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医師調査が示す『選ばれる医師向けサイト』の条件-AI時代の個別化とデータドリブンCX|ファーマIT&デジタルヘルス エキスポ 2026

医師調査が示す『選ばれる医師向けサイト』の条件-AI時代の個別化とデータドリブンCX|ファーマIT&デジタルヘルス エキスポ 2026

コロナ禍や医師の働き方改革を経て、医師の情報収集行動は大きく変化しています。限られた時間の中で効率的に必要な情報へアクセスしたいというニーズが高まる一方、製薬企業にはより質の高い顧客体験(CX)の提供が求められるようになりました。
  
こうした中、株式会社メディクト代表取締役の下山直紀氏は、「オムニチャネル化、AI活用時代を見据えた医師向けサイト構築とは」と題し、ファーマIT&デジタルヘルス エキスポ 2026にて講演。医師向けサイトの役割変化やデータ活用の重要性、さらにはAI時代を見据えた製薬マーケティングの方向性について解説しました。

医師向けサイトは「情報提供の場」から「CXを提供する場」へ

コロナ禍を機にMRのリアル訪問が大きく制限されたことで、医師が自らデジタルチャネルを活用して情報収集を行う機会は大幅に増加しました。その行動は現在も定着しており、多くの製薬企業が医師向けサイトの整備や機能拡充を進めています。

  

下山氏は、医師向けサイトの変遷について、「これまではコンテンツをいかに充実させるかが中心だったが、現在は医師一人ひとりのニーズや利便性を追求するユーザー中心の発想へと移行している」と説明しました。

  

さらに、2024年から本格化した医師の働き方改革も、医師向けサイトのあり方に大きな影響を与えています。医師の可処分時間が減少し、情報収集に割ける時間も限られる中、医師が会員登録している製薬企業の医師向けサイトは4社程度にとどまるといわれています。

  

こうした状況を踏まえ、下山氏は「継続的に利用されるサイトになるために何が必要かという視点が、これまで以上に重要になっている」と指摘しました。

Amazonに学ぶ、「データドリブンなCX」の有効性

継続的に利用されるサイトの姿を考えるうえで、下山氏が他業界の成功事例として取り上げたのがAmazonです。Amazonは業界トップの売上と顧客満足度を両立していますが、その原動力は、集積した顧客データをもとに、一人ひとりの顧客に最もストレスが少なく、かつ価値の高い体験を自動的に提供し続ける「データドリブンなCX」にあると説明しました。

  

その象徴が、強力なレコメンデーション機能です。

  • よく一緒に購入されている商品(クロスセル)
  • この商品を買った人はこんな商品も買っています(協調フィルタリング)
  • パーソナライズされたトップページ
  • 閲覧履歴に基づくリマインドメール

     

こうした複数のロジックを組み合わせて「次に欲しくなるもの」をデータから先回りして提示し、顧客の意思決定コストを極限まで減らしています。

  

その効果は数字にも表れています。McKinseyの調査ではAmazonの売上の35%がレコメンド経由とされる1)ほか、BarillianceやSalesforceなどによるEコマースのパーソナライゼーション調査でも、レコメンデーションによってページ閲覧数が約20%、滞在時間が13%増加し、直帰率も最大15%抑制されるという結果が示されています。

  

下山氏は、こうした顧客中心の設計は医師向けサイトにも十分応用できると強調しました。

メディクトの独自医師調査が示した「選ばれるサイト」の条件

メディクトでは、日経メディカル Onlineの医師会員を対象とした独自医師アンケート調査を2026年3月に実施しました。その結果、医師向けサイトの便利な機能として「Web講演会カレンダー」(29.5%)や「論文、文献検索」(26.6%)を挙げる医師が多かったものの、「おすすめコンテンツ表示」についても2割(19.8%)の医師が便利だと回答しており、比較的高い支持を集めていました。

  

医師向けサイトで便利だと思う機能は何ですか?
2026.4.23 (株)メディクト『オムニチャネル化、AI活用時代を見据えた医師向けサイト構築とは』資料より抜粋

一方で、メディクトが内資・外資の製薬企業54社を対象に実施した調査では、医師向けサイトに「おすすめコンテンツ表示」機能を実装していたのは22%(12社)にとどまりました。

  

下山氏は、「医師側にはニーズがあるにもかかわらず、多くのサイトでは十分に実装されていないというギャップが存在している」と説明。医師向けサイトには、まだ改善余地が大きく残されていることを示しました。

  

また、医師向けサイトで視聴したいコンテンツを尋ねた設問では、「ガイドライン解説」(52.2%)が最も多く、「疾患の基礎情報」(38.2%)、「診療に役立つ情報」(24.6%)が続きました。製品情報にとどまらない、診療や医療制度に関するノンプロモーションコンテンツへのニーズの高さは、毎回の調査で共通して見られる傾向だといいます。

  

製薬企業の医師向け会員サイトで視聴したいコンテンツは何ですか?
2026.4.23 (株)メディクト『オムニチャネル化、AI活用時代を見据えた医師向けサイト構築とは』資料より抜粋

メールマガジンに関する設問では、医師が1日に開封する製薬企業からのメールは2〜3通程度にとどまることが分かりました。さらに「開かない」「メルマガ登録はしていない」との回答が合わせて40.5%に上り、4割の医師にはそもそもメールが届いていないという現実も示されました。下山氏は、開封される数通に選ばれるタイトルやタイミングの工夫とともに、オプトアウトを防ぐ視点の重要性にも触れました。

  

製薬企業からのメールマガジンを一日何通開きますか?
2026.4.23 (株)メディクト『オムニチャネル化、AI活用時代を見据えた医師向けサイト構築とは』資料より抜粋

デジタル時代でも変わらないMRの価値

調査では、医師が医師向けサイトへ会員登録する理由についても分析されました。

  

最も多かったのは3年連続で1位となった「Web講演会を視聴したい」(44.9%)でしたが、下山氏が注目したのは3位に入った「MRに勧められたから」(14.0%)という回答です。

  

この結果は、デジタルチャネルの活用が進む中でも、MRとの接点が会員登録のきっかけとして依然大きな影響力を持っていることを示しています。

  

医師向けサイトを会員登録する理由
2026.4.23 (株)メディクト『オムニチャネル化、AI活用時代を見据えた医師向けサイト構築とは』資料より抜粋

なお、「Web講演会を視聴したい」という回答の推移を定点調査で見ると、コロナ禍の2022年4月には74.5%に達した後、2023年4月には31.0%まで低下しました。その後は30%台後半から40%前後で推移し、直近の2026年3月は44.9%と、コロナ禍以降で最も高い水準に回復しています。Web講演会へのニーズが再び高まりつつあることがうかがえます。

  

医師向けサイトを会員登録する理由の変化
2026.4.23 (株)メディクト『オムニチャネル化、AI活用時代を見据えた医師向けサイト構築とは』資料より抜粋

また、医師が情報収集や疑問解決のために利用する手段としては、「Web講演会」が50.2%で最多となった一方、「MRとの面談」も高い支持を集めました。対面(27.5%)とオンライン(8.2%)を合わせると35.7%に達し、医師にとって重要な情報源であり続けていることが分かります。

  

情報収集や疑問の解決によく利用する方法は何ですか?
2026.4.23 (株)メディクト『オムニチャネル化、AI活用時代を見据えた医師向けサイト構築とは』資料より抜粋

下山氏は、「Web講演会は単なる視聴コンテンツではなく、医師にとって疑問解決の場として機能している」と分析。さらに、MRとの面談についても高い有用性が認識されており、人的接点の価値は依然として大きいと説明しました。

  

こうした結果を踏まえ、今後の製薬マーケティングでは「デジタルかMRか」という二項対立ではなく、両者を融合したオムニチャネル型のCX設計が重要になるとの見解を示しました。

  

そして、継続的に利用される医師向けサイトを実現するためには、個別施策やコンテンツ単位の最適化だけでなく、チャネルやデータを横断したCX全体の設計へと発想を転換することが求められると述べました。

AI活用の成否を左右する「データの質」

近年、多くの製薬企業でAI活用への関心が高まる中、講演では「Next Best Action(NBA)」についても紹介されました。

  

NBAとは、顧客データをもとに、個々の顧客に対して最適なチャネル、コンテンツ、タイミングをAIがリアルタイムで判断し、次に取るべきアクションを提案する考え方です。

  

従来はデータを集積してから人が分析するまでにタイムラグが生じていましたが、AIの活用によって、ほぼリアルタイムで最適なアクションを提示し、自動実行まで担う時代が近づいていると下山氏は述べました。

  

下山氏は、「NBAを機能させる上で最も重要なのはデータの質だ」と強調しました。

  

AIがどれほど高度であっても、入力されるデータが不足していれば提案精度は高まりません。一方で、医師の行動履歴や興味関心が構造化された形で蓄積されていれば、より精度の高いパーソナライズ施策の実現が可能になります。

  

AI活用を推進するためには、まず顧客データ基盤を整備し、活用可能な状態にすることが重要だと述べました。

リアル講演会に眠るデータが次の競争力になる

下山氏は、製薬企業におけるデータ活用の盲点として「リアル講演会」を挙げました。

  

開催数の多い企業では年間2,000〜3,000件規模の講演会が開催されていますが、参加履歴やアンケート結果が十分にデータ活用されていないケースも少なくありません。

  

こうしたデータをCRMやマーケティングオートメーションと連携できれば、医師理解の解像度はさらに高まり、より精緻なCX設計につなげることが可能になります。

  

また、講演会の受付やアンケート取得をデジタル化することで、参加履歴や回答内容をリアルタイムで蓄積・分析できるようになります。これにより、従来は把握しづらかった医師の関心やニーズをデータとして捉えられるようになり、マーケティング施策の高度化にもつながります。メディクトの医師調査でも、リアル講演会の受付を二次元コード読み取りで行えることについて約46%の医師が「便利だと思う」と回答しており、20代から40代では半数以上が好意的でした。

  

リアルの講演会で、受付をQRコード読み取りで行えると便利だと思いますか?
2026.4.23 (株)メディクト『オムニチャネル化、AI活用時代を見据えた医師向けサイト構築とは』資料より抜粋

こうした課題に対してメディクトでは、製薬企業向けMAツール「BtoD」や、二次元コードを活用した講演会受付・参加データ管理ツールの提供を通じて、データ基盤づくりを支援しています。

顧客データの質と広がりが競争力の原資となる時代に

コロナ禍を経て役割を変えた医師向けサイトは、コンテンツの充実を競う段階から、医師一人ひとりの体験の質を競う段階に入っています。講演では、レコメンドをはじめとする個別化への医師ニーズと実装のギャップ、MRとデジタルを融合したオムニチャネル設計、AI活用の前提となるデータの質と、「選ばれるサイト」への道筋が一貫して顧客データを軸に示されました。リアル講演会のような、まだデータ化されていない接点まで含めて顧客理解を深められるかが、今後の差を生むでしょう。

  

下山氏は最後に、「顧客データをいかに広く、細かく、正確に収集・理解し、それをもとに一人ひとりに最適化された情報提供を行うかが、今後の競争力を左右する」と締めくくりました。

   

<参考文献>

1)McKinsey & Company, 2013.10.1, How retailers can keep up with consumers

https://www.mckinsey.com/industries/retail/our-insights/how-retailers-can-keep-up-with-consumers/