製薬マーケターの7割が活用。人間×生成AIの成果を高めるポイントは

生成AIの活用は、R&Dだけでなく、製薬マーケターの日々の業務効率化や新たな価値創造といった分野でも、さらなる変革をもたらすことが期待できます。Medinewでは2024年11月、製薬企業での文章生成AI活用の実態やニーズを把握し、今後の活用への課題を探るべく、アンケート調査を実施しました。
本記事ではその結果から、文章生成AIを活用している製薬マーケターの使用方法やニーズ、所属企業に対応を求める課題について解説します。
調査概要
- 調査期間:2024年11月17日~21日
- 調査対象:製薬企業勤務の方(デジタルマーケティング部門、営業企画部門、プロダクト部門、メディカル部門など)
- 回答者数:97名(途中離脱者含む)
- 調査方法:Webによるアンケート形式
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サマリー
- 文章生成AIの活用を約8割の製薬企業が推進しており、所属企業の推進意向にかかわらず、個人単位では7割以上が活用中
- 最も意欲的に生成AIを使用していると考えられる「所属企業非推進&自身活用」群は、生成AIに、自分一人ではカバーしきれない「新しい発想」や「品質向上」に対する期待を寄せている
- 生成AIは、アイディア出し・壁打ち、論文リサーチ・文章要約、メール文作成といった業務で多く活用されている
- さらなる活用のためには、社内研修による個人のスキル向上や、使用範囲などの規制緩和といった企業レベルでの施策が求められている
約8割で生成AI活用を所属企業が推進。個人では7割以上が活用中

本アンケートでは、製薬業界全体の生成AIの推進・活用状況について、特に文章生成AIに絞って調査を実施しました。
Medinew読者の製薬企業勤務者に対し「自身の所属企業の生成AI推進状況」および「自身の生成AIの活用状況」をうかがう設問では、全体の79%の製薬企業が文章生成AIの活用を推進し、全体のうち73%が所属企業の推進状況にかかわらず、自身で生成AIを活用しているという回答が得られました。
本記事では、以下のセグメントのうち「自身活用群(所属企業で活用を推進しているかつ自身は活用している/所属企業で活用を推進していないかつ自身は活用している群)」に絞り、活用傾向や、生成AIと人間のさらなる共創に向けた課題とその対策をまとめます。

所属企業が非推進でも「作業効率化」「アイディア創出」などを求めて活用
自身活用群のうち、所属企業が生成AIを非推進であるにもかかわらず自身は活用していると回答した「企業非推進&自身活用」群に「なぜ生成AIを活用するのか」をうかがうと、全員が「効率的に作業を進めたかったから」を選択。そのほか、「自身にはないアイディアを得られると思ったから(81%)」「アウトプットのクオリティが上がると思ったから(69%)」と続き、自分一人ではカバーしきれない「新しい発想」や「品質向上」に対する期待を生成AIに寄せていることが分かりました。

生成AIは作業効率化のためのサポートツールとして知られています。しかし企業非推進&自身活用群は、その先にある、「人間と生成AIの共創」という点で生成AIに価値を見出していると考えられます。
「使うことの楽しさ」は企業推進群と非推進群にギャップ
同じ生成AIの「自身活用群」であっても、活用によって感じるメリットには、企業推進群と非推進群の間にギャップが見られました。
生成AIの活用によって得られるメリットをうかがったところ、「効率的に作業を進められる」「自身にはないアイディアを得られる」は企業推進群、非推進群いずれも6割以上が選択しています。しかし、「使うことが楽しい」は企業推進群32%、非推進群69%と、35ポイント以上の差が生じました。

自身で積極的に生成AIを活用している企業非推進&自身活用群は生成AIを使うこと自体に楽しみを感じている一方で、企業推進&自身活用群は「会社が生成AIを推しているから」という理由から生成AIを使用しているケースもあると考えられます。
活用意向と実態に差。その理由は?
生成AIをどのような業務で活用しているかを問う設問では、「アイディア出し・壁打ち(72%)」、次いで「論文リサーチ・文章要約(69%)」「メール文作成(63%)」という結果が得られました。前述の、活用メリットとして評価されていた「アイディア出し」や「業務効率化」に関連する業務で、実際に生成AIを用いているようです。
しかし、一部の業務では、活用意向と実際の活用率に差が生じていることも明らかとなりました。「データ分析・サマリーの作成」「資料作成」といった業務では、それぞれ94%の回答者が活用意向がある(「活用している」または「活用できていないが、活用したい」)と回答しましたが、実際に活用できているのはそれぞれ45%、55%にとどまっています。

最も活用意向と活用率のギャップが大きかったのは「他社サイトや取り組みの分析」で、7割以上が活用意向があると回答しているにもかかわらず、実際に活用している人は1割にとどまることが分かりました。
求められる「個人の知識・スキル向上」と「会社の生成AI利用制限の緩和」
では、この活用意向と活用率のギャップを埋めるためには、何が必要なのでしょうか。
活用したいのに活用できていない業務がある回答者に、その理由をうかがったところ、「どのように活用したらよいかが分からないため(63%)」が群を抜いて高かった一方で、次点は「会社で生成AIの使用範囲に制限があるため(35%)」という結果に。個人・会社の両者に課題があると考えられます。

特にギャップの大きかった「データ分析・サマリーの作成」「資料作成」「他社サイトや取り組みの分析」は、これらの課題が顕著に感じられる業務だといえるでしょう。
文献の要約や簡単なメール文の作成、といった業務は、現時点での生成AIであれば、会話をするようにプロンプトを入力すれば十分にほしいクオリティの回答が得られます。しかし、「資料作成」や「他社の分析」といったアウトプットを得るためには、トリガープロンプトを駆使したりといったスキルが求められます。
さらに、「データ分析・サマリーの作成」といった業務では、生成AIに分析したいデータを読み込ませなければなりません。このような使い方は、広く一般公開されている生成AI(ChatGPTやCopilotなど)ではNGとしている製薬企業が多くあるのも確かです。
Medinewでは、実務でそのまま活かせるプロンプトの書き方などについての記事も用意していますので、ぜひご覧ください。
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ただアイディアを壁打ちしたり、単純なメール作成のみでの生成AI活用では、ちょっとした作業効率を高めることはできても、人間と生成AIによる共創にはなかなか発展しません。
「生成AIをさらに活用するために所属企業に求めること」をうかがったところ、「業務ごとの活用方法を教えてほしい(65%)」「活用の制限を撤廃・軟化してほしい(49%)」「プロンプトの書き方を指南してほしい(44%)」といった結果に。

具体的にどのような業務でどのような効果が期待できるのか、その効果を得るための最適なプロンプトはどのようなものか。企業から部門や個人に向けて研修を実施するなどのサポート体制の構築が求められているのではないでしょうか。
同時に、生成AIの活用による成果をより高めることを目的としたガバナンス強化も求められています。生成AIによるリスクを最小限に抑えつつ、できる限り制限の軟化を叶える使用ルールを策定したり、柔軟に活用できる自社独自の生成AIのシステムを構築したりと、企業レベルで生成AIの活用推進・発展をサポートしていく必要があるといえます。
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