製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2024年3・4月版

製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2024年3・4月版

昨今、医療・製薬業界でも、業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルマーケティングに注力する動きが多くなってきました。本記事では、2カ月に1回、各製薬企業のプレスリリースより、最新製薬マーケティングやDXの取り組みをピックアップ。マーケティング、プロモーション、DXについて、業界全体の最新トレンドや、他社がどのような動きをしているのかを把握できます。今回は、2024年3・4月を対象に最新動向をまとめました。

※調査対象の企業は2023年5月にIQVIAより公開された22年度販売会社ベース企業売上ランキング(期間:2022年4月~2023年3月)より抜粋した19社。50音順にリストアップ

【2024年3・4月サマリー】

  • デジタルヘルスの活用

デジタル技術を活用し、医療現場や患者のニーズに応えるソリューションを提供する事例が多く見られる。アストラゼネカと富士フイルムが共同開発した医療情報システムは、切除不能なステージIII NSCLCに対する化学放射線療法の過去症例検索や放射線治療計画の表示で医師をサポート。大塚製薬のデジタル治療アプリ「Rejoyn®」は、大うつ病の補助療法としてFDAの認可を取得。デジタルヘルスの市場は今後も拡大していくと考えられる。

  • 予防医療・未病への取り組み

製薬企業が予防医療や未病の領域に注目し、早期発見・早期介入のためのツールやサービスを提供。エーザイの「のうKNOW®」は脳の健康度をセルフチェックできるツールで、未病の見える化と介入に寄与し、神奈川県民の意識・行動変容につながるとして、神奈川県の「ME-BYO BRAND」に認定された。沢井製薬では、北海道大学病院のパーソナルヘルスセンターと連携し、パーソナル・ヘルス・レコード管理アプリ「SaluDi」を活用して病気の予防に取り組む。

  • 製薬企業による医療へのVR活用

VR(バーチャルリアリティ)技術の医療分野への活用が進んでいる。大塚製薬とジョリーグッドが共同開発した「感情認知トレーニングVR」は、自閉スペクトラム症などの発達特性を持つ人を対象とした、感情の読み取りを学ぶ世界初のVRトレーニングプログラム。従来の方法では困難であった「当事者が感情移入して、相手の感情に共感する実践的な練習を行うこと」や「対人不安によって集団トレーニングに参加できない」といった課題を、VRを用いることで解決している。今後は、VR技術が患者の社会参加に寄与することが期待される。

【各社プレスリリース抜粋】
■アストラゼネカ株式会社

アストラゼネカと富士フイルム、肺がんの化学放射線療法の過去症例を検索できる医療情報システムを共同開発

2024年4月9日

アストラゼネカと富士フイルム株式会社は、切除不能なステージIII非小細胞肺がん(Non-small cell lung cancer、以下、NSCLC)に対する化学放射線療法(Chemoradiotherapy、以下、CRT)の過去症例を検索できる医療情報システムを共同で開発。
近年の放射線治療の高度化や免疫チェックポイント阻害薬の登場による治療法の進展に伴い、切除不能なステージIII NSCLC患者にとってCRTの重要性がますます高まっている。しかし、放射線治療計画の作成は、ステージIII NSCLCの腫瘍の大きさとリンパ節転移の位置のパターンが多岐にわたること、また、放射線の影響による肺臓炎などの有害事象を引き起こさないようにする必要があることから難しく、医療現場の負担となっていた。
本システムは、両社が2021年より共同で開発を進めてきた医療情報システムで、切除不能なステージIII NSCLCに対するCRTの過去症例の検索に加え、放射線治療計画の表示が可能。医師がCT画像を入力し腫瘍の位置や検索条件を指定すると、データベースから腫瘍の中心の相対位置が近い過去症例を検索し、医師が参照したい症例の放射線治療計画の情報を表示して、医師による放射線治療計画の作成をサポートする。
アストラゼネカと富士フイルムは、本システムの提供を通じて、患者に対する治療の最適化につなげ、一人でも多くの患者さんの予後改善に貢献することを目指す。

https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2024/2024040901.html

■エーザイ株式会社

脳の健康度セルフチェックツール「のうKNOW®」が神奈川県の「ME-BYO BRAND」に認定

2024年3月28日

エーザイは、同社の脳の健康度セルフチェックツール「のうKNOW®」が、神奈川県の「ME-BYO BRAND」に認定されたことを発表。
「ME-BYO BRAND」は、優れた未病関連の商品・サービスを神奈川県が認定することにより、未病産業の魅力を周知し、産業化の牽引を図るもの。生活習慣、生活機能、メンタルヘルス・ストレス、認知機能の領域において、未病の見える化と介入に寄与し、神奈川県民の意識・行動変容につながると評価されたものが認定される。
「のうKNOW」(非医療機器)は、PCやタブレット端末、スマートフォンを用いた簡便なトランプテストによって、脳の反応速度、注意力、視覚学習および記憶力をチェックすることができるツール。利用者が単独かつ短時間(約15分)で測定することができ、日常生活や健診等において、定期的なセルフチェックが可能で、これまでに多数の健診機関・研究機関・自治体・企業・大学で導入されている。本ツールを用いて脳の健康度を定期的にセルフチェックすることにより、脳に係わる健康や疾患を正しく理解し、生活習慣の見直しや予防行動、医師等への相談などを行うきっかけとなることが期待されている。

https://www.eisai.co.jp/news/2024/news202420.html

■大塚製薬株式会社

FACEDUO「感情認知トレーニングVR」の提供を開始 ―感情の読み取りが難しい自閉スペクトラム症(ASD)などの発達特性をお持ちの方の支援として―

2024年4月2日

大塚製薬と株式会社ジョリーグッドは、両社の共同事業であるVRトレーニングプログラム「FACEDUO(フェイスデュオ)」の新たなプログラムとして、「感情認知トレーニングVR」の提供を開始した。
「感情認知トレーニングVR」は、「社会認知および対人関係トレーニング(SCIT)」の理論をもとに構築された"良好な人間関係を築く能力を育てる"ことを目的とした感情を学ぶ世界初のVRトレーニングプログラム(専門医監修)。相手の感情を読み取るのが難しいために、生活に生きづらさを感じている方を対象としたプログラムで、相手の感情を推測し、それに合わせた対応方法をVRで学ぶことで、良い対人関係を築くための基盤を作る。従来のトレーニングで使用されるイラストや2D動画の教材では、当事者が感情移入して、相手の感情に共感する実践的な練習を行うことが困難などの課題があった。
今後は医療・福祉施設のほか学校や一般企業への導入も目指すとしている。

https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2024/20240402_2.html

■大塚製薬株式会社

デジタル治療アプリ「Rejoyn®」が米国での認可を取得 ―FDAで認可された世界初の大うつ病治療アプリ―

2024年4月2日

大塚製薬とClick Therapeutics, Inc.,(以下「クリック社」)は、3月30日(米国時間)、両社が共同開発しているデジタル治療アプリ「Rejoyn®」(開発コード:CT-152)について、22歳以上の大うつ病(MDD)の患者さんに対する補助療法として、米国食品医薬品局(FDA)より510(k)クリアランス(以下「認可」)を取得したと発表。Rejoynは、MDDを対象としてFDAから認可された初めてのデジタル治療処方アプリとなった。
Rejoynはすでに臨床的にその効果が実証されている2つの治療方法、1)様々な感情を表す顔の表情を用いた認知機能訓練と、2)アプリによる認知行動療法を組み合わせ、6週間の治療セッションを通じて、抗うつ薬を服用している患者さんのうつ症状を改善するように設計されている。医療従事者の処方を必要とするアプリで、2024年後半には米国においてiOSとAndroidのア プリストアでダウンロード可能となる予定。

https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2024/20240402_1.html

■沢井製薬株式会社

北海道大学病院 パーソナルヘルスセンターにおけるPHR管理アプリ「SaluDi」の活用による連携のお知らせ

2024年4月8日

沢井製薬は、北海道大学病院 パーソナルヘルスセンター(以下、パーソナルヘルスセンター)の取り組みで鍵となるパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)管理において、「SaluDi」の活用によって連携することを発表。
パーソナルヘルスセンターは、〜ゲノム情報をあなたの健康に〜をキャッチフレーズに「病気になってから治すのではなく、病気になるリスクを知り、なる前に食事・運動を楽しく取り入れ自ら予防する。」を基本方針としており、最新の遺伝学的検査を用いて、将来病気になるリスクを予測し、その結果に応じた対策(運動、食事など)を提供することを目的として、2023年9月に北海道大学病院内に開設された。
SaluDiは、パーソナルヘルスセンターに来られる方々の日々のバイタル・ライフログデータ(体重、血圧、歩数、活動量など)やお薬の服用情報などの把握に使用されるだけでなく、パーソナルヘルスセンターで行われる遺伝学的検査であるゲノム解析や遺伝子多型等検査の結果の閲覧も可能。パーソナルヘルスセンターにおいて、SaluDiの活用を通じて、地域住民、地域医療機関の架け橋になるよう努めていくとしている。

https://www.sawai.co.jp/release/detail/633