製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2023年11・12月版

製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2023年11・12月版

昨今、医療・製薬業界でも、業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルマーケティングに注力する動きが多くなってきました。本記事では、2カ月に1回、各製薬企業のプレスリリースより、最新製薬マーケティングやDXの取り組みをピックアップ。マーケティング、プロモーション、DXについて、業界全体の最新トレンドや、他社がどのような動きをしているのかを把握できます。今回は、2023年11・12月版を対象に最新動向をまとめました。

※調査対象の企業は2023年5月にIQVIAより公開された22年度販売会社ベース企業売上ランキング(期間:2022年4月~2023年3月)より抜粋した19社。50音順にリストアップ

【2023年11・12月サマリー】

  • Webサイトの新設や更新は引き続き活発。テーマが明確に。アストラゼネカは、肺がん啓発プロジェクトの一環として、河村隆一さんが制作したオリジナル応援ソング「何気ないその笑顔が...」をプロジェクト公式サイトに公開。また同社では、胆道がんの治療に役立つ情報を提供するWebサイト「教えて、胆道がん」を新たにオープンした。田辺三菱製薬は、同社の医療用医薬品を使用中の患者さんに向けたWebサイト「患者さんのためのくすりの情報」を新設し、医薬品情報へのアクセス性向上を強化。グラクソ・スミスクラインは、希少疾患である好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に関する医療従事者向けの情報提供を強化した。患者さん目線の情報提供や希少疾患の認知度向上など、各サイトの目的が明確になっている。


  • PHPの活用による個別化医療が進む。大塚製薬、カケハシ、イオンリテールで構成したコンソーシアムが、経済産業省「PHR利活用推進等に向けたモデル実証事業」に採択された。同社が開発した個別化健康サポートサービス「エイチル」を活用し、処方情報や生活習慣に関するアンケートデータをもとに、個々人に合った健康増進や重症化予防に繋がる提案を継続的に実施する。生活者のヘルスリテラシー向上に寄与することを目指す。


  • 外部企業や大学との連携でAIの医療活用が進展。ファイザーは、宮崎大学、NTTデータとともに複数医療機関の電子カルテデータに適用可能な、肺がん患者さんの薬物治療効果を判定するAIモデルを構築した。日本ベーリンガーインゲルハイムは、エムスリーと共同開発した線維化を伴う間質性肺疾患検出支援プログラム BMAXについて製造販売承認を取得したと発表。薬物治療の効果判定や疾患の早期発見など、AIの活用の幅が広がっており、今後ますます製薬企業のこうした動きは触れてくるとみられる。

【各社プレスリリース抜粋】

■アストラゼネカ株式会社

アストラゼネカ、肺がん啓発プロジェクト「知ってもらいたい、肺がんのこと。」河村隆一さんによる初の完全オリジナル楽曲「何気ないその笑顔が...」11月2日(木)公開

2023年11月2日

アストラゼネカは、11月の肺がん啓発月間における取り組みの一環として、肺がん治療経験のあるアーティスト河村隆一さんが、ご自身の経験や肺がん患者さんの声をもとに制作した、完全オリジナル応援ソング「何気ないその笑顔が...」をプロジェクト公式サイトにて11月2日(木)より公開。また、楽曲制作に伴い河村隆一さんの姿を追ったドキュメンタリー映像も同日より公開した。

アストラゼネカは、2020年より、肺がんの早期発見に向け「肺がん啓発プロジェクト」を推進。本プロジェクトは、肺がんと向き合う上で重要な「肺がんの早期発見」、「定期的ながん検診」の大切さの周知、また「女性や非喫煙者でも罹患する可能性がある」という見落としがちなポイントの認知拡大を目的とした取り組み。河村隆一さんは、非喫煙者でありながら肺がんに罹患したこともあり、認知拡大のために2021年からアストラゼネカの「肺がん啓発プロジェクト」に参画している。

https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2023/2023110201.html

アストラゼネカ、胆道がん患者さんとそのご家族のための情報サイト「教えて、胆道がん」をオープン

2023年12月11日

アストラゼネカは、胆道がんの治療に役立つ情報を提供するWebサイト「教えて、胆道がん」を、12月8日にオープンした。胆道がんは年間約2万3000人が罹患しているがんで、その5年生存率は膵がんの次に低く、治療選択肢も長年限られていた1)。アストラゼネカが2023年2月に実施した胆道がん患者調査では、胆道がんと診断される前から、胆道または胆道がんについて知っていた患者さんは2割程度に留まり、約半数は全く知らなかった(名前も聞いたことがなかった)と回答している。

「教えて、胆道がん」では、胆道がんと診断された患者さんやご家族の抱える疑問、お悩みを4つのカテゴリ「胆道がんとは?」「治療」「コミュニケーション」「日常生活」に分け、胆道の基礎知識から治療中の日常生活を送りやすくするヒントまで、Q&A形式で掲載。多くの胆道がん患者さんと接してこられた胆道がん専門医およびがん相談支援センターで、胆道がんをはじめ、多くのがん患者さんの相談に向き合っている看護師がそれぞれの目線から回答した内容を掲載している。

1) Foundation for Promotion of Cancer Research. Cancer Statistics in Japan – 2023. Available at: https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/pdf/cancer_statistics_2023.pdf.
Accessed December 2023.

https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2023/2023121101.html


■大塚製薬株式会社

経済産業省「PHR利活用推進等に向けたモデル実証事業」に採択 "意識することなく健康になっていくヘルスケアサービス"を開始

2023年11月8日

大塚製薬は、株式会社カケハシ(以下「カケハシ」)およびイオンリテール株式会社(以下「イオンリテール」)と構成したコンソーシアムが、経済産業省が推進する令和5年度「ヘルスケア産業基盤高度化推進事業(PHR利活用推進等に向けたモデル実証事業)」の実証事業者に採択されたことを発表。東京都内のイオン薬局で10月より実証事業を開始した。

当コンソーシアムで実施するヘルスケアサービスは、イオンリテールが展開する「イオン薬局」の薬剤師が、カケハシが提供する薬局体験アシスタント「Musubi」および患者フォローシステム「Pocket Musubi」を通じた来局者とのコミュニケーションの中で、大塚製薬が開発した個別化健康サポートサービス「エイチル」を活用した健康提案を行うことで、来局者の日常の生活スタイルが自然と改善され健康になる環境を構築するもの。処方情報や生活習慣に関するアンケートデータをもとに、個々人に合った健康増進や重症化予防に繋がる提案を継続的に実施することで、日常生活の中で "意識することなく健康になっていくヘルスケアサービス"の実現を目指す。

https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2023/20231108_1.html


■グラクソ・スミスクライン株式会社

GSK、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)についてウェブサイトを通じた情報提供活動を強化

2023年12月6日

グラクソ・スミスクラインは、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis、以下、EGPA)について、Webサイトを通じた情報提供活動の取り組みの一環として、医療関係者向け情報サイト「GSKpro」の情報拡充と一般向け疾患情報Webサイト「EGPA.jp」の更新を行なった。

医療従事者向けの情報提供として、新たに、GSKのホームページの医療関係者向けサイト内に、EGPAに関する情報ページを追加。本情報ページには、文献情報などを基にEGPAの歴史や疫学、病態の仕組み、症状、診断、治療など疾患に関する総合的な情報を掲載している。これに合わせ一般向け疾患情報Webサイト「EGPA.jp」では、新たに、「病医院検索」ができるリンクを追加。EPGAの早期診断と早期からの適切な治療を支援するための取り組みとしている。

https://jp.gsk.com/ja-jp/news/press-releases/20231206-egpa/


■田辺三菱製薬株式会社

医薬品情報サイト「患者さんのためのくすりの情報」を開設-患者さんの必要な医薬品情報へのアクセス性向上を実現-

2023年11月7日

田辺三菱製薬は、患者さんのくすりに対する正しい知識と理解を深め、くすりの適正使用を推進することを目的として、田辺三菱製薬の医療用医薬品を使用中の患者さんに向けたWebサイト「患者さんのためのくすりの情報」(以下「くすりの情報」) を開設した。

本サイトには、田辺三菱製薬が国内で販売している全ての医療用医薬品を掲載しており製品名で検索すると医薬品情報へアクセスできる。スマートフォンにも対応。本サイト開設により、いつでも、どこでも最新の医薬品情報入手が可能となり、医療関係者の皆さんには、患者さんに服薬指導時のツールのひとつとしてご活用いただける。

https://www.mt-pharma.co.jp/news/2023/MTPC231107.html


■ファイザー株式会社

日本初、複数医療機関の電子カルテデータに適用可能な薬物治療効果判定AIモデルを構築

2023年12月5日

国立大学法人宮崎大学、株式会社NTTデータおよびファイザーは、複数医療機関の電子カルテデータに適用可能な、肺がん患者さんの薬物治療効果を判定するAIモデルを構築した。本モデルは、電子カルテの非構造化データを自然言語処理し、薬物治療効果を抽出するもの。

検証の結果では、複数医療機関の電子カルテデータに適用可能であることや、本モデルで抽出した薬物治療効果から算出した臨床研究の評価項目は、人が抽出した結果と同様の傾向を示すことを確認。多施設の大規模電子カルテデータベースから医療に関する臨床アウトカムの情報を効率的に収集して活用することができれば、さらなる個別化医療の進展や、適切な医薬品への早期のアクセス等、さまざまなベネフィットが期待されている。

https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2023/2023-12-05


■日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社

エムスリーと日本ベーリンガーインゲルハイムが共同開発した線維化を伴う間質性肺疾患の検出支援を行うAI医療機器「BMAX」の承認取得・提供開始

2023年11月30日

エムスリー株式会社と日本ベーリンガーインゲルハイムは、線維化を伴う間質性肺疾患検出支援プログラム BMAXについて製造販売承認を取得したと発表。2023年11月よりエムスリーAIプラットフォームでの提供を開始した。

本製品は、胸部単純X線画像を解析することで、線維化を伴う間質性肺疾患(線維化ILD)にみられる所見を検出し、その確信度スコアを提示するプログラム。国内医療機関の4,000枚以上の検査画像データを学習データとして用い、ディープラーニングを活用して開発された。臨床試験では、軽微2)な線維化ILD所見を有する胸部X線画像を本ソフトウェアを用いて読影すると、非専門医が単独で読影した場合と比べて線維化ILDの検出感度が向上することが示された。本製品を使用することで、軽微な線維化ILDの早期発見に繋がることが期待されている。

2)呼吸器専門医3名の判定結果を正解と定義し、正解「陽性」画像に対する左右各肺の網状影又はすりガラス陰影の割合が25%未満または片肺で50%未満のもの

https://www.boehringer-ingelheim.com/jp/press-release/20231130-01