー・イベント企画などの具体的な事例を紹介していきます。