製薬マーケターが知っておきたい、 コンサルティングプロジェクトの進め方10ステップと注意点

製薬マーケターが知っておきたい、 コンサルティングプロジェクトの進め方10ステップと注意点

製薬企業の本社に勤務していると、外部のコンサルティングとプロジェクトを進める機会があります。今回は私自身の経験を通じて学んだコンサルティングプロジェクトの進め方10ステップと意識すべきポイントをご紹介します。これから外部のコンサルタントと初めて仕事をする方、期待に見合った成果物がなかなか得られなかったという方は、ぜひご覧ください。

コンサルティングファームにプロジェクトを依頼するメリットとデメリット

筆者であるこういちは、今まで総合コンサルティングファームBIG4であるPwC、Deloitte、EY、 KPMGをはじめ、BCG(ボストンコンサルティンググループ)やマッキンゼーなどの有名コンサルティング企業とも一緒に仕事をした経験を有しています。プロジェクトリードをしたものもあれば、いち参加者として参画したプロジェクトもあります。

そうした経験から感じた、私が考えるコンサルティングファームにプロジェクトを依頼するメリットとデメリットは、以下の通りです。

メリット

  • MECEに考え、論理的に議論を導いてくれる
  • 社外リソースの有効活用ができる
  • 成果物をスライドにきれいにまとめてくれる
  • 他業界や他企業へのコンサルティング経験を活かして新たなアイデアや提案を提供してくれる


プロジェクトをタイムライン通りに進め、物事を整理しながら前進させて行く能力に長けているのがコンサルタントのみなさんです。その過程でさまざまな知見や経験をインプットし、成果をブラッシュアップすることが彼らの仕事になります。戦略や提案の策定までを担うことが一般的ですが、最近は実行の部分まで責任を担うケースも出てきています。

例えば、デロイトトーマツでは、武田薬品工業株式会社、鳥居薬品株式会社、CSLベーリング株式会社と協業し、一般社団法人遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアム(略称:DISCOVERY)のパートナー(事務局)として設立から運営、施策提案、産官学連携を通じた各施策の構想・展開などを支援しています。

<参考>デロイトトーマツ、希少疾患である遺伝性血管性浮腫コンソーシアムの設立・運営支援(2021年5月)
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/about-deloitte/articles/news-releases/nr20210525.htm 

デメリット

  • 費用が高額
  • 事業会社での実務経験に乏しい方も一定数おり、担当者によって当たり外れがある
  • 自社の社員が育たない


コンサルティングファームへの依頼は高額です。全社のITシステムの刷新や、物流システムの改革プロジェクトなど、規模が大きい場合には、動く金額規模も大きくなります。

またコンサルタントの質に差があることはデメリットと言えるでしょう。事業会社での業務経験がない方も一定数おり、組んでみないと、その力量が分からない部分もたくさんあります。そのあたりは過去に経験したプロジェクトや、ピッチコンテストの時になるべく多くの情報を引き出して、依頼するコンサルティングファームを比較検討する必要があります。

また戦略立案から実行まですべてコンサルティングファームに依頼するスタンスですと、自社の社員がコンサルタントに依存し、肝心な自社の社員の戦略思考や論理的思考力が育ちにくくなるというデメリットもあります。


以上、メリットやデメリットを列挙しました。これらの観点を考慮しながら、プロジェクトをコンサルティングファームに依頼するか否かを判断します。

コンサルティングプロジェクトの10ステップ

ここからは、実際にコンサルティングファームにプロジェクトを依頼すると決定した場合のプロセスについて10のステップでまとめました。

それぞれについて解説していきます。

①RFP(Researach For Proposal:提案書)をチーム内で合意した上で、プロジェクトを依頼する。

プロジェクトを依頼しようとする時には必ず、その会社もしくは組織の課題が存在します。その課題を自社で解決することが難しい場合、またはより良いアイデアを創出しようとする場合にコンサルティングファームの活用が検討されます。

その際に重要になるものがRFP(Researach For Proposal:提案書)です。自分たちの現状と課題をまとめ、期待する成果や希望するプロジェクトの期間や予算感を記入します。このRFPをチーム内で合意した上で、プロジェクトを依頼することが大切です。なぜなら、自分達の目指すべきゴールや得たいものの擦り合わせがRFPを作成する過程で自然と行われるためです。

②見積もりは3社以上、コンペは必ず実施する。契約条件および成果物に関する擦り合わせも入念に。

かかる金額が大きいだけに、見積もりは3社以上に依頼し、コンペは必ず行うようにします。またコンペを行うことで、コンサルタントのこれまでの経験値や能力を推し量ることが可能です。必要であれば1度だけでなく、2度コンペをするようなケースも出てくるかもしれません。

1社に決める前に、契約条件や成果物に関する擦り合わせも入念に行うことが大切です。予算感や期待する成果物を明確に伝え、提案を聞いて、比較した上で1社に絞り込みを行います。選定の際には、選定基準をあらかじめ策定しておき、複数人で点数付けを行うなど、公平性が担保できる形でコンペを実施することで、合意形成が容易になります。

③プロジェクトチャーターを作成し、メンバーとタイムラインを設計する。

自社で関わるメンバー、コンサルティングファームで関わるメンバーを列挙し、プロジェクトチャーターを作成します。また関係する社内・社外のステークホルダーも列挙し、プロジェクトを進める上で大切な人物を特定します。

プロジェクトチャーターには、目的、期待する成果物、参画メンバー、スポンサー、タイムラインなどをまとめ、一目でそのプロジェクトの概要が分かるようにします。

④成果物の質が高くなるように社内のコンセンサスの調整とリソースコントロールを意識する。

コンサルタントのみなさんはプロジェクトマネジメントに長けています。また資料を綺麗にまとめたり、議事録を論理的に分かりやすくまとめる能力にも長けています。そのため、会議設定、資料・議事録作成などに関してはコンサルタントに任せ、依頼者である製薬企業は成果物の質が高まるようにコンサルタントがまとめた資料に誤りがないか、本質的な部分で改善する部分がないかといった部分に時間と頭を使うようにします。

⑤コンサルタントとCo-Lead体制を構築し、チーム会議とは別にリーダー同士の打ち合わせ時間を持つようにする。

プロジェクトがスタートすると、数多くの会議が発生します。社員や外部顧客に対するインタビューが実施されることもあります。

すべての会議に出席することは叶いません。その場合、会議のサマリーや得られた情報をまとめてもらい、それに基づいてプロジェクトチームでの議論が行われます。

うまく進むプロジェクトの特徴の1つに、Co-Lead体制が機能しているということが挙げられます。依頼する製薬企業側のリーダーと依頼を受けたコンサルティングファームのリーダー同士がよくコミュニケーションを取っていると、うまく合意形成が図られる印象を持っています。依頼する側もコンサルタントに歩みより、一緒に成果物を良いものにしていこうとする姿勢が大切です。

⑥社内ステークホルダーへの根回しを怠らない。マネジメントメンバーを必ずスポンサーに付け、定期的にレビューの時間をもらう。

事前の根回しは欠かさずに行ってください。特に意思決定を担う重要人物(例:マネジメントメンバー)には、定期的にレビューの時間をもらい、正式なレビュー会議の前に意見をもらうようにしてください。このような事前の根回しを行うことで、重要人物の期待値やコメントを成果物に反映することに繋がります。

また、反対意見が出そうと予想される方や、意思決定に重要な役割を果たすステークホルダーに対しては、できれば事前に相談の時間を持つようにしてください。このような根回しが、正式なレビュー会議において、事前に味方を作っておくことにも繋がります。

⑦マネジメントレビューのExective Summaryに情報を詰め込み過ぎない。

多くの時間をプロジェクトに費やすと、どうしても盛り込みたい情報が増え、スライドの文字情報が多くなりがちです。配布資料としては良いかもしれませんが、プレゼンテーションの場では文字ばかりで把握しにくいExcective Suammryとなってしまうリスクがあります。

配布資料とプレゼンテーション資料は仕様を分けるなどの工夫を行い、本番のプレゼンテーション資料はシンプルで、結論が分かりやすい構成になるよう心掛けてください。

⑧マネジメントレビューのプレゼンテーションは必ず練習する。コンサルティングチームとも事前に打ち合わせを実施。

プロジェクトの終盤には、マネジメントメンバーに対してプレゼンテーションを実施する機会が発生します。この時に重要なことは、このプロジェクトの重要性と、成果がもたらす効果を、自信を持って役員やマネジメントメンバーにプレゼンテーションすることです。そのためプレゼンテーションの練習は必ず行ってください。

またプロジェクトによっては、プロジェクトの詳細や成果物の発表をコンサルタントが行うケースもあります。コンサルタントのプレゼンテーションも、成果物の質を高める重要な要素です。大事な会議前は事前の打ち合わせを実施し、一緒にプレゼンテーションを練習するなどの工夫が考えられます。

⑨長期のプロジェクトの場合はチームで振り返りを実施する。

無事に役員・マネジメントレビューを終えた後は、プロジェクトチームで振り返りを実施します。短いものは3ヶ月、長いものでは1年近く、プロジェクトが走るものもあります。それだけの時間を費やしたプロジェクトからは、大きな学びが依頼者である製薬企業側、コンサルタント側双方から出てくるものです。したがって、プロジェクト終了後は振り返りの時間を設定し、プロジェクトの良かった点や次回以降で改善ができるポイントについて整理しましょう。

⑩プロジェクトの成果や学びを、他チームにも共有する。

自身の学びを深めるために、プロジェクトを進める上で自分が工夫した点や改善点をご自身でも整理しておくと、そのプロジェクトから得られた学びが言語化されます。

プロジェクトの成果や、自分が行った工夫、チームで行った振り返りでの学びは、自身の属する組織や、他チームにも共有する機会を設けると良いと思います。自身の成果を周りにも知ってもらう機会になりますし、他の方の学びにも繋がりますので、ぜひプロジェクトの最後の締めくくりとして実施をご検討ください。

コンサルティングプロジェクトを進める上での注意点

コンサルティングプロジェクトを進める上での注意点を2点にまとめました。より良い成果を生むため、また良いプロジェクトチームワークを形成するための心得として、ご覧ください。

①コンサルタント側に任せっぱなしはNG

コンサルタントのみなさんは優秀です。論理的でスライドをきれいにまとめる能力にも優れています。プロジェクトマネジメントにも優れます。なのでついつい多くの業務を任せてしまいがちです。中には、依頼者が丸投げにするようなケースも見たことがあります。

しかし、こういったプロジェクトは大抵うまく成果物がまとまりません。なぜなら、社内の意向や意図がコンサルタント側にうまく伝わらず、少し筋違いな提案や成果物ができてしまったり、コンサルタントのサポート期間が終了すると、途端にプロジェクトが動かなくなったり、といった状況が発生するからです。

そのため、コンサルタントへの任せっぱなしはNGです。プロジェクトをリードする方は「コンサルタントに任せておけば大丈夫」という心持ちではなく、「コンサルタントの方々に協力してもらって、自分がプロジェクトの成功を導く」という強い意志が必要です。

②コンサルタントの方を駒扱いしない

高い金額を払っている依頼者側であったとしても、横柄な態度やコンサルタントの方々を駒扱いするような指示の出し方にはくれぐれもご注意ください。そのような態度を続けていると、コンサルタントのモチベーションにも影響し、結果としてプロジェクトの成否にも影響する可能性が出てきます。ステークホルダーマネジメントの意識を高く保ち、協業の姿勢を示すことが重要です。コンサルタントの方々は、プロジェクトを成功に導く”仲間”です。その意識を忘れないようにしてください。

コンサルタントのリソースを活用し、事業をドライブする

コンサルティングプロジェクトを成功に導くステップや注意点について解説しました。これまで、コンサルティングプロジェクトをリードされた経験がある方であれば、1つか2つは共感いただける部分があったのではないかと思います。

コンサルティングファームの経験と知恵、リソースを適切に活用することによって、事業をドライブすることが可能です。今回は、リソースを適切に活用するためのステップや考え方について、解説させていただきました。

本記事の内容が皆さまの日々の業務にお役に立ったのであれば嬉しく思います。以下、運営しているブログの中では、製薬企業で勤務する上で役に立つ情報やマインドセットについても発信しています。良かったらご覧ください。

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