「専門的定型業務」の可視化と仕組み化で実現。コア業務に集中する、旭化成セラピューティクスの新体制|MDMD2026 Summerレポート

「専門的定型業務」の可視化と仕組み化で実現。コア業務に集中する、旭化成セラピューティクスの新体制|MDMD2026 Summerレポート

製薬企業のマーケティング部門では、戦略立案や企画などの「考える仕事」が重視されます。しかし実際の現場では、本来注力すべき業務よりも、手順の決まったオペレーション業務に多くの時間が割かれているケースが少なくありません。
2026年6月開催の「Medinew Digital Marketing Day(MDMD)2026 Summer」では、ゴウリカ株式会社の増瀬道子氏、市川裕久氏が登壇。旭化成セラピューティクス株式会社 医薬営業本部 学術支援部 部長の浦谷一平氏をゲストに迎え、コア業務に集中できる体制づくりについて紹介しました。

「考える仕事」を阻むオペレーション業務

製薬企業のマーケティング部門で注力すべきなのは、市場開拓やステークホルダーとの関係強化に向けた戦略立案、資材やイベントの企画などの「考える仕事」です。

しかし増瀬氏は、「実際には、営業ツールの手配や資材制作の進行、在庫管理といったオペレーション中心の働き方になってしまっているケースが多い」と指摘します。もちろん、その一部を外注している企業もありますが、資材の印刷や発送といった専門性を要しない単純作業しか切り出せず、大きな業務効率化につながっていないのが現状です。

「コア業務=未来を作る仕事」への転換
2026.6.4 旭化成セラピューティクス(株)、ゴウリカ(株)『【旭化成登壇】製薬マーケの常識を「再発見」する戦略的アウトソース』資料より抜粋

旭化成セラピューティクスも例外ではありませんでした。特に時間がかかっていたのが資材の制作です。添付文書の改訂のたびに資材の作り直しに追われ、在庫調整を行うものの整理が追いつかず、資材は豊富にあるものの、有効活用しきれない状態が続いていました。

何より問題だったのは、それが当たり前になっていたことでした。浦谷氏は「忙しさを言い訳に、『これは私たちがやるべきことなのか』という疑問を持つメンバーもいなかった」と振り返ります。

コア業務とノンコア業務の間にある「専門的定型業務」とは

ポイントは「誰でもできる仕事」ではなく、「専門的定型業務」
2026.6.4 旭化成セラピューティクス(株)、ゴウリカ(株)『【旭化成登壇】製薬マーケの常識を「再発見」する戦略的アウトソース』資料より抜粋

増瀬氏は、製薬マーケティングにおいて「考える仕事」に集中できない理由の1つに、業務のとらえ方があると指摘します。従来は、正社員が担う企画型の「コア業務」と、手順が決まっていて専門性を要しない定型的な「ノンコア業務」の2つに分類されることが一般的ですが、実際にはその間に「専門的定型業務」が存在するというのが、増瀬氏の主張です。

専門的定型業務とは、単体ではブランド価値や競争優位性の向上に直結しないものの、高度な専門性を要する業務のことです。プロセスも複雑で属人化・ブラックボックス化しやすく、社員から切り離す発想を持ちにくい領域でもあります。

 増瀬氏は、「こうした専門的定型業務を見極め、適切にアウトソースしていくことで、製薬マーケティング部門の業務負荷を軽減し、本来注力すべき業務にリソースを割くことができる」と説明しました。

人員減でも成果向上。資材制作の仕組み化がもたらした変化

では、専門的定型業務を抽出し、社員が担う業務から切り離すにはどうすればいいのでしょうか。ゴウリカが支援した旭化成セラピューティクス 医薬営業本部 学術支援部の事例は、そのヒントを示しています。

専門的定型業務を切り出し、属人化から脱却

まずゴウリカが行ったのは、同部における業務の棚卸しでした。社員が担うべきコア業務と、専門性は高いものの切り離し可能な専門的定型業務を改めて整理。そのうえで、属人化・ブラックボックス化していた業務プロセスを可視化し、仕組み化を進めていきました。

専門知見が必要なオペレーションをゴウリカに外出し
2026.6.4 旭化成セラピューティクス(株)、ゴウリカ(株)『【旭化成登壇】製薬マーケの常識を「再発見」する戦略的アウトソース』資料より抜粋

「当初は、製薬業界の専門性を(業界外の方に)キャッチアップしてもらえるのか不安だった」と浦谷氏。しかし、ゴウリカの支援チームは現場に常駐しながら業界知識を吸収することで、オリエンテーションから校正、審査、製造、ロジスティクス、精算まで、企画を除く制作工程全体を担うようになりました。

専門知見が必要なオペレーションをゴウリカに外出し
2026.6.4 旭化成セラピューティクス(株)、ゴウリカ(株)『【旭化成登壇】製薬マーケの常識を「再発見」する戦略的アウトソース』資料より抜粋

「1つひとつ丁寧に説明し、みなさんの不安を解消していくコミュニケーションを心掛けました」と話すのは、同プロジェクトを統括した市川氏。

そして、ゴウリカが担う対象も、紙資材にとどまらず、物品やスライド、動画、オウンドサイトなど、幅広い制作物へと広がっていったといいます。

業務効率化に加え、コスト削減も実現

取り組みの結果、学術支援部ではメンバーが2人減ったにもかかわらず、1人あたりが担当できる品目は増加しました。また、業務プロセスが可視化・仕組み化されたことで、資材制作未経験のメンバーでもスムーズに業務を遂行できるようになったと、浦谷氏は語ります。

同時に、コスト面でも変化がありました。以前は、ベンダーの得意・不得意領域や制作費の相場が見えにくかったため、1つの製剤に関する制作物を1つのベンダーへ一括で依頼するケースが多く、ベンダー依存やコストの高止まりが課題となっていました。そこで、ゴウリカを通じて制作物や業務内容ごとに最適な依頼先を選定し、相見積もりを行う運用へ変更。その結果、コスト改善につながったのです。 

こうした仕組み化の力は、イレギュラーな大型案件でも発揮されました。その代表例が、社名変更に伴う全資材の改訂です。影響範囲が広いうえ、一定期間内に対応を完了させなければならないタスクでしたが、「プロジェクト化を通じて、計画的に遂行できた」と浦谷氏は振り返ります。

市川氏によれば、「複数担当者の業務を集約し、類似工程を並行して進めた」とのこと。業務プロセスの仕組み化を日常的に進める姿勢が、大規模な改訂への対応を支える土台になりました。

仕組み化の先にある、現場起点の資材づくり

今回の取り組みを通じて、業務負荷の軽減やコストの最適化を実現した旭化成セラピューティクス。しかし、その先で本当に目指しているのは、現場の声に寄り添った資材づくりです。


かつては、特定の担当者への依存度が高く、業務プロセスの可視化も不十分、そしてその全体像を把握できるのは学術支援部の一部メンバーに限られていたという資材制作。しかし、その可視化と仕組み化が進んだことで、実際に資材を活用する現場社員も意見を出しやすい環境が生まれたといいます。


「現場のニーズをしっかりと把握し、それに応える資材を作っていきたい」と、浦谷氏は締めくくりました。



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