AI Overviewが変える検索行動。生成AI時代に製薬マーケターが押さえるべき3つの打ち手|MDMD2026 Summerレポート

AI Overviewが変える検索行動。生成AI時代に製薬マーケターが押さえるべき3つの打ち手|MDMD2026 Summerレポート

検索結果の最上部に答えが表示されるAI Overviewが広がる中、自社サイトへの流入をどう確保し、患者の行動変容にどうつなげるかは、疾患啓発に取り組む製薬企業にとって避けられない課題となっています。2026年6月に開催されたMedinew Digital Marketing Day(MDMD)2026 Summerでは、株式会社メディウィル 代表取締役社長の城間 波留人氏が登壇。20年にわたり医療領域のデジタルマーケティングを手がけてきた知見と、最新のデータや疾患啓発の事例をもとに語られた講演内容をレポートします。

医療情報を収集する入り口は、今もインターネット検索

医療・健康に関する情報収集のうち、半数以上がインターネット検索を経由しているといわれています1)。また、検索全体に占める健康医療情報の割合は1割にのぼる2)とされ、検索と医療・健康情報は非常に相性のよい領域だと城間氏は説明します。

さらに、2014年と2024年のインターネット利用率を世代別に比較すると、ほぼ全世代で利用が定着し、今では60代以上の高齢者にとっても身近な存在になりました3)。医療関係者を対象に、希少疾患の啓発活動に有効だと感じるチャネルを調査したアンケートでも、一般の方向け・医療関係者向けのいずれにおいても、最も有効な情報提供チャネルとしてWebサイトが挙げられており4)、インターネット上の入り口をいかに押さえるかが、疾患啓発のデジタルマーケティングにおける出発点だといえます。

一方で、患者が適切な医療にたどり着くまでの道のりは容易ではありません。診療科名は100以上、学会も90以上が存在し、近年も新たな診療科が標榜されるなど、患者が向き合う情報は増え続けています。城間氏は、「正しい専門医にたどり着く手前の段階で多くの患者さんが離脱してしまう。この『漏れ』をいかに埋めるかが疾患啓発の役割」だと強調しました。


受診につなげる疾患啓発デジタルマーケティングの設計
2026.6.4(株)メディウィル『生成AI時代におけるデジタルマーケティングの未来~疾患啓発事例とDX動向を踏まえて~』資料より抜粋

AI Overviewの登場で「クリックされない検索」が広がる

次に城間氏は、生成AIによる検索行動の変化について説明しました。生成AI利用に関する調査では、利用率が前年の27%から51%へと増加し、2026年にはすでに2人に1人が生成AIを利用している状況となっています5)。なかでも城間氏が注目するのが、Google検索の最上部に答えを表示するAI Overviewです。


生成AI時代のデジタルマーケティングの環境|AI Overviewの影響は?
2026.6.4(株)メディウィル『生成AI時代におけるデジタルマーケティングの未来~疾患啓発事例とDX動向を踏まえて~』資料より抜粋


AI Overviewが表示されると、ユーザーはその場で疑問が解消されるため、リンクをクリックしてサイトを訪れる必要がなくなり、Webサイトへのアクセスは減少します。実際に、検索結果1位のWebサイトのクリック率は、AI Overview導入後5.8%から1.8%まで低下したという調査データが紹介されました6)

AI Overviewが表示されるのは、現時点では検索全体の約2割にとどまります2)。表示の内訳を見ると、99.9%が「○○とは」といった知識を求める検索、いわゆるKnow(知りたい)クエリで占められています。カテゴリ別では医療・健康系が43%と高く、AI Overviewと医療・健康情報検索の親和性の高さがうかがえます。

生成AI時代に製薬マーケターが押さえたい3つの視点

こうした変化を踏まえ、城間氏は生成AI時代のデジタルマーケティングで意識すべき視点を3つ示しました。


生成AI時代のデジタルマーケティングの環境|AI Overview対策は何をすればよいか?
2026.6.4(株)メディウィル『生成AI時代におけるデジタルマーケティングの未来~疾患啓発事例とDX動向を踏まえて~』資料より抜粋


1つ目は、従来型のSEOの継続です。AI Overviewが引用している情報の約76%は検索順位トップ10の内容をまとめたものとされています7)。AI Overviewに取り上げられるためにも、従来どおりのSEO(検索エンジン最適化)が依然として重要です。

特に医療情報では信頼性や専門性が重視されます。製薬企業や医療機関が発信する信頼性の高い情報は上位に表示されやすく、質の高いコンテンツを出し続ける重要性は変わっていないと城間氏は述べます。

2つ目は、行動変容につながる施策です。これがますます重要になっていると城間氏は強調します。AI Overviewが表示されるのは知識を求めるKnowクエリの検索が中心で、行動を起こしたいというDoクエリにはまだ5%程度しか表示されておらず、この領域には大きなチャンスがあります。簡単な疑問をAI Overviewで解消した人は、より深く知りたいときにさらに検索を重ねます。そのタイミングで、患者体験談やチェックシート、電話相談室、病院検索サービスへの誘導など、行動を後押しするコンテンツを用意できるかがポイントです。

3つ目は、デジタル広告の活用です。SEOは検索順位を最終的に決めるのが検索エンジン側のため、自社で結果をコントロールしきれず、できることは最善を尽くすまでにとどまります。一方、デジタル広告は予算の範囲内で配信を最適化できる、コントロール可能な施策です。

デジタル広告の重要性は、市場の動きにも表れています。日本の広告市場では、デジタル広告がすでにテレビCMを上回って4兆円規模に達し、市場全体の半分以上を占めています8)。なかでも検索連動型広告は引き続き伸び、YouTubeなどの動画広告は2割以上の成長を見せています。

城間氏は当初、AI Overviewの普及でデジタル広告は減るのではないかと考えていたものの、実際はその逆だったと語ります。しかし、Googleの直近の決算では、検索連動型広告が前年同期比で約2割、YouTube広告も1割以上伸びています9)。検索回数が増えたことに加え、AIによる広告配信の最適化が進みクリック率が上がったことが背景にあるといいます。

事例紹介:疾患啓発の現場で生まれている成果

講演後半では、メディウィルが支援する疾患啓発の事例が紹介されました。

医療機器メーカーのヴァンティブが運営する「透析病院ドットコム」において、海外と比べて普及が進んでいない腹膜透析、いわゆるおうち透析の啓発活動を支援。2026年に同社が実施したアンケート調査では、掲載病院を受診した患者の約5割が同サイトを見て来院していたという結果も出ています。

また、協和キリンとともに約7年にわたり続けている希少疾患のプロジェクトでは、FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の疾患認知度の向上という課題に取り組んでいます。症状などで検索した人を疾患啓発サイト「くるこつ広場」へ導き、専門医のいる病院を検索できるサービスへとつなげる導線を設計しました。さらに、相談窓口「くるこつ電話相談室」も開設しています。2023年12月に発表されたフォローアップアンケートでは、2022年7月から2023年6月までの1年間に対応した103件の相談のうち、5名が専門医への受診につながり、そのうち2名が同疾患と確定診断されたという成果が報告されました。


受診につなげるいしゃまち病院検索サービス
2026.6.4(株)メディウィル『生成AI時代におけるデジタルマーケティングの未来~疾患啓発事例とDX動向を踏まえて~』資料より抜粋

変化の中でも揺るがない疾患啓発の本質

生成AIの登場で、検索行動は大きく変わりました。それでも、医療・健康情報を探す入り口は、今もインターネット検索です。AI Overviewが広がり、調べ物の検索ではサイトがクリックされない場面も増えました。ただ、その答えの引用元の多くは、検索上位のページであり、信頼性の高いコンテンツを積み上げる重要性は今も変わりません。

簡単な疑問ならAI Overviewですぐに解決できる時代だからこそ、その先の行動をどう後押しできるかがポイントになります。患者の行動変容を促すコンテンツは今後ますます重要性を増していきそうです。



<出典>※URL最終閲覧日2026.06.08

1)Ubie株式会社「医療アクセス実態調査2025」2025年8月8日(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000168.000048083.html

2)Ahrefs, "What Triggers AI Overviews? 86 Factors and 146 Million SERPs Analyzed", 2025(https://ahrefs.com/blog/ai-overview-triggers/

3)総務省「通信利用動向調査」(令和6年調査・平成26年調査)(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05a.html

4)日本製薬工業協会(製薬協)・IRUD・RDCJ「希少疾患における医療従事者の困りごとに関する調査」2024年11月(https://www.jpma.or.jp/news_room/release/2024/241107.html

5)NTTドコモ モバイル社会研究所「生成AI利用率、過半数に。1年で急増」2026年4月6日(https://www.moba-ken.jp/project/lifestyle/20260406.html

6)Ahrefs, "AI Overviews Reduce Clicks by 34.5%", 2025(https://ahrefs.com/blog/ai-overviews-reduce-clicks/

7)Ahrefs, "76% of AI Overview Citations Pull From Top 10 Pages"(https://ahrefs.com/blog/search-rankings-ai-citations/

8)電通「媒体別の広告費」(https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/ad_amount_trends.html , https://www.dentsu.co.jp/knowledge/ad_cost/ad_amount.html

9)Alphabet Inc.「2026年 第1四半期決算(Earnings Slides)」(https://s206.q4cdn.com/479360582/files/doc_financials/2026/q1/Alphabet-Q1-2026-Earnings-Slides.pdf



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