Web担当者になったら知っておきたい「医療従事者向けサイトのSEO基礎知識」
医療従事者もオンラインでの情報収集を行う昨今では、製薬企業でもオウンドメディアを作成し、オーガニック検索経由での流入増に繋げる「SEO(検索エンジン最適化)」に取り組むことが大切です。本記事では、製薬企業のオウンドメディア担当者が知っておきたい、医療従事者向けサイトにおけるSEOの基本知識や実施方法について解説します。
なぜ医療従事者向けのオウンドメディア運用ではSEOが重要なのか?
SEOとは、「Search Engine Optimization」の頭文字をとった用語で、「検索エンジン最適化」を意味します。SEOはGoogleに代表される検索エンジンにおいて、狙ったキーワードで自社サイトが上位表示されるようにするための取り組みです。
近年では、ユーザーはインターネットを使った情報収集を盛んに行っており、それは医療従事者においても例外ではありません。これからの製薬マーケティングでは、MRやメールマガジンによるPush型の情報提供とは異なる、「医療従事者が情報を欲して検索した」際に確実に自社情報を届けるためのPull型施策が欠かせません。そのため、製薬企業が医療従事者向けオウンドメディア運用を行う際にも、SEOによる認知拡大が必須です。
SEOによって適切なキーワードで上位表示ができれば、製薬企業としては届けたい情報をより多くの見込み顧客やステークホルダーに伝えられます。医療従事者にとっても、知りたい情報をすぐに見つけられるようになるため、双方にメリットがあります。
医療従事者向けオウンドメディア構築時のSEO施策
SEOには、オウンドメディアの構築・運用のそれぞれのタイミングで留意するべきポイントがあります。まずは、構築時のポイントを紹介します。
効果的なURL設定
オウンドメディアの構築時には、「http://ドメイン/ディレクトリ名/ファイル名」となるようにURLを設定します。
Googleの公式見解 によると、URL構造はできる限りシンプルかつ、わかりやすいものが望ましいとされています。
わかりやすいURL設定はユーザー視点で見ても重要で、情報収集段階にあるユーザーに「求めている情報がありそう」と人してもらえる確率が高まります。
さらに、URLには「https化」の処理を施すと、より効果的です。https化の処理を行えば、ユーザーのデバイスと自社サイトでデータがやり取りされる際、当該データが悪用されないよう、安全に保護できます。これによりユーザーは安心して自社サイトを利用可能です。
HTMLタグの設定
Webサイトは、<html>・<head>・<body>の3種類のタグで構成されており、それぞれに役割があります。
その中でも、<head>タグは、ページの基本的な情報を記載する部分であり、SEOでの検索順位上昇に貢献しやすい箇所です。<head>タグの例としては、以下の通りです。
- <title>…ページタイトルを記載するタグで、検索結果画面にもそのまま表示される
- <description>…ページの概要をまとめるためのタグ
- <keywords>…ページ内で使われているメインキーワードを示すタグ
上記のようなHTMLタグを記述することで、検索エンジンのクローラー(ロボット)がページの内容を把握しやすくなり、評価上昇につながります。
製薬企業でも踏まえておくべきHTMLに関する必要知識については、以下の記事でも解説していますので、あわせてご参照ください。
ユーザーフレンドリーな設計
ユーザーフレンドリーとは、オウンドメディアの画面や機能といったインターフェース部分を、ユーザーにとってより使いやすいものに設計する施策です。
例えば、「読み込み速度の向上」「わかりやすいサイト構造」「スマホビューへの対応」などを行えば、ユーザーの離脱率を下げ、再訪の可能性を高められます。
これらはオウンドメディアの構築段階だけでなく、新たなコンテンツを作成するたびにしっかり対応できているか確認することが望ましいでしょう。
医療従事者向けオウンドメディア運用時のSEO対策
ここからは、製薬企業が医療従事者向けオウンドメディアの運用時に必要なSEO対策を解説します。
Step 1. サイトのSEOに関する方針を決める
まずは、自社サイトのSEO施策やキーワード選定をする上で重要な方針を決めなければなりません。ここで言う方針とは、サイトの「ペルソナ(読者層)」「実施する施策としない施策」などです。
医療従事者のペルソナを設計する際には、年齢や性別、居住地、趣味、休日の過ごし方など、自社にとって「理想の顧客像」を詳細に設定します。そうすれば、より自社が採るべき施策をイメージしやすくなります。
ペルソナ設計の際には、自社の中でただイメージするだけでなく、実際に見込み顧客にインタビューを実施するのも効果的です。利用従事者の考えを粒度高くヒアリングできれば、より効果的なSEOを実施できます。
Step 2. 自社の取引先のニーズに合ったキーワードの選定
運営方針が定まったら、自社の見込み顧客である医療従事者が「知りたい」と考えているキーワードを調査して選定します。
キーワード調査では先述のペルソナを基にしてピックアップし、実際にはどれくらい検索されているのかをGoogleが提供している無料ツール「キーワードプランナー」などを使って調査します。
キーワードプランナーを使って分かることの一例は、以下の通りです。
- 検索ボリューム
- 競合性
- 関連キーワード
- クリックされた際の費用目安(※デジタル広告向けの場合)
他にも、サーチコンソールでは各ページの「インデックス状況(検索結果での表示or非表示)」の確認機能や、サイトに問題が発生した際のアラートメッセージの受け取り機能などがあります。
SEOでは選定したキーワードをもとに記事コンテンツなどを作成していきますが、数が増えてくると管理業務も煩雑になりがちです。そのため、コンテンツツリーを設計して、構造的に取り組む必要があります。
キーワードプランナー、サーチコンソールについては、以下の記事で詳しく解説しています。
Step 3. SEOライティング
医療従事者に向けたオウンドメディア運用では、医療従事者視点でわかりやすい情報を得られるサイトであることが重要です。
そのためには「SEOライティング」を踏まえたコンテンツ作成が必要で、具体的には以下のような点を意識します。
- タイトル、見出しに対策キーワードを盛り込む
- 最適なファイルサイズの画像を配置する
- 本文に対策キーワードと一緒に出現しやすい共起語も多く盛り込む
- 記事の独自性・専門性を高める
- 箇条書き、マークアップなどのユーザーファーストを意識したデザイン
- 記事の独自性・専門性を高める
SEOライティングでは網羅性を“意識しすぎない”ことも重要です。あらゆる検索ニーズを満たそうとするあまり、1記事に多くの情報を詰め込みすぎてしまうと、かえって分かりづらいコンテンツになってしまいます。
さらに、SEOライティングを実施する際、対策キーワードごとに検索結果上位の記事を参考にすると思われますが、ただ真似をするだけではあまり効果的ではありません。上位記事はあくまで参考にしつつ、「想定読者が抱える悩みや知りたい情報はなんだろう」という問いを忘れないようにすることが大切です。
Step 4. 内部リンク・被リンク施策
コンテンツを作成した後は、より多くの読者に記事が読まれるように、内部リンク・外部リンク施策を実施すると効果的です。
内部リンク施策は記事コンテンツのページ内に製品紹介ページへのリンクを貼るCV(コンバージョン)を意識した施策や、関連記事同士をリンクさせて回遊率を高めるといった施策が考えられます。
対して、被リンク施策は、SNSによる発信、良質なコンテンツ(例えば、一時情報の発信、独自の視点、専門的な知見から有益な方法を発信するなど)によりシェアされることを目指すなどが考えられます。
ただし、外部リンクは内部リンクに比べて自社でコントロールしづらいため、まずは内部リンクから積極的に実施するのが望ましいでしょう。内部リンク施策では、以下のような取り組みも有効です。
- 最新記事をTOPページやサイドバーへ掲載する
- 各記事にカテゴリを設定する
- パンくずリスト作成する
医療従事者向けオウンドメディアのSEOで必要な考え方
BtoBのSEOでしばしば発生する問題として、「検索キーワードのボリュームが少なく、そもそもあまり検索されていない」という点が挙げられます。
特に、医療従事者向けの情報発信では専門性も高くなりがちです。そのため、キーワード次第では自然検索やリンク施策だけでなく、メルマガやSNS、会員制サイトなど、さまざまなチャネルを用いたアプローチも検討されます。
さらに、専門性の高い内容を発信する場合は、情報の「信頼性」「権威性」をどう担保するのかについても、考えなければなりません。
あくまで、自社の見込み顧客である医療従事者が「どのような情報を求めているのか」「どのような経路で情報収集をおこなっているのか」について、粒度高く可視化したうえで、施策に取り組む必要があります。
医療従事者のニーズに即したSEOで流入増加につなげよう
製薬企業におけるSEOは、やみくもに対策するのではなく、取引先、顧客となる人のペルソナを明確にし、その層に向けて関心のあるキーワードを選択することが必要です。
「自社の見込み顧客に質の高いコンテンツを届ける」という大前提はBtoB/BtoCを問わず共通です。枝葉の施策に捉われないようにしつつ、見込み顧客視点に立ったSEOを実施しましょう。