AIは次世代医師の意見形成に影響か―若手・大規模病院から広がる活用、製薬企業チャネルに迫る存在感

情報チャネルの多様化や高度化に伴い、医師と製薬企業との関わりはますます変化しています。また、急速に発展するAIもさらなる影響を及ぼすと推測され、医師のAI活用の現状や今後の広がりを知ることも急務になっています。
その実態を探るため、Medinewは2026年2月の医師アンケート調査で、各情報チャネルの利用頻度やその評価などを尋ねました。本記事ではその結果から、医師の情報収集のトレンド、生成AIの影響、MR面会やWeb講演会などを通じた製薬企業との関わりへの意向について解説します。
調査概要
医師250名を対象に実施した本アンケートでは、所属施設の経営状況や、薬剤選択時の経済性の意識、製薬企業からの経済性関連の情報提供の有用性、製薬企業を含む各チャネルの利用頻度やその評価について調査を行いました。
サマリー
- 典型的な医師は、医師向けメディア、周囲の医師、書籍・学会誌や論文から日常的に情報収集。学会・勉強会は、月1回以上Web聴講し、年数回ほどリアル参加。MR面会は月1回以上、製薬企業のWeb講演会も月1回以上利用している。
- AIは、約半数の医師が利用経験あり。26%が週1回以上利用しており、27%が直近1年間で利用頻度が増えたと回答。特に、大規模病院の30~40代の若手医師で利用が広がる。
- 臨床判断への影響度は、周囲の医師、学会・論文などの学術チャネルで高く、これらに比べると製薬企業チャネルの影響度は相対的に低く、AIはさらに低い。しかし、利用者に限定すると、AIの影響度は製薬企業チャネルと同程度。
- 医師は、現在も製薬企業との一定の関わりを維持。42%は1社以上の担当者と定期面会し、36%が新たな定期面会を受け入れている。
- MRとの接触頻度が少ない場合は、Web講演会が重要なタッチポイントとなっている。
リアルとデジタルを織り交ぜた情報収集に、AI躍進の予兆
今回のMedinew医師アンケート調査では、昨年調査に引き続き、診療・業務に関する情報収集における各情報チャネルの利用頻度を尋ねました。
その結果、昨年から大きな変化はなく、医師は「医師向けメディア」「上司・同僚・知人医師」を最も日常的に活用し、次いで「書籍、専門誌・学会誌」「オンラインの論文情報」といった学術チャネルをよく利用していました。そして、リアルとデジタルを織り交ぜて「学会、講演会」に参加し、「製薬企業担当者(MR、MSLなど)」から月数回情報提供を受けるという情報収集スタイルとなっています。
利用頻度が最も高いチャネルは「医師向けメディア」であり、医師の7割が週1回以上、4割が週4日以上利用しており、毎日の習慣として完全に定着している様が明らかになりました。
「医師向けSNS・アプリ」も、週4日以上の利用が「医師向けメディア」に次いで多く、一部の層では完全に習慣化していることがうかがえます。ただし、年に一度も利用しない医師も4割おり、利用頻度が大きく分かれているのが現状のようです。
「学会、勉強会」は、半数超の医師が月1回以上Web聴講している一方、リアル参加は数カ月に1回以下が8割と、Webの方が利用頻度が高い傾向が鮮明でした。この傾向は「製薬企業が開催する講演会」でも同様で、製薬企業のWeb講演会には半数超の医師が月1回以上参加していました。
情報収集のデジタルシフトは、直近1年間のチャネル利用頻度の変化に関する質問でも顕著に見られました。「学会、勉強会などのリアル参加」「製薬企業が主催するリアル講演会」がともに2割の医師で減少したのに対し、「学会、勉強会などのWeb聴講」「製薬企業が主催するWeb講演会」はそれぞれ14%、12%の医師で増加しました。
また、本質問の結果では「生成AI、AIエージェント」の利用が「大きく増えた」「増えた」医師が27%と、突出して増加していました。先の質問でも、「生成AI、AIエージェント」をすでに半数が利用したことがあり、4人に1人は週1回以上利用、7人に1人は週複数回利用していることからも、医師の情報収集の習慣に浸透しはじめていることがうかがえます。
AI利用者が増えると、その影響力は製薬企業チャネルに迫る
本調査では、各チャネルからの情報収集の影響度と効率性も尋ねました。各チャネルについて、「臨床判断にとても影響している」「影響している」と回答した医師、「とても効率がよい」「やや効率がよい」と回答した医師の割合をプロットすると、以下のようになりました。
現状では「上司・同僚・知人医師」による医師間ネットワークと、「書籍、専門誌・学会誌」「学会、勉強会」などの学術チャネルからの情報が最も臨床判断への影響度が高いと評価されていました。一方で、ここに情報収集にかかる時間・費用といった要素を加味した場合、効率性の面では医師間ネットワークが最も高評価で、次いで医師向けメディアが優れるという評価になりました。
一方、製薬企業チャネルは、臨床判断への影響度・効率面ともに平均以下の評価でした。ただし、製薬企業チャネルに対する評価には医師の属性によって差があり、一部の医師は製薬企業チャネルを重要視していることが分かりました。そのため、製薬企業チャネルの影響度を高めるためには属性ごとの実態や背景を加味し、それぞれに対策を講じることが有効と考えられます。
▼医師の属性別の分析結果はこちら
https://www.medinew.jp/articles/marketing/marketing-strategy/dr-survey-2604-report1
急伸する「生成AI、AIエージェント」は、効率面では製薬企業のMRや講演会などと同程度に評価されており、一方で影響度は最下位にとどまりました。しかし、これは医師全体で見た場合であり、AIを既に活用する先駆的な医師から見た評価では様相が一変します。各チャネル利用者に限定した評価を見ると、AIは医師向けメディアにも勝る効率性があり、しかも影響度は製薬企業のMRや講演会などに並ぶという結果になりました。
この数年でAIは急速に広がり、生成AI活用が診療報酬の算定要件にも一部組み込まれる1)ことが話題になるなど、医師の周辺でも身近になりつつあります。医師の情報収集や意思決定プロセスにおいても、AI活用が急拡大する可能性は大いに考えられるでしょう。もちろん、今後利用者層の裾野が広がれば、今回見られたAIへの高評価にも変化が見られるかもしれませんが、それでも無視できない影響力を持つことは間違いありません。AIは製薬企業チャネルの競合となるのか支援者となるのか、その見極めと対策は急務となりそうです。
AI活用は大規模病院の次世代医師から波及
では、AI活用はどのような医師から広がっているのでしょうか。
AIが「臨床判断にとても影響している」「影響している」と回答した医師は、500床以上の病院に勤務する医師が最も多く3割を超え、年齢は30代・40代がそれぞれ3割を占めていました。つまり、大学病院や地域の基幹病院など、大規模病院の若手医師から活用され始めているという傾向があるといえます。これらの医師は次世代KOLへと成長する可能性を大いに秘めており、AIはこの医師層を中心に次世代の意見形成に現在進行形で関与している可能性があります。
MRと定期面会は42%、医療関係者向けサイト登録は47%
各チャネルの利用頻度で示された通り、デジタルシフトやAI台頭の波を受けつつも、医師は製薬企業とも一定の関わりを維持しています。
MR・MSLなどと定期的に面会している製薬企業が1社以上ある医師は42%にのぼり、直近1年間での新たな定期面会も36%が受け入れています。一方、製薬企業の医療関係者向けサイトには47%の医師が1社以上登録していますが、直近1年間で新たな会員登録をした医師は26%にとどまりました。
なお、製薬企業との接点がまだない若手医師を除けば、製薬企業との関わりを持っている比率は一層高くなりました。60代以上の開業医を中心とした「施設運営医師」では、定期的な面会の実施率は61%、医療関係者向けサイトの登録率は55%。40~50代を中心とした病院所属の「診療科リーダー」では、定期的な面会の実施率は56%、医療関係者向けサイトの登録率は59%と、いずれも過半数を占める結果になっています。
MRの定期訪問が困難な医師にはWeb講演会でカバーを
医師は現在も製薬企業との関わりを維持していますが、一方の製薬企業ではMR数は年々減少しており、MRの定期面会による情報提供は一部のターゲット医師に絞らざるを得ないケースも考えられます。
そのような状況下では、MRの代替・補完チャネルとしてWeb講演会が有力であることを示唆する結果が、本調査で得られました。
本調査では、直近1年間で情報収集時に頻回に接触した製薬企業上位5社を具体的に尋ねた後、各社からの情報収集の経路を聴取しました。その結果、MRに次いで医師が「よく見かけた」と記憶している情報チャネルはWeb講演会であり、しかも接触頻度が下位の企業になるにつれて、MR経由での情報収集が減少する代わりにWeb講演会からの情報収集が増加していました。
つまり医師は、MR面会の多い企業が最も「記憶に残る」可能性が高いものの、MR面会の少ない企業からもWeb講演会を通じて積極的に情報を入手し、印象付けられているということです。Web講演会による情報提供を必要に応じて強化することで、医師の情報ニーズに応えられる可能性が高いと考えられます。
今回の調査からは、AI活用がとりわけ若手医師を起点に広がりつつあり、今後の情報戦略においてはその影響を的確に捉えることが不可欠であることが明らかとなりました。また、人的リソースとデジタルチャネルの配分が、医師の多様な情報ニーズを十分に満たしているかという点も、引き続き重要な検討課題です。
医師の情報収集スタイルは世代の移り変わりとともに変化していくことも見込まれるため、こうした動きを継続的に捉えつつ、柔軟かつ戦略的にコミュニケーション設計を進化させていくことが求められると考えられます。
「医師をとりまく環境変化と製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」レポート資料をダウンロード
本記事で紹介したデータを含む「医師のデジタルチャネル利活用および製薬企業との関わりに関する調査 2026年版」のフルレポートは、以下ページより無料でダウンロードいただけます。今回ご紹介したデータのほかにも、所属医療機関の経営状況に関する認識、薬剤選択時の経済性の意識や、製薬企業からの経済性関連の情報提供に関する評価などに関するデータも掲載しています。ぜひご覧ください。
※資料の無断引用・転載はお断りいたします。

<参考文献>
1) 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定について【全体概要版】
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001701061.pdf(2026年6月9日参照)








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