MR面談のロールプレイをCopilotでやってみた-現場の会話品質を高める生成AI活用術

MR面談のロールプレイをCopilotでやってみた-現場の会話品質を高める生成AI活用術

MRの営業現場では「会話の組み立て」「反論対応」「限られた時間での要点提示」が成果を分けます。医師の情報収集がオンライン化する中、一定の知識を持つ相手から短時間で納得を引き出す面談の難度は上がっており、この状況への対応はMR活動を設計・支援するマーケティング担当者にとっても重要です。

そこで本記事では、MRの面談課題を整理した上で、Microsoft 365 Copilot Chatを使用した「面談ロールプレイ」で初級(基本会話)〜上級(厳しい質問、反証、時間制限)まで段階的に鍛える方法を紹介します。すぐに使えるプロンプトテンプレートも最後に掲載しています。

(外資系製薬企業 経営企画室勤務/製薬キャリア3.0運営 こういち)

MR面談のよくある課題をマーケター視点で整理

マーケターとしてMR面談を観察すると、課題は大きく3つに分かれます。

課題①:医師の「前提」が見えないまま話し始めてしまう

医師の情報収集はオンライン中心になり、効能・安全性などオンラインで得られる基本情報は事前に把握している傾向があります。そのため、MR面談では基礎説明よりも、「自分の患者にどう適用するか」という医師の意思決定の支援が求められます。

ところが現場では、医師の前提(具体的な患者像、処方についての考え方、院内ルール、競合医薬品への印象、インフォームド・コンセントの実施方法)を確認しないまま説明に入ってしまい、会話が噛み合わないケースが少なくありません。

課題②:「短時間で会話を設計する力」が足りない

面談時間は限られています。だからこそ重要なのは「何を話すか」よりも「どんな 順序で話すか。また質問するか」です。

  • 最初の30秒で相手の関心を掴めるか
  • 反論が来たときに、スムーズに返せるか


この「設計力」は、研修だけでは身につきにくく、個人差も大きいため、準備や練習が必要です。しかしロールプレイは一人ではなかなか実行が難しく、同僚と取り組むにしても恥ずかしさもあり、積極的に取り組んでいる人はそう多くないのが実情ではないでしょうか。

課題③:医師との応酬が属人化している

現場で起きるのは、優しい質疑応答だけではありません。

「それ、ガイドライン的にどうなの?」「結局、既存薬と何が違うの?」「安全性は?」「費用は?高くない?」

こうした詰めに耐える練習は、上司や同僚とのロールプレイだけだと回数が足りず、経験者の時間も奪います。こうした制約の中では、対応力が個々の経験に依存しやすく、医師との応酬が属人化しがちです。

この3つの課題に対して、Copilot Chatが効くポイントは、回数無制限でロールプレイを回し、会話を言語化しながら改善できる点にあります。以下で具体的な活用方法を解説していきたいと思います。

Copilot Chatでロールプレイをする準備

ロールプレイの品質はプロンプトの長さではなく、入力する前提情報の設計で決まります。準備すべき情報は以下の3つです。

  1. 自分(MR役)の情報:経験値・苦手・今回のゴール
  2. 製品/疾患の情報:メッセージ、エビデンス、注意点(※オンラベル前提)
  3. 相手(医師役)のペルソナ:専門性・性格・関心・制約(時間、患者背景)


これらの情報は、以降の章で紹介するプロンプトに使用します。

※注意:もしエンタープライズ化されていない、一般のCopilot Chatを使用する場合には、ここで入力するのは、社外秘や未承認情報ではなく「社内で安全に使えると判断された情報(公開情報・承認済み資材・一般化した例)」に限定しましょう。

準備①:「自己紹介カード」を作る(MR役の前提)

あなたはロールプレイの相手(医師役)です。私はMR役です。

【私(MR)の前提】
- 担当領域:例)糖尿病領域
- 経験年数:例)3年
- 強み:例)相手の話を引き出すのは得意
- 弱み:例)反論されると説明が長くなる/安全性の切り返しが弱い
- 今日のゴール:例)処方“意向”ではなく「次回、患者選択基準を一緒に整理する」合意を得たい

【面談条件】
- 面談時間:10分
- 医師の状況:外来の合間で忙しい

準備②:「製品カード」を作る(製品/提案の前提)

【製品/提案の前提(公開・承認済み範囲で)】
- 製品名:○○
- 投与対象:2型糖尿病の成人(例)
- コアメッセージ(3つまで)
- エビデンスの要点(試験名や主要評価項目)
- 安全性で必ず触れる注意点(禁忌・重要な副作用など)
- 競合/既存治療との“差別化ポイント”を一言で
- 今日言わないこと(未承認効能、比較の断定、誇大表現 など)

準備③:「医師ペルソナカード」を作る

【医師ペルソナ】
- 属性:例)地域中核病院の糖尿病専門医
- 性格:例)懐疑的、エビデンス重視
- 関心:例)低血糖リスク、腎機能、併用、アドヒアランス
- その他:例)他社の活動も活発
- 口癖:例)「そのデータ、臨床で意味ある?」

「医師の前提が見えていない」という課題を1つ目に挙げましたが、この工程を入れることで、前提を確認することになります。

初級:基本会話の台本づくり

前提情報の準備ができたら、まずは初級編として面談の基本的な会話の台本を作ってみましょう。

初級の狙いは、10分面談の骨格を固定し、ブレを減らすことです。これにより、2つ目の課題にあった「短時間で会話を設計する力」を磨きます。

初級プロンプト:10分面談の型を作る

あなたは糖尿病専門医です。10分面談のロールプレイをしてください。

条件:
- 私はMR、あなたは医師
- 10分で終わる会話量にする
- 会話後、私の良かった点/改善点を「結論→理由→具体例」でフィードバックする
- 最後に、次回面談に繋げる“宿題”を医師側から1つ出す
(以下、自己紹介カード/製品カード/医師ペルソナカードを貼る)

このプロンプトでまずは、10分の面談の骨格ができます。

Copilot Chatでは冒頭、以下のようなイントロダクションのアウトプットが出てきます。

このロールプレイは「医療行為」ではなく、MR 面談のトレーニング目的の“架空設定”として扱います。そのうえで、医学的助言や診断・処方判断には踏み込まず、一般的な情報に留める形で進めます。

🩺 ロールプレイ(医師役)
設定:外来の合間で忙しい糖尿病専門医。懐疑的でエビデンス重視。
面談時間:10分想定。

あなた(MR)は製品○○の情報提供に来訪。

◆ ロールプレイ開始
医師(私):  
「どうも。外来の合間なので、手短にお願いします。今日は何を伝えたいのですか。」

中級:医師ペルソナ×トーン設計で会話筋を鍛える

次に、会話のリアリティ(医師の個性)を足します。

中級は、同じ内容でも「誰に」「どんな空気」で話すかを設定し、鍛えます。
これにより、3つ目の課題である「医師との応酬が属人化している」問題を解決します。

ペルソナ設計のポイント(MR面談で効く4つの軸の設定)


  • 意思決定軸:エビデンス派/経験則派/様子見派/患者背景派
  • 時間軸:即断型/保留型
  • 関心軸:有効性/安全性/費用/処方しやすさ
  • 感情軸:協調的/懐疑的/攻撃的


Copilot Chatには、この4軸を明示すると再現性が上がります。トーン(態度)を指定することで、普段MRが接している医師に近づけることができます。

中級プロンプト:医師のトーン(態度)を指定してロールプレイ

あなたは医師役です。トーンは「結論を急ぐ、ただし筋が通れば評価する」にしてください。

会話ルール:
- 医師は1回以上、問い詰める(例:比較、費用、安全性)
- MRは感情的にならず、1)共感 2)事実 3)確認質問 の順で返す
- 会話の最後に、医師が「では次回これを持ってきて」と条件を出す

ここでのコツは、MR側の「返しの型」を固定することです。おすすめは以下の例のように「共感→事実→確認質問」で返すことです。

例)
「おっしゃる通り、そこが一番重要です(共感)。
現時点で言えるのは◯◯です(事実)。
先生の患者さんだと、どのあたりが該当しそうでしょうか?(確認)」

Copilot Chat相手なら、この型を守れているかもフィードバックで点検できます。

上級:問い詰め・反論・比較・安全性・エビデンスの「詰め」を再現

上級は、医師からの「厳しい質問」に対応するロールプレイです。

上級プロンプト:反論の種類を指定して出力させる

あなたは医師役です。次の反論を必ず含めてロールプレイしてください:

 1)既存薬で十分では?(差別化)
 2)安全性で懸念は?(リスク)
 3)費用対効果は?(経済性)
 4)ガイドライン/推奨との整合は?(標準治療)

条件:
 - 私(MR)の回答が曖昧なら、医師は追撃質問を2回まで行う
 - 最後に医師が「採用/不採用/保留」を仮決定し理由を述べる

Voice機能で「口が回る」訓練をする

テキストでロールプレイのプロンプトができたら、次は声に出して口が回る訓練を行います。Copilot Chatで利用できる音声対話機能である 「Voice機能」を使うといいでしょう。

実際、声にすると「間」「言い直し」「語尾」「圧」が可視化され、ロールプレイの学習効率が上がります。また医師との面談は「会話」になります。そのため、Copilot Chatが医師役となり、テキストでやりとりするよりも、よりリアルな練習を行うことが可能になります。

ただAIが薬剤名などの発音が難しい固有名詞の聞き取りに失敗すると、会話がズレてしまいます。

それを防ぐために、事前に読みも添えて「用語辞書」を渡すことで、前提条件のすり合わせをするとよいでしょう。

これから音声でロールプレイします。固有名詞の聞き間違い防止のため確認です。

- 薬剤名A:一般名○○(読み:○○)、糖尿病領域の薬
- 薬剤名B:一般名○○(読み:○○)

聞き取れなかったら、推定で進めず「今の薬剤名はA/Bどちら?」と復唱して確認してください。

面談のように、練習量が成果を作る領域ほど、AIは効きます。AIであれば、いつでも、気兼ねなく練習ができるからです。Copilot Chatで型を作り、Voiceで口を慣らす練習を繰り返すことで、面談の質を高めることができるようになります。

コピー&ペーストで使えるプロンプトテンプレート集

今回紹介したプロンプトテンプレートをまとめて掲載します。以下をコピー&ペーストし、その上で、ご自身の状況に当てはめて内容を変更すれば、ロールプレイの演習が行えます。

【開始の一文】

あなた(Copilot)はロールプレイの医師役です。私はMRになります。これから以下の情報を参考に、ロールプレイの練習を実践したいです。医師になりきり、MRに質問してください。

【準備①:「自己紹介カード」を作る(MR役の前提)】

あなたはロールプレイの相手(医師役)です。私はMR役です。
【私(MR)の前提】
- 担当領域:例)糖尿病領域
- 経験年数:例)3年
- 強み:例)相手の話を引き出すのは得意
- 弱み:例)反論されると説明が長くなる/安全性の切り返しが弱い
 - 今日のゴール:例)処方“意向”ではなく「次回、患者選択基準を一緒に整理する」合意を得たい
【面談条件】
- 面談時間:10分
- 医師の状況:外来の合間で忙しい

【準備②:「製品カード」を作る(製品/提案の前提)】

【製品/提案の前提(公開・承認済み範囲で)】
- 製品名:○○
- 投与対象:2型糖尿病の成人(例)
- コアメッセージ(3つまで)
- エビデンスの要点(試験名や主要評価項目)
- 安全性で必ず触れる注意点(禁忌・重要な副作用など)
- 競合/既存治療との“差別化ポイント”を一言で
- 今日言わないこと(未承認効能、比較の断定、誇大表現 など)

【準備③:「医師ペルソナカード」を作る】

【医師ペルソナ】
- 属性:例)地域中核病院の糖尿病専門医
- 性格:例)懐疑的、エビデンス重視
- 関心:例)低血糖リスク、腎機能、併用、アドヒアランス
- その他:例)他社の活動も活発
- 口癖:例)「そのデータ、臨床で意味ある?」

【初級プロンプト:10分面談の型を作る】

あなたは糖尿病専門医です。10分面談のロールプレイをしてください。
条件:
 - 私はMR、あなたは医師
- 10分で終わる会話量にする
- 会話後、私の良かった点/改善点を「結論→理由→具体例」でフィードバックする
 - 最後に、次回面談に繋げる“宿題”を医師側から1つ出す

【中級プロンプト:医師のトーン(態度)を指定してロールプレイ】

あなたは医師役です。トーンは「結論を急ぐ、ただし筋が通れば評価する」にしてください。
会話ルール:
- 医師は1回以上、問い詰める(例:比較、費用、安全性)
- MRは感情的にならず、1)共感 2)事実 3)確認質問 の順で返す
- 会話の最後に、医師が「では次回これを持ってきて」と条件を出す

【上級プロンプト:反論の種類を指定して出力させる】

あなたは医師役です。次の反論を必ず含めてロールプレイしてください:
 1)既存薬で十分では?(差別化)
 2)安全性で懸念は?(リスク)
 3)費用対効果は?(経済性)
 4)ガイドライン/推奨との整合は?(標準治療)
条件:
 - 私(MR)の回答が曖昧なら、医師は追撃質問を2回まで行う
 - 最後に医師が「採用/不採用/保留」を仮決定し理由を述べる

上記のプロンプトを型として活用し、ご自身の状況に当てはめてMRの設定、医師の設定を変えることでロールプレイをカスタマイズすることが可能です。ぜひ一度Copilot Chatにてお試しください。

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