話題の治療薬から大型ディールまで。2025年を彩った製薬業界のハイライト|サイトライン・ジャパン・アワード2025

話題の治療薬から大型ディールまで。2025年を彩った製薬業界のハイライト|サイトライン・ジャパン・アワード2025

日本の製薬・バイオテクノロジー業界における優れた業績を表彰する「サイトライン・ジャパン・アワード2025(Citeline Japan Awards 2025)」が、2025年10月21日にパレスホテル東京で開催されました。
 
業界を牽引する企業・関係者が集い、「今年の新薬」「今年の製薬企業」「今年のライセンス取引」などの革新的な成果が表彰されました。本記事では、各カテゴリーの受賞企業とその功績を紹介します。
 
※本アワードは英語で発表されており、日本語訳はMedinew編集部による非公式の編注です。

サイトライン・ジャパン・アワードとは

サイトライン・ジャパン・アワードは、日本の製薬・バイオ医薬品業界における卓越した業績を表彰する賞です。英国で20年以上続く「Scrip Awards」の日本市場版であり、今年で第4回を迎えました。
 
7つの表彰カテゴリーを設け、自薦・他薦を問わず、2025年7月中旬までエントリーを受け付けました。その後、専門家チームによる厳正な審査が行われ、授賞式当日にその結果が発表されました。
 

サイトライン・ジャパン・アワード2025受賞者

7カテゴリーで各企業・プロジェクトが受賞

最優秀新薬(Best New Drug)

2024年7月1日~2025年6月30日に日本で承認され、低分子、生物学的製剤、細胞/遺伝子治療、デジタル治療、またはワクチン製品の中から、当該分野における最も優れた治療の進歩を示した製品を表彰。
 
受賞:ゼップバウンド(チルゼパチド)、日本イーライリリー Zepbound, Eli Lilly Japan
肥満症治療薬としては2025年4月に販売開始された、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。日本の推定2800万人の肥満患者に新たな選択肢を提供しました。

今年のバイオテクノロジー企業(Biotech Company of the Year)

対象期間にバイオテクノロジー企業が達成した優れた業績を表彰。
 
受賞:ペプチドリーム PeptiDream
独自のペプチド創薬開発プラットフォームを活かした幅広いパイプラインを持っています。ノバルティスとの放射性医薬品の大型契約などにより、2024年度に過去最高の売上と利益を達成しました。

最優秀CRO(Best Contract Research Organization)

日本またはアジア地域に拠点を持つCRO(医薬品開発業務受託機関)を表彰。
 
受賞:エイツーヘルスケア A2 Healthcare
日本と台湾で事業展開し、臨床試験の施設選定や管理、薬事・販売承認申請の支援などを行っています。臨床試験DXや患者リクルート戦略の革新で高く評価されました。

最優秀CDMO(Best Contract Development Manufacturing Organization)

日本またはアジア地域に拠点を持つCDMO(医薬品開発製造受託機関)を表彰。
 
受賞:シミック CMIC
昨年は最優秀CROを受賞したシミック。今年は、国内外の拠点における経験や実績、幅広いバイオ医薬品の製造支援体制などがCDMOとして評価され、2年連続受賞となりました。

今年のライセンス取引(Licensing Deal of the Year)

特定の医薬品・プロジェクト・開発アセットを、さらなる開発・販売のために他企業にライセンス供与するディールを表彰。
 
受賞:科研製薬とジョンソン・エンド・ジョンソン、KP-723を含むSTAT6プログラムに関するグローバルライセンス契約 Kaken with Johnson & Johnson for global rights to STAT6 program including KP-723
科研製薬が持つ、2型炎症に関わるサイトカインSTAT6の開発プログラムをジョンソン・エンド・ジョンソンに供与するライセンス契約です。本年中に、アトピー性皮膚炎に対するSTAT6阻害剤の第1相試験を始める予定となっています。

今年の資金調達取引(Financing Deal of the Year)

日本の製薬・バイオテクノロジー企業による優れた資金調達を表彰。
 
受賞:ベインキャピタル・ジャパン、三菱田辺製薬を約5100億円で買収 Bain Capital Japan, for acquisition of Mitsubishi Tanabe Pharma for JPY510bn
三菱田辺製薬の全株式が、三菱ケミカルグループからベインキャピタルへと譲渡された取引です。同社はベインキャピタル傘下で新たな一歩を踏み出し、さらに2025年12月には田辺ファーマ株式会社へと社名変更しました。

今年の製薬企業(Pharma Company of the Year)

対象期間に傑出した業績を挙げた製薬企業を表彰。サイトラインの編集チームが選出。
 
受賞:科研製薬 Kaken Pharmaceutical
希少疾患を含む新規領域のパイプライン構築のため、複数のライセンス契約を締結したことが際立っていました。中でも「今年のライセンス取引」でも表彰されたジョンソン・エンド・ジョンソンとの取引には最大12億ドル以上のマイルストンが設定されています。こうした成果から、同社の2024年度の連結売上高と利益は大幅に増加しました。

受賞の顔ぶれが映し出す、製薬業界の現在地とこれから

今年のサイトライン・ジャパン・アワードでは、肥満症治療薬ゼップバウンド(チルゼパチド)を発売した日本イーライリリー、STAT6阻害剤の大型ライセンス契約で存在感を示した科研製薬など、日本の製薬・バイオテクノロジー業界を牽引する確かな実績を残した企業が表彰されました。
 
日々ニュースが飛び交う製薬業界。今回の受賞トピックは全て把握できていましたでしょうか。本記事を、変化の激しい業界の「今」をキャッチアップする機会としてお役立ていただければ幸いです。