戦略を支えるデータ活用、進まない理由は?今後の優先施策はデータ分析基盤の強化

戦略を支えるデータ活用、進まない理由は?今後の優先施策はデータ分析基盤の強化

オムニチャネル戦略の成功を左右するデータ活用。製薬企業において、思うように進展していない実態が浮き彫りになりました。

Medinewが2025年2月に実施した「製薬企業のオムニチャネル戦略に関する調査」では、データ活用の進捗状況や課題について詳細に調査。その結果、多くの企業でデータの収集・統合から分析・活用、施策への展開に至るまで、各段階でさまざまな壁に直面していることが明らかになりました。

本記事では、各社のオムニチャネル戦略におけるデータ活用の実態と課題、そして今後の取り組みの方向性について紹介します。

調査概要

  • 調査期間:2025年2月20日~2月27日
  • 調査対象:Medinew読者のうち、製薬企業に勤務するデジタルマーケティング部門、営業企画部門、プロダクト部門、メディカル部門など
  • 回答者数:81名 ※途中離脱者も含む
  • 調査方法:インターネット調査


▼調査結果の詳細レポートをダウンロードする

【DL資料】製薬企業のオムニチャネル戦略に関する調査 2025年版
2025.06.23
分析・リサーチ情報
【DL資料】製薬企業のオムニチャネル戦略に関する調査 2025年版

サマリー

  • 約7割の企業でオムニチャネル戦略のためのデータ活用が順調に進んでいない
  • データ収集・統合フェーズの課題はチャネル間のデータ統合(31%)とシステム間のデータ連携(29%)
  • データ分析・活用フェーズでは顧客行動パターン分析・インサイト抽出(47%)が最大の足かせ
  • 施策への活用フェーズではコンテンツのパーソナライズ配信(34%)に課題
  • 組織体制面ではデータ分析担当者の配置(25%)が最大の課題で、人材不足が深刻
  • 今後の優先施策はデータ分析基盤強化(45%)、AI活用(38%)、効果測定高度化(37%)

データ活用の現状:「90%以上進捗」はわずか

オムニチャネル戦略におけるデータ活用の進捗度合いを割合で評価(十分に進んでいると感じていれば進捗度90%以上、まったく進んでいない状況であれば30%未満を選択)する設問では、「90%以上の進捗度でデータ活用が進んでいる」と回答した企業はどの項目でも5%以下という結果となり、多くの企業がデータ活用において十分な手ごたえを感じていない実態が明らかになりました。

データ活用のプロセス別に見ると、「データの収集・統合」は半数近く(45%)で「進捗度60%以上」が選択されているものの、「データの分析・活用」「施策への活用」が「進捗度60%以上」である割合は3割前後であり、収集したデータを実際の施策に活かすプロセスで特に課題を抱えていることが分かりました。

7割程度は、いまだデータ活用が十分進んでいない
Medinew調査資料「製薬企業のオムニチャネル戦略に関する調査 2025年版」より抜粋

データ収集・統合における課題

データ活用の第一段階である「データの収集・統合」において、「各チャネル間の顧客データの統合」が最大の課題として挙げられました。次いで「各システム間のデータ連携」「外部データの連携・統合」が続いており、MR活動記録、オウンドメディア、講演会などの各チャネルから得られるデータが散在し、統合できていない現状があるようです。

これらの課題は、パーソナライゼーションの第一歩である「一人の医療関係者の全体像把握」を困難にしていることを示しています。多様なタッチポイントから得られるデータがバラバラに存在するため、個々の医師の関心やチャネル嗜好を統合的に理解できず、効果的な情報提供やアプローチができない状況となっています。

データ収集・統合では、チャネルやシステム間のデータ連携・統合が課題
Medinew調査資料「製薬企業のオムニチャネル戦略に関する調査 2025年版」より抜粋

データ分析・活用:顧客インサイト抽出と効果可視化で苦戦

データの分析・活用段階では、「顧客の行動パターン分析・インサイト抽出」が最大の課題となっており、収集・統合されたデータから医師の行動特性や潜在的なニーズを読み取ることに多くの企業が苦戦している状況です。

次いで「マーケティング効果の可視化」も大きな課題として挙げられており、各チャネルの施策効果を測定・評価する仕組みづくりに課題を感じている現状が伺えます。

一方、「AIによる分析自動化」を課題とする企業は少数に留まっていました。まずは基本的なデータ分析やインサイト抽出などの仕組み確立が優先課題であり、その次の段階として位置づけられているAI活用まで到達していない可能性が考えられます。

データ分析・活用では、顧客分析と効果の可視化に課題
Medinew調査資料「製薬企業のオムニチャネル戦略に関する調査 2025年版」より抜粋

施策への活用:パーソナライズ配信の実現が最大の壁

データ分析から得られたインサイトを実際の施策に活用する段階では、「コンテンツのパーソナライズ配信」(34%)が最も困難な課題として挙げられました。医師一人ひとりの関心や特性に応じたコンテンツの個別配信を実現することが高いハードルとなっているようです。

次いで「情報提供タイミングの最適化」(24%)、「顧客特性に応じたチャネル選択」(20%)、「ターゲット医師の選定・優先順位付け」(14%)が続いており、データドリブンなマーケティング施策の実行には幅広い課題があることが分かります。

データ分析で得られたインサイトを具体的なアクションに落とし込む実行力の強化が、オムニチャネル戦略成功のカギとなるでしょう。

施策への活用では、コンテンツパーソナライズ配信を筆頭に広範な課題
Medinew調査資料「製薬企業のオムニチャネル戦略に関する調査 2025年版」より抜粋

組織体制:人材不足が深刻、部門間連携にも課題

データ活用を支える組織体制の構築では、「データ分析担当者の配置」(25%)が最大の課題となっており、専門人材の不足を抱えている状況です。

また、「データ活用に関する部門間の連携体制」(22%)や「部門を超えたデータ共有・活用」(20%)も上位に挙げられており、組織横断的なデータ活用体制の構築に苦戦している実態が明らかになりました。

部門別に見ると、営業企画部門では「データ分析担当者の配置」が最大の課題である一方、デジタルマーケティング部門やプロダクトマーケティング部門では「部門間の連携」や「データ共有・活用」を課題として挙げる割合が高く、部門横断的な体制構築に課題を感じていることが分かります。

この結果は、オムニチャネル戦略におけるデータ活用には、専門人材の確保と同時に、部門の垣根を越えた連携体制の構築が不可欠であることを示しています。

【部門別】組織体制構築での足かせ
Medinew調査資料「製薬企業のオムニチャネル戦略に関する調査 2025年版」より抜粋

今後の優先施策:基盤強化とAI活用に注目

多くの課題がある中で、各社はどのような施策を優先して取り組んでいくのでしょうか。今後2~3年の優先施策について伺ったところ、各部門で異なるものの、「データ分析基盤の強化」(45%)が最も多く挙げられており、まずはデータ活用の土台となるインフラ整備が重視されています。

次いで「AI・自動化技術の活用」(38%)、「効果測定の高度化」(37%)が続いており、基盤整備の次の段階として、AI技術の導入や測定精度の向上に取り組む意向が見て取れます。

「デジタル人材の採用・育成」(34%)も高い優先度で挙げられており、組織体制面も強化して課題解決へ取り組もうとする意識の高さが伺えます。

今後の最優先施策は、データ分析基盤強化・AI活用・効果測定高度化
Medinew調査資料「製薬企業のオムニチャネル戦略に関する調査 2025年版」より抜粋

段階的なデータ活用高度化と組織力強化が鍵

今回の調査では、オムニチャネル戦略において「データをどのように活用し、施策に結びつけるか」という点で、多くの製薬企業が壁に直面していることが浮き彫りになりました。医師一人ひとりの興味や行動に基づいたアプローチを実現するには、まだ課題が多いのが現状です。

データ活用にあたっては、分析基盤の構築といった技術面の整備に加えて、情報や施策を上手く連携していくための組織面の整備も欠かせません。専門人材の確保、部門横断の連携体制の構築など全社的な土台づくりが必要です。まずは自社の課題を正しく認識し、現実的なステップでデータ活用を進めていくことが、オムニチャネル戦略の成果を高める鍵となるでしょう。

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【DL資料】製薬企業のオムニチャネル戦略に関する調査 2025年版
2025.06.23
分析・リサーチ情報
【DL資料】製薬企業のオムニチャネル戦略に関する調査 2025年版