#1 依然高まるオウンドメディア重視の傾向。活用の課題はどこに?|製薬企業デジタル&データ活用 実態調査2024レポート
自社に適した製薬マーケティングの手法・体制を整えるためには、あらゆるデータ、チャネルを活用して、戦略を設計・実行していかなければなりません。各製薬企業におけるそれらの活用状況や課題を探るべく、Medinewでは昨年に引き続き、2024年7月にデジタル利活用の業界調査アンケートを実施しました。本記事ではその中から、デジタルチャネルに関する結果を報告します。
調査概要
- 調査期間:2024年7月1日~10日
- 調査対象:製薬企業勤務の方(デジタルマーケティング部門、営業企画部門、プロダクト部門、メディカル部門など)
- 回答者数:109名(途中離脱者含む)
- 調査方法:Webによるアンケート形式
▶アンケート結果資料はこちらよりDLいただけます
サマリー
- 約8割が「Web講演会(本社主導・3rdメディア配信/オウンドメディア)配信」「3rd party メディア」「オウンドメディア」を重視
- 活用強化の意欲が最も高いデジタルチャネルは「オウンドメディア」で、約7割が「(やや)活用を強化していく」と回答。活用背景には、MR活動縮小により少数精鋭のMRではフォローしきれない部分を、オウンドメディアを主軸としたデジタルチャネルでカバーする意向がある
- オウンドメディアを活用するために製薬企業が最も重視するのが「薬剤に関する情報の充実化」。しかし、Medinewが2月に実施した医師アンケート調査の結果では、医師はオウンドメディアで「見やすさ」を最重視している。コンテンツ拡充と共にUI面の整備も欠かせないことが推察される
デジタルチャネルの利活用状況
今回のアンケートでは、デジタル化を推し進めるにあたって、デジタルチャネルとデータの2つの観点から利活用状況を調査しました。本記事ではその結果から、デジタルチャネルの利活用状況に関する結果を一部抜粋し紹介します。
最重視するデジタルチャネルは「本社主導Web講演会」
利活用を重視しているデジタルチャネルに関する設問では、「本社主導のWeb講演会」が85%と最多でした。掲載媒体は3rd Partyメディアとオウンドメディアいずれも同ポイントであることから、媒体問わず、デジタルチャネル利活用を進めるにあたって本社主導のWeb講演会そのものを重視していることが分かります。
一方で、「医療従事者向けSNS」「チャットツール(担当MRと顧客/LINE WORKSなど)」は重視度合いが低い結果に。「導入していない/分からない」の回答が25%以上であることから、そもそも導入していない企業が多いことも要因として考えられます。
今後活用を強化していきたいチャネルは「オウンドメディア」
現在重視されているデジタルチャネルは「本社主導のWeb講演会」でした。その傾向は、今後も続くのでしょうか。
各デジタルチャネルの今後の活用方針をうかがったところ、「活用強化(活用を強化していく/やや活用を強化していく)」の意向が強いデジタルチャネルのトップは「医療関係者向けサイト(オウンドメディア)」(68ポイント)であり、次点で「Web講演会(本社主導・オウンドメディア配信)」(62ポイント)でした。
オウンドメディアと同じくWeb講演会を配信するチャネルとして有用である「3rd Partyメディア」については、3rdPartyメディアそのものの活用意向は50ポイント、そこでの本社主導Web講演会の配信は47ポイントと、オウンドメディアと比較すると10ポイント以上の差があります。
この結果から、製薬企業各社にとってオウンドメディアは顧客とのタッチポイントとして、顧客のデータを収集するチャネルとして欠かせない存在だといえそうです。また、3rd Partyメディアから得られる顧客データよりも、オウンドメディア経由で得られる、より正確性・透明性の高いファーストパーティデータを重要視する傾向が高まっていることがうかがえます。
デジタルチャネル活用強化の背景のひとつはMR活動縮小
また、オウンドメディアをはじめとしたデジタルチャネルの活用を強化する理由としては、以下のような回答が得られました。
- 少なくなるMR資源をカバーするため
- MR減に関連して、医療従事者の情報格差を発生させないため
- MRを介在しないプロモーションを拡大させるため
- オウンドメディアのSEOを強化し、医療従事者への製品認知を広めるため
- オウンドメディアが見づらいため
- オウンドメディアの流入や会員を増やすため
- オウンドメディアのリニューアルを検討しているため
MR数や活動の縮小傾向が続く中、MRとデジタルチャネルのバランスをどのように取っていくのかが今後の製薬マーケティング戦略のカギとなりそうです。
また、デジタルを駆使したオムニチャネルによる製薬マーケティング体制を構築するためにも、まずはオムニチャネルマーケティングの主軸となりうるオウンドメディアへの期待が高まっていると考えられます。
オウンドメディアで重視すべき要素とは?
今後、製薬企業各社は、自社が求めるオウンドメディアの理想に近づけるためにオウンドメディアのリニューアルや会員化、データ収集のためのツール連携などを進めていくと考えられます。オムニチャネルマーケティングの主軸としてオウンドメディアを活用するためには、さまざまなコンテンツや機能が求められます。では、どの要素を重視していけばよいのでしょうか。
「自社ならでは」の最たるコンテンツは薬剤情報
本調査でオウンドメディアのコンテンツや機能の重視度合いをうかがったところ、「重要視している/やや重要視している」の回答が最も多かったのは「コンテンツ(記事、動画など)の充実化」で、7割以上が重視している結果が得られました。
次点で「薬剤に関する情報の充実化」(67ポイント)であることから、自社製品に関する情報をさらに充実させることで、少数精鋭のMRでカバーしきれない医師への情報提供を、オウンドメディア上の情報提供でフォローしたい意向がうかがえます。
Medinewが2024年2月に実施した医師へのアンケート調査結果からも、薬剤情報の充実度合いが重要であることが分かります。
同アンケートの「製薬企業のオウンドメディアに再訪・ログインするきっかけとなったコンテンツ・機能」を問う設問結果によると、「薬剤、診療、疾患に関する情報を取得するため」という回答がTOP3でした。
コンテンツ拡充の前に「見やすさ」を意識したサイト設計を
一方で、製薬企業がオウンドメディア上で重視したいポイントと、医師が製薬企業のオウンドメディアに求めるポイントには差異もあるようです。
Medinewが2024年2月に実施した医師アンケートの調査結果によると、医師が製薬企業のオウンドメディアに求めるコンテンツ・機能として上位であったのは「さまざまな端末から情報が見やすい」「目的の情報を見つけやすい」といった、UIに関する項目でした。
それに対し、今回の製薬企業へのアンケートでは、「目的の情報を見つけやすい状態(UIの整備)」や「さまざまな端末からの見やすさ」といったUI面よりも、コンテンツや情報の充実度合いを重視しているという結果に。
コンテンツ・情報が充実していても、オウンドメディア上でほしい情報をすぐに見つけられない、パソコンでは閲覧できるがスマートフォンでは見づらくストレスを感じるなどの「見やすさ」が欠けていては、医師が欲しい情報へとたどり着く前に離脱してしまう可能性が高いと考えられます。顧客を離さないオウンドメディアを構築するために、何よりもまずUI面での改善点がないかどうかを確認しましょう。