Twitterを活用した情報収集術!製薬マーケティングに役立てるには?

Twitterを活用した情報収集術!製薬マーケティングに役立てるには?

外資系製薬企業の経営企画室に勤めるこういちと申します。私はこれまで、営業、メディカル、デジタル戦略部、製品戦略部、経営企画部と製薬企業の多くの部門で経験を積んできました。また、ブログやTwitterでキャリア、製薬、ヘルスケア関連の情報発信もしています。今回は、こうした経験をもとに、Twitterによる情報収集のメリットや使用における注意点、製薬マーケティングに役立つアカウントなどについて独自の視点から解説します。

Twitterでの情報収集のメリットとは?

私は普段、さまざまな情報ソースを活用して日々の情報収集を行い、ブログやTwitterで発信をしています。その中でも、特に情報収集という観点で、重要な役割を担うツールの一つがTwitterです。

私自身はTwitterを情報収集に活用しはじめて約2年になり、日々の製薬企業の業務やブログの執筆に大いに役立っています。

Twitterを活用することで、他社のマーケティング事例や疾患啓発活動についての情報収集も可能です。情報収集に際して私が感じているメリットは2つあります。

メリット①:短時間(すきま時間)で大量の情報収集が可能

Twitterは無料プランであれば、文字制限は全角で140字です。その中に、メッセージが凝縮されています。医療情報の場合は、ツイート本文に記事URLのリンクがついていることが多く、そこから記事へのアクセスが可能です。この140字以内のメッセージをパッと見て、自分に関心のある情報であれば、記事URLをクリックします。特に関心がなければ記事のURLをクリックせずに、流し読みで構いません。

例えば、製薬企業とは切っても切れない関係を持つ独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)の公式アカウントを紹介します。

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA) (@PMDA_JPN) / Twitter 

このアカウントでは、副作用の救済制度に関するツイートが多めですが、中にはマーケターにも役立つようなきらりと光る情報もあります。例えばこちらのツイートでは、MID-NETシンポジウム2023開催についての情報を発信していました(2023年5月現在、シンポジウムHPへのリンクは無効となっています)。

【MID-NETシンポジウム2023開催のお知らせ】/Twitter 

昨今、製薬企業ではRWE(Real World Evidence)の重要性が取り上げられる頻度が増えてきており、製薬マーケティングおよびメディカルアフェアーズに従事する方にとっても関心が高いテーマかと思います。RWEを作っていくにあたり、そのDatabaseの一つになるのが、MID-NETです。

このような形で、製薬マーケティングに関係している情報をTwitter 経由で入手することができます。ポイントはこの作業はすべて短時間でできてしまうということです。言い換えると、すきま時間での情報収集が可能です。

手順1:自分が関心のあるアカウントをクリック
手順2:どんなツイートがされているかざっと確認(1-2分)
手順3:仕事に関係しているツイートに記事URLがあれば、さらに深く読み込む(3分)

この一連の検索作業は、例えば次のようなすきま時間でもできます。

  • 電車を待っている2-3分
  • 次のZoom会議までの5分
  • テレビCMの間の 1分30秒


そのため、自分が日頃から見に行くアカウントをある程度決めておけば、効率的に情報収集が可能です。

メリット②:キーワード検索を使うと得たい情報が得られやすい

調べたいことが決まっている時はキーワード検索が非常に便利です。Googleで調べるよりも意外と該当する情報がヒットしやすいと感じています。

例えば、「製薬各社が取り組んでいる疾患啓発について調べたい」という時に、Twitterの検索ワードに「疾患啓発」と入れて検索すると、製薬各社が過去に行った疾患啓発の情報が数多く確認できます。

Googleで「疾患啓発」と入力して調べるよりも、Twitterで「疾患啓発」と入力して調べるほうが、より早く、そしてより多くの会社の事例の収集が気軽に行えます。

そのほか、例えば、競合品の新薬について調べたければ「新薬の名前 + 該当する疾患の名前」を入力することで、製薬企業のプレスリリース情報にたどりついたり、臨床試験情報をサマリーしたページにたどりついたりと、調べたい情報が比較的早く確認できます。

情報の取捨選択には注意が必要ですが、信頼性のある公式アカウントや企業のプレスリリースのURLが入っているツイートであれば、活用できる情報になるでしょう。

また、Twitterは競合企業の情報収集にも役立ちます。競合企業や競合品の情報を検索ワードに入力すると、競合企業が行っているサービス(例:Patient Support Program)の情報や、競合品のパンフレット情報や講演会情報を医師や企業自身がTwitter上にあげているケースも散見されます。

製薬マーケティングに携わる上で、外部環境分析の一つである競合分析は重要なタスクの一つかと思います。その業務においてもTwitterは活用可能です。

Twitterでの情報収集における注意点

Twitterでの情報収集では、使い方に注意も必要です。ここでは2つの注意点について解説します。

注意点①:情報の信ぴょう性が怪しい場合は、必ず元情報を検索する

Twitterには非常に多くの情報があふれています。中には関連するURLのリンクはなく、コメントだけのものも数多く散見されます。そのコメントの中には、フェイク(うそ)ニュースや誇張表現されたものもあるので、情報の取捨選択を意識する必要があります。

例えば、「○○病に対する新しい薬がもうすぐ発売になるようです!!」といった個人の方のツイートがあるとします。特に関連するURLのリンクもない。このような情報をそのままうのみにするのは危険です。

調べてみると、あくまで「○○病に対する薬の承認申請が米国で行われた」というニュースが最近あって、その情報に基づいて一般の方がツイートしたということが推察できました。

こういったことが起こり得るのがTwitterです。
今回のケースでいえば、自ら企業の公式ホームページにアクセスして、その事実や信ぴょう性の確認を行い、情報の取捨選択をしなければいけません

多くの方はご理解いただいている部分かと思いますが、「Twitter上の情報、コメントにはフェイク(うそ)や誇張が交ざっている」という意識を頭の片隅に置いた上で、情報収集する必要があります。

注意点②:時間の浪費に注意する

Twitter上には面白い情報、ユニークな情報、興味深いコメントがあふれています。人々の関心がどういった情報やコメントに集まるかを分析するのにも役立つツールです。

しかし、ついつい時間を忘れて、見過ぎてしまうこともあります。プライベートで娯楽として利用する分にはそれでも構いませんが、仕事として利用する場合は効率を考える必要があります。なぜなら時間は有限であり、仕事をする上でタイムマネジメントは非常に重要な要素だからです。

そのため、狙った情報を探しに行く検索行動が欠かせません。

私のおすすめは「製薬マーケティングに関連する有益な情報を発信しているアカウントを覚えておいて、自ら検索をかけにいく」という行動です。こういった検索行動を取ることで、時間の浪費を防ぐことができます。

また、どうしても使い過ぎてしまうという方には、携帯に付随している「スクリーンタイム」の機能が有用です。iPhoneであれば、以下のような設定が可能です。

■iPhoneの場合

  • 自分がアプリをどれくらいの時間使っているかを把握したいとき

「設定⇒スクリーンタイム⇒すべてのアクティビティを確認する」


  • Twitterを見過ぎてしまってやめられない、制限を掛けたいとき

「設定⇒スクリーンタイム⇒App使用時間の制限⇒Twitterの時間制限」

Twitterはネタの宝庫であり、ほかの製薬企業や一般消費財のマーケティング活動を勉強できるSNSでもあります。しかしその反面、ついつい時間を忘れて使い過ぎてしまう傾向があります。時間の浪費にはご注意ください。

製薬マーケティングの業務に役立つ情報が得られるアカウント

参考として、私自身が情報収集に役立てているアカウントを紹介します。

各製薬企業の公式アカウント

  • 企業の取り組みやプレスリリースの把握に活用できます。
  • 日本およびGlobalの公式アカウントを両方フォローすると各企業の取り組みが把握できます。
  • 競合品の承認申請に関するニュースなどにいち早く触れることが可能です。
  • 公式アカウントのある製薬企業とない製薬企業があります。

学会の公式アカウント

  • 学会の話題、トレンドの把握に活用できます。
  • その学会所属の担当KOLとの小ネタとして活用が可能です。
  • Twitterの公式アカウントのある学会とない学会があります。

医薬情報を扱う会社や団体のアカウント

  • 医薬情報および業界のタイムリーな情報収集に有用です。
  • 製薬各社の新たな取り組みなどの情報を入手可能です。
  • 競合企業の動き、競合品の情報収集に便利です。
  • 各種イベント、講演会情報の収集が可能です。

KOLや業務に関係する医師のアカウント

  • KOLや医師の考え方や人となりについて情報収集できます。
  • 業務で関係するKOLがTwitterを利用していないか確認することをおすすめします。
  • 領域のトレンドや最新情報を積極的に発信している場合は、その情報を入手することができます。
  • Twitterの情報を見ていることについては、相手が自ら口にしない限り、こちら側から伝えないほうがいいと思います。警戒される可能性があります。

患者さんのアカウント

  • 製薬マーケティングを行う上で重要である患者さんの困っていることや実生活について情報収集が可能です。
  • 定期的にツイートを見ることで、患者さんのリアルな生活や実体験を想像できます。
  • 疾患名で検索すると、患者さんのアカウントにたどりつくことがあります。
  • 希少疾患、超希少疾患の場合は該当者を見つけるのは困難な場合があります。
  • あくまでN=1の情報である点には留意が必要です。会社で活用する際は、別途分析対象とする患者数を増やし、テキスト分析を行うといった工夫が考えられます。

医療に関連した政府系公式アカウント

  • 勉強会の情報や公募のお知らせなどの情報が入手できます。
  • 新たな制度や、制度の更新についての最新の情報が入手できます。

Twitterを製薬マーケティングの情報収集に活用してみては

意外なことに、私の周りには情報収集に際してTwitterを積極的に活用している同僚をあまり見かけません。会議の中でも話に出ることはありません。

おそらくTwitterは娯楽のイメージがあるため、仕事と切り分けている方も多いことがその要因かと思われます。しかし、情報収集にTwitterを活用しないのはとてももったいないことだと思います。

世の中には参考になる事例、勉強になる情報が山ほどあります。今回は製薬関連のアカウントに特化して情報共有しましたが、他の業界のSNS活用はどんどん進化しており、学ぶべき点が数多くあります。

そんな情報にいち早く触れる機会を提供してくれるのがTwitterです。もしまだ活用していないという方がいたら、これを機にぜひ活用いただけたらうれしいです。

こういち自身もTwitterを運用しており、キャリア・製薬・ヘルスケア関連の情報を中心に情報発信していますので、よろしければご覧ください。