Web接客ツールとは?医療従事者向けサイトで役立つ機能や活用メリットを解説

Web接客ツールとは?医療従事者向けサイトで役立つ機能や活用メリットを解説

近年、業務効率化や提案力の向上を目指し、さまざまな業種で「Web接客ツール」を活用する動きが広まっています。Web接客ツールを上手に活用できれば、製薬企業も自社サイトを訪れる医師に効果的なアプローチが可能です。この記事では、製薬マーケティングの観点からWeb接客ツールの特徴や活用のメリットを解説します。

Web接客ツールとは?

Web接客ツールは、Webサイトを訪問したユーザーのニーズに合わせて最適な情報発信を行い、利用やダウンロード、問い合わせなどの望ましい行動を促すシステムです。

製薬企業の医療従事者向けサイトにおけるWeb接客は、主にサイトに訪れた医師をはじめとする医療従事者に向けて行う「オンライン上での接客」を指します。

例えば、「自社サイトを訪問した医師に困りごとがあった場合に、チャットボットで不明点を確認して適切に回答する」「サイトの閲覧履歴を分析してニーズの高い情報をポップアップで表示する」など、ユーザーの状況に応じて訴求内容を切り替える「双方向のアプローチ」が可能になります。こうした仕組みを導入することで、サイトからの離脱率の低減や製品の理解促進につながります。

Web接客ツールが製薬企業でも必要な理由

製薬企業のオウンドメディアにWeb接客ツールを導入すると、「自社の負担軽減および業務効率化」と「多様なニーズを持った医師への自社製品の訴求」が可能となります。

公益財団法人MR認定センターが公開する「2022年版 MR白書 -MRの実態および教育研修の調査-」1)で触れられているように、近年はMRの人数が減少し、COVID-19禍の影響により訪問の機会も減ったことから、医師に対するニーズの聞き取りや提案が行いづらい状況になっていると言えます。

そこで、Web接客ツールを活用できれば、医療従事者向けサイトを訪れた医師への提案を自動化しニーズを分析できるため、業務効率の改善とともに、医師の要望に沿った提案の実現が期待できます。

インターネットやSNSなど、デジタル上での情報収集が頻繁に行われる今、さまざまな情報に触れることにより医師のニーズも多様化しています。オンライン上における行動データを分析しパーソナライズされた提案を行えるWeb接客ツールなら、そうしたニーズにも即時対応でき、「資料請求」「問い合わせ」といった行動を促すことが可能です。

Web接客ツールの種類

Web接客ツールは、「ポップアップ型」「チャット型」「ハイブリッド型」の3種類に分類されます。

ポップアップ型

パソコンやスマートフォンの画面上に会員登録への誘導文言やおすすめコンテンツなどの情報をポップアップで表示し、告知します。

ただし、サイトの閲覧中に半強制的に情報が表示されるため、視認性は高い一方で閲覧者にストレスを与えかねない点を留意しましょう。

ポップアップで情報を表示させるタイミングは設定可能です。製品ページの閲覧時など、最終的な成果であるCVR(Conversion Rate:コンバージョン率)を向上できるタイミングや、サイトからの離脱タイミングに絞って表示させることが理想的と言えます。

また、画面のスクロールに合わせた配信も可能ですので、「スクロール率が高い=その情報に強い関心を持つ医師」とターゲティングし、効果的な訴求方法を検討しましょう。

チャット型

自社サイトの右下部分のスペースなど、閲覧の邪魔にならない箇所にチャットを埋め込むタイプのWeb接客ツールです。チャット型には、オペレーターが対応する手動型とシステムを活用する自動型に大別できます。

オペレーターが対応する場合は、医師の質問に対して臨機応変に対応できます。その反面、オペレーターの育成に手間がかかることや、24時間対応できる体制の構築が課題となるでしょう。

その点、想定される質問と回答を用意して、選択式のチャットを医師に提供するAIチャットボットが便利です。AIチャットボットは、医師のニーズを想定したシナリオ作成にデータ収集・分析が必要ですが、対応を自動化することで、長期的には大幅な業務効率化につながります。

ハイブリッド型

医師一人ひとりへの対応をより最適化したいと考えるならば、ハイブリッド型が向いています。

ポップアップ型とチャット型の使い分けにより「ユーザーの訪問回数や行動履歴に応じたポップアップの表示」や「チャットの表示・非表示の切り替え」など柔軟にアプローチでき、良質な顧客体験を提供できます。

製薬マーケティングでWeb接客ツールを導入するメリット

製薬マーケティングでWeb接客ツールを導入する、代表的な3つのメリットを紹介します。

コンバージョン行動の促進

オウンドメディアは、24時間稼働し続けている集客チャネルです。医師は好きなタイミングで利用できることがメリットである一方、MRによる対面コミュニケーションのようなパーソナライズされた提案を行いづらい点がデメリットと言えるでしょう。

そこで、Web接客ツールをサイトに実装すれば、医師のコンバージョン行動の促進が期待できます。例えば、チャットボットによる「製品に関する質問への回答」やポップアップによる「医師の関心の高い領域のセミナー告知」など、医師のニーズを想定してツールを活用すれば、行動変容を促しやすくなるのです。

自社サイトからの離脱防止

オウンドメディアの運用で大切なポイントは、サイトへのアクセス後に早い段階で離脱されないサイト構成です。せっかく医師を自社サイトに誘導してPV(Page View:ページビュー)を獲得できたとしても、コンバージョンに至らなければ費用対効果が上がりません。

自社サイトに訪れた医師が、「欲しい情報がない」「どのページを見ればいいか分からない」といった状況に陥った際に、適切なフォローがなければ離脱のリスクが高まります。

Web接客ツールの活用は、離脱を防止する有効手段になり得ます。特に、離脱が想定されるタイミングで「資料請求」「セミナー告知」などのポップアップを表示すれば、一度サイトから離れようとした医師に再び興味・関心を喚起できる可能性が高まります。

医師のニーズの把握

昨今は、医師の情報収集のチャネルが多様化し、購買に至るまでの行動も複雑化しています。複雑なニーズを把握するには、サイト上での行動や流入経路などの各種データを蓄積し、分析する必要があります。

Web接客ツールでは、医師への対応だけでなく、蓄積した行動データの分析も可能です。「閲覧情報」や「行動履歴(クリックしたリンクやスクロール割合など)」などのデータを収集し自社サイト内の行動を分析することで、医師のニーズの把握とともに、適切なアプローチを打つための戦略設計にも役立ち、競合他社と差別化したサイトづくりに役立ちます。

製薬企業がWeb接客ツールを選ぶ際のポイント

製薬企業がWeb接客ツールを選定する際のポイントについて、2点紹介します。

自社が抱える課題とツールが持つ機能のマッチ度

Web接客ツールは「チャットボットで問い合わせ対応を自動化させたい」「オウンドメディアにおけるコンバージョンをアップさせたい」など、自社が持つ課題によって選ぶべきツールが異なります。

もし「Webでの問い合わせは基本チャットボットで対応して、複雑な問い合わせはオペレーターへの問い合わせ窓口やMRに繋ぐ」という場合を想定するのであれば、基本的な機能を備えているWeb接客ツールを選べば十分でしょう。

シンプルな仕様のツールでも「製品の用法・用量を知りたい」「患者向け資材が欲しい」という質問に対し、サイト内の該当ページを表示するといった活用が可能です。

導入・運用のしやすさ

初めてWeb接客ツールを利用する場合には、ポップアップやチャットボットのシナリオを詳細に練り込む必要はなく、データ収集による学習が必要なAI型チャットボットを除き、使い続ける中でツールを乗り替えても問題なく活用できます。

根幹となる「医師のニーズを理解した上での最適なアプローチ方法」が定まっていれば、使用ツールを変えても適切に運用できる可能性が高いためです。

そのため、「チャット型なら自動返信機能や有人チャットの切り替え機能」「ポップアップ型なら閲覧履歴や行動履歴の収集機能」など、それぞれの機能の特性を踏まえて、最初は最低限の機能を持つツールから利用を始めてみることも方法の一つと言えます。

また、より効果的なWeb接客を実施するためには、なるべく製薬マーケティングのサポート実績がある代理店やコンサルティング会社の知見を借りることも検討しましょう。

製薬企業での活用可能なWeb接客ツールの例

ここからは、製薬企業で活用可能なWeb接客ツールの例を紹介します。

対話型AIを用いた医薬品の情報提供ソリューション開発|アステラス製薬

アステラス製薬は、カンバセーション ヘルスと共同で医療従事者が製品情報を24時間いつでも参照できる対話型AIエージェント「Collabot」を開発しました。2)

Collabotは、事前に承認された会話パターンに基づいて、質問者の正確な意図を理解した上で、最適な回答を提供できる「タクソノミー型」システムを導入。会話設計をよりハイレベルかつ効率的に行えます。

製品情報AI検索システムを導入|ノバルティスファーマ

ノバルティス ファーマは、木村情報技術の提供するAI搭載型の製品情報検索システムを導入しました。3)

利用者が製品を選択して質問を入力すると、データベースの中からAIが判断して最適な製品情報を回答しますが、あわせてその質問に関連した情報も提示します。

製薬・医療機器メーカー向けのチャットボットツール「Pharma Bot(ファーマボット)」を提供|医薬情報ネット

製薬・医療機器メーカー向けチャットボットの例として、医薬情報ネットが提供する「Pharma Bot(ファーマボット)」も挙げられます。4)

医療従事者の製品に関連する質問に回答するチャットボット「Pharma Bot」に加え、製薬・医療機器メーカーの社内規定やプロモーションコードの確認に利用できる「Pharma Bot for Office」の2種類を展開しています。

医師への最適な訴求にWeb接客ツールの活用を

製薬企業がオウンドメディア運用を行い、CVRの最大化を目指すにはWeb接客ツールの導入が効果的です。Web接客ツールの「ポップアップ」「チャットボット」機能を使えば、医師のニーズに合わせた最適な情報を自動で発信することが可能です。まずは、シンプルな機能を持つツールからの導入を検討しながら、効果的なWeb接客の施策を立てていきましょう。

<出典>※URL最終閲覧日2023.03.22
1)公益財団法人MR認定センター, 2022.09, 2022年版 MR白書 -MRの実態および教育研修の調査-「I.MRの概要について」(https://www.mre.or.jp/files/co/page/attachment221201/mre_info/Investigation/whitepaper/2022/2022hakusyo-1-6.pdf
2)PR TIMES STORY, 2021.06.08, [アステラス製薬 × カンバセーションヘルス] 対話型AIを用いた医薬品の情報提供ソリューション開発ストーリー(https://prtimes.jp/story/detail/wxGmRRhMORb
3)木村情報技術株式会社, 2020.09, 医療、製薬業界向けAIチャットボットの導入、活用事例(https://www.k-idea.jp/medical/case/#case_novartis
4)株式会社医薬情報ネット, PharmaBot 製薬・医療機器メーカー向けチャットボット(https://pharmabot.pin-japan.com/