製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2023年3・4月版

製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2023年3・4月版

昨今、医療・製薬業界でも、業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルマーケティングに注力する動きが多くなってきました。本記事では、2カ月に1回、各製薬企業のプレスリリースより、最新製薬マーケティングやDXの取り組みをピックアップ。マーケティング、プロモーション、DXについて、業界全体の最新トレンドや、他社がどのような動きをしているのかを把握できます。今回は、2023年3・4月を対象に最新動向をまとめました。

※調査対象の企業は2022年5月にミクスonlineに掲載された21年度販売会社ベース企業売上ランキング(出典:IQVIA)より抜粋した19社。50音順にリストアップ

【2023年3・4月サマリー】

  • 新たな疾患啓発サイトの開設が相次ぐ。グラクソ・スミスクラインは、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の一般向け疾患啓発サイト「EGPA.jp」を開設。EGPAはまだ解明されていないことが多い希少疾患で、診断までに時間がかかることが課題となっている。ほかにも、日本ベーリンガーインゲルハイムは、糖尿病を正しく理解し糖尿病に対する社会的偏見をなくすための活動として、啓発サイト「糖尿病への色眼鏡~その認識、色眼鏡(偏見)かも?~」を開設。沢井製薬は、神経発達症の理解促進や周知を目的とした疾患啓発サイト「大人の神経発達症.jp ~心の地図の歩き方~」を公開した。希少疾患領域での早期診断や患者への偏見の払拭など、社会的課題に取り組む啓発サイトが増えてきている。


  • AIを活用した製品、サービスが実用化へ。中外製薬とBiofourmisは、子宮内膜症患者の痛みを客観的に評価するデジタルソリューションの継続的な開発および実臨床における実用化に向けた新たなパートナーシップ契約を締結。両社はバイオセンサーおよびAIベースのアルゴリズムを利用して、子宮内膜症患者の痛みを客観的に評価する新たな評価法の確立を目指す。バイエル薬品は、HACARUSと共同開発を行ったAIを活用したオンプレミス型の画像解析ソフトウェアCal.Liver.Lesionや、クラウド型の画像診断支援AIプラットフォームCalanticTMの販売を開始。画像診断における医師への負担をAIによって解決する新たなソリューションを提供する。今後も製薬企業によるAIを活用したデジタルソリューション提供の流れは続くと考えられる。

■アストラゼネカ株式会社

アストラゼネカとキャンサーネットジャパン共催 卵巣がんWEB市民公開講座「卵巣がんと ともに歩む ~治療、アピアランスケアの理解を深める~ 」オンラインイベント開催のお知らせ

2023年4月3日

アストラゼネカと認定NPO法人キャンサーネットジャパンは、2023年5月23日(火)、卵巣がんWEB市民公開講座「卵巣がんとともに歩む ~治療、アピアランスケアの理解を深める~」をオンライン形式にて開催する。
本イベントでは、卵巣がんおよびアピアランスケア*の専門家からのレクチャーに加え、治療に対する理解を深めるためのポイントやアピアランスケアの実情をテーマに、患者さんを交えたトークセッションも実施予定。
アストラゼネカでは、Webサイト「卵巣がん.jp」(https://www.ransogan.jp)およびLINEアカウント「わかる卵巣がん」を通じて、卵巣がん関するさまざまな情報を提供しており、卵巣がん患者さんとそのご家族向けに、卵巣がんに関する情報(検査・診断・治療など)をわかりやすく紹介している。

*患者さんが外見の変化に対応し、社会生活を送りやすくなるための支援

https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2023/2023040301.html

■MSD株式会社

子宮頸がん予防啓発キャンペーンの開始『今できること、しなきゃ。』女優 桜井 日奈子さんを起用し、テレビやオンラインで展開

2023年4月5日

MSDは、子宮頸がん予防を啓発するための「子宮の日」(4月9日)をきっかけに、子宮頸がん予防啓発キャンペーン『今できること、しなきゃ。』を2023年4月14日(金)から開始。このキャンペーンは、映画やドラマ、テレビCMで活躍中の女優、桜井 日奈子さんを起用し、10代~20代の女性、およびそのご家族の方に向けて、テレビやオンラインをはじめとする各種媒体を通じて展開する。
また、キャンペーンの開始に合わせて、4月14日よりMSDの子宮頸がん予防情報サイトの名称を「もっと知りたい 子宮頸がん予防」(https://www.shikyukeigan-yobo.jp/)に変更し、内容を大幅にリニューアルして公開。サイトでは子宮頸がんの原因・予防・治療についての基本的な情報をQ&A形式でわかりやすく解説するとともに、子宮頸がんに関する用語集も新設した。

https://www.msd.co.jp/news/product-news-20230405/

■グラクソ・スミスクライン株式会社

GSK、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に関する疾患啓発ウェブサイト「EGPA.jp」を開設

2023年4月24日

グラクソ・スミスクラインは、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis、以下、EGPA)の一般向け疾患啓発ウェブサイト、「EGPA.jp」(https://www.egpa.jp/)を開設した。「EGPA.jp」は、日本の患者さんやご家族をはじめ一般の方々のEGPAに関する理解をより深めていただくための疾患啓発ウェブサイトで、疾患の症状、診断・検査、治療について紹介している。
EGPAの原因は不明で、まだ解明されていないことが多い希少疾患。日本での患者数は約1,900人で、毎年約100人が新たにEGPAを発症すると報告されている(2008年)1)。EGPAの予後改善において早期診断と早期治療は重要だが、現状、EGPAと診断されるまでに複数の専門医に紹介されるなど、数カ月から数年もの長い時間がかかり患者さんの負担が大きくなっていることが課題のひとつとなっている2)

1) Sada KE et al:Mod Rheumatol. 2014;24(4),640-644.
2) Mary JS et al:J Patient Exp. 2022;9, 1-8.

https://jp.gsk.com/ja-jp/news/press-releases/20230424-egpa/


■沢井製薬株式会社

疾病啓発サイト「大人の神経発達症.jp ~心の地図の歩き方~」を公開 -神経発達症(発達障害)の患者さんの約7割が「特性に応じた周囲の人の配慮が必要」と回答(当社調べ)-

2023年3月30日

沢井製薬は、疾患啓発サイト「大人の神経発達症.jp ~心の地図の歩き方~」を公開したことを発表。このサイトは、神経発達症*(発達障害)の当事者だけではなくその家族や神経発達症を知らない方への、神経発達症の理解促進や周知を目的としている。
具体的には、神経発達症の概要だけでなく、「注意欠如多動症(ADHD)」「自閉スペクトラム症(ASD)」「学習障害(発達性学習症)」の主な特徴、「二次障害」などについて理解を深めるコンテンツなどを用意。今後、コンテンツとして上記の情報提供にとどまらず、当事者への取材に基づいた神経発達症のエピソードをライフステージ別に紹介するほか、「神経発達症(発達障害)ライフTips」と題し、生活での困りごとを解決する手助けとなる内容などを2023年夏以降、順次公開していく予定。

*米国精神医学会のDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)で「neurodevelopmental disorder」が採用された。日本語では「神経発達症」と呼ばれ、注意欠如多動症(ADHD)、自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(発達性学習症)などが含まれる。

https://www.sawai.co.jp/release/detail/592


■中外製薬株式会社

中外製薬とBiofourmis、子宮内膜症における痛みのデータを活用したバーチャルケアに向けた新たなパートナーシップを締結

2023年3月2日

中外製薬と、Biofourmisは、子宮内膜症患者さんの痛みを客観的に評価するデジタルソリューションの継続的な開発および実臨床における実用化に向けた新たなパートナーシップ契約を締結した。
2020年7月より両社はBiofourmisのBiovitals®プラットフォームを活用し、バイオセンサーおよびAIベースのアルゴリズムを利用して、子宮内膜症患者の痛みを客観的に評価する新たな評価法の確立を目指し、共同開発を実施。子宮内膜症による痛みは主観的な症状であるため、患者さん自身が感じる痛みの程度を家族や医療関係者に正確に伝えることは難しい。加えて、子宮内膜症の早期診断と治療へのアクセスも十分ではない。
子宮内膜症患者さんにおける痛みの定量化技術のさらなる発展は、病態の解明、適切な医療ケアおよび臨床試験の精緻化につながる可能性がある。新たなデジタルソリューションの提供により、子宮内膜症患者さんに対するさらなる価値向上を目指す。

https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20230302150000_1283.html?year=2023&category=


■日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社

『知ってほしい!“糖尿病への誤解”』

2023年4月18日

日本ベーリンガーインゲルハイムは、糖尿病を正しく理解し糖尿病に対する社会的偏見をなくすための活動として、啓発サイト「糖尿病への色眼鏡~その認識、色眼鏡(偏見)かも?~」を開設した。
4月21日には、公益社団法人日本糖尿病協会との共催で、「知ってほしい!“糖尿病への誤解”シンポジウム」と題し、企業の人事に関わる方々や管理職の方、及び患者さん、医療従事者含む一般の方に向けたオンラインシンポジウムをライブ配信。社会全体における糖尿病のスティグマ(特定の属性に対して刻まれる負の烙印)の現状と課題、糖尿病への誤解に対し、企業や周囲はどう対応すべきといったテーマで講演やパネルディスカッションが実施された。
日本ベーリンガーインゲルハイムでは、日本糖尿病協会と協力し、糖尿病疾患啓発オリジナル落語動画「色眼鏡」を啓発サイトで公開し、糖尿病のある方がスティグマを受けず、疾患を隠さずに暮らせる社会にむけて活動している。

啓発サイト「糖尿病への色眼鏡~その認識、色眼鏡(偏見)かも?~」
https://patient.boehringer-ingelheim.com/jp/dounaru-dm/stigma/

https://www.boehringer-ingelheim.com/jp/press-release/20230418-02


■バイエル薬品株式会社

バイエル薬品とHACARUS 共同開発を行ったAIを活用したオンプレミス型の画像解析ソフトウェアCal.Liver.Lesion発売のお知らせ

2023年4月10日

バイエル薬品とHACARUSは共同開発を行ったAIを活用したオンプレミス型の画像解析ソフトウェアCal.Liver.Lesion(カルリバーリージョン)の情報提供活動を開始。なお、Cal.Liver.Lesionの販売はバイエル薬品が行う。
Cal.Liver.Lesionは、磁気共鳴画像診断装置(以下「MRI」)から提供されたEOB・プリモビスト造影MRI画像から腹部肝臓領域の情報をコンピューター処理し、処理後の画像情報を診療のために提供するプログラム。MRI画像より事前学習モデルから周囲と比べて信号値の異なる領域を自動で抽出し、当該領域をカラー表示したカラーマップを作成することにより、医師による読影を支援する。日本においては、実施されているMRI検査数に比して放射線科医の数が十分ではなく、読影医に大きな負担がかかっているのが現状。本製品は、読影の効率や精度を向上させ、医師の負担を軽減することを目的に開発された。

https://www.pharma.bayer.jp/ja/news2023-04-10?token=WlggQldMVFBrQDduTGFtKw==

バイエル薬品、医療用画像診断支援AIプラットフォームCalanticTMデジタルソリューションを販売開始

2023年4月13日

バイエル薬品は、クラウド型の画像診断支援AIプラットフォームCalanticTM(カランティック)デジタルソリューション(以下「CalanticTM」)の販売を4月14日より開始した。CalanticTMは、さまざまなメーカーが開発した画像診断関連のAIアプリケーションにアクセスして活用できるプラットフォーム。診断から治療にいたるまでの各種プロセスにおいて活用されるデジタルツール・システムは日々拡充されている。CalanticTMはバイエル薬品のみならずさまざまなメーカーが開発したアプリケーションを組み合わせたエコシステムを構築し、クラウド上で連携が可能なベンダーニュートラルなソリューションを提供する。
医療用画像診断には高度な専門性が求められるだけでなく、読影する画像の量が膨大で、多くの時間を要すため、医師の業務負荷が非常に大きいという長年の課題が指摘されている。CalanticTMは、AIアプリケーションによる医師の読影支援や関連する各種ワークフローの高速化を通して、診断のスピードや精度の向上を目指す。

https://www.pharma.bayer.jp/ja/news2023-04-13?token=VmdfXUlvYSpTankia2Ygbg==


■ファイザー株式会社

Ubieとファイザー、症状検索エンジン「ユビー」と「UUI相談室」の連携で約17,000人の医療機関受診に繋がる ~過活動膀胱患者さんが多い60歳以上の方もインターネット経由で受診支援~

2023年3月13日

Ubieとファイザーは、切迫性尿失禁(以下、UUI)をはじめとする過活動膀胱(以下、OAB)の症状でお悩みの方々の医療機関への早期受診に繋がる一助となるために、Ubieが提供する、生活者向けのWeb医療情報提供サービスである症状検索エンジン「ユビー」と、ファイザーが提供する疾患啓発サイト「UUI相談室」の連携を2021年10月から開始。その結果、これまでに全国で約17,000人の医療機関受診に繋がったと推計された。
OAB関連疾患は高齢者に多いとの報告1)がある。「ユビー」における、OAB関連症状を有するユーザーの約半数は60歳以上であることから、これまでのインターネット経由の両社の疾患啓発活動は、とりわけ高齢者のOAB患者さんの早期受診の貢献に資する内容であると考えている。今後も両社は、高齢者を含めたOAB患者さんのQOL向上に一層貢献していくとしている。

1) 日本排尿機能学会誌 14(2):266, 2003

https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2023/2023-03-13

Mediiとファイザーが連携し、医師の心不全診療サポートに関して医師紹介の早期化・最適化する取り組みを開始 ~医師向けオンライン専門医コンサルテーションで心不全症例における原因精査の促進~

2023年3月14日

株式会社Mediiとファイザーは、Mediiが提供する医師専用オンライン専門医相談サービス「E-コンサル」を活用した心不全症例における原因精査を促進する取り組みを2023年3月に開始した。
具体的取り組みとしては、Mediiが心不全や心アミロイドーシスに関する情報を掲載した疾患啓発サイトを立ち上げ、疾患に関する最新情報を医師向けに提供。さらに、心不全診療に携わる医師が専門医に無料でオンライン相談できる『E-コンサル®︎』を活用することで、心不全/心アミロイドーシスの早期診断や適切な治療へ繋げていく。まずは近畿エリアで取り組みを開始し、全国に展開していく予定。ファイザーは、専門医や一般医に『E-コンサル®︎』を紹介することを通じて、この取り組みに協力する。

心不全/心アミロイドーシス啓発サイト:https://medii.jp/HF_ATTRCMconsultant/ 

https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2023/2023-03-14