忙しくてもできる英語学習-AI時代に製薬マーケターが鍛えるべき英語力は?

グローバル化が加速する製薬業界において、英語力は必須スキルとなっています。英語を勉強しないといけないと考えている製薬マーケティング担当者は多いのではないでしょうか。一方で、ChatGPTやDeepL翻訳などのAI技術の発達により、従来重視されてきた英語の読み書き能力の重要性は変化しつつあります。本記事では、AI時代に製薬マーケターが伸ばすべき英語力と、忙しい業務の中でも実践できる効率的な学習方法について、実体験を交えながら解説します。
製薬マーケターで英語が必要になる場面とは?
英語が必要になる場面としてまずはじめにに思いつくのが「社内コミュニケーション」です。海外に本社のある外資系製薬企業では、定期的に海外本社のマーケティング担当者との会議が行われます。
海外で先行して承認されている薬剤のマーケティング戦略や戦術に関する情報収集、日本市場のビジネスアップデート&レビューのための打ち合わせといったものや、Global主導の市場調査に日本が入るために細部を詰める場合など、その時々でやりとりが発生します。また外国籍の方が上司になるということも外資系製薬企業では珍しくありません。
当然ながらそれらのやりとりは全て英語になります。ZoomやMicrosoftのTeamsで繋いで英語でミーティングを行います。チャットも英語です。
そのため、英語を聞くこと、また話すことが求められます。特にミーティングでは瞬発力、つまり聞いた英語をすぐに理解し、自分の意見をすぐに英語で発言するといった能力が求められます。
また「イベントの運営」で社外と英語でやり取りする場合もあります。本社主催のイベントに海外のGlobal スピーカーをお呼びして日本で講演をしてもらうといったこともしばしばあります。そうした場合に、Global KOLと講演内容の打ち合わせを行うことも製薬マーケターの仕事になります。そういった場面でも、英語を聞くこと、また話すことが求められます。
AI時代に伸ばすべき英語力は?
AIの登場により、読み書きに関しては瞬時に翻訳が可能になりました。Google翻訳、DeepL翻訳などの機能を利用すれば、英語の論文や英語の資料、またホームページ情報も全て日本語で読めます。
そのため、昔に比べると読む力や書く力の必要性は薄れてきていると感じています。私自身も業務効率化のため、AIに頼ることが多くなりました。
一方で聞く力や話す力はいまだに必要な状況です。
さきほどお話したようにミーティングの場では「聞いて、理解し、話す」という能力が必須になります。
生成AIの登場により、オンラインミーティングにおける翻訳機能も今後ますます進化し、英語を聞くことや話すことの必要性が薄れる未来も近いうちに来るかもしれません。
ただ現状では、まだタイムラグが発生したり、細かな部分の翻訳が違うなどの課題感は残っているのが2025年時点での生成AI翻訳ツールの実力だと思います。そのため実用化、一般化するのはまだ時間がかかるのではと思っています。
また個人的には、対面のコミュニケーションでは、機械による翻訳機能は活用しにくいと考えています。なぜなら生身のコミュニケーションで、機械を介すると煩わしいですし、微妙なタイムラグが発生し、円滑なコミュニケーションの妨げになります。ですので、対面の場面で英語を聞く力と話す力は例え生成AIの機能が進化したとしても不変のものと考えています。
やはり、人と人との生のコミュニケーションに勝るものはないと思います。
従って、生成AI時代に伸ばすべき英語力はリスニング力とスピーキング力にあると考えています。
伸ばすべき英語力を身に付ける方法は?
リスニング力とスピーキング力を伸ばすためには、以下の3要素が必要だと考えています。
- リスニングはシャドーイングで伸ばす
- スピーキングはオンライン英会話で伸ばす
- 1日1時間以上勉強時間を確保する
それぞれ詳しく解説します。
①リスニング力はシャドーイングで伸ばす
シャドーイングは、流れてくる英語の音声に少し遅れて影(シャドー)のように追従し、真似して発音する練習方法です。リスニング力だけでなく、発音、イントネーション、リズム感も同時に鍛えられます。
筆者は海外MBA留学前に、リスニング力向上を目的によく風呂場やランニング中などに取り組んでおりました。
実践のポイントを以下に示します。
◎教材選び
自分のレベルに合った、スクリプト(英文)がある音声教材を選びます。ニュース、TED Talks、YouTube、映画など、興味のある分野から選ぶと継続しやすくなります。アプリでシャドーイングに特化した学習ツールもあります。私のおすすめはビジネス系のTED TalksやYouTubeです。仕事のモチベーション向上にも寄与してくれます。
◎段階的な練習
1.通常速度で聞く
まずは内容を理解するために、全体を一度聞きます。スクリプトは見ないでください。そしてもう一度聞きます。聞き取れない箇所を把握します。
2.スクリプトを確認しながら聞く
次に、聞き取れなかった部分や意味が曖昧な部分をスクリプトで確認し、内容を理解します。
3.スクリプトを見ながらシャドーイングする
音声に合わせて、スクリプトを見ながら同時に発音します。最初はついていくのが難しいですが、焦らず何回も繰り返します。
4.スクリプトを見ずにシャドーイング
スクリプトを見ずに、音声だけを頼りにシャドーイングします。
◎上達のポイント
同じ音声で何十回、何百回と繰り返します。スクリプトを見ずに完璧にシャドーイングできるようになるまでは次の音声に進まないようにしてください。不十分な状態で次々と音声を変えても聞き取れるようにはなりません。同じ音声を繰り返すことは、英語上達の近道です。
②スピーキング力はオンライン英会話で伸ばす
オンライン英会話は、自宅にいながら手軽にネイティブスピーカーやプロの講師と会話できるため、スピーキング力向上に非常に効果的です。
筆者は海外MBA留学前に高い授業料を払って英語教室に通ったりもしていましたが、いまの時代は英語教室に通う必要は全くありません。
スマホ一つで英語学習が行える時代です。
今では生成AIと会話するオンライン英会話アプリも誕生しています。
自分にあったオンライン英会話やアプリを見つけましょう。
実践のポイントを以下に示します。
◎積極的に話す
間違えることを恐れずに、積極的に発言することが大切です。講師はあなたの間違いを指摘し、正しい表現を教えてくれます。
◎同じフレーズを繰り返す
言葉を自分のものにするのに効果的な学習方法は勉強した構文や単語を繰り返し、発音することです。自分の言葉が耳に残るため、単語学習のインプット効率も高まります。
◎フリートークは避け、目的を持った練習をする
仕事で使える英語力を身につけたいのであれば、 ビジネス英会話の教材を意図的に選ぶようにしてください。
③1日1時間以上の勉強時間を確保する
英語力向上には、やはり十分な学習時間の確保が不可欠です。1日1時間以上を目標に、継続的に学習できるような習慣を身につけることがポイントです。
実践のポイントは以下の通りです。
◎学習時間をルーティン化
毎日決まった時間に学習する習慣をつけると、継続しやすくなります。筆者の場合は「ランニング中に30分シャドーイング、会社の徒歩通勤の時間にオンライン英会話」のように、生活に組み込むようにしていました。
◎すきま時間の活用
通勤・通学時間、休憩時間など、まとまった時間が取れない場合でも、10分や15分といった短いすきま時間を有効活用しましょう。ネイティブキャンプなどのオンライン英会話は予約不要ですきま時間の5〜10分だけ講師と会話するといった手軽な利用ができるのでおすすめです。筆者はかれこれ7年近く愛用してます。
◎目標設定と勉強時間の可視化
英語力を可視化するためにTOEICなどのテストを活用することも効果的です。アプリなどで勉強時間を可視化することもモチベーション維持に効果的に働きます。
◎無理のない範囲で継続する
最初から無理な計画を立てるのではなく、まずは「これなら毎日続けられる」という量から始め、慣れてきたら徐々に増やしていくのがおすすめです。
忙しい中で効率よく英語力を高めていくには?
製薬企業のマーケティング担当者の一番の課題は英語学習の時間の捻出にあると思います。製薬マーケターは忙しいです。「英語の勉強をしたいけど、そんな時間が取れない」という声は多くの同僚から聞いたことのある意見です。
私からの提案は下記2点です。
①移動時間・すきま時間の有効活用
1つ目は、移動時間・すきま時間を英語学習にすべて投下するという方法です。私がMBA留学前に行っていた方法がまさにこの方法です。全国各地に移動することが多かった当時、移動時間やすきま時間は可能な限り英語学習に当てるようにしていました。
移動時間やすきま時間を探そうと思えば1日1〜2時間は捻出できるものです。電車の移動中、昼休み、寝る前の30分などなど、探そうと思えば時間は結構見つかります。
②業務に組み込む
2つ目は業務に組み込んでしまうという方法です。負荷は掛かりますが、例えば上司と相談し、能力開発の項目に英語を加え、英語プレゼンテーションのトレーニングを30分毎週組み入れるというやり方や、社内で英会話ランチを企画して同僚を巻き込んで交流を図るなどの工夫が考えられます。1人で自己学習に取り組むことが難しい方や、ある程度強制力が働いたほうが意欲的になるという方におすすめの方法になります。
英語は上手くないといけないのか?大切なのはスピークアップのマインドセット
「英語が上手くなければ話せない」という固定観念は、製薬マーケターがグローバルで活躍する上で大きな足かせになります。もっとも大切なことは、完璧な英語力ではなく「スピークアップ」、つまり積極的に英語を話そうとするマインドセットです。私はこのことを海外MBAで痛感しました。また帰国後、グローバルミーティングに多数出席する中で強く感じた部分です。
英語はあくまでコミュニケーションのためのツールであり、文法的な正確さやネイティブのような発音ばかりを追求する必要はありません。伝えたいという熱意があれば、たとえ多少の文法ミスや詰まりがあっても、相手はあなたのメッセージを理解しようと努めてくれます。むしろ、完璧を恐れて話すのをためらうことの方が、チャンスを逸するリスクが高いと言えるでしょう。
すでに製薬業界における転職市場では、内資も外資も関係なく、英語を話すこと、聞くことの能力が求められるようになっています。臆することなく自分の考えを英語で発信し、議論に加わる姿勢が大切です。間違いを恐れず、自信を持って発言することで、より深い議論が生まれ、グローバルのカウンターパートとの新たな協業の可能性も広がります。英語は「話してなんぼ」です。このマインドセットを持つことが、製薬マーケターとして成功するための鍵といえるでしょう。
そのためには常日頃から準備しておく必要があります。オンライン英会話を活用し、しゃべる訓練を毎日継続することによって、英語を話すことへの抵抗感は薄れます。みなさんお忙しいとは思いますが、日々の生活の中に組み入れることをおすすめします。
以上、今回は製薬マーケターの方のために、英語学習について実体験を交えながら意見を述べさせていただきました。本記事の内容が皆さまの日々の業務に役立てば幸いです。運営しているブログでは、製薬企業で勤務する上で役に立つ情報やマインドセットについても発信しています。ぜひご覧ください。
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