【プロマネTips.13】これからのプロマネのキャリアを考える

【プロマネTips.13】これからのプロマネのキャリアを考える

プロマネのキャリアは、マーケティングの世界を目指す人たちにとって大変興味があるテーマです。ところが、プロマネになるために何が必要なのか?は、明確な条件がありません。また、すでにプロマネとして働かれている方は、今後のキャリアをどう考えるのかも関心事ですが、プロマネから先のキャリアも不明瞭です。そこで本シリーズの最終回である今回は、プロマネのキャリア全体を考えます。

製薬企業のプロマネへの道は大きく2つ

まずは、製薬業界におけるプロマネ任命の歴史を見てみましょう。各製薬企業によって、プロマネのポジションの扱いや必要とする人材のスキルセットは異なるため、プロマネの歴史も一概には言えません。とはいえ、多くの場合プロマネは、その製薬企業の主力医薬品(プロモーション品)の製品戦略の立案と実行、評価、リプランなどを担当してきました。すなわち、製薬企業の業績を左右しうる重要なポジションです。

プロマネになるためには、大きく2つのルートがあります。1つ目は社内でキャリアアップしプロマネに就任するルート。2つ目は、プロマネのポジションを社外に求め、転職して就任するルートです。

統計的なデータはありませんが、2000年前後から2010年頃までは、社内でキャリアアップしてプロマネになる人の方が多かったように感じます。この頃は、現在ほど転職が一般的ではありませんでした。MRとして製薬企業に入社し、その後プロマネを目指すことが現在よりも身近に感じられた時期かもしれません。

2010年頃から現在にかけては、プロマネは転職活動のポジションの一つとして人気があります。転職サイトには、たくさんの製薬企業のプロマネのポジションが人材を募集しています。それらを見ていくと、2022年のプロマネを募集している疾患領域としては抗がん剤、希少疾患治療薬、リウマチ等のスペシャリティケアのバイオ医薬品の新薬などが多いようです。

現在のプロマネのトレンド

転職サイトで見受けられるプロマネに求められる能力には、トレンドがあります。現在のプロマネに求められる能力にはMBAホルダー(経営学修士号保有者)や、プロマネとしての経験、ビジネスレベルの英語力などを明記しているポジションが多くみられます。

以降で詳細に見ていきますが、これらの大きなトレンドからは「プロマネとしての即戦力を採用したい」「現役のプロマネを採用したい」という製薬企業の要望がみて取れます。このトレンドは数年前よりも現在の方が強まっているようです。このことは、裏を返せば、製薬企業側には「社内でプロマネを育成することに時間をかけられない」「実績あるプロマネを社外から採用することで自社医薬品の売上を早急に伸ばしたい」などの思惑があるとみることもできるでしょう。

プロマネに求められるもの① MBAホルダー 

製薬企業の経営陣がプロマネにMBAホルダーを求める背景には、何があるのでしょうか。

MBAでは、経営に関する人・モノ・金について学びます。具体的には、さまざまな経営ノウハウやマネジメント、マーケティング、アカウンティングなどが挙げられます。これらのスキルは医薬品の製品戦略の立案に役立ちますので、プロマネの仕事と親和性が高いスキルだといえます。製薬企業の経営陣は、自社医薬品の売上アップのためにこのスキルを活かしてほしいと考え、MBAホルダーをプロマネに迎えようとするのです。そのため、転職市場におけるプロマネに望ましい能力を一言でいうと「MBAホルダー」ということになります。

プロマネに求められるもの② プロマネとしての経験 

最近ではMBAホルダーだけではなく、当該疾患領域でのプロマネ経験も併せて求める転職案件が増えてきました。このような案件が増えてきた背景には、「製薬企業がプロマネに対して短期間で売上アップの結果を出すことを一層強く求めていること」「異業種から採用したMBAホルダーのプロマネがなかなか結果を出せなかったこと」などがあります。

異業種から製薬業界にプロマネとして転職してきたMBAホルダーの中には、活躍の場を求めて製薬業界から去った人も少なくありません。一般消費財とは違い、製薬業界では製品戦略、マーケティング、プロモーション、マネジメントの他にも、広範にわたる医療業界の制度や、医療者と患者さんの多様なインサイトの探究など、プロマネがやらなければならないことがたくさんあるというのも、そうした理由の一つなのではないでしょうか。

プロマネに求められるもの③ 英語の能力

現在の多くのプロマネのポジションでは、日本語と英語がビジネスレベルで堪能であることも求められています。製薬企業のプロマネは、レポートラインが直接海外の上司につながる場合も多くあります。その場合、海外の上司と医薬品の製品戦略についての議論や、日本の医療制度の変更に伴う医薬品売上への影響の報告など、直接英語でやり取りしなければなりません。COVID-19以降は、ZoomやMicrosoft Teams、WebEXといったWeb会議システムの利用が普及し、英語によるテレカンファレンスも増えています。

また、自社内だけでなく、社外のステークホルダーとの契約書の締結時に、英文の契約書を読める必要性が生じることもあります。例えば、プロマネが社外のベンダーに独自のカスタムリサーチを発注する際、プロマネがベンダーと自社の間に立ち、さまざまな調整や協議をすることになります。そのベンダーが外資系のリサーチ会社だと、基本契約書や秘密保持契約書、請求書など、やり取りする書類がすべて英語という場合があるため、英語で調整する能力が必要となるのです。

プロマネには、このようなペーパーワークや英語でのディスカッション、英文の契約書の精査等が可能な英語力が求められています。もちろん全てを兼ね備えていなくても良いというプロマネの案件もありますが、全てを兼ね備えているならプロマネとしてのキャリアの可能性が大きく広がるということでもあります。

求められるスキルの変化

プロマネに求められるスキルセットは、今必須と思われるスキルであっても将来は不要になる可能性もあります。例えば、将来不要になるかもしれないスキルには「英語力」が該当するかもしれません。
現在、英語の翻訳機能がどんどん進化していて、さまざまなAIのアプリやサービスが登場しています。難しい英語の契約書であっても、現時点で既にPDFのファイルを丸ごと翻訳できるものもありますし、今後もっと自然に翻訳できるサービスが登場するかもしれません。

また、海外の人と英語で話をするときに、スマートフォンが自動で母国語に翻訳してくれて、スムーズなコミュニケーションができるようなるかもしれません。そうなってくると、プロマネに必要な能力は英語力ではなく、英語でも自然に適切なコミュニケーションを図れるアプリを知っていて、それを使いこなすスキルになってきます。

一方、どのような医療やビジネスの環境においても必須なスキルもあります。

普遍的に必要なスキルとしては、医療者や患者さんのインサイトを探究する好奇心とそのリサーチ方法が求められるのではないでしょうか。医療者や患者さんのインサイトを知らなければ、適切なマーケティングプランを立案することはできません。インサイトを得るためには、市場や疾患、患者さん等についてどのようなデータがあるのかを知る必要があります。また、プランに必要な情報が全てデータとして得られるわけでもありません。完璧なプランを求めるのではなく、仮説を立案し、その結果を検証し、得られた知見をプランに活かしていくといった考え方も必要です。これらのデータ活用の取組みは、 プロマネTipsの第8回 もぜひご参照ください。 

これからのプロマネに求められるのは先読みの力?

さらに、プロマネの次のキャリアアップ、例えばマーケティング部長等を考えるなら、先読みの能力が必要と考えられます。プロマネに限りませんが、キャリアアップを実現するためには、上司の困りごとを解決するだけでは不十分です。望ましいのは、あらかじめ上司が困るかもしれないことを先回りして対応しておいたり、下調べを終わらせておいて、上司が無駄に時間を浪費しないで済むようにサポートすることです。
例えば、斬新なマーケティング手法の検討や各製品へのリソースの最適配分といった高度な課題を解決するために、必要な最新情報を日ごろから集めて整理しておいたり、社外に協力可能な人材や企業がないかを探索しておくことも、先読みの力といえます。

プロマネの先読みの力で水面下の課題を未然に防ぐ

また、プロマネが仕事で結果を出すには、従来からの定型的な仕事だけではなく、まだ存在しない水面下の課題を未然に防ぐという仕事も出てくるかもしれません。ただ、製薬業界は一般消費財の業界などと異なり、先読みがしやすい業界といえます。それは、さまざまなデータがあること、政府の骨太の方針や中医協での医療制度の議論の内容が公開されていることなどが理由です。これらの議論の内容を理解すれば、病院や診療所、医師といった顧客がどのように変化するのかがある程度予想できます。

例えば、2022年の診療報酬改定では、「急性期入院医療を提供する体制について新たな評価を行う」「大病院における紹介受診の推進と、そのための評価を見直す」「在宅医療を一層広範に広める」「オンライン診療の推進および評価を見直す」「後発医薬品の使用割合に応じて減算も一層広範に検討する」などが議論になっています。これらのことから、医療機関がどのように対応していくのか、患者さんがどのように動くかなどを踏まえたプランを策定することも、プロマネには求められるでしょう。

顧客の変化を予想すれば、こちらの打ち手も吟味可能です。製薬企業のビジネスの中枢であるプロマネは、単に製品や関係がある疾患領域だけに興味を持っていては結果を出せません。

これまでのプロマネTipsをぜひご活用いただき、結果につなげていただけたら幸いです。本コラムをお読みいただき、ありがとうございました。