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MDMD2022 Autumnレポート/デジタル時代に考えるべき疾患啓発における「看護師のリアルなアプローチ」事例

MDMD2022 Autumnレポート/デジタル時代に考えるべき疾患啓発における「看護師のリアルなアプローチ」事例


2022年9月に開催したオンラインカンファレンス「Medinew Digital Marketing Day(MDMD)2022」。本セッションでは、電話による健康相談サービスを提供するティーペック株式会社の田中氏と、健康相談を担当するヘルスカウンセラーが登壇。疾患啓発や患者サポート施策で効果を発揮する、電話相談サービスについて紹介しました。

製薬企業の疾患啓発・患者サポートに活用可能な電話健康相談

24時間年中無休の電話による健康相談サービスを提供するティーペックは、全国4カ所に合計250ブースのメディカルコンタクトセンターを設け、さまざまな健康相談に対応しています。寄せられる内容としては、気になる体の症状に関する相談が約30%、病気の治療に関する相談が約25%、その他育児やCOVID-19禍の影響によるメンタルヘルスの相談なども増えています。
これらの悩みを製薬企業のマーケティング視点に置き換えた場合、気になる体の症状は「疾患啓発」の対象となる潜在患者からの相談、病気の治療に関する相談は「患者支援」の対象となる顕在患者からの相談であるといえます。

ティーペックの相談内容調査データ
2022.9.30 ティーペック(株)「~デジタル時代だからこそ知ってほしい!~疾患啓発における「看護師のリアルなアプローチ」事例のご紹介」資料より抜粋


ティーペックは、医師や看護師・保健師などの医療有資格者で構成されるヘルスカウンセラーによる相談対応で蓄積した情報・ノウハウを生かし、製薬企業の展開する疾患啓発や患者サポートにおいてもさまざまなかたちで支援が可能です。実際に、製薬企業が手掛ける幅広い疾患領域において、同社は電話健康相談による患者へのサポートを行っています。

電話相談とデータ提供で効果的な製薬マーケティングを支援

事例の1つとして、旭化成ファーマ株式会社 の骨粗鬆症の疾患啓発プロモーションにおいてメディカルコンタクトセンターが活用されています。疾患啓発サイト「骨検」の中に電話相談室を設置して、骨粗鬆症に関する検査や治療法などの悩みや疑問点に関して相談を受ける、というものです。

電話相談のメリットとして、疾患啓発サイトの内容だけでは理解しきれない部分を、リアルなコミュニケーションで補えるという点が挙げられます。
ティーペックではさらに、電話相談を利用した方が実際に医療機関で受診されたのか、電話やメールによる追跡アンケートも実施。相談を受けるだけではなく、相談内容をデータとして製薬企業に提供し、疾患啓発の施策のヒントや、患者ニーズの把握に役立つ貴重な情報源として活用することも可能です。

受診や治療においてデジタル施策が抱える課題

マーケティングやプロモーションにおいてデジタル施策に注力する製薬企業が多い今、「デジタル施策は健康に悩む人にとって効果的に働く一方、デジタル施策だけでは乗り越えにくい壁もある」、と田中氏は話します。

患者の行動やニーズが把握しにくい

課題の1つは、患者の行動やニーズを把握するのが難しいという点です。

患者が受診に至るまでの行動変化が表現された「行動変容ステージモデル」によると、まだ症状が表に出ていないような状態の無関心期に、健診などで異常を指摘されたり身体の不調を感じたりすると、関連する情報が気になっていく関心期へと移行します。
その後、病気や病院について調べる準備期に移行し、必要に応じて医療機関へ受診をする流れが一般的です。
デジタル施策は情報収集がメインとなる無関心期から準備期においては大きく力を発揮するものの、準備期以降においては、実際に受診に至ったのか、治療継続している患者が何を求めているのかといった把握は難しいと田中氏は話します。

患者の行動変容ステージモデル
2022.9.30 ティーペック(株)「~デジタル時代だからこそ知ってほしい!~疾患啓発における「看護師のリアルなアプローチ」事例のご紹介」資料より抜粋

不安や疑問が受診の高い壁となる

さらに田中氏は、準備期以降に患者が実際に医療機関へ受診するまでには、想像以上に高い壁が存在すると指摘しました。これは、必要な情報を集めていく中でネガティブな情報や間違った情報に遭遇することで、受診に対して不安や疑問が生まれるためです。

また、コロナ禍においては、感染症への不安などといった理由から受診につながらない可能性も考えられます。こういった受診前の不安や疑問を払拭し、受診や治療継続につなげるためには、患者の不安や悩みに寄り添い、後押しすることが必要であり、電話相談はその点で有効な手段だといえます。

メディカルコンタクトセンターの具体的な対応を事例で紹介

実際にティーペックの電話相談がどのような役割を果たしているのか、相談に対応しているヘルスカウンセラーが講演で3つの事例を紹介しました。

事例①:本人の関心ごとから相談に乗り、準備期への気持ちを高めたケース

1つ目は、定期健康診断で糖代謝異常の疑いを指摘された60代女性の例です。

健診結果をもとに自治体の栄養士に相談したところ、専門機関での再検査を受けるように勧められました。しかし、後日知人から「あなたくらいの数値なら食生活や運動で治るから大丈夫」といわれたことから、再検査は受けておらず、食事や運動に関する話を聞く目的での電話相談に至りました。
本事例のように、患者が医療関係者よりも身近な知人の言葉に耳を傾けてしまうケースは少なくありません。

話を聞く中で、食事や運動などで身体の状態を改善させたいという相談者の思いを見出したことから、相談者は行動変容ステージモデルの関心期にいると考えられました。ヘルスカウンセラーはまず相談者の気持ちを受け止め、食生活や運動のポイントについて丁寧に伝えた上で、疾患の特徴や病態について話し、検査の目的や必要性について説明。すると、相談者から「やはり検査を受けたいので医療機関を勧めてほしい」との希望があったため、ヘルスカウンセラーは最終的に医療機関の案内をしています。

当ケースにおいては、最初に相談者の興味があることから情報提供を行い、続いて疾患や検査についてわかりやすく正確な知識を伝えたことで、行動変容ステージモデルの準備期への気持ちを高めることが可能になったといえます。

事例②:受診や治療への負のイメージを修正して実行期へ気持ちを高めたケース

2つ目は、娘の夜尿症に悩む30代母親の事例です。3歳頃に日中のおむつが外れてからも娘の夜尿が続いていたため、母親はまず自分の両親に相談しましたが、しつけの問題だと責められ精神的に追い詰められてしまいました。誰にも相談できないままインターネットで集められる情報で可能な限りの対応をしたものの、小学2年生になっても改善がみられなかったため、受診の必要性や適切な医療機関についての電話相談に至りました。

娘は夜尿で病院にいくことを恥ずかしがって抵抗している状況にあり、また相談者である母親は過去のトラウマから夜尿症は母親の問題だと医療者に責められるのではないかとの不安を抱えていました。一方で、この状況を変えるために医療機関を受診したい気持ちがあったため、行動変容ステージモデルの準備期であると判断できました。
ヘルスカウンセラーは、相談者への傾聴とねぎらいを意識しつつ、夜尿症の疾患に関する正しい知識や診療科を伝え、受診時には夜尿の記録を持参していくことを勧めたほか、医師への悩みの伝え方についてもアドバイスをしました。

その結果、受診や治療のイメージが得られたことで不安が解消されたようで、「娘にも恥ずかしいことではないと伝え、まずは受診して必要があれば治療に取り組んでいきたい」との前向きな声が相談者から聞けたそうです。

このケースでは、ヘルスカウンセラーが母親の気持ちを丁寧に傾聴して受け止め、疾患について正しい知識を伝えることで受診や治療への負のイメージを修正し、行動変容ステージモデルの実行期につなげることができた事例です。

事例③:利用者の不安に寄り添い根底にある気持ちを引き出して治療中断を防いだケース

3つ目は、骨粗鬆症治療に悩む80代女性の事例です。相談者は5年ほど前、2度の腰椎圧迫骨折をきっかけに整形外科を受診したところ骨密度低下を指摘され、骨粗鬆症の内服治療を開始しました。その後の検査で診断時よりも骨密度の数値に改善がみられたものの、同時期に歯科治療を優先し骨粗鬆症治療を中断しています。主治医からは歯科治療が終了次第、骨粗鬆症の治療を再開する旨が伝えられていましたが、以前の検査で骨密度の数値が改善していたからとの相談者の判断により、治療は再開しないままとなっていました。

ヘルスカウンセラーは、治療の再開については主治医の判断になるとした上で、一般的な治療の流れについて相談者の状況を聞きながら丁寧に説明しました。骨粗鬆症治療の効果や中断のリスクについても説明を行い、定期的な検査を受けて骨の状態を確認することが重要であると伝えたところ、女性からは「さっそく今日受診して先生と相談する」との前向きな返答がありました。

このケースは、相談者の不安に寄り添い丁寧に話を伺ったことで、言葉の根底にあった相談者の気持ちが引き出され、改めて前向きに治療と向き合うきっかけをつくることができたと考えられます。

デジタル施策の中で効果的なコミュニケーションを生みだす「電話相談」

田中氏は、相談者から「今夜はゆっくり眠れそうです」という言葉をかけられることがあるそうです。そして、これはまさに抱えていた不安が解消され安心に変わったことを表す一言ではないか、と話します。疾患啓発や患者サポート施策に電話相談というリアルなアプローチを組み込むことで、患者の不安を解消し受診の後押しや、患者の声の獲得、そして患者とのタッチポイントの創出が可能となります。

最近はデジタルコミュニケーションの1つとして、チャットによる相談も増えてきていますが、チャット相談は手軽にできる一方、感情やニュアンスが伝えづらい、相手側の意図を汲み取りにくいという課題もあります。田中氏は「電話であれば効率的・効果的にコミュニケーションを取ることができ、こういったアナログな手法がデジタル施策の中で有効に活用できるのではと考えています 」と話します。

MDMD2021/ペイシェントジャーニーに添った疾患啓発(DTC)におけるデジタル×リアルマーケティング活用の経験談
2021.11.15
MDMD2021/ペイシェントジャーニーに添った疾患啓発(DTC)におけるデジタル×リアルマーケティング活用の経験談