バイエル薬品株式会社インタビュー【後編】|データの連携や医師向けアクションのサポートによりMRと医師のタッチポイントを創出

バイエル薬品株式会社インタビュー【後編】|データの連携や医師向けアクションのサポートによりMRと医師のタッチポイントを創出

インタビュー前編 では、バイエル薬品株式会社が医療従事者向けWebサイト「バイエルファーマナビ」の全面リニューアルと今後のMA化を推進していることをおうかがいしました。後編となる今回は、MRを中心とする医師へのPush型のデジタルプロモーションの取り組みについて、バイエル薬品(株)の石倉浩司氏と小田切 誠氏にお聞きしました。

タッチポイントの創出のためクォーターごとのキャンペーンを展開

―MRによるPush型のデジタルプロモーションについてお聞かせください

<バイエル薬品(株) 石倉浩司氏(以下、石倉氏)> 当社では、医療従事者の皆さまや患者さんのカスタマージャーニーを意識し、医療従事者とのタッチポイントの創出を行ってきました。それは、むやみにさまざまなデジタルツールを導入して、タッチポイントを増やすという考える前に、カスタマージャーニーにおける課題を捉え、その課題を解決するために伝えるべき情報や使用するチャネルを、製品ごとにキャンペーンのように設計することから始めています。それをクォーターごとに情報提供活動の中で展開し、その結果をデータサイエンティストの専門部署で解析しています。さらにその結果を次のキャンペーンに活かすPDCAサイクルを実践しています。

キャンペーンでは、成果を図る各種KPIをダッシュボードとして見える化し、マーケティング部門、営業部門が常に自分たちの現在地を把握できるようにしています。また、外部の医療情報プラットフォームやバイエルファーマナビでのオウンドメディアとの連携を現在行っています。今後は医療従事者の皆さまにさらに情報提供すべく、MRのアクションをサポートする、MA(マーケティングオートメーション)の実装も視野に入れ、改善を進めています。

マーケティングチームがドクターごとにジャーニーを設計

―キャンペーンとはどのようなものでしょうか?

<バイエル薬品(株) 小田切 誠氏(以下、小田切氏)> 当社のキャンペーンでは、まずマーケティングチームが、製品ごとにジャーニーを設計します。このジャーニーとは、どのドクターにどういうコンテンツを紹介するか、いつ紹介するかといったプロモーションの全体像を詳細に設計したものです。一方で、MRに対しては、このジャーニーに沿った活動を実施するための指標をKPIとして設定し、見える化したダッシュボードを提供しています。こうした取り組みを実施することで、ドクターに提供する情報の量や質を高め、よりインパクトのある情報提供を目指しています。

キャンペーンを導入した一番の効果は、MRの活動が視覚化され、クォーターごとの注力アクションが明確になったことです。会社全体として足並みが揃った活動ができるようになりましたし、活動の抜け漏れの防止にもつながりました。ドクターに提供する情報の精度も高まり、また最適なタイミングで提供することで、カバー率の向上も見られました。

このようにキャンペーンで具体的なジャーニーが設計できるようになったのは、 前編 でも石倉から説明させていただきましたが、当社のMRが報告してきた情報、いわゆるローデータを大量に収集し、それを社内でビッグデータ解析を行う、データサイエンティストを擁する専門部署があることが大きいと思います。彼らが解析した結果から仮説を構築し、ジャーニーの中に組み込んで検証するPDCAサイクルを回すことによって、より精度の高いジャーニーが設計できるようになりました。KPIの設計も厳密に行うことができるようになり、それをフォローアップする体制も整備してきました。今後は、MAのように、MRの活動に気づきを与えられる機能を持たせていきたいと思います。

ドクターの行動を把握し効果的なメールの情報提供を実現

―キャンペーンの中でのデジタルプロモーションについてお聞かせください

<小田切氏> 当社のキャンペーンの中でのデジタルプロモーションは、メールによる情報提供がメインになります。このメールでの情報提供の場合、ドクターからの許諾率が問題になるケースもあるかと思いますが、当社の場合、6割近くのドクターからメールでの情報提供の許諾を得ております。

ドクターへのメールによる情報提供は、会社アドレスでのメルマガや告知的なメールだけではなく、担当MRのアドレスでコミュニケーションを図るメールと使い分けることで、双方向性も可能にした効果的なコミュニケーションを実現しています。

<石倉氏> メールによる情報提供は、各ドクターがどのタイミングで開封したか把握することも重要です。MRは、開封したかどうかのデータを見て、「この時間、このタイミングなら見てくれる」と判断して、メールの送信時間やタイミングを細かく調整し、開封率を高めるアクションもしています。将来的には、こうしたデータを解析して、ドクターごとに送付するタイミングをサジェスチョンするMA的な機能も付加していきたいと考えています。
また、製薬業界は規制が厳しい世界なので、メールの中で際立ったコンテンツを送るのは難しいのが現状です。そのような現状下では、メールによるプロモーションとディテールによるプロモーションの役割を分けるべきだと考えています。メールでのプロモーションは、ドクターの注意を引き、最終的なディテールに誘導するためのタッチポイントを創出するのが目的です。また、メールコンテンツは、何度も送ることによってドクターに見ていただけると考えています。その点では、MRに繰り返し送付することの必要性も伝えています。

デジタルプロモーションで重要なのは、営業所間のコミュニケーション

―デジタルプロモーションにおける課題と対策についてお聞かせください

<小田切氏> デジタルプロモーションにおける課題の1つは、本社と営業部の間に生まれるギャップだと思っています。私もMRの経験があるのでよく理解できることなのですが、MRが対面でドクターと話した場合、良い時も悪い時もリアクションを直に感じることができます。一方、デジタルでの情報提供、例えばオンライン面会では、ドクターの温度感というのは把握しにくいものです。これがメールでの情報提供になると、ドクターがそのメール自体を喜んでいるのか、それとも嫌がっているのか、ほぼわかりません。このようにリアルと違って、直に反応を把握しにくいデジタルプロモーションは、どのように活用する価値に共感してもらえるかが極めて重要になります。

そこで、当社では、本社と営業部の間で密なコミュニケーションを行う機会を設けるようにしました。各営業所には、デジタルプロモーターを選出していただき、彼らを通じて各デジタルプロモーションの課題感や使い勝手を本社にフィードバックしてもらうようにしました。そのフィードバックを関連部署で共有して、できるだけ営業所が使いやすいように、その都度仕様を変更しています。また、デジタルの施策は、未来への投資という側面がありますので、コミュニケーションを取る際にも、目先の使いにくさなどよりも将来的なメリットを前面に出して、前向きに取り組んでいただけるするように意識しています。

デジタルプロモーターミーティングは毎月し、その中で、各営業所の成功事例の交換も随時行っています。その結果、本社からの一方通行ではなく「隣で一緒に働いているMRが、こういう活動をして、このデジタルツールを使って成功した。それなら自分も活用してみようかな」という前向きな雰囲気を醸成できるようになりました。

ターゲットが望む体験を目指し、課題に向き合うデジタルプロモーション

バイエル薬品(株)が行っているデジタルプロモーションは、ドクターをはじめとした医療従事者の皆さま、患者さんの課題を解決することを目指したマーケティング活動が基本となっています。それは、やみくもに全ての活動をデジタルに置き換えるのではなく、デジタルとリアルのメリットと役割を明確にしたものです。特筆したいのは、ターゲットの行動を解析するデータサイエンティストの専門部署があること。彼らがマーケティング部に提供する情報資産は、的確な仮説を生み出し、精度の高いPDCAサイクルを実現することに寄与します。

この結果、Pull型のバイエルファーマナビでも、Push型のキャンペーン、メールプロモーションを中心としたMRによる情報提供活動でも、従来よりも一歩進んだ戦略が描けています。デジタルプロモーションは、新たなツールやシステムの導入だけでは成功しません。顧客の課題解決を目指し、課題にきちんと向き合うことだといえるでしょう。

▼前編はこちら

バイエル薬品株式会社インタビュー【前編】|デジタルプロモーションの考え方とその中におけるオウンドメディアの役割、今後の展望
2022.11.09
マーケティング戦略
バイエル薬品株式会社インタビュー【前編】|デジタルプロモーションの考え方とその中におけるオウンドメディアの役割、今後の展望