#1 医師向けプロモーションを加速するオンライン×オフライン×データ融合。製薬マーケターが重視するポイントは?

デジタル・データ活用は、医師向けプロモーションの最適化・効率化のための必須事項です。そこで、製薬企業におけるデジタル・データ活用状況やプロモーションのトレンドを探るべく、Medinewでは昨年に引き続き、2025年7月にデジタル・データ活用を主テーマとした業界調査アンケートを実施しました。本記事では、調査全般から見えたトレンドと課題、その解決のポイントをご報告します。
調査概要
- 調査期間:2025年7月3日~11日
- 調査対象:Medinew読者(製薬企業のデジタルマーケティング部門、営業企画部門、プロダクト部門、メディカル部門など)
- 回答者数:106名(途中離脱者含む)
- 調査方法:Webアンケート形式
■アンケート結果は以下よりDLいただけます

医師向けプロモーションのハイブリッド施策への意向が顕著に
オンライン・オフラインチャネルを組み合わせたハイブリッド施策に関して、「重視している(非常に重視している/やや重視している)」割合は8割でした。コロナ禍を経てMRによる情報提供の価値が再認識されたことや、オムニチャネル戦略が重視されていることが反映された結果だと考えられます。

施策推進のためには、部門間の意識共有、施策の仕組み化を
ハイブリッド施策を推進するうえで、関連する部門間の連携が必須であることは言うまでもありません。しかしながら、ハイブリッド施策の重視度を部門別にみると、デジタル部門・プロダクト部門では95%、89%が重視していますが、営業企画部門では64%が重視するに留まっていました。
部門間での意識の差は連携の阻害要因となり得るため、ハイブリッド施策の推進のためには、ハイブリッド施策への部門を超えた全社統一的な意識の共有と、それに基づき各部門がそれぞれの担当アクションを着実に実行していくことが必要です。
※部門別データは、n数が限られているため参考値
なお、ハイブリッド施策の具体的な取り組みについては、「Web講演会後のフォローアップをMRが実施」(実施率:66%)、「デジタルチャネルで得られた顧客知見をMRにフィードバック」(実施率:58%)するなどが挙げられています。
そして、「デジタルチャネルで得られた顧客知見をMRにフィードバック」については、主にデジタル部門とプロダクト部門で実施されているなど、それぞれの取り組みの業務を担う関連部門が中心となり実施している状況が伺えました。

調査結果からは、ハイブリッド施策推進への取り組みが一部の製薬企業内ですでに実施されていることが明らかになりましたが、個別の取り組みの実施率は最も高いもので66%(「Web講演会後のフォローアップをMRが実施」)でした。
ハイブリッド施策を重視している割合は8割であったことから、重視率と実施率には差があり、施策の実施内容に企業間でばらつきがある可能性や、実行に難渋している企業の存在も示唆されます。
ハイブリッド施策を着実に実行し、かつその実効性を高めるための仕組み化が必要とされている可能性が考えられました。
ハイブリッド施策の要である、データ連携・統合に課題あり
オンラインとオフラインをうまく掛け合わせ最適化させるためには、双方から得られた顧客データを統合し、「オンライン×オフライン×データ」の3本柱で、データに基づく情報提供を展開していくことが望ましいと考えられます。これは、細分化する医師の興味関心に合わせた情報提供活動の個別化の観点でも重要です。
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しかし、理想のデジタル化のための導入・強化ポイントについての設問では、「チャネルやデータ連携・統合基盤の整備」が45%と最多で、データ連携・統合に課題があることが伺えます。

課題解決の鍵は、多角的な顧客データの活用・統合
データ活用に関しては、その他の課題も浮き彫りになっています。
データ活用の課題についての設問では、「顧客個人に紐づいた客観的なデータが不足している」が44%でトップに挙がっているように、そもそも十分なデータが揃っていない状況も見受けられました。

重視しているデータの上位は、市場データとデジタルチャネルのログデータでした。
しかし、上位には挙がらなかった「MR活動によって得られた情報」や「顧客の学会発表情報」、「顧客の論文発表情報」なども顧客の客観的データであり、医師個人に合わせた情報提供戦略設計を行うためには重要です。ログデータのみならずあらゆる角度の情報を統合・活用する必要があるのではないでしょうか。
※本設問では重視している上位3項目を聴取しているため、下位のデータが必ずしも重視・活用されていないわけではない

また、ハイブリッド施策を進める上で「顧客の同意を得た上で、デジタルとMRの接点履歴を一元管理」している割合は25%のみで、デジタルとMRからの情報統合にも課題があることが明らかです。

なお、ハイブリッド施策により取り扱いデータやアクセスする部門が増加すると、データ品質管理やセキュリティ対策の重要度が増すと想定されます。データの品質管理やガカバナンスに関する設問では、「特に取り組みは行っていない」割合は16%のみで、多くの企業で何らかの取り組みがすでに実施されていることが明らかとなりました。
そして、具体的には「データ利用に関する社内ガイドライン・ポリシーの策定」や「データガバナンス(担当部署・責任者)の構築」、「データセキュリティ対策の強化」といった、ガバナンスに関する取り組みがそれぞれ4割以上で実施されていました。
一方で、データ品質管理に関する取り組みについては実施率が3割以下に留まっていました。
データ活用のためにはデータの種類や量とともに質も重要であることから、今後、データの品質を高める対策も強化されるべきではないでしょうか。

データ基盤を整備し、効果的なハイブリッド戦略を
「オンライン×オフライン×データ」融合でプロモーションを加速させるためには、部門横断的に意識の共有、施策の仕組み化を図ることに加え、データに関しては、顧客データの充実と、MR活動から得られた情報も含めてデータ連携・統合に対処することが大切です。
そして、並行してチャネルごとの課題解決や、具体的な戦略への落とし込みを検討していく必要があると考えられます。