「医師の働き方改革」医療機関へのアンケート調査で現在の臨床現場の実態が明らかに

「医師の働き方改革」医療機関へのアンケート調査で現在の臨床現場の実態が明らかに

医師の時間外労働などを制限する「医師の働き方改革」が2024年4月から施行となります。厚生労働省が2022年11月に公表した「医師の働き方改革の施行に向けた準備状況調査」によると、「副業・兼業先も含めた時間外・休日労働が年通算1,860時間相当超の医師数」が調査のたびに減少していることなどから、2024年4月の施行までにこれらの医師数は「大きく改善される見込み」としています。医療人材総合サービス、事業場向け産業保健支援を行う株式会社エムステージは、施行に向け準備が進む「医師の働き方改革」について、現場の動向を調査しました。

以下、株式会社エムステージのプレスリリースより

調査概要

「医師の働き方改革」に向けた取り組み状況に関するアンケート
調査日:2023年2月22日~3月10日
対象: 全国の病院・診療所・老健など
調査方法:Webアンケート
有効回答数:229
調査実施企業:株式会社エムステージ

調査結果のサマリー

■勤務医の「労働時間管理」について

  • 約9割 の医療機関が自院における医師の勤務時間を把握
  • 対して、自院「以外」は約6割 にとどまる
  • 副業 の実態把握と、「自己研鑽」 との区別に課題


■「医師の労働時間短縮」に向けた取り組みについて

  • 医師の業務の見直し「外来業務 」が最多に
  • 進む「医師事務作業補助者 」への「タスクシフト・タスクシェア 」


■「医師の健康を守る」取り組みについて

  • 約8割が産業医の選任対応を進めるも、約6割が“院内” の産業医に


勤務医の「労働時間管理」について

2024年4月から診療に従事する勤務医に対して、原則「年960時間以下/月100時間未満 」の時間外労働の上限規制が適用されます(例外あり)。この上限規制は、事業場を異にする場合においても適用され、副業・兼業先の労働時間も含めて、時間外・休日労働が上限を下回っている必要があります。
この点において重要となってくるのが、自院はもちろんのこと、自院以外の勤務先を含めた「正確な労働時間の把握」となります。

1. 約9割の医療機関が医師の自院における勤務時間を把握

自院における勤務医の労働時間の把握状況は60.7%が「すべての医師について把握している」、32.3%が「大半の医師について把握している」と回答し、約9割の医療機関が概ね把握していることがわかりました。また、勤務医の勤怠管理の方法については、「手動のタイムカード」(40.6%)が一番多く、次いで「ICTを活用した勤怠管理システム」(27.5%)、「医師の自己申告」(11.8%)となりました。

Q1 勤務医の貴院における労働時間の把握状況


2. 自院「以外」の労働時間を把握している医療機関は約6割にとどまる

副業などの自院「以外」での「労働時間管理」について、「すべての医師について把握している」が25.8%、「大半の医師について把握している」が29.3%となり、自院の勤務時間の把握状況と比較すると、3割ほど低くなることがわかりました。
また、副業先の労働時間把握の方法としては、「随時、口頭で確認する」(28.4%)、同率で「医師のアルバイト状況は確認していない」(28.4%)となり、次いで「アルバイトは事前申請制にしている」が19.7%となりました。

Q副業など貴院「以外」の労働時間の把握状況、労働時間管理の方法


3. 副業の実態把握と、「自己研鑽」との区別に課題

勤務医の労働時間を管理する上で、問題や課題と感じていることとして、多い順から「副業について、実態を把握できない」(78)、「労働時間と自己研鑽の区別がつきにくい」(72)、「問題・課題と感じることは特にない」(69)という結果になりました。
労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。」とされています。そのため、「労働時間から離れていることが保障されている状態で行われている」ことや、「自由な意思に基づき実施されている」など、使用者から明示又は、黙示の指示がないと認められている研鑽については、労働時間に含まれてない(=自己研鑽)とされています。
※参照:厚生労働省「第12回 医師の働き方改革に関する検討会」より
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000404613.pdf

Q労働時間管理における課題


「医師の労働時間短縮」に向けた取り組みについて

「医師の労働時間短縮」において、重要とされているのが「タスクシフト・タスクシェア」 です。
全ての医療専門職の方々がそれぞれの専門性を活かし、パフォーマンスを最大化すること を目的としており、「特定行為研修」を受けた看護師は、手順書により医師の判断を待たずに特定行為を実施することが可能になります。また、この特定行為研修修了者以外にも、様々な業種へのタスクシフト・タスクシェアが進められています 。
 

4. 医師の勤務の見直し「外来業務」が最多に

医師の業務で、見直しをおこなったこととして、「外来業務」(75)が最多となり、「当直を担う医師の範囲(中堅以上医師の参画など)」(61)、「カンファレンスの勤務時間内実施や所要時間の短縮」(46)が続きました。

Q医師の業務についての見直し経験


5. 進む「医師事務作業補助者」への「タスクシフト・タスクシェア」

医師の業務に関する「タスクシフト・タスクシェア」を実施している職種として、診療録等の代行入力、各種書類の記録などをおこなう「医師事務作業補助者」(97)、特定行為(38行為21区分)の実施、診断前の情報収集などをおこなう「看護師」(61)、リハビリテーションに関する各種書類の記載・説明・書類交付などをおこなう「理学療法士・作業療法士・言語聴覚士」(42)が多い結果となりました。

Q医師の業務に関する「タスクシフト・タスクシェア」を実施している職種


「医師の健康を守る」取り組みについて

どうしても長時間勤務が必要になる場合がある医師において、適切に良質な医療を提供することを担保するために、「長時間労働となることが見込まれる医師への面接指導 」のルールが設けられます。
面接指導では、所定の講習を受けた産業医などの面接指導実施医師が、睡眠や疲労の状況を確認します。面接指導の結果、休息が必要と認められる場合には、医療機関の管理者により必要な就業上の措置が講じられることとなります。
 

6. 約8割が産業医の選任対応を進めるも、約6割が“院内”の産業医に

産業医の選任状況については、「すでに選任している(院内の産業医)」が60.3%、「すでに選任している(院外の産業医)」が19.2%となり、「現在探している、選考している」など対応を進めている医療機関は8割以上となりました。
一方で、「院内の産業医」に関しては、「院内の医師の為、面接しづらいのではと考える。(300床以上400床未満/急性期病院)」、「院内の産業医の場合、面接時間の確保が専任でないので難しい。(200床以上300床未満/200床以上300床未満)」などのコメントが見られ、産業医として本質的に機能し難い体制であることが懸念されます。

Q産業医の選任状況


医療機関に求められる働き方改革・健康経営の取り組み

「医師の働き方改革」施行に向け、現場では業務の見直しや「タスクシフト・タスクシェア」など、長時間労働対策への取り組みが進んでいます。一方で、働き方改革が先行する民間企業では、長時間労働対策から、メンタルヘルス支援やウェルビーイングへ取り組みが移行し始めています。
医療機関においても、長時間労働対策が進んだ先に、従業員の健康をよりよい医療提供体制につなげていく「健康経営」の流れにシフトすることが伺えるため、それを見越した取り組みを今から進めていくと良いのではないでしょうか。

<参考>※URL最終閲覧日2023.04.06
PR TIMES, 2023.03.23,【2024年4月施行まであと1年】「医師の働き方改革」医療機関にアンケートを実施(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000147.000019504.html