Sponsored by ミーカンパニー株式会社

MDMD2021レポート/地域に根差したMR活動を支援SCUEL(オープンデータ)の活用法

MDMD2021レポート/地域に根差したMR活動を支援SCUEL(オープンデータ)の活用法

地域医療への貢献が求められるとともに激変する医療制度。「Medinew Digital Marketing Day(MDMD)2021」の2日目、ミーカンパニー株式会社プラットフォーム事業部の中村澪奈氏の講演「地域に根ざしたMR活動を支援 SCUEL(オープンデータ)の活用法」では、フォームの終わりオープンデータから可視化した情報を使って地域医療の「これまで」「いま」「これから」を読み解き、戦略的な提案を行う方法を解説しました。本記事では、講演内容をまとめます。

身近な医療の現状を確認する

「みなさまの今いる場所から一番近い医療機関はどこですか?」

中村氏の講演は、4月に引っ越したばかりの茨城県つくば市の地域医療を見つめ直すところからスタートしました。地域医療の「これまで」「いま」と半歩先の「これから」をつかむには、営業拠点や自宅など身近なイメージしやすい場所から、病院や診療所の数、地域住民にとって医療資源が十分かどうか考えることが大切です。日本では人口集中により病床不足の地域がある一方で、高齢化、過疎化などによって人口減少が進んでいる地域が混在しています。地域に合わせて需要と供給のバランスを保つように、医療計画をはじめ多様な施策が検討および実施されています。

医療需要のピークのマップ

こうした施策の1つが2015年から始まった地域医療構想およびその一環である病床機能報告制度です。データ活用の観点では、施設ごとの医療機能から病床数や位置する医療機器台数などの推移、施設の取り組みが分かることに意義があります。

2021年5月に改正医療法が可決され、今まさに制度改革が進展しています。地域医療では外来機能の明確化、連携の施行が半年後に迫り、施行に向けた検討が続いているところです。

医師の働き方改革、タスクシフト、医師養成課程の見直しにともない、医師の働く地域や医療機関も変化します。さらに、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、「薬を処方する専門職」の動きは従来とは異なる様相をみせるようになりました。

高知県と神奈川県における地域医療の「いま」

データから地域医療を読み解くと、人口当たりの病床が多いといわれてきた高知県の過去1年の状況では、中央部の病床の減少幅が群を抜いています。1カ月で50から100床レベルで病床を減らしている施設が複数あります。

関東の都市圏では全体的には病床増加の傾向にありそうです。神奈川県川崎市北部の医療圏は300床レベルの施設が複数ある医療圏でしたが、2020年には200床近く増床した560床の大病院がありました。施設の情報を調べると、回復期病棟や緩和ケア病棟を新たに開設していたことがわかります。

病床の減少だけでなく増加している場合にも、その大きな変化の背景には何かしらの地域における役割の選択があるといえます。

オープンデータの4つの強みと特徴

ところで、MRや営業の日常的な活動で、医師がこんな質問をしたときにどう答えるでしょうか?

  • 近くの医療機関で最近どんなことやっている?
  • 外来患者さん減ってきた気がするが。
  • やはりこれからは在宅に力を入れた方が良いだろうか。

実際に訪問して収集した情報が役立つこともありますが、質問の答えはオープンデータにあります。地域医療に役立つオープンデータには、以下の4つの強みがあります。

  • 医療機関単位で提供される医療情報を見ることが可能
  • 複数のデータを重ね合わせてストラクチャを見る
  • 蓄積されたデータから経年推移として変化とその背景を分析
  • これから力を入れる医療機能を先行指標として推測

医療系のオープンデータの多くは施設単位で見ることができます。さらに複数のデータを重ねることで医療機関が持つ機能やストラクチャを深掘りすることが可能です。月次、年次で定期的に更新されるデータも多く、数字の変化と同時に、他のデータと組み合わせて背景を探ることで新たな洞察が得られます。今後注力する医療を推測し、戦略的な情報提供に役立ちます。

データといえば、リアルワールドデータ(以下、RWD)を思い浮かべるかもしれません。そもそもRWDとオープンデータは性質が異なるため、優劣を比較するものではないでしょう。目的によって使い分けたり組み合わせたりする使い方が最適ですが、用途の違いからオープンデータの特徴を明らかにします。

RWDは、治療傾向の分析に役立ちます。患者単位での疾患治療の内容が分かるからです。しかし、行政やデータ取り扱い会社などを除くと、一般には都道府県単位や市町村単位の情報のため、施設単独の分析はできません。
一方、オープンデータは施設をチェックする目的に向いています。知りたいことに合わせて項目を選んで重ねて使うと効力を発揮します。

オープンデータを活用するためにはデータの整理が不可欠

しかし、オープンデータは必ずしも誰もがすぐに使えるわけではありません。厚生労働省、都道府県市町村、医療機関などに散財するデータを収集するために手間がかかります。異なるフォーマットや表記を統一する判断と処理の知識が求められます。

さらに分析を継続するためには、メンテナンスが必要です。公開データといえども活用のハードルは高いといえますが、その負荷軽減をSCUELのサービスとして提供しています。

オープンデータの特徴

厚生局が公開する医療機関名簿の「施設基準」を使ったオープンデータ活用の一例を挙げましょう。施設基準は診療報酬を得るために医療機関が届け出を提出する情報ですが、医師数、医療機器、診療体制に関する多様な規定があります。この情報が活用できます。

施設基準データだけでも、その施設にどのような先生が何人いて、設備や体制の現状どうなっているか分かります。さらに他のデータを組み合わせると、注力している領域や新しい体制を整えた医療機関の検知が可能になります。

がん診療のオープンデータから「これまで」を読み解く

地域の「これまで」を知るオープンデータ活用の事例として、関東甲信越の病院における悪性腫瘍の入院手術実績の分布を実施件数や所要入院日数などからプロットしました。2016年から1年ごとにバブルグラフを動かすと、全体に対する各施設のおおよその位置関係は変わってないことが分かります。

関東甲信越の病院における肺がんの入院手術実績グラフ

このデータの同じ年の同じ施設群に対して高齢化にともなって増加する不整脈手術の疾患データを重ねると、位置関係が変わります。地域の患者年齢層の違いや所属医師の専門性などを加えることにより、現在の医療体制が今後も安定して続きそうか、変わる可能性があるのか検討できます。

続いて肺がんの治療実績として茨城県の「これまで」の例ですが、左側にステージ別、右側に治療法別のグラフを表示させました(下図)。がん診療拠点病院にはステージ1が過半数を占める施設、ステージ4の多い施設など地域性がありそうです。

茨城県の肺がん治療実績グラフ

必ずしも患者は拠点病院の近くで生活しているわけではありません。オープンデータを使うと、拠点病院以外に外来化学療法や在宅看護など地域で連携およびケアする体制を確認できます。

治療計画を共有して連携可能な医療機関をデータから絞り込むと、拠点病院のない地域にも施設があることが分かります。外来化学療法を行っている施設を重ねると、連携施設のクリニックのほか多くの施設がみつかりました。在宅医療に関しては連携先でなくても、緩和ケアなどを行う施設が半分ほどあります。

製薬企業は「これから」の医療機関の連携をどう考えるか

「最近よく問い合わせをいただくのは、どの医療機関が連携しているのか線で関係を表示できないかということです」と中村氏。
法的な制度に基づいて連携している医療機関やデータは存在します。しかし、患者目線で考えたとき、拠点病院で手術を受けて生活圏に連携する施設がなかった場合に「紹介できないから遠くの病院を利用してください」と告げられるでしょうか。

「連携関係の把握は意義があります。ただ、既にある連携のみを線で追うのではなく、連携体制をとりうる施設をつないでいくことで、施設の強みを生かした円滑な流れを作り、より多くの人々に効果的な医療を提供する一助となるのではないでしょうか」と中村氏は見解を述べました。

例えば施設基準に注目して、最近新たにがん領域に注力している施設を探せます。
これが先行指標としての使い方です。拠点病院と連携体制にある施設をプロットすると、最近1年間で算定を開始した施設が抽出されます。複数のがん関連の施設基準を1年以内に届け出た施設があると分かりました。地域医療を考えて体制を整えていると推測できるので、それを踏まえた情報提供が喜ばれるのではないでしょうか。

データベース以外の2つの独自サービス

ミーカンパニーではデータベースの拡充に努めてきましたが、データベース以外の事業では、2つの独自サービスをリリースしました。

まず、地域の最新情報をお届けするMR向けサービス「SUCUEL NEWS」です。担当エリアの医療機関や自治体などがホームページで発信した情報を、自動的に端末に届けます。

次に施設ホームページの情報探索サービス「SUCUEL RD」です。希少疾患などデータ自体が少ない領域の担当者向けで、ターゲットリストの見直しにも役立ちます。施設への訪問で潜在的な患者の発見につながった報告もいただいています。

製薬企業がオープンデータをマーケティングに活用していくために

疾患や薬剤、医療機器など、世の中には医療関連の膨大なデータが存在します。その中から、それぞれ課題に応じたデータの抽出・組み合わせが可能です。一方で、オープンデータは魔法ではありません。データを使えばあらゆる課題が解決できるわけではなく、求めているデータ抽出に応えられない場合もあります。

「とはいえ、オープンデータで実現できることをやりつくした段階ではないと、我々は考えています。医療変革のさなかにある今こそ、地域医療の一員として奔走する皆さんをSCUELでご支援できれば何よりです」と中村氏は今後の展望を述べました。


本講演で紹介しました、ミーカンパニー株式会社が提供する「SCUEL データベース」についてご質問やご相談がございましたら、お気軽に以下フォームよりお問い合わせください。なお、サービス資料をご希望の場合には、その旨フォームにご記入ください。