製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2025年5・6月版

昨今、医療・製薬業界でも、業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルマーケティングに注力する動きが多くなってきました。本記事では、2カ月に1回、各製薬企業のプレスリリースより、最新製薬マーケティングやDXの取り組みをピックアップ。マーケティング、プロモーション、DXについて、業界全体の最新トレンドや、他社がどのような動きをしているのかを把握できます。今回は、2025年5・6月を対象に最新動向をまとめました。
※調査対象の企業は2024年5月にIQVIAより公開された23年度販売会社ベース企業売上ランキング(期間:2023年4月~2024年3月)より抜粋した19社。50音順にリストアップ
【2025年5・6月サマリー】
・デジタル治療の実用化が進む
製薬企業がデジタル技術を治療手段として活用する動きが進んでいる。大塚製薬とClick Therapeuticsが共同開発したうつ病治療アプリ「リジョイン」が英国で販売開始された。米国FDA認可を受けた世界初の大うつ病向けデジタル治療アプリとして、認知機能トレーニングと認知行動療法を組み合わせた6週間の治療セッションを提供する。治療アプリは医療関係者の処方が必要な医療機器として位置づけられ、臨床試験で有効性・安全性が確認されており、今後ますます治療手段として広がっていくと考えられる。
・患者の日常に寄り添う継続的サポート
難病・慢性疾患における患者支援が、一時的な情報提供から継続的なケアサポートへと進化している。アストラゼネカは全身性エリテマトーデス(SLE)患者向けに疾患啓発サイト「SmiLE.jp」とLINEアカウント「SLEケアナビ」を拡充し、患者とのワークショップを通じて実際の声を反映させながら継続的な情報提供体制を構築した。武田薬品工業もIBD患者向けに「IBDreamお土産図鑑」を公開し、全国47都道府県125商品の原材料や栄養成分、脂質含有量の目安を詳細に掲載することで、患者の日常生活における具体的な困りごとに対応している。
・制度変更を捉えた戦略的予防啓発
制度変更を機会とした積極的な啓発活動の展開もみられた。グラクソ・スミスクラインは帯状疱疹ワクチンの国の定期接種化に合わせて新たな予防啓発キャンペーンを展開。アナウンサーの武田真一さんを起用したテレビCMの全国放映や、疾患情報サイト「帯状疱疹予防.jp」の機能拡充を実施。サイトでは、住所や生年月日を入力するだけで各助成制度の対象かどうかを確認できる機能を提供し、具体的な行動につながるサービスを通じて受診を促進している。制度改正というタイミングを生かし、各種媒体を連動させた包括的なマーケティング戦略の事例と言える。
【各社プレスリリース抜粋】
■アストラゼネカ株式会社
アストラゼネカ、全身性エリテマトーデス(SLE)の患者さんやご家族等周りの方を対象に、疾患啓発サイト「SmiLE.jp」とLINEアカウント「SLEケアナビ」による情報提供を拡充
2025年5月9日
アストラゼネカは、全身性エリテマトーデス(SLE)の患者とその家族をはじめとする周りの方に向けて、継続的な情報提供を通じて疑問や不安の解消に貢献することを目的に、疾患啓発サイト「SmiLE.jp」とLINEアカウント「ケアナビ」による情報提供サービスを拡充。5月10日世界ループスデーに合わせて発表した。
SLEは自身の免疫機能が体内の正常な組織を攻撃してしまう自己免疫疾患で、国の指定難病のひとつ。患者数が少ないことや、患者ごと、あるいは日ごとに異なる多彩な症状が出ることから、自分に当てはまる情報を得ることが難しい場合があり、診断時に得た情報や印象が、その後の治療や生活に影響を与えることもある。
アストラゼネカは、患者とのワークショップを実施し、患者の声を伺いながら、病気や治療、生活等に関する疑問や不安に寄り添うサービスや情報を、疾患啓発サイト「SmiLE.jp」とLINEアカウント「ケアナビ」を通して継続的に提供していくとしている。
https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2025/202505091.html
■大塚製薬株式会社
うつ病治療のためのデジタル治療アプリ「リジョイン」 英国で販売開始
2025年6月17日
大塚製薬とClick Therapeutics, Inc.(本社:米国ニューヨーク州、社長兼CEO:David Benshoof Klein、以下「クリック社」)は、6月17日(英国時間)、両社が共同開発したうつ病治療のためのデジタル治療アプリ「Rejoyn®(以下、「リジョイン」)」の販売を英国で開始。
すでにリジョインは米国において、米国食品医薬品局(FDA)より認可を受けた世界初の大うつ病(MDD)のデジタル治療アプリとして、2024年8月に販売を開始しています。英国での発売は、米国に続く展開であり、欧州では初の導入となる。
リジョインは、患者のうつ病に対する通常の治療と併用することを前提としており、①様々な感情を表す顔の表情を用いた認知機能のトレーニングと、②アプリによる認知行動療法のレッスンの2つの治療法を組み合わせた6週間の治療セッションを通じて、患者のうつ症状を改善するように設計されている。臨床試験で有効性と安全性が確認された医療機器であり、医療従事者の処方が必要。
https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2025/20250617_1.html
■グラクソ・スミスクライン株式会社
帯状疱疹ワクチンが国の定期接種に。GSK、帯状疱疹予防啓発の新キャンペーンを開始
2025年6月2日
グラクソ・スミスクラインは、帯状疱疹とその予防法、国や地方自治体による助成について、より多くの方々にご理解を深めていただくために、帯状疱疹予防啓発の新キャンペーンを実施。
本キャンペーンでは、アナウンサーの武田真一さんを起用した帯状疱疹予防啓発の新テレビCM「帯状疱疹 定期接種ニュース」篇の全国放映(6月1日から)や、疾患情報サイト「帯状疱疹予防.jp」の更新、各種媒体で疾患やその予防に関するコンテンツを展開。
「帯状疱疹予防.jp」では、「お住いの都道府県」「市区町村」「生年月日」を入力すると、ご自身が各助成の対象かどうか確認することができる。
https://jp.gsk.com/ja-jp/news/press-releases/20250602_taijouhoushin-yobou-cp/
■武田薬品工業株式会社
全国47都道府県のお土産を網羅したIBD患者さんのお土産選びをサポートする「IBDreamお土産図鑑」公開について
2025年5月15日
武田薬品工業は、旅の日(5月16日)と世界IBDデー(5月19日)に合わせ、47都道府県 全122社のお土産企業の協力のもと、炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease、以下「IBD」)患者さんと周囲の方のお土産選びをサポートする「IBDream(アイ・ビー・ドリーム)お土産図鑑」(以下「本図鑑」)を、同社の疾患啓発サイト(IBDステーション)にて公開。
本図鑑では、47都道府県のお土産を計125商品掲載しており、誰でも本図鑑をダウンロードすることが可能。 本図鑑は、昨年公開のIBDreamお菓子図鑑に次ぐ、IBD患者さんとその周囲の方のための図鑑第2弾となる。
IBD患者は、もらったお土産の栄養成分や原材料が気になってしまい楽しめないことや、IBD患者さんのみならず、周囲の方もどのお土産をあげていいのか分からないことがある。そこで、本図鑑は日本全国のお土産 計125商品について、原材料、栄養成分、アレルギー情報などのIBD患者にとって大切な情報や、小分けにして食べる際の「脂質5g以内の目安量」などを掲載。また「全国IBD患者数マップ」では、各都道府県にIBD患者さん数を掲載している。
https://www.takeda.com/jp/newsroom/local-newsreleases/2025/ibdream-souvenir-guide-47-prefectures/