医師とつながるチャネル「LINE WORKS」の製薬マーケティング活用法【中外製薬事例/導入編】

医師とつながるチャネル「LINE WORKS」の製薬マーケティング活用法【中外製薬事例/導入編】

MRの訪問活動の制限が続く今、医師との新たなコミュニケーションツールの導入を模索する製薬企業が増えてきています。その中で、中外製薬株式会社では、スマホファーストのビジネスチャット「LINE WORKS」を導入し、医療関係者とのタッチポイント(面談機会)拡大に成功しました。中外製薬株式会社カスタマーソリューション部長の嶋内氏と、「LINE WORKS」を提供するワークスモバイルジャパン株式会社の青木氏と嶋口氏に、製薬企業における「LINE WORKS」導入の事例についてお聞きしました。

医療関係者とのタッチポイント確保に役立つ新たなツール「LINE WORKS」

ー中外製薬が「LINE WORKS」を導入した背景についてお聞かせください

<中外製薬株式会社 嶋内 隆人氏(以下、嶋内氏)>  新型コロナウイルスの感染拡大は、ソーシャルディスタンスをはじめとする、様々な社会的変化をもたらしました。製薬企業のMRも、医療機関や医師への訪問がこれまで以上に制限されるようになりました。既に2017年頃から始まった医師の働き方改革で、この訪問規制の兆しはありましたが、コロナ禍がそうした動きを加速したという状況でした。

MRにとって医療関係者との面談は、製薬企業の社会的使命である、薬の適正使用を推進する上で重要な業務です。自社医薬品の有効性並びに安全性の最新情報の提供、そして副作用の情報収集ができない状況は、患者さんのデメリットにも直結します。そこで2020年3月から4月にかけて、MRと医療関係者とのタッチポイントを確保するために、各製薬企業が一斉にオンライン面談のシステム構築に力を入れ始めました。中外製薬も、Web面談のツールとメール、そして、他社との差別化を図るために、それまで導入を検討していた「LINE WORKS」をラインアップに加え、医療関係者のリクエストに応える準備を進めました。

ビジネスチャット「LINE WORKS」は「LINE」と同じ操作性でセキュリティも万全

ー「LINE WORKS」についてお教えください

<ワークスモバイルジャパン株式会社 青木 由佳氏(以下、青木氏)> 「LINE WORKS」は、皆さんご存知の「LINE」と同じようなユーザーインターフェイスを持つビジネスチャットです。使い勝手は「LINE」と似ていますが、「LINE」とは別会社である、ワークスモバイルジャパンが提供しています。「LINE WORKS」は、企業または組織で使用することを前提として、管理者がアカウントを作成し、メンバーを招待して使い始めるのが基本です。また、グループを作成し管理できるほか、アクセス権限なども設定できます。さらに、就業時間外や休日に受信したチャットの通知をオフにする ※1 など、細かい設定も可能です。

LINE WORKSでのやり取りイメージ
先生とのメッセージイメージ/LINE WORKS公式サイトより( https://line.worksmobile.com/jp/pr/20200901/

<ワークスモバイルジャパン株式会社 嶋口愛子氏(以下、嶋口氏)> 多くのビジネスチャットは、PCファーストで、デスクワークする方向けの設計ですが、「LINE WORKS」は、スマホファーストという点が大きな特徴です。営業や売場、建設現場など、PCをほとんど使わないワークスタイルの方が、スマホでほとんどの機能を使うことができる設計になっています。

<嶋内氏> 中外製薬では、こうしたツールを導入する際、セキュリティ面を最も厳しくチェックします。「LINE」は、個人での利用を前提としていますが、「LINE WORKS」は監査、モニタリング機能があり、ISO認証による強固なセキュリティが担保されていることを確認しました。さらに、運用面で利用ルールを策定・MRを教育することで2020年6月に社内パイロット、7月からMRを中心とする社員約2,400名に正式導入しました。

医師との「ちょっとした立ち話」にも「LINE WORKS」を代用

ー「LINE WORKS」を導入した効果をお聞かせください

<嶋内氏> 「LINE WORKS」を導入した理由の1つに、PCメールでの「ワンウェイ・ノーレスポンス」という問題があります。医師のパソコンには、各製薬企業から毎日、多くのメールが配信されます。このために、当社からのご案内が大量のメールの中に埋もれてしまう可能性が高く、返信される可能性も低くなるのが一般的です。特に、多忙を極める先生方は、忙しい時間の合間を縫うように医局やご自分のデスクに戻って、PCを開けてメールを確認することになります。つまり、このわずかな時間しかメールをチェックすることができません。しかもその時には、山ほどメールが来ているので、そこで返信をお願いするのも、なかなか厳しいというのが現状です。

一方、スマホは、常時携帯されている可能性が高く、PCに比べれば、容易にメッセージを見ていただくことができます。もちろん、返信いただく可能性も高くなります。
さらに、「LINE WORKS」は「LINE」と同様に、相手がメッセージを読んだ時点で既読がつきます。これはメールにはない機能です。「ワンウェイ・ノーレスポンス」を打開するのに、最適なファーストコンタクトツールです。

また、メールの文案で一般化している、定型文や枕詞なども必要ない点もいいのではないでしょうか。いわゆる「話し言葉」でコミュニケーションができます。「先生、今度何日に、オンライン面談ツールでお話したいのですが、ご都合はいかがですか?」と、まるで、以前行っていた立ち話に似たようなシチュエーションで、気軽にコミュニケーションができます。返信をされる先生方も、「いいよ」と、気軽に「話し言葉」で返信してくださいます。これも、迅速なレスポンスをいただける要因だと思います。

新人MRが「LINE WORKS」を積極的に使いこなしアポイントを獲得

ー中外製薬における「LINE WORKS」の活用事例をお聞かせください

<嶋内氏> あるアンケートでは、医療関係者の6割から7割は、「LINE」を日常的に使用しているようです。体感的には、年齢に関係なく、もっと多くの方が利用していると思います。「LINE」と「LINE WORKS」は、見た目には同じようなサービスで、全く新しいコミュニケーションツールではないため、抵抗感もなく導入しやすいだろうと判断しました。

MRから医療関係者へのご案内は、メールによる連絡がつきにくい先生や電話連絡がいいという先生、そして病院のアカウントのメールでやり取りをする先生を対象にした個別のご案内からスタートしました。「緊急に必要な情報のリクエストが、時間を問わずにできます」、「PCを開く手間も省け、場所を選ばず連絡が可能となります」。このように、先生にとってのメリットを説明すると、多くの先生に登録していただけました。

また、ベテランよりも若手のMRの方が、スムーズに「LINE WORKS」を先生方にご案内しています。特に、新入社員のMRは、医師とMRの立ち位置の違い、いわゆる先生方に対して馴れ馴れしく接するのはどうだろう、という感覚がベテランに比べ薄い傾向にあり、オンライン面談の最後にQRコードを提示し、「LINE WORKS」の登録のご案内を積極的にしています。その結果、新入社員のMRが、医療関係者の「LINE WORKS」登録者数ランキングで3位になりました。

医局主査、医局の医療事務を取り纏める秘書の方とつながると、その方を経由して、医局に在籍している各先生とアポイントが一気に取れることもわかりました。こうしたキーパーソンへのご案内も、今後は注力していきたいですね。

まだまだスタートしたばかりではありますが、医療関係者とのタッチポイントを確保したいという、当初の目的は徐々に達成している手応えを感じています。実践編では、実際にどのようなコミュニケーションで「LINE WORKS」を活用しているのか、ご説明させていただきます。

<参考>
※1 LINE WORKS,2021年9月9日( https://line.worksmobile.com/jp/blog/use-cases/notification_customize/


<取材協力>

中外製薬株式会社
カスタマーソリューション部長 
嶋内 隆人 氏

ワークスモバイルジャパン株式会社
青木 由佳 氏

ワークスモバイルジャパン株式会社
嶋口 愛子 氏