薬剤選択時に「経済性」意識の医師は6割。コスト・採算の情報ニーズが高い層とは?

薬剤選択時に「経済性」意識の医師は6割。コスト・採算の情報ニーズが高い層とは?

人件費高騰や物価高によるコスト増、不採算部門の維持などを発端とした、医療機関の赤字経営は深刻化しています。医師はどの程度、所属施設の経営状況を把握し、その状況は薬剤選択や情報ニーズにどのような影響を与えているのでしょうか。
 
Medinewはその実態を探るため、2026年2月に医師を対象として、経営状況とその影響、加えて情報チャネル活用状況や製薬企業との関わりについて、アンケート調査を実施しました。
 
本記事ではその回答から、医師の経営状況把握実態と処方時の意識、経済性関連の情報提供が有益かどうかについて、分析の結果を解説します。

調査概要

医師250名を対象に実施した本アンケートでは、所属施設の経営状況や、薬剤選択時の経済性の意識、製薬企業からの経済性関連の情報提供の有用性、製薬企業を含む各チャネルの利用頻度やその評価について調査を行いました。

  • 調査期間:2026年2月18日~2月28日
  • 調査対象:全国の20~60代以上の医師(週20時間以上勤務)
  • 回答者数:250名
  • 調査方法:Webアンケート


▼アンケート結果資料をダウンロードする

【DL資料】医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版
2026.04.28
分析・リサーチ情報
【DL資料】医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版

サマリー

  • 医師の所属施設の経営「不調」認識率は35%。開業医を中心とする施設運営医師では50%と特に高い。一方、病院の診療科リーダーやそれ以外の職位が下位の医師の中には、経営状況をよく把握していない医師も存在する
  • 薬剤選択時、医師は効果のほか経済性とのバランスを重視しており、幅広い項目で約6割が経済性を「意識」と回答。施設運営医師はコスト・採算性に対しシビア。診療科リーダーは多方面から経済性を判断し処方を決定しており、コスト・採算性に加え関連職種・部署の業務効率化へも高い意識
  • 製薬企業からの経済性関連の情報提供に対しては、幅広い項目で5割以上が「有用」と回答。職位の高い医師でよりニーズ高
  • 診療科リーダーは、学術情報へのアクセスルートが豊富。製薬企業チャネルは非効率との評価で影響度も低。製薬企業チャネル影響度UPのためには、学術情報以外で医師の情報ニーズを満たすことが有用で、経済性関連情報はその一助となり得る
  • 施設運営医師は学術情報へのアクセスが限られているため、製薬企業チャネル重視。学術情報とともに、経営視点での薬剤メリットを訴求すると、薬剤選択に有益な可能性

所属施設を経営「不調」と認識している医師は35%。職位・属性で差あり

今回のアンケート調査の結果、所属施設の経営状況は、「普通」と回答した医師が38%で最も多く、「不調」もしくは「極めて不調」と回答した医師は合計35%でした。

厚生労働省は、医療機関の2024年度の赤字経営率(※医業利益)を、病院で58.9%、診療所で40.5%と報告しています1)。本調査による不調率はこれを下回っていましたが、その理由として、アンケートは医師の認識ベースで回答されていることが影響していると考えられます。つまり、医師の経営不調に対する認識は、実態よりも低い可能性が示唆されました。

DL資料「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」より抜粋/Medinew
DL資料「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」より抜粋/Medinew

「不調」と回答した医師の割合は、医師の職位別にみると「施設運営に関わる医師」では50%、「診療科リーダー」では29%、「その他の医師」では34%と、違いが顕著でした。

DL資料「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」より抜粋/Medinew
DL資料「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」より抜粋/Medinew

なお、この職位の区分は、所属施設での立場に関する選択式設問の結果に従い分類しています。施設運営医師は「施設全体の運営に関与する立場」と回答した医師であり、回答者全体の18%を占めました。診療科リーダーには「診療科・部門の運営に関与する立場(21%)」「診療チームを主に統括する立場(9%)」の医師が含まれ、その他の医師には「診療チームの一員として診療に携わる立場(49%)」「研修医・専攻医(7%)」と回答した医師が含まれています。
 
施設運営医師は、年齢は60代以上が半数超、施設形態はGP(診療所)が75%と、開業医が主となる群です。診療科リーダーは40~50代が6割、HP(病院)が91%と、病院の中堅医師で占められていました。
 
施設運営医師は施設経営にダイレクトに関わっており、当然ながら経営状況をよく把握しかつその状況に敏感であるため、高い不調率を示したと推察されます。一方、診療科リーダーおよびその他の医師の中には、所属施設の経営状況を共有されていない、あるいは正確に把握していない医師が一定数含まれると考えられました。

薬剤選択時、医師は効果と経済性のバランスを重視

薬剤選択時に経済的観点で意識していることの第1位は「費用に見合った効果を得られるか」でした。

所属施設の経営状況を「不調」と認識する医師が35%のみという状況下で、「費用に見合った効果を得られるか」については、それを大幅に超える64%の医師が意識をしていました。すなわち、費用対効果は経営状況にかかわらず医師の薬剤選択を左右する重要な要因と考えられるでしょう。加えて、さまざまな経済的観点の中でこの項目が意識の最上位であるということは、医師が薬剤を選択する際はまず大前提として効果を考えており、その上で経済性とのバランスを考慮していることがデータとして示されたといえます。
 
その他に、「看護師や薬剤師などの医療スタッフの業務負担が増えないか(59%)」「医師の業務負担が増えないか(57%)」などの多職種の業務負担、「自施設の採算にプラスになるか(57%)」「自施設のコスト管理・効率化方針に沿っているか(57%)」などのコスト・採算性についても、6割近くの医師が意識をしていました。「付随する検査や処置が増えすぎないか(56%)」「副作用対応やモニタリングの負担が大きくならないか(55%)」といった、全体のオペレーション負荷に関する項目もそれに続きました。

DL資料「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」より抜粋/Medinew
DL資料「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」より抜粋/Medinew

薬剤選択時の経済性への意識を職位別でみると、「費用に見合った効果を得られるか」を最も意識している点はどの層の医師でも一致していましたが、他のポイントにはそれぞれの立場を反映した違いがみられました。

DL資料「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」より抜粋/Medinew
DL資料「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」より抜粋/Medinew

施設運営医師は採算性やコストを強く重視

施設運営医師は、「自施設の採算にプラスになるか(82%)」「自施設のコスト管理・効率化方針に沿っているか(82%)」「診療報酬上、算定や運用がしやすいか(75%)」といった自施設の採算性やコスト管理に関する点を特に意識しており、開業医・経営者として収益に対しシビアな視点を持っていることが浮き彫りとなりました。

診療科リーダーは多職種の業務負担やオペレーション負荷など多方面を意識

他方、診療科リーダーはコスト・採算性だけでなく、医師や看護師・薬剤師などの業務負担、検査や処置の増加、副作用対応やモニタリングの負担といった全体のオペレーション負荷も同程度に意識していました。病院の現場リーダーという立場上、関連職種・関連部署の業務効率化についても職責を担っており、より多様な側面から総合的に判断をしているようです。
 
そして、その他の医師では、あらゆる項目について「判断できない」との回答が他の医師に比べて多いことが特徴的でした。この医師群は若手中心であり、薬剤選択において経済性も意識するまでには至っておらず、不明瞭な回答が多くなったと考えられます。 

経済性に関する情報提供は概ね有用。高職位ほどニーズあり

製薬企業からの経済性関連情報の提供の有用性については、幅広い項目で5割以上の医師が「とても有用」「やや有用」と回答し、特に職位の高い医師ほどその割合が高く、高職位でのニーズの高さが伺えました。

DL資料「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」より抜粋/Medinew
DL資料「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」より抜粋/Medinew

中でも有用性が高いと回答された情報は、「製品を使用する患者の自己負担に関する情報(65%)」であり、医師にとっては患者のメリットに直結するものがやはり注目されていました。

その他には、運用上の負担軽減や医療資源利用の削減効果など、ミクロからマクロまで多様な視点からの経済的効果に関する情報が有用と考えられていました。 

経済性関連の情報提供は、診療科リーダーでの製薬企業チャネルの位置づけを変える?

経済性関連情報の提供の有用性について、情報チャネルの活用状況とあわせて分析すると、診療科リーダーでは、経済性関連情報が製薬企業チャネルのポジショニングに変化をもたらす可能性もみえてきました。

DL資料「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」より抜粋/Medinew
DL資料「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」より抜粋/Medinew

各情報チャネルの情報収集の効率性(横軸)と臨床判断への影響度(縦軸)をプロットすると、診療科リーダーで影響度が高いのは、主に「学会、勉強会(69%)」「書籍、専門誌・学会誌(65%)」「オンラインの論文情報(59%)」などの学術情報であることが明らかでした。また、これらのチャネルの効率性は、オンラインの「医師向けメディア」などに比べると低く評価されそうなものですが、この医師群に限ればそうではなく、他チャネルに比べて効率がよいと評価されていました(56~59%)

診療科リーダーは病院所属であり、学会や勉強会参加の機会が多く、学術誌についても紙媒体やオンラインで入手しやすい環境にあるため、効率・影響度ともに高評価となったと考えられます。
 
学術情報を手軽に入手できる状況下では、他のチャネルの評価は当然ながら低くなると想定され、実際に「医師向けメディア」の影響度は平均レベルであり、製薬企業チャネルは、効率性・影響度ともに平均を下回る評価でした(影響度は36~45%、効率性は37~43%)。
 
この医師群では、学術情報へのアクセス手段がすでに充実していることから、製薬企業チャネルが存在感を高めるためには、学術情報とは異なる観点での情報提供も必要と考えられます。従来の薬剤の効果や安全性に関する情報提供は、医師の薬剤理解や処方促進のためには引き続き不可欠だと考えられますが、経済性に関する情報提供は、医師の情報ニーズに新たな観点から応える切り口の一つとなる可能性があります。  

施設運営医師には、学術情報とともに経営視点での薬剤メリットも訴求を

施設運営医師での製薬企業チャネルの位置づけは、診療科リーダーとは全く異なっていました。

DL資料「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」より抜粋/Medinew
DL資料「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」より抜粋/Medinew

施設運営医師でも、「書籍、専門誌・学術誌」の影響度が高い(68%)ことは同様でした。しかし、その効率性については平均以下の評価(43%)であり、「学会、勉強会」「オンラインの論文情報」からも効率よく情報収集できているとは言い難い結果でした。一方で、「医師向けメディア」は効率面で最も評価(61%)されており、「製薬企業主催の講演会」「製薬企業担当者(MR、MSLなど)」も影響度・効率性の両面で平均以上の評価を得ていました(影響度は52~55%、効率性はいずれも59%)。
 
開業医中心の施設運営医師は、病院勤務の診療科リーダーに比べると学術情報の一次情報入手ルートが限られており、代わりに製薬企業が重要な情報収集源になっていることがうかがえます。

施設運営医師に対しては、求められている学術情報を効率的に届けることに加え、経営視点での薬剤メリットについても情報提供を行うことが有益だと考えられます
 
効率的かつ効果的な情報提供のためには、データに基づき、医師の属性や選好によって情報提供を個別化する必要があります。今回の調査結果からは、施設の経営状況や役職、各医師の担っている業務範囲も個別化アルゴリズムに組み込み、診療外の課題や関心ごとにも応えていくことが望ましいと考えられるのではないでしょうか。

「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」レポート資料をダウンロード

本記事で紹介したデータを含む「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」のフルレポートは、以下ページより無料でダウンロードいただけます。今回ご紹介したデータのほかにも、情報チャネル別の最新利用動向と医師から見た評価、MR/医療関係者向けサイトを評価している製薬企業のランキング、情報収集時によく見る製薬企業とそのタッチポイントなども掲載しています。ぜひご覧ください。

※資料の無断引用・転載はお断りいたします。

【DL資料】医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版
2026.04.28
分析・リサーチ情報
【DL資料】医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版

<参考文献>
1) 厚生労働省: 第623回中央社会保険医療協議会総会 資料「医療機関を取り巻く状況について」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001588127.pdf (2026年3月25日参照)