医師への効果的な情報提供を議論。これからのデジタルチャネル活用とMR連携/ファーマIT&デジタルヘルス エキスポ2024

医師への効果的な情報提供を議論。これからのデジタルチャネル活用とMR連携/ファーマIT&デジタルヘルス エキスポ2024

2024年4月下旬に開催されたファーマIT&デジタルヘルス エキスポ2024。この記事では、メディアの運用や支援を行う3社によるパネルディスカッションの様子をご紹介します。「デジタルチャネルとツールを活用した医師への情報提供とMR活動支援の最適化」をテーマに、(株)メディクト 下山直紀氏がモデレーターを務め、リープ(株)堀貴史氏、(株)HOKUTO 山下颯太氏、(株) 医薬情報ネット 笹木雄剛が、これからのメディア活用や連携についてディスカッションを行いました。

<モデレーター(敬称略)>
(株)メディクト 代表取締役 下山直紀 氏

<パネリスト(敬称略)>
リープ(株) 代表取締役 堀貴史 氏
(株)HOKUTO 代表取締役社長 山下颯太 氏
(株) 医薬情報ネット 代表取締役 笹木雄剛

サードパーティとオウンドメディア、それぞれの長所を生かし組み合わせて効果的な活用を

パネルディスカッションの様子①
写真左から、リープ(株) 代表取締役 堀貴史 氏、(株) 医薬情報ネット 代表取締役 笹木雄剛、(株)HOKUTO 代表取締役社長 山下颯太 氏

下山氏:パネルディスカッションの一つ目のテーマは、サードパーティとオウンドメディアの各メディアの長所と、それぞれの効果的な活用方法についてです。サードパーティ・オウンドメディアに携わっている山下氏と笹木氏の、それぞれのご意見をお聞かせください。

山下氏:当社のアプリ「HOKUTO」は、サードパーティとしてコンテンツを発信しています。

オウンドメディアとの一番の違いは、サードパーティのコンテンツは「なんでもアリ」だということです。医師のエンゲージメントを高め、目的のコンテンツを見てもらうというアクティブな行動のために、間口の幅を広げることができます。

例えば、流入を目的に医師にメールなどでコンテンツを配信すると、一番反応が大きいのは医学の専門知識に関する情報ではありません。もう少しカジュアルな、例えば他病院の不祥事といった、オウンドメディアでは掲載しにくいコンテンツが人気を集めます。
他にも、単に医学知識をメディアとして配信するだけでなく、機能性のあるプロダクトとして提供することも可能です。

このように、制約条件が少なく、ユーザーの間口を広げやすいのがサードパーティの特徴です。

笹木:オウンドメディア単体でマーケティングを考えると、どこかで限界が来ると感じています。

オウンドメディアでは、得られた医師のデータを分析・活用しどのようにMR活動につなげるか、あるいはMR以外のチャネルでのアプローチにつなげていくかが大切です。

特に掲載するコンテンツは、医師にとって本質的に価値のある情報である必要があります。しっかりと興味・関心を引き役立つコンテンツを届けるからこそ、医師が訪問・視聴し、その先のデータ利活用が可能となるはずです。

収集したデータに基づいて、サードパーティに広告を出稿するなど、サードパーティを効果的に活用することもできると考えています。

製薬企業のデジタルチャネルとMR、効果的な役割分担は

パネルディスカッションの様子②
(株)メディクト 代表取締役 下山直紀 氏

下山氏:日経メディカルが医師に対して行った調査1)によると、4月から始まる医師の働き方改革の施行により、「MRとの面談、オンライン面談」の時間を減らす医師が一定数存在します。一方で、「医師向けのデジタルチャネルからの情報収集」にかける時間を減らすという回答は数パーセントにとどまりました。

今後、さらにデジタルチャネルやMRのあり方が変わっていくことが予想されますが、効果的な活用方法や、それぞれの役割分担についてご意見をお願いいたします。

堀氏:医師の働き方改革は、まさにMRにとって死活問題です。当社のサービス「skillpalette®」の分析によると、高い成果を上げるMRは、そうでないMRに比べて約1.5倍の面談時間を確保しています。ここから分かるのは、医師も価値のある情報提供に対しては、しっかりと時間を作ってくれるということです。

今後は価値の高い情報を提供できるMRは生き残り、そうでないMRは淘汰されてデジタルチャネルに取って代わられる時代が来ると思います。

また、デジタルチャネルでどんな情報が提供されているのかを、MRが十分に把握しておくことも重要です。医師の満足度、つまり顧客にとっての価値を上げるためには、MRが他チャネルの理解を深め差別化を図っていく必要があるのではないでしょうか。

笹木:医師の働き方改革施行後も、リアルで医師と会う重要性は変わらないのではないかと思います。自分自身、営業の際はリアルで会って話す効果を実感してきました。

一方で、医師側がMRとの面談時間を減らしていく傾向にあるのは事実であるため、製薬企業側が重点的にアプローチすべき医師=「会うべき医師」を見極めていく必要があると思います。

リアルでしっかりとMR活動を行う対象と、オウンドメディアを通じてアプローチする対象を整理し、それぞれに適切な情報提供を行うためには、やはりデータの利活用が欠かせません。この精度をどこまで高めていけるかが、今後の明暗を分けることになると思います。

デジタルチャネルとMR活動をデータでつなぎ、より効果的なマーケティングを

パネリストとして登壇した3社は、医師への情報提供についてメディアの運用やMR活動のスキル評価などを通して製薬企業のマーケティングを支援しています。ここでは、各社の取り組みをご紹介します。

医師のリーチ拡大とアプローチ拡大でデジタルマーケティングを最適化|HOKUTO

HOKUTOは、医師・医学生向けプラットフォームを運営し、製薬企業のマーケティング支援に関する事業を展開しています。

ご自身も医師である代表取締役社長の山下氏は、情報を受け取るチャネルの多様化や、医学情報の増加により、情報を収集・活用する医師の負担が増大していることを感じていたといいます。

そこで、同社が提案するのが医学情報収集をフルサポートするアプリ「HOKUTO」です。パーソナライズされた医学コンテンツを通じて、日々の業務に役立つ情報を気軽に入手できます。リリース後約4年で、医師会員数は10万人(日本の医師の約3人に1人)を突破しています。

製薬企業向けには、スマートフォン(アプリ)に特化した顧客体験の高さと、臨床現場で必要な情報をすぐに取り出せるツール機能を活かして、マーケティングを支援しています。

山下氏は「既存のメディアに『HOKUTO』を追加することで、ターゲットリーチを1.3倍以上に拡大した実績もある。また、処方に必要な関連資材の掲載、計算ツールの開発・実装などにより、処方行動の変容を促進するところまでアプローチを拡大できる」と解説しました。

製薬企業オウンドメディアはコンテンツ軸からユーザー軸への転換を|医薬情報ネット

医薬情報ネットは、「データ」「デジタル」「リアル」の3つの軸で、創造的なマーケティング支援を行うとともに、医療コミュニケーションの変革を目指す会社です。

医師データベースを活用したマーケティング支援、オウンドメディアのデータ分析や、コンテンツ企画、マーケティング施策の実行・支援、講演会などのリアルな医師とのタッチポイントづくり支援などを行っています。

また、運営するメディア「Medinew」では、医療用医薬品のマーケティング・セールスに関する最新トレンドや事例、実践的な知見・ソリューションなどを調査・取材し、発信しています。

本講演では、Medinewによる医師座談会の内容を紹介し、製薬企業のオウンドメディアが抱える課題を考察しました。そのうえで医療従事者に選ばれるサイトにするためには「これまで製品軸のコンテンツ中心だったオウンドメディアからユーザー軸(Dr.軸)でのコンテンツ制作に転換し、顧客理解につながるデータを蓄積していくことが重要」だと解説しました。

MRのスキル向上とチャネルの掛け合わせで、医師の体験価値を高める|リープ

リープでは、ディテーリングスキルをはじめとする、MRのさまざまなスキルを評価・分析するサービスを提供しています。

スキルのアセスメントとは、MR活動の品質そのものを評価することです。同社のスキル評価・分析サービス「skillpalette®」は、「成果を創出しているMR」と「成果を創出できないMR」では医師へのディテーリング内容や活動がどう違うのかを分析し、情報提供の品質を可視化します。

「skillpalette®」で高い評価を受けたMRは、低い評価を受けたMRに比べて、約5倍も医師から前向きな反応を得たというデータもあります。

堀氏は、他のチャネルでは難しいMRの大きな役割は「ニーズの探索」だとし、「医師が抱えている課題を対話により探ることはMRの有用性だと言える。他のチャネルと紡ぎ合わせながらストーリーテリングの手法を駆使して議論していくことがMRに求められる役割ではないか」と締めくくりました。

<出典>※2024.5.15閲覧
1) 日経メディカル, 2024.2, 日経メディカルOnline医師会員 医師の働き方改革調査
https://www.nikkeibp.co.jp/ad/info/00581/chosa_240425.pdf