サワイグループが目指す、PHRアプリ「SaluDi」で切り開く新しい健康社会の実現/メディカルDX・ヘルステックフォーラム2023
2023年7月29日にオンラインで開催された、医療・ヘルスケア分野でのDX活用事例や課題、ソリューションなどを産官学で共有する「メディカル DX・ヘルステックフォーラム2023」。沢井製薬株式会社 システム部 理事・システム部長の竹田幸司氏が、同社のPHRアプリ「SaluDi(サルディ)」について講演を行いました。その機能や健康行動変容への影響、生涯PHRアプリとしての今後の展開について紹介します。
PHRアプリ「SaluDi」の全体像と活用
2023年1月に「Sawai DX “3 Actions with 3i”」を発表し、「業務改革」「新規事業創造」「サワイグループのITインフラの強化」の三位一体でDXへの取り組みを推進するサワイホールディングス株式会社。その中で、新規事業を創造するDXの取り組みに位置付けられている沢井製薬の「SaluDi」について、竹田氏より具体的に解説がありました。
PHR(Personal Health Record)アプリ「SaluDi」は、iPhoneやAndroidから無料ダウロードでき、自分のライフログとなる日々のバイタルデータ(体重、血圧など)や食事、運動などを手軽に記録できるアプリです。健康づくりへの第一歩として、記録による行動変容が期待できます。
また、本人の同意のもと、医療従事者とのデータ共有も可能。医師の治療、薬剤師の服薬指導などを、日々のバイタルデータを確認しながら行えるようになります。
さらに、家族間での健康管理、企業の従業員の健康づくり、自治体と連携して地域住民の健康づくりや地域医療への貢献など、範囲を広げながらPHR活用の取り組みを推進しています。
バイタルデータの手軽な記録と共有:「SaluDi」の機能について
「SaluDi」の機能は主に4つです。
- 健康関連情報の提供
- さまざまな測定機器と連携したPHRの記録と可視化
- 医療従事者とのバイタルデータの共有が可能
- さまざまなアプリと連携したPHRの活用
健康関連情報の提供
医師など専門家の監修がついた、確かな健康関連情報を受け取ることができます。例えば「疾患別手帳」「ジェネリックあるのかな検索」「サワイ健康推進課」の情報などがあります。
さまざまな測定機器と連携したPHRの記録と可視化
「SaluDi」では、手入力はもちろん、Bluetoothと連携することによって、さまざまな医療測定機器から多様なバイタルデータの取り込みと記録が簡単に行えます。また、血液検査データ、服薬情報の管理も可能です。
医療従事者とバイタルデータの共有が可能
医療従事者とデータを共有することで、バイタルデータを確認しながらの治療、服薬指導が可能になります。これにより、複数の医療機関が連携して患者サポートをしやすくなります。患者とのメッセージ交換やオンライン診療の機能も使用可能です。
さまざまなアプリと連携したPHRの活用
「SaluDi」以外の疾病リスク予測、食事管理、オンライン診療などのアプリと連携できます。他のシステムへのバイタルデータ連携なども行い、それぞれのアプリの強みを生かし合いながら機能の拡充を図ります。目指しているのは、PHRエコシステムの構築です。
クリニックや地域医療との連携:広がる「SaluDi」の活用事例
「SaluDi」では患者の同意のもと、アプリに記録したデータを医療機関と共有することができます。これにより、医療従事者はバイタルデータや食事の状況、服薬状況を確認しながらの治療、服薬指導が可能になります。
画面は数値表記だけでなく、グラフ表記も可能ですので、時系列で体重変化、血圧変化度がわかりやすく確認できます。
現在、全国で400超の医療機関で採用されており、竹田氏は、活用しているクリニックの感想を次のように紹介しました。
- データの自動送信機能で、連携している他の医療機関と共有しやすい
- 診療がスムーズに進みやすくなった
- 患者のデータ記録が継続しやすく、モチベーションアップにつながっている
- 診療に対する患者の主体性がアップした
また、地域医療との連携も進んでいます。長崎県では、地域医療ネットワーク「あじさいネット」の中から「SaluDi」にアクセスできるようにすることで、PHRとEHR(Electric Health Record)両方のデータを診療に反映することが可能になりました。PHR/HER連携により医療の質の向上を目指していく取り組みです。
兵庫県養父市では、PHRデータを地域通貨と連携し、住民の健康づくり、地域化活性化につなげる試みも行っています。
健康づくりのための行動変容促進へ:「SaluDi」実証実験で従業員の行動に変化
「SaluDi」は2021年10月に生活習慣病治療支援アプリとしてリリースして以来、未病・予防領域の健康づくり支援のワンストップサービスとして機能強化、UI/UXの大幅改善、異業種連携、予防疾患領域拡大を進め、生涯PHRアプリとして整備されてきました。
健康状態から未病、特定保健指導、受診勧奨までのワンストップサービスとして、サワイグループ内で従業員271名を対象に実証実験を実施しています。竹田氏によると、その結果健康意識は「高まった」が約86%、体重変化は「減少」が約74%と、記録は行動変容に効果があることがわかったと言います。
在宅医療における活用と生涯PHRアプリへ:「SaluDi」の今後
今後の「SaluDi」の活用について、竹田氏は「在宅医療での活用」「生涯PHRアプリとしての取り組み」を進めていくと話します。
在宅医療での活用
在宅医療では、ITの力を活用して患者のバイタルデータを遠隔で確認し、D to P with N*のような形で、オンライン診療や訪問看護、訪問リハビリ、訪問栄養指導、保健師訪問、訪問服薬指導などに関わる医療従事者の方々との連携ツールにしていきます。
*D to P with N:患者同意の下、オンライン診療時に、患者は看護師などが側にいる状態で診療を受け、医師は診療の補助行為をその場で看護師などに指示することで、薬剤の処方にとどまらない治療行為などが看護師などを介して可能となるもの
生涯PHRアプリとしての取り組み
生活習慣病をターゲットとして始まった「SaluDi」ですが、生活習慣病機能も強化しつつ、今後は乳幼児期から使える「子ども中心PHR」を拡張し、生まれた時からPHRを管理し、成人してからは「SaluDi」に引き継いで生涯使えるPHRアプリとして成長させていきたいと竹田氏。「子ども本人にとどまらず、保護者の健康管理に役立てられる、子育て世代を支える取り組みにも活用を広げていきたい」と話します。
最後に竹田氏は、「SaluDi」に限らずPHRの活用そのものを日本中に広めていきたい、と今後の展望を語り、講演を締めくくりました。