【DL資料あり】8/10は健康ハートの日 - 製薬企業の循環器領域の疾患啓発サイトを調査【2025年7月版】

2023年の調査から2年が経ち、循環器領域の疾患啓発サイトにはどのような変化があるのでしょうか。今回は8/10は健康ハートの日にちなみ、心疾患・脳卒中・閉塞性動脈硬化症に加え、高血圧症も加えた循環器領域サイトを調査しました。本記事では、製薬企業20社を対象として、各社が運営する循環器領域サイトの特徴をご紹介します。
循環器領域の疾患啓発サイトを運営している製薬企業一覧
令和5年(2023年)の人口動態統計によると、悪性新生物(がん)に次いで、心疾患(高血圧性を除く)が約23万人で第2位、脳血管疾患が約10万人で第4位の死因となっています1)。
またEPOCH‑JAPAN研究(約7万人を10年間追跡)では、高血圧の予防・管理により、日本人の脳心血管疾患の死亡を約41%抑制できる可能性が示されています2)。高齢化が進む中では、血圧管理・生活習慣改善・早期発見・治療の啓発がますます重要な状況です。
今回の調査では、前回の調査対象であった心疾患・脳卒中・閉塞性動脈硬化症に加え、高血圧症も対象とし、製薬企業20社※が運営する循環器領域の疾患啓発サイトを調査しました。これらの疾患の啓発サイトを運営している製薬企業は、20社中13社、20サイトでした。
※調査対象企業は、2023年4月~2024年3月の販売会社ベース企業売上ランキング(出典:IQVIA)より抜粋した20社

前回の調査(2023年8月)と同じ疾患啓発サイトも多々ありますが、運営する企業の変更や、サイト運営を取りやめた企業もあります。構成に変更が見られないサイトでも、ページ作成年月日が更新されており、情報の見直しが適切に行われていることが確認されました。
また、循環器領域の疾患啓発サイトは、これまでの領域に比べ、協会の監修や他社との共同運営を行うサイトが多い傾向にありました。協会や学会、また医師の監修を付けることで、サイトの信頼性を高めることができそうです。
本記事では、特徴的なコンテンツを提供する3サイトを取り上げ紹介します。その他のサイトについては、ダウンロード資料を用意していますので、ページ下部よりダウンロードください。
日本ベーリンガーインゲルハイム 心不全のいろは
トップページでは、各コンテンツの項目が一覧で掲載。全体的に図解やイラストを多用することで視覚的に理解しやすい構成となっています。医療用語にはポップアップ機能による解説が付いており、イラストやアニメーションも活用されているため、専門的な内容も直感的に把握できます。
前回調査でもこちらのサイトを取り上げましたが、2年ぶりの本調査では、レシピコンテンツが新たに追加されました。「健康レシピ」では、朝・昼・夕の3食に対応した献立を、主食・主菜・汁物・副菜2種から自由に選択できる機能を搭載。選択したメニューに応じて、エネルギー、食塩相当量、カリウム、たんぱく質、炭水化物といった栄養成分が自動で計算され、健康管理に役立ちます。
他にも、支援制度の詳細解説や患者の体験動画、症状に応じたセルフチェックシート、関連情報へのリンクがあるQ&Aなどで疾患理解を深められる工夫がなされています。サイト全体の紹介動画もあり、初めての利用者にもわかりやすい構成です。なお、本サイトの監修は一般社団法人 日本循環器協会が行っています。
心不全のいろは
https://heart-failure.jp/
サイトディスクリプション
心不全のいろはサイトでは、心不全について正しく理解し、患者さんとご家族で協力しながらより安定した生活ができるように、心不全に関する情報(心不全の原因・症状・種類など)を紹介しています。日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
キーワード
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コンテンツ一覧
- 心不全について
心臓の働きや心不全の定義、症状、進行の仕方、重症度分類など、心不全の基本情報を解説。
- 心不全の診断
心不全の診断方法を紹介。状況から適切なセルフチェックシートを案内。
- 心不全の治療
急性期・慢性期それぞれの治療法や、薬物治療と非薬物治療を紹介。
- 治療中の方へ
心不全の悪化を防ぐためのポイントや、生活支援制度、日常生活のアドバイス情報を掲載。患者インタビュー動画もあり。
- 心不全Q&A
病気・検査・治療・生活に関するよくある質問をQ&A形式で紹介。
- 知っておきたい健康レシピ
減塩や栄養バランスに配慮したレシピを紹介。献立作成の便利ツールもあり。
- 心不全のいろは ご紹介チラシ・動画
サイトを紹介するチラシや動画を用意。
- 心不全患者さんとご家族のためのお役立ち情報
減塩食品やレシピ、栄養バランスの良い食事を提供する店舗情報など、日常生活に役立つ情報のリンクボタンを配置。
第一三共 教えて!心房細動.com
トップページでは、疾患の理解から予防・治療・検査までを段階的に整理した各コンテンツのタブを配置。各コンテンツのトップページでは、テーマの概要に加え、患者の声や医師からのメッセージが冒頭に掲載されており、内容に親しみやすくなる工夫が施されています。専門用語の使用は控え、やさしい言葉でわかりやすく解説されています。
「心房細動による脳梗塞や後遺症のリスクとは?」内にある冊子『脳卒中のお話』は、パソコン用に加えてスマートフォン閲覧用も用意。スマートフォンではスクロールしながら、スムーズに閲覧できます。脳卒中の早期発見を促す“FAST”チェックはイラスト付きで紹介されており、視覚的にも理解しやすい構成です。「心房細動の検査」では、脈の測り方を動画で丁寧に解説しており、実践的な情報が得られるコンテンツです。
「Q&A」ページでは、各回答に関連するコンテンツへの遷移ボタンを設置。必要な情報にスムーズにアクセスできる工夫がなされています。なお、本サイトの監修は公益社団法人 日本脳卒中協会となっています。
教えて!心房細動.com
https://www.oshiete-shinbousaidou.com/
サイトディスクリプション
製薬会社である第一三共が提供する、心房細動についての基本情報や、心房細動による不整脈や脳梗塞などのリスク、予防などについての情報サイトです。
キーワード
心房細動, 不整脈, 脳梗塞, 情報
コンテンツ一覧
- 心房細動とは?
心房細動の原因や仕組み、なりやすい人の特徴、血栓との関係について解説。
- 心房細動による脳梗塞や後遺症のリスクとは?
心房細動が原因の脳梗塞の特徴や、脳梗塞の早期発見・対処法、心臓への影響について紹介。脳卒中予防の冊子もあり。
- 心房細動の治療とは?
血栓予防や心房細動の軽減を目的とした治療法を解説。
- 心房細動をみつけるには?
心房細動の症状や検査方法、他の不整脈との見分け方を紹介。脈の測り方解説動画あり。
- Q&A
疾患、リスク、治療に関するよくある質問をQ&A形式で掲載。
ノバルティス ファーマ 血圧パートナー
コンテンツ数が豊富で、基礎から生活改善まで幅広い知識を得ることができるサイトです。トップページには、主要コンテンツやおすすめ情報、解説動画などがバランスよく配置されており、利用者の関心に応じてスムーズにアクセスできる構成です。
まじめなテーマに加え、「ギャンブルは、勝っても負けても血圧が上がる」といったユニークな豆知識コンテンツも用意されており、楽しみながら学べる工夫がなされています。また、体重・身長・Na値などを入力することで、推定一日食塩摂取量を自動計算できる便利なツールも搭載しています。
レシピコンテンツでは、「今日のおすすめレシピ」をルーレットで決定する機能があり、日々の献立選びをサポート。シーン別、主食・主菜、低カロリーなど、さまざまな条件から検索できるほか、三ツ星シェフによる特別レシピも掲載しています。
エクササイズコンテンツでは、スロット形式でその日の運動メニューを決定する仕組みも。初級・中級・上級のレベル別に加え、日常生活の中で取り入れやすい“ながら運動”も紹介しています。なお、本サイトの監修は特定非営利活動法人 日本高血圧協会となっています。
血圧パートナー
https://www.ketsuatsu-support.com/
サイトディスクリプション
血圧パートナーは、高血圧に悩むあなたのそばで、血圧正常値への道のりをサポートするためのサイトです。高血圧の正しい知識や、生活習慣改善のための食事や運動の情報をお届けします。ノバルティスファーマ株式会社。
キーワード
血圧, 高血圧, 正常値, 食事, 減塩, 運動, 生活習慣改善
コンテンツ一覧
- 高血圧を知ろう
高血圧の基礎知識や豆知識、医師による解説などを掲載。食塩摂取量の計算ツールもあり。
- おいしく減塩しよう
減塩レシピや三ツ星シェフレシピを紹介。ルーレットでレシピを決定するツールあり。
- エクササイズしよう
ながら運動や初級~上級に分けた運動メニューを紹介。スロットで運動メニューを決定するツールあり。
- 血圧管理に役立つ資材一覧
血圧手帳や減塩啓発チラシ、運動・減塩レシピなどダウンロード可能資料を掲載。
ユニークなコンテンツの導入&信頼を高める工夫を
情報を閲覧するのみの一方向なサイトでは、情報が溢れるデジタル社会では流し読みされがちです。セルフチェックやルーレット、献立決めなど参加型のコンテンツを含むことで、ユーザーのエンゲージメントを高め、よりじっくりとサイトを活用してもらえる可能性が高まるでしょう。
また、疾患に関する情報を求めるユーザーにとって、信頼できるサイトかどうかはとても重要な判断基準となります。製薬企業が運営していることは一定の信頼性を担保しますが、さらに協会や医師の監修を付けることで、医療情報としての権威性と信頼度を向上させることができます。
双方向性と信頼性を兼ね備えたサイト設計で、患者にとってより満足度の高い医療情報の提供を実現しましょう。
<出典>※URL最終閲覧日2025.7.22
1) 厚生労働省,令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei23/dl/15_all.pdf?utm_source=chatgpt.com
2) 東邦大学プレスリリース,令和7年2月20日, 高血圧予防・管理で脳心血管疾患死亡を4割抑制できると試算~ 日本人7万人の10年追跡データで明らかに ~
https://www.toho-u.ac.jp/press/2024_index/20250220-1452.html