Web講演会データが導く、パーソナライズドマーケティングの新しい可能性|MDMD2025Autumnレポート

製薬企業によるWeb講演会の評価では、視聴数などの数値は取得できるものの、医師の理解や意向といった“本来見るべき定性”は十分に把握できていません。データは存在しても、医師一人ひとりの真のニーズや関心までは捉えきれず、次のアクションに結びつけられていないのが現状です。
2025年10月末に開催した「Medinew Digital Marketing Day(MDMD)2025 Autumn」では、こうした課題を踏まえ、株式会社Jストリームの小山智治氏がWeb講演会インタラクティブデータを活用したパーソナライズドマーケティングの実現について講演しました。
Web講演会の数字だけでは見えない、医師の理解と関心
製薬企業の多くは、Web講演会の効果を視聴数などの数値で評価しています。しかし、これらの数値だけでは、医師が講演のどこに関心を持ち、何を理解したのかまでは読み取ることができません。小山氏は、「データは十分にあるのに、次のアクションに生かせていない」と、こうした現状を指摘します。
医師一人ひとりの理解や気づきに踏み込むためには、従来の定量指標に加えて、講演中の反応や心理の変化といった“定性データ”を捉える視点が欠かせません。
多様な指標を統合する「WebinarAnalytics」
Jストリームが提供するWeb講演会データでは、視聴数や視聴時間、離脱ポイントといった基本データに加え、インサイトボタン、質問投稿、リアルタイムアンケート、事後アンケートなど、インタラクティブな反応データを可視化できます。
さらに、Jストリームが提供するWeb講演会分析ツール「WebinarAnalytics」を活用することにより、「視聴人数」「視聴時間」「ユーザー満足度」などを軸とした多面的な分析を行えます。

さらに、ユーザー独自の重み付けを設定し、評価軸を統一できるスコアリング機能を備えており、講演会の質を多角的に振り返ることが可能です。
AIが支える“パーソナライズドマーケティング”の実現
従来のWeb講演会では、「医師が視聴したかどうか」「どのくらい視聴したか」といった定量的なデータが主な評価指標でした。しかし、それだけでは、医師がどのテーマに共感し、どの部分で理解を深めたのかまでは分かりません。
講演会データの活用目的は、単に数値を集めることではなく、「どの医師に、どんな情報を、どのタイミングで届けるか」を最適化することにあります。
こうした考えのもと、JストリームはWeb講演会中のインサイトボタンや質問投稿、アンケートなどのデータを活用し、医師の関心の変化を可視化しています。これにより、医師の反応に基づいたコミュニケーション設計、すなわち、パーソナライズドマーケティングの基盤づくりが可能になります。
AIがもたらす「医師の理解の可視化」
Jストリームでは、医療業界専用にチューニングしたセキュアな生成AIを開発し、定性分析データの第一弾として、講演内容の高品質な全文文字起こしと要約サマリーを翌日に提供するサービスを新たに開始しました。

さらに現在、講演会の定量データと定性データを統合的に分析・評価するAIサービスを開発中です。このシステム単体でも、Web講演会の総評、改善点、成功要因などの分析が速やかに行えますが、WebinarAnalyticsと連携することで、より高品質な分析が行えるようになります。
AIとCRMの連携により向上するMRアクションの精度
小山氏は、こうした取り組みが「『Share of Voice(発信量の可視化)』から『Share of Mind(理解・共感の可視化)』」への転換につながると説明します。

Web講演会に対する医師の具体的なアクションをMRに伝達するためには、Web講演会から得られた医師個人のデータをCRM連携させることが重要です。
CRM連携によるメリットは大きく3つあります。第一に、担当医師のステージやアンケート結果など、MRが求める情報をダイレクトに共有できること、第二に、CRMでデータ確認後、迅速にフォローアップメールなどのアクションが可能なこと、第三に、Web講演会データの共有自動化により業務負担が軽減することです。
以下は、CRM連携後のダッシュボードのイメージです。

MRが優先すべきアクションがトップ画面に、フォローアップすべき医師が未完了タスクとして表示されています。未完了医師をクリックすると推奨アクション、対象者の属性やステータスが表示されます。
また、対象医師をクリックすると、直近のWeb講演会視聴状況やインタラクションデータの実績、推奨アクションプランが提示されます。小山氏は「必要な情報を一目で把握できることで、MRのフォローアップ効率が大きく高まります」と述べます。
このように、講演会でのインタラクションや質問投稿などの反応情報をCRMと連携させることで、MRは担当医師の関心領域やステータスを即座に把握し、より的確なフォローアップを行うことが可能になります。
例えば安全性に関するパートに反応が多かった医師には安全性関連の資材を、作用機序に関心を示した医師にはメカニズムの資料を紹介するなど、MRのフォローアップを医師ごとに最適化できます。
Web講演会が導く、医師理解を高めるマーケティング
AIによる定量・定性データの統合分析とCRM連携の進化により、Web講演会は「製薬企業から医師への情報提供チャネル」から「医師個人のニーズを把握できる場」へと役割を変えつつあります。医師一人ひとりの関心や理解度を可視化し、そのデータを行動に結びつけることで、より的確でパーソナライズされた情報提供が可能になります。
Web講演会のデータを起点にしたこの新しいアプローチは、MR活動の質を高めるだけでなく、医師にとっても自身の関心に沿った有用な情報が届く体験へとつながります。Web講演会を通じたコミュニケーションが深化することで、医療現場との関係性は、より理解と信頼に基づいたものへと進化していくことが期待されます。

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