製薬企業のデジタル活用順調度は5割で足踏み?|競争力強化の鍵は「人材」「予算」「連携」

デジタル・データ活用は、いまや製薬マーケティングの成果を左右する重要なテーマです。しかし、これまでの調査から製薬企業では、部門横断での連携や専門人材の確保・育成などに難渋していることが明らかとなっています。変化の激しい事業環境の中で、デジタル・データ活用はどこまで進み、そして現在はどのような課題を抱えているのでしょうか。Medinewでは、毎年実施している読者へのアンケート調査から、その実態を探ります。
調査概要
Medinew読者を対象に実施した本アンケートでは、製薬企業におけるデジタル・データ活用の実態や課題、今後の活用動向などについて調査を行いました。
- 調査期間:2026年7月9日~7月17日
- 調査対象:Medinew読者(製薬企業のデジタルマーケティング部門、営業企画部門、プロダクト部門など)
- 回答者数:87名(途中離脱者も含む)
- 調査方法:Webアンケート
▼アンケート結果資料をダウンロードする
https://www.medinew.jp/downloads/research/pharma-survey-2607-dl
サマリー
- デジタル活用が順調に進んでいる(順調群)割合は56%で、昨年から変化なし。
- デジタル活用が進んでいる企業での推進要因は、デジタル化の戦略への明示、定期的な社内研修、経営層のコミット。
- 一方、デジタル活用が進んでいない企業では、人材・予算不足により施策の効果も実感できず、既存システムとの連携にも課題を抱えていた。チャネル・データ連携も昨年から引き続き強化すべきポイント。
- データについては、リアルワールドデータ(RWD)、市場データ・売上情報、3rd PartyおよびWeb講演会のログ・アンケート情報を重視。中でもRWDの重視度が大幅上昇。加えて、活用データは多様化している。
- データ活用でも人材不足と、チャネル・データ連携不足に関連していると思われる顧客の客観的データ不足が昨年から続く課題。
デジタル活用順調度は56%で昨年から変わらず。新たなデジタル技術発展が影響か
デジタル活用が順調に進んでいる(順調群)割合は56%、順調に進んでいない(非順調群)割合は39%でした。順調度は2023年から2024年にかけて大きく伸長して以降ほぼ変化していませんが、これが製薬企業のデジタル活用の停滞を意味しているとは一概には言えません。各社が対応を加速させた結果、先行企業と後続企業の進捗の差が固定化している可能性や、生成AIなどの新たな技術・サービスが次々と登場する中で「順調」の水準が押し上げられ、ここ数年の変化が反映されなかった可能性も考えられます。

デジタル活用戦略の組織全体への浸透が推進を左右する
企業の特徴別では、外資系および売上規模5,000億円以上の大規模企業でデジタル活用が進んでおり、この結果も昨年と同様でした。この差の背景には、大規模企業における投資余力や人材確保・育成力に加え、外資系企業ではグローバルで蓄積されたデジタル化資源(成功事例や、すでに構築されたデジタル化の導入方法など)が活用できる点も影響しているのではないかと考えられます。
順調群にデジタル活用が進んでいる理由を聴取した設問では、「デジタル化を推進することが戦略として明示されている」「デジタルツール活用の社内研修を定期的に実施している」「経営層のコミットメントが強い」という回答がTOP3でした。

順調群では、デジタル活用が経営戦略の中で、売上拡大や生産性向上などの経営課題と結びつくかたちで示されており、それにより組織の方向性が統一され、全社での取り組みや意識改革が進めやすくなっているのではないでしょうか。部門横断的な連携が求められる製薬企業のデジタル活用では、特にこれが成果を大きく左右すると考えられます。
計画的なデジタル人材育成、部門横断的なチャネル・データ連携に課題
一方、デジタル活用が進んでいない理由を非順調群に聴取したところ、「デジタルツールを使いこなせる人材が不足している」「デジタル化推進のための予算が不足している」「既存の業務プロセスとの連携が難しい」「導入したツールの効果が実感できない」という回答が上位に挙がりました。人材・予算不足によって施策の成功や効果実感に結びつきにくくなっていることが明らかとなり、既存の業務プロセスとの連携にも課題を抱えている現状がみられました。
成功や効果実感が得られにくければ、さらなるデジタル化への組織および社員個人での意識は向上しにくく、推進鈍化への悪循環に陥ることが推測されます。
この悪循環を断ち切るためには、デジタル分野に精通した人材が不可欠であり、順調群のように定期的な社内研修などで人材育成を計画的に進める必要があると考えられます。

そして、理想のデジタル化実現のために導入・強化すべきことについての設問では、「チャネルやデータ連携・統合基盤の整備」が昨年に続き最も多い回答でした。
オムニチャネル化の進展に伴い連携の複雑性がより高まる中、各部門に分散するチャネル・データを連携するためには全体を統括する「司令塔」が必要です。しかしながら、部門横断を越えた仕組みや体制が十分に整っていないことが考えられます。

データ活用への意識もデジタル化の推進要因である可能性
また、データドリブンマーケティングへの意識や導入もデジタル化推進に欠かせない要因であることがうかがえました。
マーケティング意思決定の最終判断の拠り所についての設問では、半数以上が「市場データ・行動データなどの定量データ」と回答しました。しかし、非順調群では定量データに基づく割合が低いことから、データへの意識も順調群に比べると成熟していない可能性があり、デジタル化推進にも影響を与えている可能性が示唆されます。

RWDの重視度が大幅上昇、かつ活用データは多様化
では、データ活用においては具体的にどのようなデータが重視・活用されているのでしょうか。アンケート結果では、「レセプトなどのリアルワールドデータ(RWD)」「市場・シェアに関するデータ(IQVIAなど)」「施設の売上情報」「3rd Partyのユーザー行動ログ情報・アンケート情報」「本社主導のWeb講演会の参加・試聴ログ・アンケート情報」が重視されていました。
RWDは市場分析、処方実態把握、エビデンス創出など幅広い目的で活用が加速しており、製薬企業におけるデータ活用の中心領域の1つとなりつつありますが、本調査でも重視度が昨年から大幅に上昇しました。
また、顧客の学会・論文発表情報なども重視度が上昇しており、活用データの多様化がうかがえます。

データ活用の主な目的には、「医師・施設ターゲティング」「医師の興味関心の把握・分析」「医師との接点創出・回数増加・効率化」が挙げられました。RWDや市場データは、市場構造や処方動向の分析を通して有望なターゲットを特定するために活用される一方、ログ・アンケート情報は、医師ニーズ把握、さらには効果的なコミュニケーション機会の創出に活用されているものと考えられます。
マーケティングにおけるデータ活用は単一のデータソースに依存するものではなく、複数データを組み合わせることでより高度に進化しています。すなわち、多様なデータに基づくマーケティング最適化の実現が、今後の競争力強化の鍵となるでしょう。

データ人材育成、顧客データ不足への対応としてデータ連携加速が急務
多様なデータ活用が進む一方、データ利活用の課題についての設問では、「データはあるが、分析や現場での活用ができていない」が昨年から10ポイント減少しているため、データ活用は進んでいると考えられました。しかし、「データに精通した人材・体制が不足している」「顧客個人に紐づいた客観的なデータが不足している」点が昨年に続き課題であることがわかりました。
人材不足に対しては、デジタル人材と同様に継続的な社内研修などで計画的に人材を育成していく必要があるでしょう。また顧客データ不足に関しては、未だチャネル・データ連携に課題があることから、データが各部門に分散し活用の機会を得られていない可能性があります。まずはチャネル・データ連携を前進させたうえで、本当に不足しているデータを洗い出す必要があるでしょう。

今回の調査では、デジタル・データ活用において、昨年から引き続き人材育成やチャネル・データ連携が主要な課題であることが明らかとなりました。製薬企業側でもこれらの課題解決に向けた取り組みを加速していると思われますが、デジタル技術やデータ活用を取り巻く環境は常に変化し続けています。近年では特に、生成AIが急速に発展・普及しており、これによる新たな機会やリスクへの対応も求められています。こうした変化をいち早くキャッチし、適切に活用しながらマーケティングの効率化・高度化を推進することが、製薬マーケターにとって重要な課題の1つであると考えられます。
「製薬企業デジタル&データ活用実態調査2026」レポート資料をダウンロード
本記事で紹介したデータを含む「製薬企業デジタル&データ活用実態調査2026」のフルレポートは、以下ページより無料でダウンロードいただけます。今回ご紹介したデータのほかにも、デジタルチャネルの活用実態に関するデータなども掲載しています。ぜひご覧ください。
※資料の無断引用・転載はお断りいたします。
https://www.medinew.jp/downloads/research/pharma-survey-2607-dl
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