製薬業界マーケティング/DX最新動向まとめ 2025年3・4月版

昨今、医療・製薬業界でも、業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルマーケティングに注力する動きが多くなってきました。本記事では、2カ月に1回、各製薬企業のプレスリリースより、最新製薬マーケティングやDXの取り組みをピックアップ。マーケティング、プロモーション、DXについて、業界全体の最新トレンドや、他社がどのような動きをしているのかを把握できます。今回は、2025年3・4月を対象に最新動向をまとめました。
※調査対象の企業は2024年5月にIQVIAより公開された23年度販売会社ベース企業売上ランキング(期間:2023年4月~2024年3月)より抜粋した19社。50音順にリストアップ
- アストラゼネカ、次世代医療基盤法に基づく 日本初となる「認定仮名加工医療情報利用事業者」認定を取得
- Ubie とサノフィ、COPD 啓発施策を開始
- 世界緑内障週間(3月9日~15日)に「緑内障の早期発見と治療の重要性を伝える啓発活動」を実施 ~グローバルで緑内障の認知拡大をサポート~
- - 3月4日は「世界肥満デー」- 「肥満症」の正しい理解促進プロジェクト 「肥満と肥満症のただしいミカタ研修」 始動
- ノバルティスとWelby、降圧目標達成率向上に向けた協業に合意 高血圧患者のPHR血圧管理サポートを強化
- ファイザー、がん患者さんを支援するモバイルアプリ「がんと歩む」の提供を開始 ~がん患者さんや支援者が必要とする情報や便利機能を集約~
【2025年3・4月サマリー】
・リアルワールドデータ(RWD)とPHRの利活用拡大
リアルワールドデータ活用とPHRによる治療支援が進んでいる。アストラゼネカは、改正・次世代医療基盤法に基づく「認定仮名加工医療情報利用事業者(I型)」として日本初の認定を取得。これにより詳細なリアルワールドデータの取得・活用が可能に。薬事承認や安全性評価におけるエビデンス構築を加速させる。ノバルティスはWelbyと協業し、家庭血圧のPHR管理を通じて高血圧患者の自己管理と治療支援、病診連携の促進を図る。
・デジタル×疾患啓発の広がり
サノフィはUbieの症状検索サービスと連携し、COPDの未診断層に向けた疾患認知施策を展開。検索結果に連動した情報提供で自然な形で受診を促す仕組みを構築。参天製薬は「世界緑内障週間」に合わせ、患者でもある漫画家の実体験を通じたSNS発信を実施。共感性を重視したストーリーテリングにより、定期検診の重要性を訴求。イーライリリーは「肥満と肥満症のただしいミカタ研修」と題し、医師監修のカードゲームを用いたワークショップを開催。偏見に気づき、疾患理解を深める参加型学習を通じて、社会全体の認識変容を促している。
・治療と生活をつなぐ支援ツールの進化
ファイザーは、がん患者とその支援者に向けたモバイルアプリ「がんと歩む」を開発・提供開始。疾患情報の閲覧や服薬・通院スケジュールの管理、健康状態の記録、感情共有機能などを統合し、患者の意思決定や日常生活を多角的にサポートする設計となっている。医療機関外での患者体験を重視し、QOL向上を図るこうした取り組みは、今後も広がっていくと考えられる。
【各社プレスリリース抜粋】
■アストラゼネカ株式会社
アストラゼネカ、次世代医療基盤法に基づく 日本初となる「認定仮名加工医療情報利用事業者」認定を取得
2025年3月4日
アストラゼネカは、2024年4月に改正法が施行された「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報及び仮名加工医療情報に関する法律(次世代医療基盤法)」に基づき、新たに定められた「認定仮名加工医療情報利用事業者」のI型認定を2025年2月28日に取得。アストラゼネカは、本認定を最初に取得した企業となる。
本認定により、次世代医療基盤法に基づき、匿名加工医療情報では加工されていた、特異的な検査値や病名等のデータが含まれる「仮名加工医療情報」を利用できるように。これにより、同一対象患者に関するより詳細で継続的なデータの収集だけでなく、目的にあったリアルワールドデータ(RWD)の構築、薬事承認のためのデータ利用が可能となる。今回の認定取得により、アストラゼネカは活用できるRWDが増加し、医薬品開発、医薬品の安全性調査、およびエビデンスの構築を推進、そして、患者詳細情報に基づいたエビデンスの創出を加速させることで、日本のさらなる医療の発展ならびに健康寿命の延伸への貢献に取り組んでいくとしている。
https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2025/202503031.html
■サノフィ株式会社
Ubie とサノフィ、COPD 啓発施策を開始
2025年4月1日
Ubie 株式会社サノフィは、慢性閉塞性肺疾患 (chronic obstructive pulmonary disease、以下「COPD」)の未診断患者に向けた疾患の認知拡大と適切な受診行動の支援を目的に、症状検索サービスを活用した奈良県立医科大学 呼吸器内科学講座の室 繁郎教授監修の啓発施策を開始。
COPD は認知度の低さや初期症状が出にくい、または進行しても自覚しづらいという課題があり、疾患に対する認知の拡大と早期発見・適切な治療が求められている。Ubie は、生活者がスマートフォン等から質問に回答することで、症状に関連する病名と相談可能な近隣の医療機関を調べられるサービスである症状検索エンジン「ユビー」等を提供。COPD に関連する 症状をお持ちの方が「ユビー」にて症状を入力した際、COPD についての詳細なコンテンツを表示させることにより、疾患啓発による適切な受診行動の支援を目的としている。
https://www.sanofi.co.jp/assets/dot-jp/pressreleases/2025/250401.pdf
■参天製薬株式会社
世界緑内障週間(3月9日~15日)に「緑内障の早期発見と治療の重要性を伝える啓発活動」を実施 ~グローバルで緑内障の認知拡大をサポート~
2025年3月7日
参天製薬では、2025年3月9日(日)~15日(土)に世界で一斉に行われる緑内障啓発のための国際イベント「世界緑内障週間」にあわせた様々な啓発活動を実施。XおよびFacebookのアカウント「Santen 目の健康情報室」とLinkedInを活用し、緑内障患者さんでもある漫画家の「おぐらなおみ」氏が制作した漫画を公開。また、「Santenストーリー」(コーポレートサイト)にて、「おぐらなおみ」氏のインタビュー記事も公開。記事では、「診断に至った経緯」や「診断を受け入れるまでの心境の変化」「治療に対する考えや重視していること」「治療を継続するうえでのモチベーションの保ち方」など、定期的に眼科検診を受けることの大切さを発信した。
https://www.santen.com/ja/news/2025/2025_1/20250307
■日本イーライリリー株式会社
- 3月4日は「世界肥満デー」- 「肥満症」の正しい理解促進プロジェクト 「肥満と肥満症のただしいミカタ研修」 始動
2025年3月4日
日本イーライリリーと田辺三菱製薬では、「世界肥 満デー」である3月4日(火)、「肥満症」の正しい理解の促進を目的とした「肥満と肥満症のただしいミカタ研修」を日本イーライリリー神戸本社にて実施。
「肥満と肥満症のただしいミカタ研修」は、肥満や肥満症に対する誤解や偏見を解消し、「肥満症」という慢性疾患について正しく理解してもらうことを目的としている。
研修は、カードゲームを使って「楽しく」学べるワークショップと、「ただしく」学べる 医師の疾患解説で構成されています。ワークショップでは、医師監修のもと開発 した「みえない偏見カード」を使い、ゲームを通して参加者同士が意見を共有し合うことで、「肥満は自己管理の問題」という肥満の要因に対する誤解や偏見があることに気付けるよう促す。
本研修は今後、企業向け研修コンテンツとして他の企業や団体 へも広く提供し、「肥満症」に対する社会の理解促進に繋げていくことを目指している。
https://mediaroom.lilly.com/jp/previewPDF/2025/25-07_com.jp.pdf
■ノバルティスファーマ株式会社
ノバルティスとWelby、降圧目標達成率向上に向けた協業に合意 高血圧患者のPHR血圧管理サポートを強化
2025年3月19日
ノバルティスファーマと株式会社Welbyは、高血圧治療ガイドラインにおける降圧目標達成率向上に向けた協業に合意したと発表。
高血圧疾患の治療において、PHRは以下の効果をもたらすことが期待されている。
- 疾患コントロールの可視化:高血圧管理に重要な家庭血圧の記録・共有
- 患者の主体性向上: 患者さんの自己管理支援と治療参画意識の向上
- 病診連携の促進:蓄積されるPHRから合併症の早期発見・進行抑制等で病診連携が必要な患者を可視化
- エビデンス創出:日本全国の家庭血圧のコントロール状況・治療介入状況の可視化等のエビデンス発信を通じて高血圧診療の発展へ貢献
この取り組みにより、パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)を活用した血圧管理の向上と適切な高血圧治療が患者に届くことを目指す。
https://www.novartis.com/jp-ja/news/media-releases/prkk20250319-1
■ファイザー株式会社
ファイザー、がん患者さんを支援するモバイルアプリ「がんと歩む」の提供を開始 ~がん患者さんや支援者が必要とする情報や便利機能を集約~
2025年3月6日
ファイザーは、がん患者とその支援者を対象とした、がん患者の意思決定や治療への取り組みを支援するモバイルアプリ「がんと歩む」の提供を開始した。「がんと歩む」は、ファイザーが独自に開発したiOSおよびAndroid対応の無料で使用できるモバイルアプリ。患者だけではなく、ご家族や介護者、ソーシャルワーカーなど、さまざまな形でがん患者の治療に携わる支援者の方も利用可能。
がん全般の情報をアプリ内で簡単に閲覧できる機能や、健康状態を記録し、グラフ化して視覚的に把握できる機能、メッセージを通じた気持ちの共有が可能なサポート機能、服薬・診療のスケジュール管理機能、診察前に医療従事者に伝えたい・聞きたい情報を整理するメモ機能など、患者さんの生活の質の向上をサポートする多彩な機能を搭載している。
https://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2025/2025-03-06