製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2023年1・2月版

製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2023年1・2月版

昨今、医療・製薬業界でも、業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルマーケティングに注力する動きが多くなってきました。本記事では、2カ月に1回、各製薬企業のプレスリリースより、最新製薬マーケティングやDXの取り組みをピックアップ。マーケティング、プロモーション、DXについて、業界全体の最新トレンドや、他社がどのような動きをしているのかを把握できます。今回は、2023年1・2月を対象に最新動向をまとめました。

※調査対象の企業は2022年5月にミクスonlineに掲載された21年度販売会社ベース企業売上ランキング(出典:IQVIA)より抜粋した19社。50音順にリストアップ

【2023年1・2月サマリー】

  • Webサイトを活用した患者さん向けの情報提供や疾患啓発が多様化。アストラゼネカは、自社が国内で実施する医薬品の臨床試験(治験)の最新情報を、患者さんやそのご家族が一括検索できるWebサイト「Search My Trial for AstraZeneca」を公開。同Webサイトには、アストラゼネカが国内で実施中の臨床試験を掲載しており、今後も掲載試験を追加予定。日本ベーリンガーインゲルハイムは、NFTを活用した世界初のデジタルアートプロジェクト『Illuminate Tomorrow』を本格始動。2023年2月28日の「世界希少・難治性疾患の日」に向けて、参加者のコメントや参加時間などの情報を集約化させた「NFT」の形にされ、永遠に残るかたちで保存される。完成したNFTはその後の啓発活動においてさまざまな形で活用していく予定。疾患の解説だけに留まらず、患者さんのニーズに応える情報提供や、興味を持ってもらえるような企画など、各社が新しい取り組みを行なっている。


  • 製薬企業と自治体の連携が進む。小野薬品工業は、がんサバイバーのメッセージを基に、高校生に向けたメッセージ動画「がんを乗り越えて」を制作し公開。同社は、高校生にがんの正しい知識を身につけてもらえるよう、大阪府と連携し、高等学校での「がん教育」に関する取り組みへのサポートを行っている。兵庫県養父市は「養父市デジタルヘルシーエイジング事業」において、沢井製薬のパーソナルヘルスレコード(PHR)管理アプリ「SaluDi(サルディ)」を採用。今後、SaluDiにより取得したバイタル・ライフログデータをもとに、養父市職員の保健師から市民の方々にサポートが行われるなどの健康づくり支援に活用される。製薬企業と自治体の官民連携の取り組みは今後も加速していくとみられる。


  • デジタルマーケティングに重点を置いた組織体制づくりも昨年から継続してみられる。第一三共は、2023年4月1日付の組織改定について、デジタルマーケティング機能を活用し、より顧客軸思考に基づく活動を強化することを目的にした再編や新設を発表。『営業本部』と『マーケティング本部』を統合して、『医薬営業本部』に再編する。現行の「営業企画部」と「マーケティング企画部」よりデジタルマーケティングに関する機能を集約・強化し、「デジタルマーケティング部」を新設する。2022年4月にはアステラス製薬でも「コマーシャルエクセレンス部」や「デジタルコミュニケーション部」が新設されている。データ活用やデジタルマーケティングに対応した組織体制づくりが重要となっている。


■アストラゼネカ株式会社

アストラゼネカ、自社が日本国内で実施する臨床試験の最新情報を検索できるウェブサイト「Search My Trial for AstraZeneca」を公開

2023年2月9日

アストラゼネカは、自社が国内で実施する医薬品の臨床試験(治験)の最新情報を、患者さんやそのご家族が一括検索できるウェブサイト「Search My Trial for AstraZeneca(https://www.searchmytrial.com/smt-sites/astrazeneca/)」を公開した。
「Search My Trial for AstraZeneca」は、アストラゼネカが国内で実施する臨床試験の情報を検索できるようにしたウェブサイト。同ウェブサイトでは、アストラゼネカの4つの重点領域である「がん・悪性腫瘍」、「循環器疾患・糖尿病・慢性腎臓疾患(CKD)」、「呼吸器・免疫疾患」、「ワクチン・免疫療法」からカテゴリを選択し、各領域で実施している臨床試験が検索できる。同ウェブサイトには、アストラゼネカが国内で実施中の臨床試験を掲載しており、今後も掲載試験を追加予定。
臨床試験に関わる情報は、試験を実施する施設ごとにウェブサイトや院内で掲出されることが多く、患者さんがご自身の求められる情報へアクセスすることは容易ではない。また、探していた臨床試験の情報が掲載されているウェブサイトにアクセスできたとしても、英語で記載されていたり、専門用語が多用されていることも多く、患者さんにとって理解が難しいケースもある。

https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2023/2023020901.html


■小野薬品工業株式会社

がん患者さんの想いに触れる動画「がんを乗り越えて」を公開

2023年2月8日

小野薬品工業は、がん患者さんの想いを深く理解してもらえるよう、がんサバイバーのメッセージを基に、高校生に向けたメッセージ動画「がんを乗り越えて」を制作し、当社の公式ウェブサイト YouTube 上に公開した。
この動画は、高校生にがん患者さんの想いに触れてもらい、がんについての正しい理解とがん患者さんに対する理解を深めてもらえるよう制作。動画の制作においては元SKE48メンバーで、がんサバイバーの矢方美紀さんから、高校生の皆さんに向けたメッセージも。この動画は、文部科学省の「がん教育」で取り上げられている「がんとは何か、がんの予防、がんの早期発見・がん検診、がんの治療法、がん患者の生活の質、がん患者への理解と共生等」で構成している。
小野薬品工業は、がん治療薬の研究開発を通じて医療への貢献に取り組む製薬企業として、高校生にがんの正しい知識を身につけてもらえるよう、大阪府と連携し、高等学校での「がん教育」に関する取り組みへのサポートを行っている。

*文部科学省の学習指導要領改訂により、小学校では2020年度から、中学校では2021年度から、高等学校においても2022年度から「がん教育」が本格化された。

https://www.ono-pharma.com/ja/news/20230208.html


■協和キリン株式会社

Ubieと協和キリン、FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の早期発見を目指し協業を開始

2023年2月28日

Ubie株式会社と協和キリンは、生活者の適切な医療へのかかり方をサポートする受診支援サービス、症状検索エンジン「ユビー」において、希少疾患「FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症」に関する協業を開始。
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症は、非常に希少な疾患であるため疾患の認知度が低く、確定診断に時間を要する方が多いのが現状。今回の両社による協業によって、くる病・骨軟化症の関連症状のある方に疾患についての詳細な情報を提供するとともに、協和キリンの疾患情報サイト「くるこつ広場」へのリンクも表示する。その結果、くる病・骨軟化症の関連症状がある方は様々な情報をただちに取得できるとともに、適切な治療により早期にアクセスすることが期待される。両社は、希少疾患であるFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の情報提供を充実させることで、生活者による疾患への認知向上、早期発見、適切な受診へのサポートなどに寄与することを目指す。

https://www.kyowakirin.co.jp/pressroom/news_releases/2023/pdf/20230228_01.pdf


■グラクソ・スミスクライン株式会社

GSK、帯状疱疹啓発週間(2月27日~3月5日)に「帯状疱疹とワクチン接種に関する日本人の意識調査」結果を発表

2023年2月27日

グラクソ・スミスクラインは、全国の50歳以上の男女4,200名を対象に、帯状疱疹の認知とワクチン接種に関する考え方を理解することを目的とした「帯状疱疹とワクチン接種に関する日本人の意識調査」1)の結果を発表した。
今回の意識調査では、「帯状疱疹」という病名の認知度は高い一方で、帯状疱疹を発症するリスクを自認している人の割合や帯状疱疹ワクチンに対する認知度はいまだ30%程度にとどまること、そして、帯状疱疹の最も一般的な合併症である2)、「帯状疱疹後神経痛」の症状に対する認知度はいまだ半数以下であることが明らかになった。
GSKでは、帯状疱疹に関するウェブサイト「帯状疱疹予防.jp」、新聞広告やテレビCMなどを通じて、積極的に疾患啓発を行う。また、成人ワクチンをはじめとするワクチン全般の情報をまとめたウェブサイト「ワクチンで防げる感染症」も開設している。
GSKは国際高齢者団体連盟(IFA:International Federation on Ageing)と協働し、2022年に世界で初めて「帯状疱疹啓発週間」を立ち上げ、今年で2年目の啓発週間(2月27日から3月5日)を迎えた。

1) GSK「帯状疱疹とワクチン接種に関する日本人の意識調査」(日本人50歳以上男女4,200名対象としたオンライン調査、2022年10月21日~10月31日実施)
2) Dworkin RH, et al. Diagnosis and assessment of pain associated with herpes zoster and postherpetic neuralgia. J Pain 2008;9:S37–44.

https://jp.gsk.com/ja-jp/news/press-releases/20230227_taijouhoushin-yobou/


■第一三共株式会社

2023年4月1日付 組織改定について

2023年2月21日

第一三共は、2023年4月1日付の組織改定について、再編、新設を発表した。
デジタルマーケティング機能を活用し、より顧客軸思考に基づく活動を強化することを目的に、『営業本部』と『マーケティング本部』を統合して、『医薬営業本部』に再編する。また、エリアマーケティング機能強化のため、現行12支店・25エリア統括部を16医薬営業部に再編する。現行の「営業企画部」と「マーケティング企画部」よりデジタルマーケティングに関する機能を集約・強化し、「デジタルマーケティング部」を新設する。加えて「営業企画部」の「特定疾患グループ」・「希少がんグループ」を独立させ「特定疾患推進部」を設置することで、特定疾患事業の強化を図る。

https://www.daiichisankyo.co.jp/files/news/pressrelease/pdf/202302/20230221_J2.pdf


■バイエル薬品株式会社

ご家族ががん闘病経験を持つアキラ100%さんも登壇 がん個別化治療啓発セミナー「みんなでみつける、ひとりひとりにあわせた『がん治療』」開催

2023年2月28日

バイエル薬品と認定NPO法人キャンサーネットジャパンは、2月の「希少がん啓発月間」に合わせて、2月27日(月)にがん個別化治療啓発セミナー「みんなでみつける、ひとりひとりにあわせた『がん治療』」をオンラインで開催した。
このセミナーは、がん患者さんのCTやMRIの検査の認知率が9割以上であるのに対して、がん遺伝子検査の内容を把握している人が2割未満にとどまっていることから、がんの個別化治療についてより多くの人に知っていただくことを目的に企画された。
当日は、ゲストとして国立がん研究センター東病院の内藤 陽一先生のほか、がんサバイバーの方と小児がん患者さんのご家族、ご家族ががん闘病経験を持つお笑いタレント兼俳優のアキラ100%さんを迎え、それぞれの立場から考えるがん個別化治療について、講演やトークセッションが行われ、247名の方が視聴した。

*2022年11月25日~30日に患者さん/ご家族のPrecision medicine、CGPに対する認識を把握することを目的として、バイエル薬品株式会社が実施したインターネット調査(実施機関は株式会社インテージヘルスケア)

https://www.pharma.bayer.jp/ja/news2023-02-28b?token=WUdePkNsUkB7RWJUQ04sXw==


■日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社

世界初のNFTアートを活用した膿疱性乾癬啓発プロジェクト「Illuminate Tomorrow」始動

2023年1月20日

日本ベーリンガーインゲルハイムは、同社が掲げる“Patient Centricity”の取り組みの一つとして、NFTを活用した膿疱性乾癬(GPP:[Generalized Pustular Psoriasis])の患者さんの未来を照らす、世界初*1のデジタルアートプロジェクト『Illuminate Tomorrow』を本格始動した。
このプロジェクトは、難病であるGPPの具体的な悩みや患者さんの声を通じ、社会に啓発そして患者さんをサポートする、新たな仕組みとなるプロジェクト。
大切な皮膚がただれていく症状や、ときに病名もわからないまま、思い悩む患者さんの孤独に光を当て、患者さん一人ひとりの未来まで明るく照らし出す、つまり「患者さんとその未来をIlluminateしたい」という想いから、光を照らす象徴である「ランタン」をシンボルにしたデジタルアートをアーティストと制作。参加者誰もがそのランタンをサイト上で灯すことで参加できる。
ランタンによって明るく照らされたWEBの世界は、2023年2月28日の「Rare Disease Day (世界希少・難治性疾患の日、以下:RDD)」に向けて、参加者のコメントや参加時間などの情報を集約化させた「NFT*2」の形にされ、永遠に残るかたちで保存される。完成したNFTはその後の啓発活動においてさまざまな形で活用していく予定だという。

*1 医療用医薬品製造販売会社として。日本ベーリンガーインゲルハイム調べ。2023年1月20日現在
*2 ブロックチェーン技術を用いて作成される代替不可能なデジタルアートのこと

https://www.boehringer-ingelheim.jp/press-release/20230120_01


■沢井製薬株式会社

兵庫県養父市の「養父市デジタルヘルシーエイジング事業」におけるPHR管理アプリ「SaluDi」の採用のお知らせ

2023年1月31日

兵庫県養父市の「養父市デジタルヘルシーエイジング事業」において、沢井製薬のパーソナルヘルスレコード(PHR)管理アプリ「SaluDi(サルディ)」が採用された。
養父市は、デジタル田園都市国家構想推進交付金(デジタル実装タイプType2)において、「養父市デジタルヘルシーエイジング事業」を進めており、人口減少により、地域での生活領域における支え合いの基盤が弱まっている中で、健康情報や社会移動を測る各種サービスと連携することで、ウェルビーイングを目指している。
今後、SaluDiにより取得したバイタル・ライフログデータをもとに、養父市職員の保健師から市民の方々にサポートが行われる等の健康づくり支援に活用される。また、「養父市デジタルヘルシーエイジング事業」の他サービスと組み合わせ、歩数データ量などに応じた健康ポイントの付与といった健康維持のモチベーション向上にも活用される予定。

https://www.sawai.co.jp/release/detail/588