なぜ世界から注目されるのか?生成AI × デジタルヘルスの話題も満載で製薬マーケター必見のCES初めてガイド

なぜ世界から注目されるのか?生成AI × デジタルヘルスの話題も満載で製薬マーケター必見のCES初めてガイド

世界中からテック企業が集結する世界最大級の最先端テクノロジーの祭典「CES」。毎年1月初めに米国ラスベガスで開催され、大きな注目を集めています。
株式会社ディライトデザイン代表 法政大学大学院 客員教授 朝岡崇史氏による講演「最先端テクノロジーの祭典 CES2024速報レポート」(日本マーケティング協会主催、2024年1月18日(木)開催)では、エクスペリエンスデザインの専門家である同氏がCES2024を現地取材の上、その潮流をマーケター視点で考察。講演内容を3回に分けて連載します。
第1回は、CESのイベント概要や世界中から注目される理由、今後参加したいと考えている人のために向けたCESの歩き方について紹介します。

世界の最先端テクノロジー企業が集結するCESの変遷

CES(シーイーエス※1)とは、全米民生技術協会(CTA:Consumer Technology Association)が主催する、世界最大規模の民生技術の最先端テクノロジーイベントで、軍事以外のBtoC、BtoBさまざまな業界の出展社や団体が集まります。
※1 日本では「セス」とも呼ばれるが、海外においては一般的ではない

毎年1月初旬にラスベガス全域で開催(下図)され、街を上げて盛り上がります。2024年は世界中から約4,300社(フォーチュン500※2の60%)が出展し、約13万5,000人が来場しました。過去最高を記録したのは2020年の出展社数約4,500社、来場者約17万人なので、コロナ禍を経てほぼ通常通りの開催規模まで戻ったと言えます。
※2 フォーチュン誌が年に1回発行する米国の総収入上位企業500社のリスト

ラスベガスコンベンションセンター周辺地図
(公社)日本マーケティング協会, (株)ディライトデザイン「生成AIが変える顧客体験(CX/EX) -CES2024が示す世界の最先端テックトレンド-」資料より抜粋


登壇した朝岡氏は、ブランド戦略、カスタマーエクスペリエンス戦略を専門とするコンサルタントで、コロナ禍でオンライン開催となった2021年を除き、2014年から毎年CESに参加し「デジタル×顧客体験」の視点で定点観測をしています。最先端のテクノロジーの登場がゲームチェンジャーになり、その影響でこの10年間、顧客体験も大きく変わってきたと振り返ります。

2014年は、家電やデジカメを中心にした展示会からスマートフォンに移行していた時期で、SNSを通じた顧客の推奨や評価の力が注目されるようになりました。2015年はDisruption(破壊的イノベーション)がバズワードになり、企業が提供するサービスがモノからコト(体験型サービス業)に移り変わっていきました。2020年からはSDGsに対する人々の意識の高まりを反映してサステナビリティをテーマにした基調講演や展示が増えていき、2023年からはヒューマンセキュリティ(人間の安全保障)がCES全体のテーマとなりました。そして2024年は生成AIが話題の中心となり、デジタルヘルス、モビリティなどの分野で活用され、顧客体験のパーソナライゼーションに拍車がかかっています。

過去10年のCESの振り返り(デジタルCX視点)
(公社)日本マーケティング協会, (株)ディライトデザイン「生成AIが変える顧客体験(CX/EX) -CES2024が示す世界の最先端テックトレンド-」資料より抜粋

朝岡流「CESの歩き方」。注目の展示を漏れなくチェックするには事前準備が必須!

CESは数日間にわたって開催され、出展社数が4000社超と膨大なため、計画なく参加してしまうと重要な講演を聞き逃したり、見るべき出展社にたどり着けなかったりという事態に陥りかねません。そこで朝岡氏は、これまでの長い参加経験によって編み出した「CESの歩き方」を紹介しました。

<アドバイス>朝岡流『CESの歩き方』
(公社)日本マーケティング協会, (株)ディライトデザイン「生成AIが変える顧客体験(CX/EX) -CES2024が示す世界の最先端テックトレンド-」資料より抜粋

まず、開催日前の2日間はプレス限定のメディアデーとなっており、初日の夕方に主催者CTAによる「Tech Trends to Watch」というイベントが開催されます。これは、CTAからメディア関係者に向けて、その年の見どころとなるテクノロジーや傾向を発表するイベントです。一般の方は参加できませんが、CESのWebサイトからPDFの資料を入手できるので、開催日前に必ず目を通しておきましょう。加えて、メディアデーに参加したメディアが新聞やWebメディアで今年のCESの見立てを発信するので、それらの情報もチェックしておきます。

開催初日は、午前8時半からベネチアンホテル5階のパラッツォボールルーム(約2000人収容)で基調講演が始まります。海外からの来場者向けに無料の同時通訳サービスがあるので、ぜひ通訳ブースに立ち寄りましょう。基調講演のサマリーは、「CES DAILY」という雑誌で翌日の朝には紹介されます。こちらも会場で入手して聞き漏らしがないかチェックします。

基調講演が終わると、サンズホテル2階の「CES Innovation Awards」の会場へ足を運びます。これはその年の優れた展示をCES主催者のCTAが表彰するもので、その年のハイライトを知ることができます。「自分なりの仮説を立てることで、自分が見て回りたい展示の巡回ルートのイメージが描けるようになり、計画的かつ効率的に時間を使うことができる」と朝岡氏は述べています。

初日の午後からは、いよいよ展示会場の見学です。1日あたり軽く1万5,000歩以上は歩くことになります。展示会場では、気になった展示について係員にどんどん質問をしてみましょう。貴重な一次情報が得られるチャンスです。

メディアデーで発表されたCES2024の見どころは4点。生成AI × デジタルヘルスが話題の中心

話はマンダレイベイホテルで行われるメディアデーに戻ります。主催者CTAによる「Tech Trends to Watch」では、次の4点がCES2024の見どころとして挙げられました。

  • 生成AI関連の出展社が増加
  • 生成AI関連では、特にデジタルヘルスでイノベーションが起きる
  • EV化の拡大(自動車だけでなく、船や空飛ぶクルマも)
  • 地球温暖化対策への注力:素材、インフラ、新エネルギー


2022年11月OpenAIがChatGPTをリリース、2023年に急拡大しましたが、2023年のCESには期間が短かすぎて具体的な製品やサービスへの導入は間に合いませんでした。2024年はさまざまな企業が満を辞して生成AIをセールスポイントにした製品やサービスを出展しており、ソフトウェアだけでなく、半導体、クラウド、プラットフォーム、デジタルツイン、ロボティクスなど、多様な分野でイノベーションが起きていることがわかります。

デジタルヘルスの領域では、個人によって異なる体調の管理を生成AIの活用でパーソナライズ(最適化)していくことができます。特に女性特有の病気に着目したウィメンズヘルス領域で多彩な出展が見られました。また、サステナビリティの考え方の浸透を背景に加齢による身体の機能の衰えや、さまざまな障害を克服する課題に取り組むインクルーシブ領域でも多くの新しいソリューションが生まれています。

EV化については、動力の電動化にどとまらず、生成AIを導入して、ドライバーとクルマが自然言語で対話しながらやりとりを行う画期的なテクノロジーも登場しています。

そして2020年から引き続き、さまざまなテック企業による地球温暖化対策という社会課題への取り組みにも注目が集まっています。

「Tech Trends to Watch」終了後、メディアデーのハイライトとも言われる「CES Unveiled」が開催されます。ここでは、その年で注目度の高い出展社とメディア関係者がパーティ形式で交流を深めることができます。今年は必然的に生成AIとデジタルヘルスを組み合わせた魅力的なソリューションを数多く目にすることができました。

『CES Unveiled』会場で主役だった、生成AI✕デジタルヘルス
(公社)日本マーケティング協会, (株)ディライトデザイン「生成AIが変える顧客体験(CX/EX) -CES2024が示す世界の最先端テックトレンド-」資料より抜粋。写真の出典は、CES@tech

メディアデー2日目は、早朝から夕方まで各社による記者会見が開催されます。各社45分でそれぞれの取り組みが発表されます。日本の企業では、パナソニックやソニーが記者会見の常連となっています。

見どころは盛りだくさん。次回は基調講演にフォーカスして紹介します

2024年の基調講演は非常に見応えのあるものでした。開催日前日の夜にはシーメンス、その年のハイライトである、初日(1月9日)の朝にはロレアル、午後はウォルマートが講演を行いました。基調講演の内容については、次回の記事で詳しく解説します。

また、余談にはなりますが、会場内には、起業4年以内のスタートアップが集結する「ユーレカパーク」というスペースがあって、非常に活気があります。GAFAもかつてはスタートアップでした。ここから成長して数年後にメインホールで展示する企業も多くあります。

そしてCESにはイベントの登録料とは別に参加費用がかかる有料のセミナーもあります。2024年は特にデジタルヘルスの専門分野の有料セミナーが開催されていました。専門分野がマッチする人には非常に有意義な内容が聞けたり、ネットワーキングができたりするセミナーです。

さて、本記事ではCESの位置づけや会場の回り方、CES2024の見どころについてダイジェストでお届けしました。CESの登録料(参加料)は$100と比較的お手頃な価格設定となっていますので、来年以降、CESに興味のある方はぜひこの記事を参考にしながら参加してみてください。

本セミナーを主催した公益社団法人 日本マーケティング協会は、他にも最新のコンセプトやテクノロジー、トレンド、サクセス・ストーリーなどの紹介、新しい領域の開発、業界企業の最新動向など、企業が持続的成長を続ける上で欠かすことのできない「マーケティング」について、豊富な情報を発信しています。
https://www.jma2-jp.org/