製薬企業のリボンモデルは1to1コミュニケーションの精度アップで実現する/MDMD2023Autumnレポート

製薬企業のリボンモデルは1to1コミュニケーションの精度アップで実現する/MDMD2023Autumnレポート

2023年9月末に開催した“Medinew Digital Marketing Day(MDMD)2023 Autumn”。医療機関や患者を取り巻く環境が変化する中、今製薬企業にも「リボンモデル」の実現が求められています。製薬企業が実現すべきリボンモデルの概要と課題、さらにはチャネルが多様化する中でオフラインマーケティングの鍵となる1to1コミュニケーションの精度アップ支援について解説された、ラクスル株式会社太田百香氏のセッションをご紹介します。

製薬企業のリボンモデルのゴールは「より患者視点の処方」

リボンモデルとはリクルート社が提唱した、2者をベストマッチングするためのビジネスモデルです。製薬企業に当てはめてみると、医師・医療従事者と患者双方の「認知」を広げて人を集め、「行動」を促した上で、「処方」で双方を結ぶことがゴールであると、太田氏は掲げました。

ブロックバスター時代の終焉や希少疾患治療薬の成長、PROMs(患者報告アウトカム尺度)の重視、臨床的・患者の主観的・経済的といった3つのアウトカムの重要性の高まりなど、製薬企業を取り巻く環境は変化しています。より患者視点の指標を重視する「処方」が必要であるとも説きました。

リボンモデルをベースとしたコミュニケーション
2023.9.27 ラクスル(株)「医師・患者の行動変容を促す!令和版製薬プロモーション最新事例〜製薬企業が実現すべき「リボンモデル」とは?〜」講演資料より抜粋

リボンモデルのゴールを実現するにあたっては、そもそもリボンモデルを描けていることが必要であり、次に実現のための行動を起こせているかが問われます。

リボンモデル実現のハードルは「行動を起こせているか」

太田氏は、リボンモデルを描けていない製薬企業は少なく、課題の多くは実現のための「行動」にあるとして、to患者とto医師・医療従事者に分けて、その課題を整理しました。

情報不足の解消が必要(to患者)

2023年2月に日本製薬工業協会が発表した「希少疾患患者さんの困りごとに関する調査」1)のうち情報収集および情報発信に関する困りごとでは、患者がペイシェントジャーニーの中で情報収集が大変だった項目は、病気のこと71%、服薬について40%、新薬・治療薬情報37%となり、疾患認知がボトルネックになっていることがわかりました。製薬企業には、患者に対して疾患認知のための情報提供の施策が求められると言えます。

情報過多の解消が必要(to医師・医療従事者)

COVID-19も影響し、オンラインでの情報量はどの業界においても年々増加傾向にあります。Peatix Japan株式会社が2021年11月に発表した「2021年 イベント調査レポート」2)によると、オンラインイベント数は2019年から2021年の2年間で6倍増加しています。また、2022年9月に発表された株式会社ベンチマークジャパンの「メールマガジン購読状況調査 2022年度版」3)によると、1日10通以上メルマガを受信する人の割合は40%となっており、医師においても情報過多の悩みを抱えていると考えられます。

日常的な情報収集チャネルも多様化、複雑化しており、医師の年代によって異なっています4)。また、職種によっても情報源として重要視するものは異なっており、2022年12月に発表された日経BPによる「情報収集に関する調査につきまして」5)によると、医師はMR、学会、学会誌・論文誌、薬剤師は医療系サイトの記事、薬剤師向け専門雑誌の記事、製薬企業主催のWeb講演会、看護師は医療系サイトの記事、看護向け専門雑誌の記事、医師の順となっています。

to 医師「情報収集の仕方の変化」1
2023.9.27 ラクスル(株)「医師・患者の行動変容を促す!令和版製薬プロモーション最新事例〜製薬企業が実現すべき「リボンモデル」とは?〜」講演資料より抜粋

今後、医師の働き方改革で、医師以外の職種へのタスクシフトやタスクシェアが進む中、各職種が重要視するチャネルでの情報発信は、ますます大切になっていくだろうと太田氏は解説します。

リボンモデル実現へ向けた打開策とは

続いて、製薬企業が理想のリボンモデルを実現するためには、より受け手に合わせた1to1コミュニケーションが大切であるとして、to患者、to医師・医療従事者に分けた施策が提示されました。

ペイシェントジャーニーに沿って、課題に応じた解決策を発信(to患者)

患者に対してはペイシェントジャーニーに沿って、課題に応じた解決策を実施していくことが原則となります。

ペイシェントジャーニーに則ったプロモーション
2023.9.27 ラクスル(株)「医師・患者の行動変容を促す!令和版製薬プロモーション最新事例〜製薬企業が実現すべき「リボンモデル」とは?〜」講演資料より抜粋

「発症自覚」の段階では、疾患の認知度を上げ、当てはまる病気を知ってもらう情報提供が必要で、患者に合わせたオムニチャネル化を進めるのが良策です。「受診検討」の段階では、より迅速に適した病院や診療科が見つかる動線の確保が必要になります。そのためにはかかりつけ医の疾患認知度アップも必要です。「診断・治療」の段階では、医師への的確かつ速やかな情報提供、「支援」の段階では、社会全体への疾患認知向上を目的として、行政との連携強化が必要とされます。

また、ペイシェントジャーニーのいずれの段階においても、患者だけでなく家族など患者周辺の人への認知も広げる施策も必要です。特に希少疾患においては、小児患者数が多いこともあり、家族や身近な人の認知度向上が鍵となります。

太田氏は、ペイシェントジャーニーのフェーズ、ターゲット(患者本人と周辺家族)に適した1to1コミュニケーションが重要だと話しました。

チャネルと情報内容の精度アップを(to医師・医療従事者)

医師の情報収集チャネルは多様化しており、臨床経験15年以下の医師がSNSを中心に情報収集しているのに対して、16年以上の医師はWebサイトやメールが中心です。

to 医師「情報収集の仕方の変化」2
2023.9.27 ラクスル(株)「医師・患者の行動変容を促す!令和版製薬プロモーション最新事例〜製薬企業が実現すべき「リボンモデル」とは?〜」講演資料より抜粋

また、前述の通り医師、薬剤師、看護師では重視する情報源が異なっています。ターゲットと検討フェーズ、最適なチャネルを組み合わせて、それぞれの職種に合った情報提供をしていくことが重要です。

1hto1コミュニケーションにはよりセグメントを絞ったプロモーションを

以上のことから、フェーズごとのより個別化したメッセージ発信が必要だとして、太田氏はラクスルのサポートを大きく2つ提案しました。

①MRのプロモーション支援
小ロット、短納期、低価格で1通のDM発送から可能で、プロモーションにかけるMRの工数を省いて効率化でき、未リーチ層へのアプローチができます。さらに、MRおよび事業所ごとなどの資材利用状況の分析などもでき、MRや資材ごとのニーズを特定してPDCAを回し、プロモーションの効果を最大化することが可能です。

②セグメント別オフラインプロモーション支援
オフィスビルのトイレのサイネージ広告やエリアを絞ったポスティングサービスなどで、よりターゲットを絞り込んだ適切なチャネルで疾患啓発情報などを届けることができます。

太田氏は、上記を活用して製薬企業のプロモーションをラクにし、より医師・医療従事者や患者の行動変容を促すオフライン1to1コミュニケーションを構築する力になれると締めくくりました。

<出典>※URL最終閲覧日2023.10.16
1)製薬協, 2023年2月, 「希少疾患患者さんの困りごとに関する調査」
https://www.jpma.or.jp/information/industrial_policy/rare_diseases/report.html
2) Peatix Japan株式会社, 2021年11月, 「2021年 イベント調査レポート」
https://blog.peatix.com/featured/2021_event_survey.html
3) 株式会社ベンチマークジャパン, 2022, 「メールマガジン購読状況調査 2022年度版」
https://www.benchmarkemail.com/jp/blog/newslettersurvey2022/
4) Medinew, 2023年6月, 「医師の情報収集方法および製薬企業との関わりに関する調査レポート2023年版」
https://www.medinew.jp/downloads/research/dr-survey-2305-channel
5)日経BP, 2022年12月, 「情報収集に関する調査につきまして」
https://www.nikkeibp.co.jp/ad/info/00402/Chosa221215.pdf